英国の移行金融評議会(Transition Finance Council)は8月18日、高排出企業の脱炭素化に必要な資金調達を促進するための移行金融ガイドライン案を発表した。同評議会はロンドン市と英国政府が共同で設立した組織で、今回のガイドラインは英国が移行金融のグローバルハブとなることを目指す取り組みの一環となる。9月19日まで、世界中の投資家や金融機関、規制当局からの意見を募集する。
移行金融とは、温室効果ガス排出量の多い企業が脱炭素化を進めるために必要な資金を提供する仕組みだ。ブルームバーグNEFによると、2024年には世界全体で2兆ドル以上が脱炭素化に投資されており、太陽光や風力といった成熟したグリーンセクターへの投資は順調に進んでいる。一方で、運輸、農業、セメントなどの重工業といった高排出セクターは、複雑な産業プロセスの脱炭素化と化石燃料への依存度削減のために多額の資金を必要としている。
今回発表されたガイドライン案は、プロジェクトや活動ではなく企業への資金提供に焦点を当て、柔軟性、比例性、実用性を重視した設計となっている。資産クラスや地域を問わず適用可能で、新興市場や途上国、さまざまなタイプの企業にも対応する。この自主的な枠組みは、共通の最低限の期待値を確立するための原則と要素を提案し、移行期にある企業や投資家、金融機関、保険会社、政府、国際機関が信頼できる移行金融を識別できるようにすることを目的としている。
移行金融評議会議長のアロク・シャルマ卿は「高排出セクターは、クリーンエネルギーへの転換が企業と政府の両方にとってますます重要になる中で、脱炭素化のための資金を緊急に必要としている」と述べ、ガイドラインが国際基準に整合し、グローバルベンチマークを設定する英国の移行金融市場の発展に不可欠であると強調した。同評議会の移行金融市場レビュー議長を務めるヴァネッサ・ハヴァード=ウィリアムズ氏は「現在、何が真の移行金融に該当するかの不確実性により、多くの資本が待機状態にある」と指摘し、ガイドラインが企業と投資家に一貫性をもたらす重要な一歩だと述べた。
今回の意見募集は第1段階として位置づけられ、11月には寄せられた意見を反映した第2次協議を実施する予定だ。最終版のガイドラインは2026年の発行を目指している。脱炭素社会への移行において、高排出企業の変革は避けて通れない課題であり、今回のガイドラインが国際的な移行金融の標準化に向けた重要な一歩となることが期待される。
【参照記事】UK Launches consultation on Transition Finance Guidelines
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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