不動産投資の確定申告、税理士に依頼する費用は?メリット・デメリットも

不動産所得が20万円以下の場合、確定申告をする必要はありません。しかし、確定申告をしないと抑えられた不動産所得税を多く支払うことになったり、間違えた申告をしてしまうとペナルティが課される可能性があります。

このように、不動産投資の確定申告には税務リスクがあります。一回の確定申告におけるリスクは小さくても、不動産投資は長期間にわたって続けていく間に、大きなリスクとなって顕在化することもあります。

税務リスクを軽減するには専門家である税理士に確定申告を依頼したいところですが、費用面が気になっている方も多いと思います。

この記事では、不動産投資の確定申告について、税理士に依頼する費用、税理士に依頼するメリット・デメリットについて解説します。なお、この記事は法人向けではなく、基本的に個人で不動産投資をおこなう場合を前提に解説しています。

※記事内の税制内容は2021年8月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。

目次

  1. 不動産投資ではほとんどのケースで確定申告が必要
    1-1.不動産所得の所得税・住民税を申告・納付する必要がある
    1-2.適正な確定申告をしないとペナルティがある
  2. 不動産投資の確定申告を税理士に依頼するメリット
    2-1.正確な確定申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
    2-2.税額を適正に軽減する不動産所得計算ができる
    2-3.自分で確定申告をする手間を省き、本業に集中できる
    2-4.不動産投資の運営や相続対策などについてもアドバイスを受けることができる
  3. 不動産投資の確定申告を税理士に依頼するデメリット
    3-1.税理士に対して支払う費用がかかる
    3-2.確定申告についてのノウハウが身に付きづらい
    3-3.不動産の税務に詳しくない税理士もいる
  4. 不動産売却の確定申告を税理士に依頼する費用
    4-1.売却金額に応じて基本費用が変わる
    4-2.追加費用がかかる場合
  5. 複数の税理士に見積もりを依頼して費用を比較する
  6. まとめ

1.不動産投資ではほとんどのケースで確定申告が必要

不動産投資では、家賃収入等の利益がある場合、所得税・住民税の確定申告と納付をする必要が生じてきます。

赤字であっても、確定申告をすることで、税金の軽減などの優遇措置を受けられることがあり、確定申告をしないと無申告加算税などのペナルティを課せられる可能性があります。

1-1.不動産所得の所得税・住民税を申告・納付する必要がある

サラリーマンの方などが副業で不動産投資をおこなっている場合、不動産所得が20万円を超えていると翌年3月15日までに所得税の確定申告をして、納付する必要があります。

不動産所得には住民税も課せられますが、住民税は不動産所得が生じていれば、申告・納付が必要といえます。住民税は、所得税の確定申告に基づいて、各市区町村が翌年6月頃に決定し、賦課してきます。所得税の確定申告をしていない場合、住民税の確定申告が必要になります。

また、不動産投資を専業でおこなっている場合は、不動産所得が基礎控除である48万円を超えていれば、所得税の確定申告が必要といえるでしょう。

不動産所得とは、家賃収入等で生じた利益のことであり、総収入金額-必要経費の算式によって計算されます。

不動産所得が赤字であっても、給与所得などの他の総合課税の所得と損益通算することによって、源泉徴収された所得税の還付を受けられる場合があります。このように、損益通算による税金軽減などの税制の優遇措置を受けたい場合にも確定申告をする必要があります。

1-2.適正な確定申告をしないと、ペナルティがある

確定申告をしないと、無申告加算税などのペナルティが課せられる可能性があります。

無申告加算税の額は、本来の納税額の15%~20%となっており、納期限から申告書提出日までの延滞税が課されます。延滞税の税率は、年ごとに変わる特例基準割合によって決定されます。

また、税法の法令に基づいた適正な確定申告をしていなかったことなどにより、納めた税金が少な過ぎた場合、後日、税務署から指摘を受けることがあります。そのような場合、新たに納める税金に加えて、その税額の10%~15%相当額の過少申告加算税がかかります。

2.不動産投資の確定申告を税理士に依頼するメリット

不動産投資の確定申告を税理士に依頼するメリットとしては、次のような点が挙げられます。

  • 正確な確定申告をおこない、税務リスクを減らすことができる
  • 税額を適正に軽減する不動産所得計算ができる
  • 自分で確定申告をする手間を省き、本業に集中できる
  • 不動産投資の運営や相続などについてもアドバイスを受けることができる

2-1.正確な確定申告をおこない、税務リスクを減らすことができる

税理士は税務の専門家ですので、税法の法令に基づいた確定申告をおこなうことができます。

また、確定申告業務は、単なる書類の作成代行ではなく、納税者に代わって税務署に主張を伝えるという税務代理業務であるため、税務署から問い合わせなどがあった場合、税理士に対応してもらうことが可能です。万一税務調査が入った場合でも、確定申告を税理士に依頼していれば、対応を依頼しやすいでしょう。

このように、税理士に依頼することで確定申告に関連する税務リスクを減らすことができます。

2-2.税額を適正に軽減する不動産所得計算ができる

不動産投資の確定申告では、所得税の申告書を作成する前提として、不動産所得を計算する(決算をおこなう)必要があります。

不動産所得を計算する際に、税法の法令に基づいて必要経費を漏れなく計上し、青色申告の特別控除などを利用することによって税金を軽減できる場合があります。

ただし、必要経費計上にかかる税法の取扱いには、減価償却費の計算方法や家事関連費の按分方法など、税法の専門知識が必要となるケースも多いといえます。

また、青色申告の特典を受けるには、不動産所得の計算において、貸借対照表、損益計算書を作成できるような正規の簿記による帳簿作成、あるいは一定の簡易的な帳簿を作成する必要があります。これらの帳簿作成には、簿記や会計の専門知識が必要となります。

このように、法令に基づいて必要経費を余すことなく計上し、適正に税金を軽減するためには、不動産所得の計算から税理士に依頼した方がよいといえます。

2-3.自分で確定申告をする手間を省き、本業に集中できる

不動産売却の確定申告を一般人が初めておこなうには、調べなければならない事項や面倒な手続きもあり、申告期限までにすべての作業を間違いなく完了させるためにある程度の労力が必要になるでしょう。

確定申告のために労力をかけると、本業に影響が出てくる可能性もあり、税理士に確定申告を依頼することでそのような不安をなくし、本業に集中できるというメリットもあります。

2-4.不動産投資の運営や相続対策などについてもアドバイスを受けることができる

不動産投資を専門とする税理士であれば、不動産投資の運営についてのコンサルティングや収益不動産の相続対策などを業務としておこなっている場合があります。

そのような税理士に不動産投資の確定申告を依頼し、顧問契約を締結することで、不動産投資に関する会計、税務だけでなく、不動産投資の運営や相続対策について日常的にアドバイスをもらうことができるようになります。

税務リスクに適切な対応をするには、税務に関する届出書の提出など期限があるケースもあり、税理士との顧問契約は税務リスクの軽減にも役立ちます。また、不動産投資の運営や相続対策は税務と密接に関係しており、税務の専門家の視点から、長期的、総合的なアドバイスを受けることができるのもメリットといえるでしょう。

3.不動産投資の確定申告を税理士に依頼するデメリット

不動産投資の確定申告を税理士に依頼するデメリットとしては、費用がかかってしまうこと、ノウハウが身に付かないこと、が挙げられます。

3-1.税理士に対して支払う費用がかかる

不動産投資の確定申告を税理士に依頼すると、税理士に対して報酬を支払う必要があります。また、税理士との打ち合わせや資料収集など、最低限自分でおこなう作業もあることもデメリットでしょう。

不動産投資の確定申告を税理士に依頼することで軽減できる税務リスクや、税務と密接に結びついた運営や相続対策などの効果は、規模が大きくなったり、運営が長期化したりするほど大きくなる傾向があります。費用対効果を見極めて依頼を検討してみましょう。

3-2.確定申告についてのノウハウが身に付きづらい

不動産投資の確定申告を税理士に依頼した場合、確定申告や税務についてのノウハウは身に付きづらいと言えます。

不動産投資の運営と税務は密接に結びついています。収益不動産の売却や修繕、相続などの運営についての判断は、投資家自身がおこなう必要があります。投資家が税務についての知識も身に付けることで、より投資目的に沿った運営判断が可能になるケースも少なくありません。

税理士に依頼する場合でも、積極的に税務上の法律やルールについて質問を行うなどして、投資家が自らノウハウを身につけられるよう工夫をすることも大切です。

3-3.不動産の税務に詳しくない税理士もいる

税法の解釈は多岐に渡り、事業内容によって計上できる売上や経費の区分が大きく変わることも珍しくありません。また、不動産に関連した特例も数多くあり、これに対して適切に適用していくためには、不動産投資に強い税理士へ相談することも重要なポイントとなります。

ただし、税理士によっては不動産関連の税務に詳しくなく、最低限の申告しかできないケースもあります。積極的にアドバイスを受けたい場合、不動産税務に強い税理士を探す必要がある点はデメリットと言えるでしょう。

4.不動産投資の確定申告を税理士に依頼する費用

不動産投資の確定申告を税理士に依頼する費用は、家賃収入に応じた料金体系となっている事務所が多いでしょう。また、帳簿作成を依頼するかどうか、個人か法人かでも料金は異なります。

4-1.確定申告の依頼費用

不動産投資の確定申告を依頼する際の費用相場をみていきます。

個人、法人の場合で異なります。帳簿作成(記帳代行)を自分でおこなうか、確定申告と合わせて税理士に依頼するかでも費用が異なります。

以下で紹介するのはあくまでも相場の目安であり、料金体系は税理士事務所によって様々ですので、実際に問い合わせて確認するようにしましょう。

個人の場合

決算+確定申告のみ依頼する場合と、それに加えて決算の下となる不動産所得の総収入金額、必要経費を計算する帳簿作成(記帳代行)も合わせて依頼する場合とで、料金を分けている税理士事務所が多いでしょう。

上記を踏まえておおまかに、以下の金額が相場となります。貸室数や不動産収入が増加するごとに増額する料金体系となっている場合が多いといえます。

  • 決算+確定申告のみ依頼する場合:5万円~15万円
  • 決算+確定申告と帳簿作成を依頼する場合:10万円~25万円

法人の場合

個人と同様、決算+確定申告のみ依頼する場合と、それに加えて帳簿作成も合わせて依頼する場合とで、料金を分けている事務所が多いでしょう。

法人の場合は個人より料金は高くなる傾向があり、不動産収入が増加するごとに増額する料金体系となっている場合が多いといえます。上記を踏まえておおまかに、以下の金額が相場となります。

  • 決算+確定申告のみ依頼する場合:20万円~35万円
  • 決算+確定申告と帳簿作成を依頼する場合:30万円~50万円

4-2.顧問料

不動産投資の規模が大きくなってきたり、法人を設立して不動産投資をおこなっていたりする場合は、帳簿作成の手間が増え、確定申告や税金に関連する手続きが複雑になって来ます。

税務関係の手続きには期限があることが多く、適切な判断をタイムリーに処理していくことが求められます。税務リスクを減らすためにも、顧問契約を検討するとよいでしょう。特に法人の場合、顧問契約が前提となっている税理士事務所も少なくありません。

顧問料の相場は、個人、法人別に以下の金額帯となります。

  • 個人:月1万円~3万円(決算・確定申告は+4カ月~6カ月)
  • 法人:月2万円~4万円(決算・確定申告は、+4カ月~6カ月)

顧問契約の場合、打ち合わせの頻度が増えるのに応じて顧問料が増額される場合もあります。

5.複数の税理士に見積もりを依頼して費用を比較する

税理士の依頼費用は、不動産所得の規模や依頼する範囲によって異なるうえ、税理士事務所によって設定されている価格が異なります。実際に税理士への依頼を検討する際は、複数の税理士へ見積もりを比較し、依頼できる内容や費用について比較してみることが大切です。

効率的に不動産投資に強い税理士を探すには、税理士紹介サイトを利用する方法があります。税理士紹介サイトでは、コーディネーターが、相談者のニーズに合った税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。税理士との依頼内容の調整や、料金交渉などもコーディネーターに任せることが可能です。

税理士ドットコム

税理士ドットコム税理士ドットコムは、全国5,900名の税理士の中から無料で希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。

報酬引き下げの実績も豊富なため、すでに税理士と契約している方でも利用が可能です。コーディネーターが複数の税理士に相見積りをとり、費用についての交渉までサポートしてくれます。

利用時の主な注意点としては、提携している税理士の紹介しか受けられない点です。提携外の税理士も比較していきたい方は、自身で探してみたり、不動産会社に相談してみたりなどと並行して、利用を検討すると良いでしょう。

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まとめ

不動産投資の確定申告を税理士に依頼することで、税務リスクを軽減でき、税法に基づいたアドバイスを受けることが可能です。

確定申告を税理士に依頼する場合、家賃収入や貸室数に応じて費用が変わり、帳簿作成を依頼するかどうか、個人か法人かでも費用は変わります。まずは確定申告を依頼した場合の見積もりを出してもらい比較検討してみるのも良いでしょう。

不動産投資を長期的におこなっていく上で、売却や修繕、相続などの重要な判断をする局面では、税務リスクは常に関係してきます。投資目的に沿った適切な判断をおこなうことができるようにするために、税理士に依頼する費用との費用対効果を見極めて依頼することを検討してみましょう。

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佐藤 永一郎

佐藤 永一郎

筑波大学大学院修了。会計事務所、法律事務所に勤務しながら築古戸建ての不動産投資を行う。現在は、不動産投資の傍ら、不動産投資や税・法律系のライターとして活動しています。経験をベースに、分かりやすくて役に立つ記事の執筆を心がけています。