ウクライナ支援・現地の様子や難民受け入れの課題は?AAR Japanが緊急報告会実施

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ロシアによるウクライナ侵攻を受け、先進国はロシアへの経済制裁を強化している。紛争の長期化とともに避難民は増え続け、ウクライナの隣国や欧州では、市民が先頭に立ち、さまざまな支援の手を差し伸べている。日本政府も避難民の受け入れを表明、今月5日に政府専用機で20人が来日した。侵攻直後は日本国内で寄付活動が広がったが、受け入れ人数が増えていけば、直接、避難民の支援に関わる可能性も出てくる。そのとき、どのような支援ができるだろうか。特定非営利活動法人の難民を助ける会(AAR Japan)は3月26日、オンラインシンポジウム「ウクライナ支援緊急報告会」を開催。国境で人道支援活動を続けるAAR Japanの報告は、視聴者にさまざまな示唆を与えた。

21世紀最大の人道危機と言われるウクライナ侵攻。AAR Japanは、ロシアの侵攻の翌日から緊急募金を開始、約1週間後に隣国ポーランドの修道院への資金提供を通じてウクライナ国内への支援を実施した。同報告会ではポーランド入りした東京事務局の中坪央暁氏が、現地で接した避難民たちの生活を、動画を交え紹介した。

ポーランド最前線報告(3/10~3/12撮影)

3月24日時点でウクライナ周辺国へ避難した人は約370万人。行き先と人数はポーランド220万人、ルーマニア57万人、非EUのモルドバ38万人、ハンガリー34万人。同日時点でウクライナ国内避難民は650万人、戦火の被災者は1200万人で、人口4200万人のうち4人に1人が家を失った。

ポーランドの避難民受け入れの特徴として、中坪氏は①避難キャンプが存在しない②大多数が女性と子供、高齢者、③市民社会が受け入れているという3点を挙げた。避難する人たちはキャンプに滞留することなく、国境から鉄道やバスで、EU内を自由に移動できる。20歳から60歳までの男性は国防のため出国が禁止されており、国外に避難できるのは女性と子供、高齢者が大半だ。

政府や国連の対応は遅く、受け入れ活動の前線に立つのは企業や民間人。画像では、フランスの抗議活動「黄色いベスト運動」で着用された反射材付きのベストを着た市民が、物資や食事の提供にあたっていた。避難民が希望する行先はドイツやスウェーデンなどEU圏。「ベルリン」など、地名が書かれたプラカードを持って希望者をピックアップする若者の姿も紹介された。

市民による支援は避難民に感謝されている半面、中坪氏はEU圏への大量の避難民流入で生じている課題として、身元確認を簡略化したことでウクライナ以外の第三国の市民や犯罪組織、国際テロ組織の入国が可能になっている点、コロナ検査が無いことによる感染リスク、ペット同伴の避難民は、動物検疫がなし崩しになっている点を挙げる。紛争の長期化を見据えた持続的な支援が必要だ。

続いて、モルドバでの支援活動が紹介された。AAR緊急支援チームの本間啓大氏がオンラインで現地から報告した。3月25日までに37万人以上がウクライナからモルドバに避難、直後にモルドバ政府が緊急事態宣言を出し、交通アクセスが難しくなり、人々は自動車や自動車、徒歩で移動した。国内には政府によって難民センターが設置されたが、収容人数は5千人で、全員は到底、入所できない。センターの滞在は最大72時間で、ホテルや民泊、知人宅に移るまでの中継地点となっている。同国でも社会サービスはひっ迫しており、支援は民間ボランティアに委ねられている状態という。

AAR Japan は、WFP(国連世界食糧計画)と調整して食糧支援を続けているが、その中で課題も見えてきた。難民センターにいるのは全体の5%ほどで、ほとんどがホストコミュニティにいる。非EUのモルドバにいるのは、ウクライナの中でも経済的の余裕がない人、欧州で他に行く宛てがない人、すぐに帰国したい人が大半と推察されるが、滞在が長引けばホストコミュニティの受け入れが限界となり、避難民は行き場を失ってしまう。

女性と子供、高齢者で構成される避難民は、先の見えないことへの不安、ストレス、ジェンダーに基づく暴力からの保護やカウンセリング機関への照会が望まれる。子供たちには戦禍のトラウマや、友達がいない孤独感へのケアが必要だろう。

ウクライナでは、戦闘の不発弾やロシア軍が設置した地雷の除去が、帰国後の避難民や支援に大きな障壁となる。元の生活を取り戻すのには、膨大な時間がかかる。「目を見開いて一つ一つの事象を見据えていくべき」と、各地で人道危機を支援してきた中坪氏は言う。避難民の問題は今回が初めてではない。ミャンマーのイスラム少数民族ロヒンギャは、国軍の武力弾圧によってバングラデシュに避難し、人数は累計約100万人。帰国もままならず、難民キャンプに留まり続けている。

プログラムの終盤で、AAR Japanは情報の発信や拡散による支援を説く。「ウクライナ問題は今、トップニュースだが、長期化することで次第に2番目、3番目となり、数も減っていく。でも、難民はいなくなっていないし、困窮している。すすんで情報を得て、広げて欲しい」と呼び掛けた。

AAR Japanは現地での支援活動をウェブサイトで随時更新中。寄付も引き続き受け付けている。

AAR Japan ウクライナ支援緊急報告会

【関連サイト】AAR Japan [難民を助ける会] Youtube チャンネル
【関連サイト】AAR JAPAN「【ウクライナ緊急支援】避難を強いられている方々を支えてください
【関連サイト】AAR JAPAN「活動レポート
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