今夏、記録的な洪水に見舞われたパキスタンで、特定非営利活動法人の難民を助ける会(AAR Japan)は同国北西部ハイバル・パフトゥンハー州で、食料配付や給水などの緊急支援を実施している。9月15日にオンラインで開催した「パキスタン洪水緊急報告会」では、国土の3分の1が水没するという、日本人の想像を超える現地の被災状況が生々しく伝えられた。同会は支援活動を続けながら寄付を呼びかけているが、生活インフラや住居の損壊は激しく、また、同国では衛生管理や栄養価に乏しい食事といった課題もあり、持続的な支援が必要だ。
同会などによると、同国では今年6月からモンスーン(雨期)の豪雨が続き、河川の氾濫によってバロチスタン州、シンド州、ハイバル・パフトゥンハ州、パンジャーブ州で洪水が発生した。9月5日時点で約1300人が死亡。国民の7人に1人に当たる3300万人以上が被災しており、復興には100億ドル(約1兆4000億円)以上を要する見通しだ。アントニオ・グテレス国連事務総長は、この洪水を「気候大災害」として、1億6000万ドル(約224億円)の緊急支援を各国に呼び掛けている。
50万人以上が救援キャンプで生活していると推測されているが、被災地への道路が寸断され、全容はつかめておらず、被害がさらに深刻化することも懸念されている。
AARはイスラマバード事務所を通じて9月7~8日、計100世帯に食料や塩、香辛料、石けん、虫よけスプレーを配付したほか、給水車で安全な水を連日提供している。
だが、洪水は貧困世帯に追い打ちをかけている。AARは、サイトでハイバル・パフトゥンハー州のノウシェラ郡ケシギ・パヤン地区にあるアフガニスタン難民居住地の様子を紹介している。避難民には、1990年代のアフガニスタン内戦時に流入した難民が多く、昨年8月のイスラム主義勢力タリバンの復権を受けて避難して来た人々もいる。周辺のパキスタン人のコミュニティと比べて貧しい世帯が多いうえ、居住地はあくまで「一時的な避難先」という位置付けで、鉄筋やコンクリートの家を建てることもできない。泥やレンガの家々は洪水で壊滅的な損害を受け、命はなんとか助かっても、生計のための財産である家畜が流され、途方に暮れているという。
不衛生な環境で感染症が広がる懸念もある。パキスタンでは料理を手で食べる文化があるが、食事の前に手を洗う習慣が浸透していないケースも見られ、「コレラやチフス、破傷風などの感染症にかかる危険性を感じた」という。AARスタッフが訪れた家庭では、炭水化物などが中心で栄養価が低い食事を摂っている住民が多く、不衛生な環境ではより病気になりやすい。こうした問題は以前から続いていたが、災害でリスクが一気に増した。AARは石けんを配って手洗いを呼び掛けるなど、衛生啓発にも取り組んでいる。
緊急報告会では、東京事務局と現地をオンラインで繋ぎ、最新状況や支援の課題を報告。洪水が発生した地域の概要から、無残に破壊された家屋、道路沿いのテントで避難した人々など、「国土の3分の1」が水没するという極限状況を、改めて生々しくレポート。そのうえで、パキスタン緊急支援への協力を呼びかけた。
【関連サイト】AAR Japan「寄付の申込み」
【関連サイト】AAR Japan「【パキスタン洪水被災者支援】緊急支援にご協力ください」
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