今回は、リップル下落の背景とポイントについて、大手暗号資産取引所トレーダーとしての勤務経験を持ち現在では暗号資産コンテンツの提供事業を執り行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12)に解説していただきました。
目次
- 足元リップル急落の背景
- SECの重要性
- 価格下落の具体的な要因
3-1. リクイディティプロバイダーのリップル取り扱い中止示唆
3-2. 年末の換金需要
3-3. ODL関連等企業側の不安心理の高まり - 今後のリップルを考える上で大事なこと
足元リップルが急落しており、今年の年初来高値から半値以上の急落を見せています。しかしこのリップルという通貨が下落している原因やそのポイントについては上手く理解されていない点も大きいと思います。
ここでは足元のリップルの状況や値動きの背景、そして季節的要因も含めて考えていきたいと思います。
足元リップル急落の背景
足元のリップルの背景からまず説明していきたいと思います。
リップルの価格が下落したのは12月23日(日本時間)、アメリカのSEC(米証券取引委員会)がリップル社を提訴するという報道が公表されたことがトリガーとなりました。
この提訴の内容で重要なポイントは「販売方法」です。一例として訴状の中身で書かれているのは、市場流通価格の15%から30%ディスカウントした価格で800億円分販売しているということでインセンティブプログラムの提案と、これによって発行コストを少なくして資金を調達できるという総合的な「調達方法」についてです。米SECとしてはリップルは有価証券に該当すると主張しており、その有価証券を販売したという点で訴えを起こしているというのが概要となっています。
その訴えの中にはリップルが行っているODL等多岐に渡る範囲に影響が出ることから、暗号資産市場全体でも大きな注目を集めています。今回のケースのように、暗号資産が国の法律に照らし合わせると違法になるというようなものというのは様々にありましたが、今回は時価総額三位のリップルということが大きな点となっている状況です。しかしこれだけの理由で高値から半値以下まで急落する理由とまで判断できない投資家も多いでしょう。
以下では、「確定している内容がない中でこれだけの値動きが出ているというのはなぜなのか?」と思われている方に向けて解説していきます。これにはまずSECがどれだけ重要な機関なのか、そしてリップル急落と関連している取引所の背景や動き、そして季節性というマーケット要因も含めて説明したいと思います。
SECの重要性
米証券取引監視委員会というのはどのような責務があり、どのような権限を有するのかという点をしっかりと理解することが重要です。
SECの最大の責務は「米国資本市場・証券市場で投資家を保護すること」で、市場の公平・透明性を確保することです。このSECは不公正取引や相場操縦等に対して司法に準ずる権限をもっており、独立した強力な機関となっています。SECの長官はFBI長官と並ぶほどの法の強制執行者となっていることから、金融機関はSECには目をつけられたくないというほど強力な機関ということです。
そのSECが訴えを起こしたことから、金融機関はリップルに関連して火の粉が自分たちに及ばないように距離を置こうとする行動に出ます。これは必ずしも縁を切るのというものではありませんが、一時的に私たちは何も関連してませんよというポーズの意味合いにもなります。
価格下落の具体的な要因
SECの権限の強さや、金融機関がSECは敵に回したくないということはある程度理解できたのではないでしょうか。次に価格下落の背景について、上記のSECとの関係も踏まえながら包括的に説明を行っていきます。
リクイディティプロバイダーのリップル取り扱い中止示唆
最初の要因は、リクイディティプロバイダー(流動性供給者)がリップル取り扱い中止を検討しており、アメリカの暗号資産取引所でもリップル上場廃止を検討しているというものです。上場廃止は「売り買いの禁止」を意味しており、流動性面で影響が出ることは避けられません。
アメリカの暗号資産取引所がリップルを上場廃止とした場合、アメリカでリップルを保有している投資家は取引所で売却することができなくなります。また、取り扱いする取引所が減少するということは、ダイレクトに取引高が減少することを意味しており、値動きが予想外に激しくなることから安定した価格形成が難しくなります。先行きでそのような可能性が出てくるという場合、投資家は先んじてリップルを手放す行動を起こすのは自然の動きです。
日本の暗号資産取引所もリップルの取り扱いを一時停止したりしていますが、これは日本の暗号資産取引所は顧客に販売する販売所のレートは海外のカバー先の取引所を参照してレートを決定しているためです。海外の暗号資産取引所のレートが急に出なくなる危険性が出てきたため、日本の暗号資産取引所は調達やカバー取引ができなくなることを懸念して取引を止めているということは想像に難くありません。
もしも日本のユーザーがリップルを日本の暗号資産取引所に販売所経由で売却した場合、日本の暗号資産取引所は売られた分のリップルロングになります。しかし、その後カバー先であるアメリカの暗号資産取引所やリクイディティプロバイダーがリップルの売買を止めてしまうと、日本の暗号資産取引所はリップルロングというポジションを持ったままリスクを取ってしまうことになります。このような危ない橋は渡れないことから現在リップルの売買を中止する暗号資産取引所が出ているのです。
年末の換金需要
次の要因は「年末の換金需要」です。これは投資の世界では知っている人も多い内容ですが、12月は税金支払いのための換金売りが出やすい月でもあります。
リップルは11月から上昇を始めあっという間に3倍程度まで値上がりしていたことから、何か材料があれば12月だからという理由でも売り材料に敏感に反応しやすい状況でした。12月は流動性が薄く、そもそも値が飛びやすい月に今回のようなニュースが出たため、格好の売り材料になったことも大きな要因でしょう。
これは今回のリップルに限らず、株の世界でも為替の世界でもポジション調整ということで同じことが起きるため、覚えておくといいと思います。余談ですが12月はテクニカル分析も騙しが多くなりやすい月でもあります。そのため無理なトレードは12月は行わない方が賢明です。
ODL関連等企業側の不安心理の高まり
今回のリップル社提訴の内容を見ると日本の企業もある程度名前が出ています。リップルの国際送金ネットワークには金融機関や大企業が名を連ねていますが、こうした企業は先述のSECには少しでも目はつけられたくありません。そのため、法的リスクに晒される危険性のあるプロジェクトには一旦距離を置くという行動に出ることは普通の対応で、一旦状況が落ち着くまで静観することになると見るのが良いでしょう。
これまでリップルに良い影響を与えてきた様々な企業や金融機関が一旦距離を置くことは、足元のリップル相場に悪い影響を与えるのではないのかという印象を投資家に持たせることになります。直接的に価格に影響を与えるというよりは心理的な印象でネガティブな印象を与えやすいということです。
今後のリップルを考える上で大事なこと
最後にまとめとして、今後のリップルについて投資家目線でどのように行動すべきかを解説します。
Twitterではテクニカル分析を基に単純に割安だからロングで攻めようというコメントも見受けられますが、SECが勝訴した時のリスクは計り知れないものがあり、リップルがさらに急落する可能性も秘めていることを忘れてはいけません。このように大きな悪材料が出る危険性がある間はロングポジションを取ることはないようにしましょう。
今回のようなケースでは往々にしてテクニカル分析は機能せず、一喜一憂しながら振り回される動きになる傾向があります。そのため、特に12月の間は無駄なリスクは取らない方が賢明と言えるでしょう。再度状況が落ち着いてからエントリーしても十分利益は出すことは可能ですし、現段階では不安心理がマーケットを覆っている状況ですので、今の段階でエントリーすることはギャンブルと同様です。
どのように状況が変化していくのか日々ニュースをチェックしつつ、頭で整理して来年以降の動きに備えておくことが賢明でしょう。状況が落ち着く過程でテクニカル分析も機能し始めるため、そのタイミングでどちらにエントリーするのか判断することがベターと考えています。
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中島 翔
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