地方アパート経営に失敗してしまう5つの事例は?それぞれリスク対策も

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アパート経営は、うまく軌道に乗せれば潤沢な家賃収入が期待できる不動産投資の手法です。しかし、さまざまな原因でアパート経営に失敗する投資家も少なからず存在します。長期的な視点を持って、無理のない計画を立てて投資を実行することが大切です。

今回の記事では地方のアパート経営に失敗する5つの事例と、失敗して窮地に陥らないための対策を紹介します。これから地方でのアパート経営を検討している人は、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 地方アパート経営5つの失敗事例と対策
    1-1 空室が多くなり赤字が常態化する
    1-2 表面利回りで選ぶ・ローンのレバレッジを高くしすぎてしまう
    1-3 住民トラブルに伴う収支の悪化
    1-4 減価償却費による損益通算を目的にした投資
    1-5 無理な事業拡大が裏目に出る
  2. まとめ

1 地方アパート経営5つの失敗事例と対策

アパートはマンションと比較して土地割合が大きく、地方になるほど物件の取得費が大幅に下がっていきます。一方で家賃の下落幅は物件価格の下落に対して小さいため、地方アパート経営は高利回りが期待できるというメリットがあります。

一方、人口減少傾向にある日本において、地方アパート経営はややハイリスクな投資方法となります。アパート経営は短くても5~10年ほど、長いと40~50年ほどの運用期間が目安になるため、長期的な視点で経営判断をしていく必要があります。

今回のコラムで取り上げる失敗事例は以下の5つです。それぞれ詳しく確認していきましょう。

1-1 空室が多くなり赤字が常態化する

都心部などの人口密集地と比較すると、地方では転出超過傾向にあるエリアも多く、旺盛な賃貸需要が期待しにくい傾向にあります。そのため入居者が集まらず、空室率が高止まりするケースは少なくありません。空室率が高ければ収益性が下がり、キャッシュフローが常態化する可能性もあります。

空室が高くなる原因について、入居者の深刻なトラブルや災害などの特殊事情を除けば、次のような点が考えられます。

  • 立地する場所が不便で賃貸需要が乏しい
  • 家賃が市場実勢に対して割高
  • 物件の設備が周辺の競合物件より劣る

都心と比較すると賃貸需要自体が限られている分、購入もしくは建設前の段階から、空室率を抑える工夫を怠らないように注意しましょう。

対策:綿密な市場調査と適切な物件管理が重要に

まず、購入・新築の段階においては、市場調査をしっかりと行う必要があります。保有するアパートの地域自体の賃貸需要が乏しければ、空室を埋めるのは困難となるため、そのような地域で投資を行うのは避けたほうがよいでしょう。人口動態や治安、周辺の大都市への利便性などを慎重に精査してください。

地域の賃貸需要が一定量見込めても、価格が割高だったり、物件の性能が極端に劣っていたりすると、やはり入居者集めに苦労する恐れがあります。賃貸物件のポータルサイトなどで、周辺の物件の価格帯や設備・性能のトレンドなどを精査して、競合に劣後しない物件を購入もしくは建築したうえで、相場に対して適切な賃料を設定してください。

投資開始時点では魅力的な物件も、経年とともに新築物件が周辺に増え、陳腐化していくリスクがあります。周辺の市場調査は継続的に行い、自分が所有する物件の設備が競合対比で劣後していると感じたら、修繕時に新規設備を取り入れて、訴求力を維持するように努めていきましょう。

1-2 表面利回りで選ぶ・ローンのレバレッジを高くしすぎてしまう

物件選びやこまめな管理によって、ある程度は空室率を抑制することができても、ゼロにするのは困難です。そのため一定程度の空室発生を前提に、余裕を持った資金計画を建てて運用を行うことが重要ですが、実際には無理な計画のもと経営を進めて、失敗してしまう人も少なくありません。

無計画な投資による失敗例は次の通りです。

  • 表面利回りの高い物件に飛びついてしまう
  • レバレッジが高すぎてローン返済が追いつかない

地方の物件で築年数が経過していたり、立地が不便だったりすると、極端に安価で高利回りな物件が見られます。

こうした物件の中には、満室前提の利回りで紹介されているケースが多く見られますが、マイナス要因があるがゆえに低価格・高利回りになっていることをふまえると、満室になる前提で投資計画を立てるのは危険です。結果的に想定よりも収益が得られず、失敗してしまう人も少なくありません。

またローン比率を高くしすぎて、レバレッジをかけ過ぎるのも失敗の元です。物件価格に対してローン比率が高すぎると、少しの空室で赤字化する恐れがあります。

保守的な計画策定と慎重な物件選びを

地方のアパート経営は、都心部での区分マンションやアパート経営と比較すると相対的にリスクが高い傾向にあります。この前提に立って、保守的な収支計画のもと、長期で経営を継続できる物件やスキームを選択することが大切です。

利回りについては、満室を想定した水準で判断するのは適切ではなく、一定の空室を想定して水準を確認していきましょう。また、表面利回りだけでなく、アパート経営にかかるコストを加味した実質利回りやROIなども自分で計算したうえで、判断することも大切です。

利回りはROIなど収益性を判断する指標については、こちらの記事も参考にしてください。

【関連記事】不動産投資の利回り・ROI・CCR・キャッシュフローの違いは?

また、資金計画についても、無理に借入に頼るのは禁物です。空室リスクの高い地方物件をターゲットとする場合は、少なくとも30%程度は頭金を用意するのが望ましいと言えます。

今用意できる頭金で物件が購入できない場合は、借入比率を増やすのではなく、投資物件の再考や、自己資金が貯まるまで購入時期を後ろ倒しを検討しましょう。

【関連記事】不動産投資の初期費用(自己資金)はどうやって貯金する?オーナーが実践する4つの事例

1-3 住民トラブルに伴う収支の悪化

地方アパート経営では、土地勘のない遠隔地での運用を検討している方も多いのではないでしょうか。

しかし、アパート経営ではさまざまな住民トラブルにより、管理費用がかかったり、やがて空室が発生して埋まりづらかったりなどといったケースも存在するため、遠隔地での管理はより慎重に検討することが重要になります。例えば、下記のような事例があります。

  • 家賃滞納により賃料が入らない
  • 住民の孤独死やゴミ屋敷化
  • 騒音やゴミ出しのルール違反などによる被害

家賃滞納は入居者が埋まっているのに収支が悪化するため、オーナーにとって悩みの種となります。あまりにひどければ退去をお願いすることになりますが、入居者の態度によっては難航する可能性もあります。

また、孤独死やゴミ屋敷も近年しばしば発生する課題の一つで、発生すると多額の原状回復費用がかかり、多額な管理コストの発生や収益の減少を引き起こしてしまいます。

住民同士のトラブルが起きたり、共有部分の劣化が進んだりといったリスクも懸念点と言えます。トラブルに巻き込まれた住民が出て行って、さらに悪いことに口コミサイトなどを通じて悪評が広まり、入居者も見つかりにくいなどの被害に遭う可能性があります。また、ゴミ捨て場を始め共有部分の汚損・破損などを引き起こし、余計な修繕コストが発生する場合もあります。

管理会社や保険・保証を活用して丁寧な管理を

ここで紹介した入居者にまつわる問題を緩和するためには、次のような対策を取る必要があります。

  • 入居者審査を行う
  • 物件管理を丁寧に行い、トラブルを予防する
  • 保証・保険などに加入する
  • 修繕費用は余裕を持って確保しておく

アパートの立地が遠隔地の場合、日常の物件管理は管理会社に任せることになります。アパートが建つ地域で質が高く実績の豊富な管理会社を見つけ、管理契約を結びましょう。

管理能力の高い管理会社は入居者の募集から物件の維持管理、住民トラブルの予防や対処など、物件管理について幅広く対応してくれます。入居審査、家賃滞納などにも適切に対処してくれます。セキュリティ対策の実施やこまめな管理により、共有部分でのトラブルも予防・抑制してくれるでしょう。

そのほか、家賃保証サービスや事故物件への保険などへ加入して、損害リスクに備えておくのも有効です。保険料がかかるため継続的な負担が発生するため、費用対効果を踏まえて加入の是非を判断していきましょう。

最後に、どれだけ備えても想定外の事態に見舞われるリスクはゼロにはできません。想定外に修繕などの費用が発生しても対処できるよう、日頃から余裕を持って現金を貯めておくことも有効な対策の一つとなるでしょう。

1-4 減価償却費による損益通算を目的にした投資

アパート経営においては、減価償却費による損益通算を目的に投資を始める人も少なくありません。

木造アパートでは、耐用年数が短く物件価格は(区分マンションなどと比較すると)高いため、1年間で多くの減価償却費を計上できます。また、財産をアパートで所有していると、現金で保有している場合よりも2~3割程度の相続税評価額が下がることから、相続税の減額を意図して投資を始める人もみられます。

しかしながら、税効果を重視してアパート経営をする人の中には、アパートの収支計画をあまり考えずに始める人もいて、経営全体で見て失敗してしまう人もいます。

  • キャッシュが出ていく損失が発生してかえって負担増に
  • 逆に黒字が出てしまって税負担増に

特に減価償却費による損益通算によって所得税の減額を考える場合、収益がしっかり残ってしまうと黒字化するため、多額の収益が出ないように工夫することになります。この点に意識が行きすぎて、収益性が悪く現金支出を伴う赤字に陥ってしまうケースも見られます。税金を抑えるための不動産投資で現金支出が発生してしまっては本末転倒といえるでしょう。

アパート経営自体の収支管理を疎かにしない

アパート経営における税効果は副次的な要因であるべきで、あくまで本分は賃料による収入を得る投資手段と考えましょう。すなわち、アパート経営本体がしっかりとキャッシュフローを生み出す物件および投資計画のもと実行するのが、健全な経営といえます。

物件をしっかりと選び、多少の空室が発生しても収支が残る健全な計画のもと経営を行いましょう。経費計上や所得税、相続税などの会計制度や税制をしっかり理解した上で、健全な経営を継続できるアパート経営に努める必要があります。

【関連記事】アパート経営で「車」「パソコン」「通信費」は経費計上できる?主な費用科目を解説
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1-5 無理な事業拡大が裏目に出る

地方でアパート経営をおこなっている人の中には、物件の追加を視野に入れている人も少なくありません。都心部など人口密集地での投資と比較するとリスクが高くなる地方でのアパート経営においては、異なる地域で複数の物件を運営するのが有効な選択肢の一つとなるからです。

しかし、なかには最初の物件が軌道に乗っているのに、無理な計画で物件を追加購入した結果、収支の悪化や税金の負担増に困る人も少なくありません。例えば次のようなケースが考えられます。

  • 二件目の投資に失敗して収支が悪化する
  • 税金負担が増えすぎて苦戦
  • 大規模修繕のタイミングが重複して窮地に

一件目の投資が成功しているからといって、次の投資も成功するとは限りません。リスク分散の観点からは一件目とは別の地方で投資先を検討することになりますが、その時点で選択肢が狭まるため、二件目の方が投資の難易度が高くなる可能性があります。

一件目でローンを活用した場合、二件目はローンの限度額が延びないケースも多く、必然的に価格の安い物件から選ばなければならなくなります。一件目と比較して低価格・高利回りな物件を選択せざるを得ない場合もあるでしょう。一件目が成功したからといって、安易に二件目の購入に向かうのは必ずしも有効な選択肢とは限りません。

また、良好なキャッシュフローを実現できていても、税金負担に苦しむ人もいます。アパートに対する所得税は家賃収入から必要経費を差し引いて計算します。物件を追加したのち経営がうまくいっているなら、所得が大きく増えて税金負担も増加するでしょう。

金利部分のローン返済や管理費、減価償却費などを適切に経費計上して所得を圧縮する必要があるわけですが、うまく資金計画を立てないと、税金の負担に苦しむことになります。本業の所得水準によっては家賃収入によって税率の掛け目が変わって、不動産投資による収益の実質的な手残りがほとんどない、という事態にもなりかねません。

その他、大規模修繕のタイミングまで考慮せずに物件を購入して、あとになって苦境に立たされるケースもあります。物件を複数保有していて、二つの物件の修繕タイミングが重複してしまうと、その分一気に出費がかさむことになります。しっかりと黒字を維持していたはずでも、度重なる大規模修繕の発生により資金繰りが苦しくなることがあるのです。

長期の計画を立てて慎重に検討する

一件目がうまくいくと、できるだけ早く追加購入して、収益規模を拡大したくなりますが、安易な物件の追加は適切ではありません。地域分散の効果はあるにせよ、多くの場合複数物件の管理は、一件の物件管理よりも難易度が高くなることを念頭に置いて、慎重に資金計画を建ててください。

自分の与信枠では購入できる物件が制限されると感じる場合は、限度額に合わせて安い物件を探すのではなく、返済が進んで与信枠が空くのを待ちましょう。複数持ちのリスクをふまえて、一件目以上に自己資金の割合を増やし、健全なスキームで経営を始めるのが有効です。

また、修繕や減価償却費、ローンの金利支払いなどの見通しを長期で立てたうえで、一件目と合算した収支計画を策定してください。特に大規模修繕のタイミングが重複しないように工夫し、大きな出費にも耐えられることを確認のうえ、購入に踏み切りましょう。

複数持ちによる分散効果だけでなく、リスクにもしっかり目を向けて、慎重な判断をするのが望ましいといえます。

まとめ

地方でのアパート経営は、都心部での区分マンション投資やアパート投資よりリスクが高くなる場合もあり、失敗してしまう人も少なくありません。今回の失敗例と対策をふまえて、長期を見据えた健全な資金計画を立てたうえで、安定した需要の見込める物件で経営を始めてください。

また、せっかく物件が良くても、モラルのない住民などによりトラブルが相次ぐリスクもあります。地域で実績があり、信頼のおける管理会社を見つけて、物件管理を一任するのがよいでしょう。

地方のアパート経営はリスクの高い運用方法ですが、うまくマネジメントすれば豊富な家賃収入を見込めます。今回の失敗例と対策を参考に、無理のない計画を立てたうえで、慎重に検討されていくと良いでしょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。