なぜ節税目的の不動産投資は失敗するのか?

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外資系勤務の方や経営者の方、医師の方など高年収の方や、相続を考えている方のなかには、「不動線投資で節税しませんか?」という勧誘を不動産会社から受けた方も多いのではないでしょうか? この記事では不動産投資による節税の仕組みやその問題点、不動産投資をどう活用していくのが正解なのか、などのトピックについて詳しく解説をしていきたいと思います。

日本の税金は本当に高い!

高所得者の多くが抱える悩みは、どんなに頑張って稼いでも手元にお金が残らないというものです。所得税は毎年のように上がり続けており、高所得者であればあるほど割を食うという状況です。下表のように、課税所得が2000万円を超える方は、社会保険や厚生年金も合わせれば給与の半分以上を国に持って行かれていることになります。給与明細や確定申告を見て、「なぜこんなに税金を納めなければならないんだ」と愕然とした方も多いのではないでしょうか。

給与等の収入金額
(給与所得の源泉徴収票の支払金額)
給与所得控除額
1,800,000円以下 収入金額×40%
650,000円に満たない場合には650,000円
1,800,000円超 3,600,000円以下 収入金額×30%+180,000円
3,600,000円超 6,600,000円以下 収入金額×20%+540,000円
6,600,000円超 10,000,000円以下 収入金額×10%+1,200,000円
10,000,000円超 2,200,000円(上限)

国税庁「給与所得控除」

また、相続税に関しても、平成27年以降の税制改正で相続税についても改正が行われ、改正前は基礎控除5000万円+相続人数×1000万円だったところが、改正後は基礎控除3000万円+相続人数×600万円となり税率も上がるなど、改正前よりも相続税の課税範囲が増えました。この改正により、相続税の課税対象者は今までの倍以上になったと言われています。

【平成27年1月1日以後の場合】相続税の速算表
法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
3,000万円以下 15% 50万円
5,000万円以下 20% 200万円
1億円以下 30% 700万円
2億円以下 40% 1,700万円
3億円以下 45% 2,700万円
6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

国税庁「相続税の税率」

この高額納税者たちの深刻な悩みにつけ込もうとする不動産投資のセールスマンも少なくありません。「税金、高くありませんか? 節税にご興味ありませんか?」と、あの手この手ですり寄ってくる彼らを避け続けることができず、何度か話を聞くうちに良い気がしてきて、節税目的の不動産を購入してしまったというのもよく聞く話です。

ですが、節税目的の不動産投資は、本来の不動産投資のあり方からすると不健全ですので、後々大きな問題を抱えることになってしまうのです。

なぜ不動産投資が節税につながるのか?

そもそも、なぜ不動産投資を始めることが節税につながるのでしょうか? まず、所得税についてですが、不動産投資から得られる収益は、「家賃収入(インカムゲイン)」と「不動産の売却益(キャピタルゲイン)」の2つに分けることができます。このうち、不動産売却益のほうは、株式投資など他の投資と同様に「譲渡所得」という区分になり、「給与所得」とは別の税金(譲渡税/キャピタルゲイン税)が課せられますので、現状の所得税に対する節税にはつながりません。

節税に使われるのは、家賃収入(インカムゲイン)と賃貸経営に関わる費用の収支となります。こちらは雑所得という区分になりますので、年間の不動産投資の収支を給与所得に合算できるというわけです。つまり、不動産投資で節税を、という言葉の意味は、簡単に言えば「年間の賃貸経営を赤字にして、給与所得を減らしましょう」ということになります。

年間の賃貸経営を赤字にするのに用いられるのが、「減価償却費」という名目上の費用です。不動産は現物資産なので、年を経るごとに価値が下落していきます。この資産価値の目減りのスピードを、会計上で定めたものが減価償却費となります。たとえば、RC造のマンションであれば47年、木造アパートであれば22年という期間で資産価値がゼロ円になるように費用を計上していきますので、5000万円のマンションを購入すれば5000万円÷47年=毎年106.4万円を毎年費用として計上できることになり、この金額を給与所得から控除できることになります。

減価償却費は名目上の費用で、実際のお金が動くわけではないので、不動産投資を始めることで減価償却の節税効果の恩恵を受けて毎年数十万円のお金が手元に残ることになりますよ、というのが不動産投資による所得税の節税スキームです。

また、相続税に関しては、不動産は資産として評価される時に価値が圧縮されるので、現金で保有しているよりも課税額が少なくなりやすいという特徴があります。たとえば、不動産は土地が路線価の80%程度、建物はケースにもよりますがおよそ50%前後の評価となり、さらに投資用不動産(収益性不動産)の場合はさらに建物に対して30%の控除が受けられます。これにより、5,000万円で購入した不動産が3分の1から5分の1程度の相続評価額となることが多く、現金資産を投資用不動産に替えて相続税を低くするという節税スキームが成立するというわけです。

不動産投資による節税の落とし穴

ここまでの情報だけですと、不動産投資で所得税も相続税も節税できるんだからいいじゃないかということになりますが、もちろん気をつけなければいけない点がいくつもあります。

まず、減価償却費で所得を減少させることができるという話をご紹介しましたが、減価償却費の元々の意味は「資産価値の目減り額」を意味していますので、減価償却費を計上するたびに、不動産の価値は減少していくことになります。これがどこで問題になってくるかというと、不動産を売却するタイミングです。

不動産を売却する時は、本来の資産価値を上回る金額で売れた時に、その差額に譲渡所得が課せられます。この「本来の資産価値」というのが減価償却を行うたびに毎年下がっていくので、たとえば数年後に購入時の価格で売却ができたとしても、減価償却費として計上した金額分が譲渡所得となり、課税対象となってしまうわけです。

しかも、不動産投資は投機的な売買を抑制するために、購入してから5年以内の「短期譲渡」という売却に関しては、通常の譲渡税(20.315%)の倍に近い税率(39.63%)が課せられます。せっかく所得税の節税にと考えて、減価償却費で毎年の給与所得を圧縮したとしても、不動産購入から5年以内に売却をすると40%弱の短期譲渡税が発生するため、不動産の取得費用や固定資産税、売却手数料などを考慮すると最終的に大赤字になってしまうということが考えられます。

また、外資系企業や経営者の方など、毎年の所得が安定しない方にも、減価償却による節税スキームはおすすめできません。不動産投資の収支は給与所得との合算になりますので、もし所得の少ない年があると、その年は減価償却による恩恵を十分に受けられないためです。

相続税の節税については、現金を不動産に変えたいと考える方が多く、不動産の購入までがゴールとなってしまうケースが多いのですが、これは手段が目的化してしまっている典型例です。

相続税対策でよくあるのが、地方や郊外にアパートを建てましょうという話なのですが、賃貸需要のないエリアにアパートを建ててしまうと、その後に空室が発生してしまい、将来の負債になってしまう可能性があります。アパートを建てることで相続税対策にはなるかもしれませんが、相続後に節税以上の赤字を生み出す危険性があるため、どこにどんな不動産を買うかについては、慎重に検討をしたほうが良いでしょう。

不動産投資で赤字経営がおすすめできない2つの理由

所得税の節税メリットをもっと高めようと、減価償却費だけでなく、家賃収入とローン返済のキャッシュフロー収支までマイナスにさせている方もいらっしゃいますが、こちらも2つの点からおすすめできない節税スキームとなります。

1点目は、毎月のキャッシュフローが赤字なので、事故や病気、勤務先の倒産などで所得が急減した際に、生活を圧迫する恐れがあるという理由です。ローンは30年~35年という長期に渡って組みますが、その期間中にリーマンショックのような経済危機が起こる可能性もありますし、高ストレスな環境で残業も多い方は、普通の方よりも健康面でのリスクも抱えることになりがちです。そういったリスクマネジメントの観点から考えると、キャッシュフローがマイナスの状況にはしないほうが懸命です。

また、おすすめできない理由の2点目は、不動産投資は「不動産賃貸事業」であり、ローンという事業融資を受けるものだという点です。ローンを貸し出す金融機関は、不動産の評価額とともに不動産収支を非常に気にしていますので、赤字を出し続ける不動産資産を抱えている方の評価はどうしても低くなってしまいます。金融機関からの与信が低くなってしまうと、金利面でのマイナスや、不動産投資をいざ拡大しようとする際にも新規融資を受けにくくなるというデメリットがあるため、不動産投資を今後本格的に取り組んでみたいという方は、毎月の収支をマイナスにすることは避けたほうがよいでしょう。

高年収・高属性は、不動産投資と非常に相性が良い

ここまで節税目的での不動産投資はおすすめできないということをお話してきましたが、高所得者の方と不動産投資自体は非常に相性がよいというお話もしておきたいと思います。

不動産投資では、職業や年収、資産状況など「属性」が良いほど、金融機関や不動産投資会社からの評価が高くなり、大きな融資枠や金利優遇、良い物件の紹介などに結びつきやすくなります。

それを踏まえると、節税目的で不動産投資を始めるのではなく、本業とは別の収入源をつくったり、将来のための安定的な収益源を確保するために不動産投資を始めるというスタンスが良いでしょう。しかも、高所得の方であれば、不動産投資で多少マイナスが出たとしても、給与所得との合算で一般の方よりも金銭的に被るダメージを少なくできるというメリットがあります。色々と試行錯誤をしながら、自分に合った投資スタイルを探っていくという形であれば、興味をもって楽しんで取り組んでいけるかと思います。

不動産投資は、節税「が」できるから始めるのではなく、節税「も」できるからお得だというくらいの感覚で気軽に始めてみるとよいのではないでしょうか。

(HEDGE GUIDE編集部)

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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