iDeCo(個人型確定拠出年金)の節税効果は?節税額の計算方法や計算例も

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節税効果も得られるiDeCo(個人型確定拠出年金)。しかし、具体的に何に対してどれだけ節税できるのか、分からない部分も多いかと思います。また、税制優遇措置には3種類あり、それぞれ節税の仕組みやタイミングが異なります。

iDeCo(個人型確定拠出年金)に加入している・これから加入する方は、特に節税効果や計算方法などを把握しておくべきでしょう。そこで今回は、iDeCo(個人型確定拠出年金)を利用することでどれだけ節税できるのか、3種類の税制優遇から解説します。

目次

  1. iDeCo(個人型確定拠出年金)の節税効果は主に3種類
  2. iDeCo(個人型確定拠出年金)の運用益から節税効果を計算
    2-1.iDeCoの運用益は全額非課税となる
  3. iDeCo(個人型確定拠出年金)の所得控除から節税効果を計算
    3-1.課税所得から第1号被保険者の節税額を確認
    3-2.課税所得から第2号被保険者の節税額を確認
    3-3.課税所得から第3号被保険者の節税額を確認
  4. iDeCo(個人型確定拠出年金)受け取りによる節税効果を確認
    4-1.一括で受け取る場合は非課税も可能
    4-2.分割で受け取る場合は他の公的年金と合算して計算
  5. まとめ

1.iDeCo(個人型確定拠出年金)の節税効果は主に3種類

まずはiDeCoの加入者が享受できる節税効果を紹介しましょう。iDeCo(個人型確定拠出年金)では、以下3種類の税制優遇措置が用意されています。

  • 所得控除:支払った掛金は所得税の控除対象になる
  • 非課税:運用益は全額非課税
  • 受け取り時の所得控除:年金受け取り時における節税効果あり(非課税となる場合もある)

節税効果は、掛金を活用した所得控除と運用益の非課税など、それぞれ分けて考えることが大切です。また、状況に応じて控除額は変わるため、「必ずいくら節税できる」とは言えない点には気を付けましょう。

2.iDeCo(個人型確定拠出年金)の運用益から節税効果を計算

iDeCoでは、預金による利息や投資信託などから運用益が発生します。通常、運用益には20.315%の税金が発生しますが、iDeCoにおいてはこれらの運用益が全額非課税となるので、効率よく積立・運用できるのも特徴です。非課税期間は満期まで続くため、数十年にわたって節税メリットを得ることも可能です。

以下から非課税と課税の場合を比較・計算しながら確認していきましょう。

2-1.iDeCoの運用益は全額非課税となる

iDeCoによって得られる運用益は、保有する金融商品や運用状況によって変わります。そのため、実際に節税できる金額については、加入者自身で改めて計算することが必要です。

通常、利子所得や投資信託などの金融商品から生じた利益にかかる税金は、復興特別所得税を加えた所得税15.315%と、住民税5%の合計20.315%です(2020年5月時点)。

たとえば投資信託で年間に10万円の運用益を得られたら、20,315円の所得税・住民税がかかります。一方iDeCoで得た運用益は非課税ですので、10万円の運用益から差し引かれる税額はありません。

3.iDeCo(個人型確定拠出年金)の所得控除から節税効果を計算

iDeCoでは、毎月支払っている掛金を所得控除に計上することができます。所得控除は、収入から経費を引いた所得額からさらに値を差し引くことで、課税所得額を引き下げる効果をもたらす制度です。

ここでは掛金の上限額を前提として節税額を計算してみます。また、上限額は各被保険者(第1号~第3号被保険者)によって異なるため、自身の加入状況と照らし合わせながら確認してみてください。

3-1.課税所得から第1号被保険者の節税額を確認

第1号被保険者(自営業者等)の掛金上限額は、毎月68,000円・年間81万円です。また、今回は所得400万円と仮定し、節税額を計算してみます。

所得控除として計上できる金額は全額(年間)で、上記の場合最大で81万円を計上できます。なお所得400万円の場合、所得税率は20%です(所得税率は課税所得額に応じて変わります)。

計算例

  1. 所得控除として計上できる年間の掛金81万円
  2. 所得400万円(他の控除は加味しません)
  3. 所得税の控除額、81万円×20%=16万2,000円
  4. 住民税の控除額、81万円×10%=8万1,000円
  5. 1年間で24万3,000円の節税が可能

節税を考えるのであれば、毎月の収入と相談しながらなるべく掛金を上限に近付けた方がメリットは大きいと言えます。

3-2.課税所得から第2号被保険者の節税額を確認

第2号被保険者(会社員・公務員など)の掛金上限額は、状況に応じて3種類に区分されます。

  • 月2万3,000円:企業年金に加入していない・企業年金がない
  • 月2万円:企業型拠出年金に加入している
  • 月1万2,000円: 確定給付企業年金もしくは企業型拠出年金どちらも加入している会社員、公務員など

所得控除の計算方法は、第1号被保険者で紹介した内容と同じですので、以下に各上限額での節税額をまとめて紹介します(所得400万円と仮定)。

  • 月2万3,000円:1年間に8万2,800円の節税
  • 月2万円:1年間に7万2,000円の節税
  • 月1万2,000円: 1年間に4万3,200円の節税

第1号被保険者と違い3パターンの上限額があるため、同じ所得でも状況によって節税できる額は変わります。

3-3.第3号被保険者の節税額を確認

第3号被保険者(第2号被保険者の扶養配偶者で、要件を満たす方)の場合は、状況によって所得控除の効果を得られないこともあります。それは現在本人に所得がない場合です。

iDeCoの所得控除は、課税所得にかかる所得税・住民税を節税できる税制優遇措置です。そのため、本人が働いておらず所得がない場合は所得控除による節税効果は得られません(節税する所得がないため)。

ただし、扶養の範囲内での収入(年収130万円未満)がある場合には、掛金拠出による節税メリットを享受することが可能です。掛金の上限は月額2.3万円となります。

4.iDeCo(個人型確定拠出年金)受け取りによる節税効果を確認

iDeCoで掛金の支払を終え、60歳以降に年金として受け取る際にも税制優遇措置が受けられます。また、主に3種類の受け取り方法があり、各方法によって節税効果および所得の種類は変わります。

所得の種類

  • 一括で受け取る(一時金):退職所得扱い
  • 公的年金のように分割で受け取る(年金):雑所得扱い
  • 一時金と年金を併用:一時金の部分は退職所得、年金の部分は雑所得

それでは年金受け取りの際に受けられる税制優遇措置と、節税効果を確認してみましょう。

4-1.一括で受け取る場合は非課税も可能

非課税になる可能性があるのは、70歳までに受け取れる「一括受け取り」です。理由としては、控除額の大きい退職所得控除が適用されるためです。

退職所得控除は、勤続年数と所得によって控除額が変わります(参照:国税庁)。また、iDeCoでは加入期間を勤続年数として計算します。

例:加入期間25年、一時金2,025万円と仮定

  • 800万円+70万円×(勤続年数25年-20年)=1,150万円(退職所得控除)
  • (2,025万円-1,150万円)×1/2=437万5,000円(退職所得)
  • 87万5,000円(退職所得×所得税率)-42万7,500円(所得控除)=44万7,500円(所得税)

上記の場合、所得税は44万7,500円まで抑えられる計算です。

一時金と退職所得控除の金額によっては、控除額以下になることもあります。その場合は非課税となります。また、加入期間20年以下の場合は、退職所得控除「40万円×加入期間」という計算式を用いなければなりません。

4-2.分割で受け取る場合は他の公的年金と合算して計算

公的年金と同じく分割で受け取る場合は、雑所得として区分されます。また、雑所得は、他の公的年金と合算して計算することになります。

今回は公的年金を除いた場合の計算方法を紹介します。

例:合計480万円の受け取り(第2号被保険者、60歳から受け取り)

  • 年金収入に応じた控除額68万5,000円
  • (480万円×85%)-68万5,000円=339万5,000円(課税所得)
  • 339万5,000円×20%=67万9,000円(所得税)

年金収入が少なく、基礎控除を加えた108万円(65歳未満)・120万円(65歳以上)以下であれば非課税となります。また、公的年金が加わった場合でも、年金収入に応じて控除額も上がるので節税可能です。

なお併用の場合は上記で紹介した分割の計算と、退職所得の計算をそれぞれ行います。

まとめ

iDeCo(個人型確定拠出年金)の税制優遇措置は、運用期間・受け取り時にそれぞれ用意されています。そのため節税しながら年金の運用や受け取りができます。

毎月の掛金が所得控除の対象になるため、拠出額が大きいほど節税効果も大きくなります。年金受け取り時の節税額は、受け取り方法と公的年金の収入額、受け取る金額によって変わりますが、運用益の非課税制度とも合わせて、老後資産の形成には役立つものと言えます。

まずは自身の掛金や所得額を確認し、どれだけ所得控除できるか計算してみましょう。

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菊地 祥

FP3級技能士、投資信託4年目、株式投資8年目。2018年からフリーランスとしてwebライティングやメディア運営を行っています。また、webライターとしては株式投資や投資信託などをやさしく解説。