マンション経営では、アパート経営のようにアパートを1棟丸ごと購入するという選択肢だけではなく、マンションを1室だけ購入して運用することもできるため、初期投資を抑えることができます。しかし、1室しか所有していない場合、その部屋に入居者がいなければ家賃収入が全く入らないというリスクを抱えることにもなります。
今回は、マンション経営を行うにあたって、どのような点に注意をして物件選びや購入をするべきか、成功と失敗の分かれ目になるポイントについて詳しく解説していきたいと思います。
目次
- マンション経営は手軽に始められる
- 物件選びを失敗する
2-1.利便性の悪いマンションを選んでしまう
2-2.利回りだけでマンションを選んでしまう
2-3.需要のない間取りを選んでしまう
2-4.管理が疎かなマンションを選んでしまう - 節税効果を期待しすぎる
- 自己資金比率を低くしてしまう
- まとめ
1 マンション経営は手軽に始められる
不動産投資は、戸建て経営、アパート経営、マンション経営の大きく3つに分けられます。アパート経営は、アパートを1棟丸ごと購入して運用します。そのため、初期投資が大きくなるというデメリットはあるものの、1部屋空室になっても他の部屋で空室分を補うことができるのがメリットです。
戸建て経営とアパート経営は、それぞれ1軒および1室を購入して運用します。どちらもアパート経営より初期投資を抑えられるというメリットがあるものの、もし空室が生じた場合には家賃収入が0になってしまうというのがデメリットです。
そのため、マンション経営は、比較的手軽に始められますが、入居者が現れないと購入時に契約したローン返済だけが残ることになってしまうため、アパート経営よりも物件選びや運用に対して慎重になる必要があります。マンション経営を行うにあたって成功と失敗の分かれ目になるポイントについて見ていきましょう。
2 物件選びを失敗する
マンション経営に限らず、アパート経営、戸建て経営、全ての不動産投資の失敗に共通して言えることは、投資する物件選びを誤ってしまうことによる失敗が多いということです。
特に物件選びで失敗しやすいポイントとして以下の4つが挙げられます。
- 利便性の悪いマンションを選んでしまう
- 利回りだけでマンションを選んでしまう
- 需要のない間取りを選んでしまう
- 管理が疎かなマンションを選んでしまう
それぞれの失敗について詳しく見ていきましょう。
2-1 利便性の悪いマンションを選んでしまう
マンションは戸建て住宅やアパートよりも利便性の高い場所に建てられていることが多いです。しかし、マンション経営を行う人の中には「利便性が高い=初期投資が大きくなる」という理由から少しでも初期投資を抑えるために、駅から少し離れた物件を選ぶ人もいるかもしれません。
都心で需要が高く駅チカに空室がないような場合には、少し離れたマンションでも需要があるかもしれません。しかし、基本的に駅から離れるにつれて需要が低くなっていくため、利便性の悪いマンションを購入すると空室のリスクが高くなりやすいと言えるでしょう。
では、駅からのアクセスは良いものの、乗降者数の多い主要な駅ではなかった場合にはどうでしょうか?周辺環境を比べても、主要な駅周辺の方がスーパーや病院などの生活環境が整っていることが多く需要が高くなります。
そのため、物件が駅から近いだけでなく、駅自体のアクセスの良さや、駅周辺の環境が整っているマンションを選ぶのが失敗しないポイントと言えるでしょう。
2-2 利回りだけでマンションを選んでしまう
マンションを建てるのに必要な費用は、土地の購入費用と建物の建設費用の2種類です。建物の建設費用は地域差がほとんどありませんが、土地の購入費用は地域差があり都心と郊外では都心の方が大きくなります。
もちろん、都心と郊外では都心の方の家賃が高く設定されていますが、物件価格の上昇幅ほどには家賃は高くなりません。そのため、都心でマンション経営を行うよりも郊外のマンション経営を行うほうが利回りは高くなります。
しかし、いくら利回りが高くても空室が発生してしまっては元も子もありません。郊外エリアの利回りが高いのは、それだけ空室のリスクが高いからです。日本はすでに人口減少社会に突入していますので、将来的に入居者の減少する郊外でマンション経営を行うというのは、ハイリスクな投資手法という認識を持つことが大切です。
短期から中期での不動産投資を検討している場合であれば、郊外も選択肢に入ってくるかと思いますが、20年~30年の長期投資を検討している場合は、都心中心で物件を探すほうが良いでしょう。
2-3 需要のない間取りを選んでしまう
「駅から近いマンションを見つけた」と喜んでいても、そのマンションの間取りが限られた人達にしか需要がないような場合にはどうでしょうか?その地域で同条件のマンションをたまたま探していた人と出会えた場合には問題ありませんが、その人が退去してしまうと次の入居者が決まるまでに時間がかかってしまう可能性があります。
マンション経営で成功するかどうかは、利便性も含めて需要が高いマンションかどうかにかかっています。そのため、「単身赴任が多いエリアでは1Rから2LDK」「ファミリー層が多いエリアでは3LDKから4LDK」などのように、各エリアの需要に合わせたマンション選びを行うことが失敗しないポイントと言えるでしょう。
2-4 管理が疎かなマンションを選んでしまう
「マンションは管理で買え」という言葉を聞いたことがないでしょうか?インターネットなどでマンション購入について調べてみると、マンションと管理を結び付けたものがよく見られます。
マンションは、居室などの専有部分の管理は入居者が自ら行いますが、廊下やエントランスなどの共用部分の管理は入居者全員で組織する管理組合が行います。しかし、マンションの知識が少ない入居者たちでマンションの管理を行うのは不可能であるため、マンションの管理会社に依頼するのが一般的です。
マンションの管理会社は、日常の清掃や不具合が生じた場合の修繕などを行います。しかし、管理会社の管理が疎かな場合は、汚れが目立ったり劣化が激しかったりするため、入居者の募集に影響が生じます。
また、マンションの管理会社の管理は、建物の管理だけでなく入居者間のトラブルも範囲内です。騒音問題、ベランダでの喫煙問題などに対するマンションの管理会社の対策が疎かな場合にも入居者の募集に影響が生じます。運用を行うマンションを選ぶ際はマンションの管理が行き届いているかどうかも重要なポイントと言えるでしょう。
3 節税効果を期待しすぎる
マンション経営を含めた不動産投資全般は、現金として相続するよりも節税効果があると言われています。相続税を計算する際は土地の評価額と建物の評価額に分けて行うため、マンションごとに評価額は異なりますが、節税効果の高い物件だと取得時の3割程度の評価になることもあります。
この場合、現金として1億円相続すると1億円に相続税が課されるのに対して、マンションを1億円で相続しても約3,000万円の現金を相続したのと同じ税金額で済むということで、節税につながるというものです。
しかし、この節税効果を期待してマンション経営を始めたとしても、節税できる金額以上にマンションの価格が下がると節税の意味がありません。節税ばかりを意識しすぎると、相続の際にマンションが「負の遺産」になってしまう恐れがあるため注意が必要です。
不動産投資の基本は「物件を入居者に貸して賃料を得ること」ですので、節税のようなテクニカルな側面ばかりにとらわれすぎず、長きにわたって入居者から選ばれる物件を見極めていくことが大切です。
4 自己資金比率を低くしてしまう
アパート経営と比べると、マンション経営は初期投資を抑えることができますが、それでも数千万円の資金が必要です。自己資金では足りないことから、不動産ローンを利用するのが一般的ですが、購入資金に対する自己資金比率を間違ってしまうと、後の返済が厳しくなるので注意が必要です。
例えば、購入価格が3,000万円のマンションで自己資金を1,000万円でローン2,000万円、自己資金を2,000万円でローン1,000万円を拠出したとします。金利を2%、20年返済とすると前者は毎月の返済額が約10万円ですが、後者は約5万円と5万円の差が生じます。
自己資金比率を低くした場合には、手元にある程度の資金を残すことができますが、毎月の返済額が大きくなってしまいます。毎月の返済額が大きくなるということは、それだけ空室時のリスクを高めてしまうことになるため、余裕資金の範囲内でなるべく借入金額を減らすようにしましょう。
5 まとめ
マンション経営は、不動産ローンを利用できる、相続税対策につながる、他の不動産投資と比べて初期投資を抑えることができるといった様々なメリットが挙げられます。しかし、1室しか運用していない場合、空室が生じてしまった場合は家賃収入が0になり、ローンの返済や固定資産税といった支出ばかりになってしまうため注意が必要です。
そのため、マンション経営を行う場合には「どのような目的でマンション経営を行うのか」「どのようなマンションを購入して運用するのか」を事前に明確にすることが重要です。
相続対策のためにマンション経営を行う場合には、資産価値が下がりにくいマンションを、給与所得の足しにしたり老後の生活資金の足しにしたりするためにマンション経営を行う場合には、都心のような需要が高く長期的な家賃収入が確保できるエリアのマンションを選ぶようにしましょう。
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矢野翔一
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