資生堂は約120の国と地域で事業展開をしているグローバル企業で、日本発のグローバルビューティーカンパニーを目指し、化粧事業だけでない新しい商品や価値を創造しています。
同社は、社会価値の創造を通じてサステナブルなよりよい世界を実現することを目標として掲げています。2022年12月に地球環境の負荷軽減とジェンダー平等の目標を設定したサステナビリティ・リンク・ボンドを発行するなどサステナビリティの実現に前向きに取り組んでいます。
今回は、資生堂のサステナビリティ・ESGへの取り組み、ESG格付けや株主優待などについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年12月1日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 資生堂のESG格付け
- 資生堂の倫理行動基準
- 資生堂のESGへの取り組み
3-1.環境(E:Environment)
3-2.社会(S:Social)
3-3.ガバナンス(G:Governance) - 資生堂の株主優待制度
- まとめ
1 資生堂のESG格付け
ESGの評価会社が、各企業のESGスコアを発表しています。評価会社としては、MSCIやブルームバーグL.P.、日本経済新聞社(日経NEEDS)、東洋経済新報社などが挙げられます。
MSCI格付けは、最も評価が高いAAAから最も低いCCCを付与しています。ブルームバーグESGスコアは、環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)などの項目で数値が高いほど良いとされています。
資生堂のMSCI格付けはAです。ブルームバーグでは、環境スコアが5.47、社会スコアが5.19、ガバナンススコアが6.43です。各スコアは全て同業種平均以上で、環境と社会に関しては上位という高評価を得ています。
2 資生堂の倫理行動基準
資生堂は、独自の厳しい基準に沿った環境対応を推進し、生物多様性に配慮しながら、人も地球も美しく共生するサステナブルな社会をめざすため、4つの行動基準を設けて取り組んでいます。これらの行動基準をもとにサステナブルな社会を目指しています。
行動基準
- 温室効果ガスの大部分を占める二酸化炭素の排出量削減や水資源の有効活用、廃棄物削減などに取り組む
- 資生堂5R(リスペクト、リデュース、リユース、リサイクル、リプレイス)の考え方に基づき、事業活動のプロセスや廃棄物ができるだけ少なくなるように努める
- 健やかな美の追求と環境への配慮が共存した新しい商品やサービスの開発、イノベーションに取り組む
- 事業活動における環境への負担軽減を目指し、新技術開発や技術提携に積極的に取り組む
3 資生堂のESGへの取り組み
資生堂のESGへの取り組みや2021年の成果をみていきましょう。
3-1 環境(E:Environment)
環境課題領域として、「1.5℃目標」*が掲げられている気候変動への対応が重要であるとしています。地球環境の負担軽減、サステナブルな製品の開発、サステナブルで責任ある調達を掲げ、温室効果ガス排出量、水資源、廃棄物の3つの領域において、中期的な目標を開示しています。目標と2021年の成果をみてみましょう。
*1.5℃目標:気温上昇を産業革命以前の1.5℃以内に抑えることを目標
地球環境の負担軽減
- CO2排出量:2026年までにカーボンニュートラルを達成
- 水:2026年までに水消費量を2014年比40%削減
- 廃棄物:2022年までに埋め立て廃棄物をゼロにする
2021年の成果
- CO2排出量:1,585,481トン(前年比39.3%減)
- 水:総取水量1.2百万㎥(前年と変わらず)、総排出量1.0百万㎥(前年と変わらず)
- 廃棄物:排出量13,096トン(前年比2.1%増)、リサイクル処分量:13,038トン(前年比2.0%増)、非リサイクル処分量:58トン(23.4%増)
サステナブルな製品の開発
- 容器包装:2025年までに100%サステナブルな容器を達成
- 処方・成分:安全性と環境への影響を考慮したサステナブルな原料を使用する
2021年の成果
- 容器包装:日本で設計した製品のサステナブルな容器率65%
- 処方・成分:世界8カ所の研究拠点にて研究開発を推進中
サステナブルで責任ある調達の指針
- パーム油:2026年までに100%サステナブルなパーム油を調達
- 紙:2023年までに100%サステナブルな紙を使用
- サプライヤーアセスメントプログラム:持続可能なサプライチェーンの構築を目指す
2021年の成果
- パーム油:27%を認証パーム油に切替え
- 紙:72%を認証紙や再生紙などサステナブルな紙に切替え
3-2 社会(S:Social)
社会分野においては、価値観・偏見・差別のある社会を超え、多様な美の価値観の啓蒙やジェンダー平等のために、教育支援などを積極的に実践しています。コミットメントとしてジェンダーの平等、美のちからによるエンパワーメント、人権尊重の推進を掲げ、取り組んでいます。目標と取り組み、2021年の成果をそれぞれみていきましょう。
ジェンダー平等
女性活躍支援の取り組みとして、女性のキャリア成長や女子教育、自立支援などジェンダーギャップ解消を目指す。
取り組み:日本企業の女性役員比率30%を目指す「30% Club Japan」へ参画、地方自治体との協働により女性活動支援、子育て支援、自然科学分野の女性研究者支援、企業対抗レディースゴルフトーナメントへの協賛
美の力によるエンパワーメント
深い肌悩みのほか、がんサバイバーや高齢者への支援を国内外で展開。
取り組み:深い肌悩み解決のため「資生堂ライフクオリティーメイクアップ」を展開、がんとの共生を目指したがんサバイバーへの支援、がんになっても笑顔でいられる社会を目指す「LAVENDER RING」ヘの参画、高齢者や障がい者を対象とした取り組み、施設や里親のもとで暮らすこどもたちの自立・進学支援、紫外線過敏の難病支援など
人権尊重の推進
ステークホルダーにおける人権尊重の取り組みを推進。社員への取り組みとしては、多様なプロフェッショナル人材を育成、一人ひとりがそれぞれの違いをポジティブに発揮できる、インクルーシブな組織風土の醸成を推進。
取り組み:2020年人権デュー・ディリジェンスの仕組みを構築。社員への人権教育・研修の実施。サプライヤー向けの通報・相談窓口の設置。
2021年の成果:国内勤務の管理者に対し、ハラスメントをテーマにeラーニングによる研修を実施し、1,566名が受講。資生堂グループ社員向けでは、基礎的な人権に関する研修とハラスメントに関する研修を行い、述べ約2万8千名が受講。
3-3 ガバナンス(G:Governance)
資生堂は、コーポレートガバナンスを企業理念の中でOUR MISSONとして「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」と定めています。コーポレートガバナンスをOUR MISSONの達成を通じて、持続的な成長を実現するための基盤としています。
経営の透明性・公正性・迅速性の維持・向上を図り、ステークホルダーとの対話を通して、中長期的な企業価値の最大化を目指しています。
4 資生堂の株主優待制度
資生堂は株主優待制度を実施しています。対象は、12月末時点で、100株以上を1年超保有している株主です。
保有株数1,000株未満と1,000株以上とでは、優待商品の内容が異なります。優待はA(同社製品)かB(公益財団法人資生堂こども財団が運営する奨学金制度への寄付)のいずれか選択できます。
まとめ
資生堂は、ビューティーカンパニーとして社会価値創出を追求し、「美の力を通じて人々が幸福を実感できるサステナブルな社会の実現を目指しています。
同社のESG格付け・スコアは、MSCI、ブルームバーグともに高評価となっています。環境課題領域として、気候変動への対応が重要であると考え、温室効果ガス排出量、水資源、廃棄物の3つの領域において、中期的な目標を開示し取り組んでいます。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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