中古マンション投資で成功するには毎年の収支の安定化も大切ですが、投資の出口である売却についても売り時を検討しておく必要があります。例えば、中古マンションを安く買ってできるだけ高く売り抜けるといった方法も考えなくてはなりません。
今回は中古マンション投資でキャピタルゲインを狙う方法を解説します。買い時・売り時のポイント、物件や不動産会社の選定や相場の把握など安く買って高く売るためのコツを説明していきます。
目次
- 中古マンションの「買い時」と「売り時」の把握
1-1.中古マンションを取り巻く経済環境
1-2.融資環境と築年数
1-3.マンションの資産価値の下落と修繕時期 - 物件や不動産会社の選定
2-1.物件の選定
2-2.不動産会社の選定 - 相場の把握
3-1.過去の販売データの確認
3-2.複数の不動産売却会社から提案を受けて相場を把握する
3-3.売出価格の確認 - 売却活動の確認
4-1.販売戦略を細かく確認する
4-2.積極的に内覧対応する - 税金対策
5-1.マンション売却にかかる税金
5-2.マンション取得にかかる税金
1 中古マンションの「買い時」と「売り時」の把握
中古マンションの買い時や売り時は、不動産市場はもちろんのこと金融市場などを含む経済環境によって影響されるため常に変化します。様々な経済環境要因に対してアンテナを張り、動向を見定めながら買い時や売り時を探る必要があり、次の3つのポイントが参考になります
- 経済環境
- 融資環境と築年数
- 資産価値の下落と修繕時期
それぞれを見ていきましょう。
1-1 中古マンションを取り巻く経済環境
経済環境は中古マンションの買い時を左右する最も大きな要素の一つです。経済状況を含む不動産市況の動向を考えて買い時を決定しなければなりません。
中古マンションの市場価格は2012年~2014年頃ではほぼ横ばいでしたが、2015年~2017年に上昇へと転じ2018年も緩やかな上昇を持続しています。
国内景気の上昇を反映したものといえますが、首都圏では東京オリンピック関連工事や都市再開発などによる建築費の高騰も影響しているでしょう。
経済状況が芳しくない状況から好転へと向かい出せば中古マンション価格も上昇へ転じやすいため、好転の兆しが見える時点が買い時の目安となりえます。また、東京オリンピックや都市再開発などの巨大プロジェクトは不動産市場に好影響を与えるため、そのようなプロジェクトの発表直後も買い時の目安になります。
マンションの売り時はいつ?
一方、売り時も経済環境に大きな影響を受けます。マンション価格が大きく下落にする前に売り抜けることも検討したほうが良いでしょう。
中古マンション価格は2018年時点では高止まりしていますが、新築マンションのほうでは販売での成約率の低下も見られるようになってきました。
オリンピック関連需要が一段落しつつある中、2019年10月からの消費税増税が間近に迫っていることから今後不動産価格は下落へシフトし、「今が売り時」と見る投資家も少なくありません。このように売り時を探るには全般的な景気動向を予想しつつ、不動産価格に影響する経済や法律など様々な要因を把握・分析し売るタイミングを見極めることが重要です。
1-2 融資環境と築年数
マンション投資にはまとまった資金が必要となるため、金融機関の融資姿勢も買い時に大きく影響します。例えば、2012年の安倍政権の誕生以来、日銀が大規模な金融緩和を開始し、2016年には「マイナス金利付き量的・質的金融緩和」が導入され、融資金利はかつてないほどの低金利となりました。それを背景に金融機関は不動産投資への融資に積極的だったため、サラリーマンの方の間で不動産投資ブームが沸き、融資を受けやすい状況となっていました。
ただ現在はスルガ銀行の不正融資に伴い融資が厳しくなり始めましたが、それでもまだ多額のお金を低い金利で借りられる環境にあるといえるでしょう。
逆に景気が悪化したり、日銀の金融緩和が終息へと向かったりすれば、金利は上昇へと向かい、金融機関の融資姿勢が厳しくなる恐れがあります。そうした兆候を見極めて投資を決意することが重要です。
売り時は築年数で判断
売り時では中古マンションの築年数による価格変動を考慮して売却時期を探ることが重要です。
例えば下記表によると、「築16~20年」と「築21~25年」との価格差は14.72万円/㎡と後者のほうが築年数の単価が低くなっています。
例えば、首都圏の中古マンションの築年数別の成約価格を見ると、下表のように築年数の増加による下落が確認できます。
築年数 | 成約単価(万円/㎡) |
築0~5年 | 76.97 |
築6~10年 | 65.53 |
築11~15年 | 58.65 |
築16~20年 | 49.67 |
築21~25年 | 34.95 |
(参考:東日本不動産流通機構「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2017年)」)
つまり、このデータからは「築16~20年」の中古物件を購入して「築21~25年」の築年数になってから売却した場合、約30%引きで成約する可能性が高いということが見て取れます。そのため売り時では築年数による成約価格を十分に考慮して売るタイミングを計る必要があり、購入時点でその売却時期を計画しておく必要があるでしょう。
1-3 マンションの資産価値の下落と修繕時期
一般的にマンション価格は築年数により下落するため、下落率を考慮して投資することが重要です。上記表の「築0~5年」と「築6~10年」の比較では11.44万円/㎡の差、「築6~10年」と「築11~15年」の比較では6.88万円/㎡の差があるなど、築年数の期間によって下落の幅に違いが見られます。このような価格差を購入時期に確認しておくと、下落率が大きくなる築年数の物件は避けるなどの対策をとることが可能になります。
大規模修繕時期の考慮
売り時では大規模修繕の時期も考慮したほうが良いでしょう。RC構造などのマンションでも15年程度おきに大規模修繕が不可欠で、1棟所有のマンションで実施すれば多額の費用が必要になります。区分所有の場合でも大規模修繕時期に近づくと毎月の修繕積立金の値上げや不足分の別途徴収などがあり、大きな負担を強いられることもあります。
そのためマンションを購入する前に大規模修繕が必要になる時期を把握し、「できるだけ予定時期が先になっている物件を選ぶ」「大規模修繕の時期よりも少し前の時期に売り抜く」などの方法を検討すると良いでしょう。
2 物件と不動産会社の選定
安く買って高く売るためには条件の良い物件と、売却活動に誠実な不動産会社の選定が重要になります。
2-1 物件の選定
中古マンションを高く売るには物件自体の価値が問われます。「都心までの通勤時間が短い」「最寄駅まで徒歩10分以内」「コンビニ等が近い」「地域の人口が増加している」「都市再開発の計画がある」といった立地の良い物件なら収益性の維持が見込めるため、高く売ることも期待できます。
逆に、「最寄駅まで徒歩15分以上」「最寄駅では都心に直通の電車が停車しない」「地域の人口が減少している」「環境汚染につながる工場等が近い」などの立地の物件では収益性の低下が危惧されます。
収益性の低下はマンション価格に大きく反映されるため、立地状況をよく検討し、長期的に高い販売価格が維持できそうな物件を選ばなくてはなりません。湾岸エリアの好立地の物件、デザイン性に優れた物件など、経済環境に左右されにくい物件は資産価格の維持が期待できます
2-2 不動産会社の選定
物件売却では一般的に不動産会社を介しますが、納得できる価格で売るには不動産会社の選定が重要になります。
物件売却では一般的に「価格査定→不動産会社との媒介契約→売出計画の立案→売出の募集→現地見学会・内覧→売却の締結」といった手順を踏むことになります。
ただし媒介手数料の収入を優先する不動産会社は、高めの価格査定で売主を呼び込み、販売では早く売れるように大幅な値下げを提案するケースが少なくありません。そのため、売却契約までのプロセスを誠実に対応してくれる不動産会社を選ばないと、予想外に安い価格で売却することになりかねません。
適切な事業者を選ぶためには、査定価格の適切さ、販売戦略の妥当性に加え、営業担当者の誠実さ・熱心さなどの姿勢の確認が不可欠です。特に販売戦略について具体的な内容を確認し、他社と比較して評価することが望まれます。
3 相場の把握
中古マンションを適切な価格で売却するためには過去の販売実績や現在の販売価格などを参考に売却価格を設定しましょう。
3-1 過去の販売データの確認
国土交通省のホームページでは実際に取引された販売データや標準地・基準地の価格が確認できます。土地総合情報システム「不動産の取引価格情報提供制度」では、検索画面の左側のサイドメニュー欄の時期、種類、地域を選べば、中古マンションの取引データなどの情報が簡単に検索できます。
例えば、「時期:平成30年第2四半期」「種類:中古マンション等」「地域:東京都港区芝浦(地図上で検索可)」の条件で検索すると、88件の取引価格情報を確認することができます(平成30年12月4日現在)。実際の販売データをもとにした情報であるため、購入価格や売却価格を設定する上で参考になるため、ぜひ利用してみましょう。
3-2.複数の不動産売却会社から提案を受けて相場を把握する
過去のマンション取引価格は、あくまで参考価格となります。通りが一本違うだけで価格が大きく異なったり、建物の管理状況や間取りなどによっても実際に売却できる価格は大きく異なってくるためです。
現在の売却価格の相場を把握するもう一つの方法は、不動産会社に自分の物件の売却価格を直接聞いてみることです。ただ、複数の不動産会社に査定を依頼するには、資料を準備したり、物件を案内したりと時間や手間暇がかかってしまいます。不動産会社によって必要な書類が違ったりすることがあり、揃えるだけでも数週間かかる可能性もあります。
そのような手間をかけずに売却の相場を知るのに有効なのが、不動産の一括査定サイトを利用するという方法です。
一括査定サイトの仕組みは、簡単な物件情報を入力するとその条件にもとづいて複数の不動産会社が簡易査定してくれるものです。一括査定サイトの中でも代表的なサービスとして、住友不動産販売や三井不動産リアルティ、三菱地所の住まいリレー(三菱地所ハウスネット)など不動産仲介業を営む大手6社によって共同運営されているすまいバリューなどがあります。
一度の入力で、最大6社からの提案を受けることができ、査定価格の高い会社や逆に低い会社にその理由や販売方針などをたずねることで、物件の強み・弱みを把握した上で、具体的な売却戦略や売却のパートナーを探すことができるというメリットがあります。査定をしたら必ず売却を依頼しなければいけないわけではありませんので、提案会社の中に気に入った不動産会社があれば、訪問査定をしてもらうというイメージで利用してみると良いでしょう。
3-3.売出価格の確認
物件を売り出す場合、売出価格の設定が妥当な範囲でないと買手がつかず、逆に安く売ってしまうことになるため、売出価格の相場の確認が重要になります。具体的には、売り出す際に相場よりも3割以上高めに設定すると内覧の申込みや問い合わせが一気に少なくなるため、高くても相場の2割増し程度に抑えるのがおすすめです。
一方、売出価格を相場と同等以下に設定すると問い合わせ等が増え、早期の売却に繋がりやすくなります。こうした売出価格を確認したい場合は、不動産会社のサイトの販売価格情報を参考にすると良いでしょう。
4 売却活動の確認
物件をできるだけ高く売却するには、不動産会社に任せっきりにせず、事業者が立てた販売戦略に売主も積極的に関与したほうがいい場合もあります。
4-1 販売戦略を細かく確認
不動産会社の売却活動について一切知識がないと足元を見られることがあります。そのため買手の募集から契約に至る計画(特にプロモーション活動の内容)について、内容が妥当かどうかを確認しましょう。具体的には事業者の売出価格案の根拠や妥当性、一定期間で買手が付かない場合の価格の変更方針などを媒介契約前にチェックします。
このほか、「レインズへの登録」「チラシの配布(対象地域、量や回数)」「WEBサイトでの広告内容や広告量」「メール等での直接的な集客」「現地説明会の開催」「内覧対応」などの方法も確認しておくと良いでしょう。販促活動が実際に行われているかを確認し、あまり効果が見られない場合には具体的な改善策が実施されるように、担当者に提案しましょう。
4-2 積極的に内覧対応する
実際に物件を見てみたいという内覧希望者への対応を積極的に行うと満足できる売却につなげられます。内覧対応の重要ポイントは、「物件の手入れを適切に行うこと」「所有者の印象を良くすること」の2つです。
新しい物件でも手入れが行き届いていない場合、汚れ・カビ・傷が目立ち、物件の価値が損なわれます。そのため小まめに清掃や補修をし、内覧前にはハウスクリーニングを行うのもおすすめです。
また、物件の手入れが良くても売手の印象が悪いと買手の購入意欲が削がれるため、好意的な対応を心掛ける必要があります。質問されたことには誠意をもって簡潔に応えることが望ましいでしょう。物件や周辺環境の良い点や悪い点を適切に応えるとともに、悪い点を克服するための方法やコツなどを紹介すると信頼を得やすくなります。
5 税金の考慮
投資物件の売買では税金も発生するため、購入・売却に関する税金知識を備えておくことが大切です。
5-1 マンション売却にかかる税金
売却に関わる税金には次のようなものがあります。
- 売買契約書に添付する印紙の印紙税
- 抵当権の抹消に伴う登録免許税
- 売却益が出る場合の譲渡所得税・住民税
- 建物部分の売却額に対する消費税(免税措置あり、個人は不要)
特に売却益が出る場合は注意が必要です。物件の所有期間が「5年超」と「5年以下」のケースでは課税される税率が大きく異なります。
「物件の所有期間が5年超」の場合、長期譲渡所得として住民税を含めて20.315%、「5年以下」の場合は短期譲渡所得として住民税を含めて39.63%(※2018年12月時点)となります。経済状況や不動産市況を見極めつつ、所有物件が5年を経過する時期で適切な売却時期を探るといった方法が重要となるでしょう。
5-2 マンション取得にかかる税金
投資用のマンションを購入する場合に必要となる税金等は次の通りです。
- 不動産に係る不動産取得税
- 売買契約書での印紙税
- 所有権移転登記等での登録免許税
- 仲介等での消費税
- 購入後毎年納付する固定資産税・都市計画税
購入初年度ではこのような税金等の費用がマンション購入価格の7%~10%程度かかるため、年間収支が赤字に陥ることもあり、資金繰りに注意が必要です。
また、固定資産税等の場合は毎年徴収されるため、毎年の収支への影響が大きくなります。特に土地の固定資産税評価額は、同じ地域でも道を1本隔てるだけで大きな違いが生じる区域もあるため、割安な物件を探すようにしましょう。
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