不動産業向け貸出の対GDP 比、1990年末以来の「過熱」に。日銀レポート

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日銀が17日公表した金融システムレポートで、不動産業向け貸出の対GDP(国民総生産) 比は1990年末以来、初めて「過熱」となった。

地銀や信用金庫の不動産向けの貸出比率の上昇が続き、特に個人のアパート経営など返済期間が長い融資が多い。このため残高が膨れ、過熱感が高まっているという。同リポートは年2回公表しており、このうち「ヒートマップ」として、金融循環上の過熱感や停滞感の有無を点検するため、各種の金融活動指標に関して、過熱感を指標ごとに3段階に色分けしている。

今回は全14指標のうち13指標が、過熱でも停滞でもない「緑」となっており、「金融経済活動全体としてみれば、バブル期にみられたような行き過ぎた動きには至っていない」と判断する。しかし不動産業向け貸出の対GDP比率のみ、昨年10月の前回調査では中立を表す「緑」だったが、今回は過熱を示す「赤」に変わった。

日銀は不動産市場について「全体としてみると1980年代後半のバブル期のような過熱感は窺われていない」とし、銀行の不動産業向け貸出については、不動産市場に過熱感は窺われないが、(1)貸出の伸びの中心が中小企業・個人による不動産賃貸業向けであること(2)そうした貸出に積極的な金融機関に自己資本比率が低めの先が多いこと(3)貸出とは別に、金融機関のREIT・不動産ファンド向け出資も増加していることーーを挙げ、「不動産市場を巡る脆弱性を注視していく必要がある」とする。

近年の不動産業向け貸出のバブル期との違いとして、大型の不動産取引業向けより、不動産賃貸業向けの貸出が増加していることがある。REIT(不動産投資信託)や不動産ファンドによるオフィスや商業・宿泊・物流施設、大型マンションなどの取得、個人による貸家取得といった投資用資金の貸出がこれに該当する。

これに対し、バブル期は、過度に楽観的な成⻑期待を背景に、地価上昇による転売益を狙った不動産取引のファイナンス需要が中心だった。

レポートは「人口や企業数の減少、成長期待の低下といったバブル期とは異なるファンダメンタルズのもと、将来の物件需要に対して過剰投資となっていないか注視していく必要がある」と指摘。また、REITや不動産ファンド向けはノンリコースが多いこと、貸家業向けは中小企業や個人などの比重が高いことから「不動産収入の減少が債務返済能力の悪化に直結しやすい点にも留意が必要」と警戒する。

対策として、REIT・不動産ファンドや個人による貸家業向けなど不動産賃貸業向けの貸出にあたっては、「貸出実行時点における実査、キャッシュフロー計画の妥当性確認等を適切に行うとともに、実行後の管理(空室率・賃貸収入のモニタリング、適切な引当の実施等)を貸付期間を通じて継続していく」と指摘。地域金融機関については「ミドルリスク企業向けや不動産業向け貸出、投資信託を通じる投資拡大等に対応した管理強化」を挙げた。

【参照レポート】金融システムレポート(2019年4月17日)

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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