海外不動産投資に恒大ショックの影響はある?注意したいポイント

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2021年9月以降、日本でも中国のデベロッパーである恒大集団の経営危機について報道されており、恒大ショックと呼ばれています。この記事では、恒大ショックの具体的な内容とともに、海外不動産投資に対して与える影響などについて解説します。

目次

  1. 恒大ショックの詳細
    1-1.海外不動産投資における中国系デベロッパーの存在感
    1-2.中国当局による不動産会社向け金融の引締めが原因
    1-3.今後懸念されるポイント
  2. リーマンショックと恒大ショックとの違い
  3. 今後気を付けるべきポイントは?
  4. まとめ

1.恒大ショックの詳細

恒大ショックについて、具体的に何が起きていて今後何が懸念されているのか、中国系デベロッパーの立ち位置も含めて解説します。

1-1.海外不動産投資における中国系デベロッパーの存在感

中国では人口の増加や経済の拡大に伴って、不動産価格が大幅に上昇する現象が起きています。中国系のデベロッパーは、中国国内にとどまらず世界各国に進出しており、東南アジアでは特にその影響が顕著です。

もともと中華系の華僑が一定数存在しているマレーシアや、近年発展が著しいフィリピンなど、多数の国で多くのデベロッパーがプロジェクトを展開しています。例えば、マレーシアとシンガポールとの国境にあたるジョホールバルでは、フォレストシティというエリアで中国系のデベロッパーが大量のコンドミニアムを建設中です。

そのほか、過去にオーストラリアで海外資本向けに不動産取得に関する規制が敷かれたのも、オーストラリアの不動産市場に中国資本が大量流入したことが原因となっています。

1-2.中国当局による不動産会社向け金融の引締めが原因

恒大ショックと呼ばれる現象のきっかけになったのは、2020年に中国政府が行った不動産業界向けの金融規制です。中国政府はデベロッパーに対して以下3点の基準を提示しました。

  1. 保有する資産に対して負債が占める割合が70%以下であること
  2. 自己資本に対する負債の割合が100%以下であること
  3. 保有する短期債務の金額を上回る現金資産を保有していること

上記3つの基準は三条紅線と呼ばれており、基準を達成している度合いに応じて有利子負債の年間増加割合が定められています。

具体的には、3つとも基準を満たしている場合は1年間で有利子負債が15%増加しても良い、2つ基準を満たしている場合は10%増加しても良いといった内容です。基準を1つも満たしていない場合は、今後資金調達ができなくなります。

恒大集団は中国最大級のデベロッパーであり、海外でも事業を展開しています。しかし、恒大集団は、昨年中国政府が提示した基準を1つも満たしておらず、今後の資金調達が困難となりました。

さらに、中国政府は2020年末に不動産関連の融資についても規制を新設しています。規制の内容は、各銀行が保有する資産の規模を5段階に分けた上で、総融資額に対する住宅ローンや不動産企業向けの融資残高に制限を設けるというものです。

簡潔に説明すると、金融機関は資産規模に応じて不動産関連の融資額が制限されます。なお、最大手でも総融資額に対する住宅ローンの割合を32.5%までに規制されるため、金融機関は住宅ローンについては引締めざるを得なくなりました。

中国政府の意図は、不動産バブルの崩壊を防止する目的で、不動産業界の膨張と乱開発に歯止めをかけるというものです。しかし、恒大集団にとっては、新たな資金調達ができなくなったうえに、住宅ローンの引締めによって新たな住宅の売上見込みも減ったことになります。

2021年夏以降には、恒大集団が行った中間決算発表にてデフォルトのリスクが示されるなど、投資家の間にも不安が広がっている状況です。日本では2021年9月に混乱の状況が報道されたことで、国際的な経済危機などの不安が広がりました。

1-3.今後懸念されるポイント

恒大集団が経営破綻すると、中国国内と海外とで不動産価格が値崩れを起こし、中国国内の景気や海外不動産の市場に大きな影響があるのではと懸念されています。

すでに解説したように、中国系のデベロッパーは東南アジアで多数のプロジェクトを展開しており、恒大集団も例外ではありません。特に中国系資本の流入が多いマレーシアやオーストラリアなどでは、不動産市場に影響が出ることも懸念されます。

しかしながら、マレーシアの首都クアラルンプールなど、一部のエリアでは中国資本の大量流入によって物件の供給過剰や値上がりが起きていたこともあり、そのようなエリアでは市場の正常化が加速する可能性も否定はできません。

2.リーマンショックと恒大ショックとの違い

2021年10月時点では、まだ恒大集団が経営破綻に陥ったわけではありません。ここからは、恒大集団が経営破綻した場合に想定される出来事と、過去の金融危機とを比較してみます。

過去の金融危機として代表的なのは、リーマンブラザーズの経営破綻に端を発したリーマンショックです。経済危機が懸念されているという点では、恒大ショックはリーマンショックと同じですが、その内容には大きな違いがあります。

リーマンショックは投資銀行の破綻が原因であり、アメリカを始めとした世界各国でお金の流れが止まったことで、世界中に不景気が広がりました。また、リーマンブラザーズが経営破綻したきっかけは、低所得者向けの住宅ローンである「サブプライムローン」によって多くの貸し倒れが発生したことです。

恒大集団の負債は大きいため、恒大集団がデフォルトを起こした場合に中国国内の金融機関で貸し倒れが発生し、連鎖的に悪影響が波及する可能性は否定できません。

しかし、恒大集団はリーマンブラザーズと違って不動産業を事業の柱とする企業です。仮に恒大集団が経営破綻を起こしたとしても、その影響はリーマンショックと比較して限定的であると想定できます。

そのほか、経営破綻の影響が大きいと判断された場合には、中国政府によって公的資金が投入される可能性もあり、まだ恒大集団が経営破綻すると確定したわけではありません。

総じて、リーマンショックと比較すると、恒大ショックは経済への影響が小さいと考えられます。ただし、恒大ショックについては、まだ先行き不透明な部分も多く、その後の対応について慎重に検証していくことが重要なポイントとなります。

3.今後気を付けるべきポイントは?

既に解説した通り、恒大ショックの発端は中国当局による不動産関連金融の引締めであり、影響を受けるのは恒大集団だけではありません。事業規模が大きいために恒大集団がクローズアップされていますが、他にも資金調達が困難になると予測される中国系デベロッパーはあります。

2021年以降で恒大ショックに関するリスクヘッジを講じるのであれば、特に東南アジアの海外不動産投資では、中国系デベロッパーが開発に関わっている物件であれば慎重に検討する、などの対策が考えられるでしょう。中国系デベロッパーが売主の物件では、竣工リスクなどが強くなると考えられるためです。

中国系デベロッパーが売主となっている物件を検討するのであれば、売主は三条紅線の基準を満たしているのか確認するとともに、裏付けを取ることが必要と考えられます。

また、恒大ショックは金融規制が要因となっているため、中国政府による規制の緩和や公的資金の投入によって破綻が回避される可能性もあります。事業者側の対応に加え中国政府の動向についても注視し、多角的な視点で状況を判断することがポイントとなってきます。

まとめ

中国系のデベロッパーは中国の国内外で大きな存在感を示しており、恒大集団は中国系デベロッパーの中でも特に大きな会社の1つです。恒大ショックとは、中国当局による不動産業界の金融引き締めに端を発しており、中国の不動産業界や金融業界に影響を及ぼす恐れがあります。

しかし、例えばリーマンショックなどと比較すると、恒大ショックによる影響は軽微と考えられるほか、恒大ショックの先行きはまだ不透明な状況です。

2021年以降の海外不動産投資において、恒大ショックに関するリスクヘッジを講じるのであれば、中国系デベロッパーが売主となっている物件は慎重に検討しましょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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