消費増税の影響は?不動産売却に関する主要な4つの税金について解説

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個人にとって生涯で最大の売買の一つは不動産(マイホーム)売却ではないでしょうか。2019年10月に消費税は現在の8%から10%に増税されることが決まっており、その負担を考えると購入側と売却側の双方で駆け込み契約の増加も予想されています。

消費税に限った話ではありませんが、不動産の取引には「物件本体」の価格だけではなく、税金や仲介手数料など様々な費用が発生します。そこで今回は不動産売却で生じる4つの税金「消費税」「印紙税」「(譲渡)所得税」「(譲渡)住民税」を詳しく解説します。マイホームの売却を検討している方などはぜひご参考ください。

目次

  1. 不動産売却時の「消費税」とは
    1-1.消費税の課税対象
    1-2.消費増税の影響を受ける諸費用
  2. 不動産売却時の「印紙税」とは
  3. 不動産売却時の「譲渡所得税」とは
    3-1.「譲渡所得」の計算方法
    3-2.「建物の減価償却費」について
    3-3.「譲渡所得税」の求め方
    3-4.売却物件の保有期間により変わる税率
    3-5.特別控除について
  4. まとめ

1 不動産売却時の「消費税」とは

消費税が5%から8%に上がった平成26年には駆け込み需要が全体で3兆円程度あったと言われ、住宅や車などの高額な商品に多くのお金が流れ込みました。

民間の不動産リサーチ会社「不動産経済研究所」によれば、2018年冬の全国のマンション取引額の平均(2017年分トータル)は次のとおりです。

  • 首都圏:5,908万円
  • 近畿圏:3,836万円
  • 全国平均:4,739万円

不動産売買は平均値で4,000万円台~6,000万円弱という単位での取引になり、後述の通り仲介手数料(売買代金の3%+6万円)などに対して消費税が発生します。個人間の不動産売却においてはあまり消費増税の影響はありませんが、消費税の発生する事業者の不動産取引においては注目が集まっている部分です。

1-1 消費税の課税対象

不動産取引について消費税の対象となるのは、マンションも一戸建ても“建物部分”についてのみとなり、土地取引にはかかりません。消費税はモノやサービスを消費する際に課税される税金であり、土地取引については“消費”という概念が適用されない決まりとなっているからです。

またサラリーマンや公務員、団体職員など“個人”による取引については、建物の売買に関しても消費税はかかりません。消費税は原則、前々年の課税売上高が1,000万円超の法人などの事業者による取引に課税されます(事業者間取引でも課税対象は「建物」部分のみで土地は課税の対象外)。

一般的に新築マンションや新築戸建ての売主となるのは不動産会社などの事業者となるため、買主が消費税を負担し、売主は消費税を納める必要があります。一方、これまで居住していた個人の売主が中古マンションやマイホームの売却をする際は、建物部分の消費税は非課税となります。

1-2 消費増税の影響を受ける諸費用

個人間による不動産売却では、土地建物に対する消費税を納める必要はありませんが、売却時には下記のような様々な「諸費用」が生じることがあります。

  1. 仲介手数料
  2. 登記費用
  3. 印紙税
  4. 土地の造成費用・埋め立て費用、引っ越し費用など

上記のうち①、②は消費増税の影響を受けます。仲介手数料とは、個人がマイホームの売却において、売買契約を不動産会社の仲介によって締結した際に発生する手数料です。売却が成立すれば、「売却価格の3%+6万円」が発生(売買価格が400万円超の場合)し、その手数料に消費税が課税されることになります。

例えば増税前後において5,000万円でマイホームを売却する場合、仲介手数料に対する消費税額がいくら増えるかを確認してみます。

・増税前(消費税8%)に5,000万円で売却する場合の仲介手数料
 (5,000万円×3%+6万円)×1.08=1,684,800円

・増税後(消費税10%)に5,000万円で売却する場合の仲介手数料
 (5,000万円×3%+6万円)×1.10=1,716,000円

上記例では消費増税による仲介手数料の差額は31,200円となります。

次に、②の登記費用は具体的に次のようなものとなります。

  • 売り主から新しい買主に所有権が移ったことを証するための「所有権の移転」に掛かる登記費用
  • 売却と共に住宅ローンの残債を完済する場合の「抵当権の抹消」に掛かる登記費用

通常、こうした登記は司法書士に依頼することとなります。その司法書士に支払う報酬は消費税の課税対象となるため、消費増税の影響を受けることになります。

2 不動産売却時の「印紙税」とは

印紙税とは契約書や領収書などの文書に貼らなくてはならない収入印紙代のことです。売却が決まると「不動産売買契約書」の取り交わしが必要となり、その書面に記載された売買価格に応じて貼付する印紙税額が決められています。個人の不動産売買であれば、下記の金額内での取引となることが多いでしょう。

売買価格(※契約書に記載の額) 印紙税額
500万円超~1,000万円以下 5,000円
1,000万円超~5,000万円以下 10,000円
5,000万円超~1億円以下 30,000円
1億円超~5億円以下 60,000円

印紙税は金融機関などで振り込むのではなく、「収入印紙」を法務局などで購入し、それを契約書に貼って消印(印鑑等による割り印の押印)することで納税したこととなります。基本的に契約書を作成するのは売主側となりますが、買主も自らの分の契約書に印紙を貼って消印をする必要があります。

3 不動産売却時の「譲渡所得税」とは

土地や家屋などを売却して出た利益のことを「譲渡所得」といいます。譲渡所得には、(譲渡)所得税と(譲渡)住民税が課税されます。なお、譲渡所得は他の所得(例:サラリーマンなら給与所得、年金生活者なら雑所得等)と分離して所得税や住民税が課税されます。

投資マンションや賃貸アパートの保有に伴い発生する不動産所得については、上記の給与所得や雑所得などと合算して所得税や住民税の計算が行われます(=総合課税)。一方、不動産売却により得られる譲渡所得は原則として、他の所得と合算されることなく算出されるため「分離課税」と呼ばれています。

3-1 「譲渡所得」の計算方法

不動産の譲渡所得は次の計算式で求められます。

譲渡所得=①売却額−(②売却に関する費用+③物件取得時の費用)-④特別控除

不動産の譲渡所得は、簡単に言えば「買ったときの価格」よりも「高い価格で売れたとき」に、儲けに対して課税されるものです。ただ、その「儲け」は、売却額と購入額の単なる引き算をして算出するのではありません。

不動産の売買には物件の本体額に付随する様々な費用が購入時・売却時で発生するため、売却額から諸費用を差し引くことができます。これにより譲渡所得にかかる課税対象額を圧縮し、譲渡所得税を抑えることにつながります。上記計算式の項目を解説すると次のとおりです。

①売却額 新しい買い主に売却する物件本体の価格。収入金額。税金の計算上では「譲渡対価」とも言う
②売却に関する費用(税金の計算上では「譲渡費用」とも) 不動産会社に支払う仲介手数料
売買契約書に貼る印紙税
抵当権を抹消するための司法書士への報酬
所有権を買主に移転する為の登記費用
③物件取得時の費用(税金の計算上では「取得費」とも) 取得時の売買契約書に貼った印紙税
取得時に司法書士に支払った登記費用、登録免許税
取得時に発生した不動産取得税
土地の造成費用や埋め立て費用(発生していた場合)
④特別控除 3,000万円の特別控除の特例。詳細は後述

なお、上記の計算をして譲渡所得がマイナス(=赤字)となった場合には、譲渡に関する所得税も住民税も発生しません。

3-2 「建物の減価償却費」について

譲渡費用(売却時の諸費用)や取得費(物件取得時の費用)を少しでも多く積み上げれば、その分、課税の対象である譲渡所得を圧縮できるため節税につながります。なお費用計上については、物件を取得し売却するまでの保有期間に関する「減価償却費」に注意が必要です。

減価償却費とは、時間の経過による価値の目減り分を費用化することで生じる経費のことで、不動産の場合、土地については発生せず、建物部分についてのみ生じる費用となります(土地は、場所によっては時間の経過と共に価値が上昇するケースもありますが、一般的に時間の経過とともに価値が目減りするものではないと考えられています)。

なお、事業用や賃貸用の不動産とマイホームとでは減価償却費についての考え方が大きく異なるため、ここではマイホームの売却のケースについてのみ解説します。

マイホームは投資用や事業用の不動産とは異なり、価値の目減りが少ないとされています。そのため、減価償却費を算出する基準となる「法定耐用年数(マンションのような鉄筋コンクリート造:47年、木造住宅:22年)」を1.5倍し、耐用年数に応じた償却率を元に計算します。計算式にすると次のとおりです。

物件購入時の「建物部分」の取得費−減価償却費相当額

つまり、「建物」部分については、購入当初の額をそのまま経費計上できる訳ではないことに留意しておきましょう。減価償却費については考え方や計算式が複雑なため、不動産売却時には不動産会社や税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

3-3 「譲渡所得税」の求め方

物件を売却して生じた利益から一定の経費を差し引いて生じた金額(=譲渡所得)にかかる税金は「(譲渡)所得税」と「(譲渡)住民税」です。さらに現在、東日本大震災後に制定された「復興特別所得税」が平成49年まで別途課税されます。

  • 所得税=譲渡所得×所得税率
  • 住民税=譲渡所得×住民税率
  • 復興特別所得税=所得税×2.1%

上記の計算式によって出される3つの税金の合計額が課税されることになります。

3-4 売却物件の保有期間により変わる税率

売却する物件は、保有期間により「税率」が変わります。売却した年の1月1日時点において所有期間が5年以下のケースでは「短期譲渡所得」、5年以上のケースでは「長期譲渡所得」と分けられており、税率は次のとおり規定されています。

譲渡所得の区分 所得税率 住民税率
短期の譲渡所得 30% 9%
長期の譲渡所得 15% 5%

3-5 特別控除について

譲渡所得を算出する上で押さえておきたい節税ポイントが「特別控除」です。マイホーム(居住用の不動産)を売却・譲渡する場合には、前述した計算式で算出した譲渡所得から最終的に3,000万円を差し引くことができます。「3,000万円の特別控除の特例」と呼ばれる制度で、事業用や投資用の不動産にはない居住用不動産にのみ適用される特例です。

なお特例の適用を受けるためには次のような細かい条件があります。

  • 居住用の不動産の譲渡である
  • 居住しなくなった日以後、3年を経過する日の属する年の年末までの譲渡である
  • 譲渡する相手が配偶者や直系血族(祖父母・父母・子・孫)ではない
  • 譲渡する相手が譲渡者と生計を共にしている親族ではない
  • 譲渡する居住用財産の「所有期間」は問わないが、譲渡した年の前年または前々年にこの特例を受けていない

3,000万円控除できることから課税所得の圧縮効果は大きいと言えますが、特例を利用できるかどうかについては、ケースによって異なるため必ず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

なお、特例制度を利用した際は、確定申告をする必要があります。例えば、譲渡所得が2,500万円の場合、特例を適用すれば譲渡所得は無くなりますが、必ず確定申告が必要になるため、忘れないようにしましょう。

4 まとめ

今回は不動産のなかでも主にマイホームの売却にかかる税金を解説しました。不動産にまつわる税金は、売却時だけではなく購入時・所有中の期間・相続時など様々な場面で生じ、さらに内容も難解でルール改正も頻繁に行われます。

しかし自ら関心を持って調べたり専門家に相談したりすることで、節税につながる「税制上のメリット」を受けることができます。不動産売却を検討している方は、ぜひこの記事を参考に売却手続きが有利となるよう進めてみてください。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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