ふるさと納税制度の見直しに関するニュースがよく聞かれるようになり、魅力的な返礼品が無くなるのではないかと心配する方も少なくありません。総務省は、ふるさと納税制度の目的にふさわしくない高価な返礼品などは対象外にするよう規制を強める方針です
そこで今回はふるさと納税制度に関する基本的な説明から、返礼品見直しの動きを含めた2018年版の最新情報をご紹介します。「ふるさと納税を利用した控除の仕組みとは」「返礼品や還元率がどう変わるのか」など今後のふるさと納税制度の動きを見ていきましょう。
目次
- これまでのふるさと納税制度と今後
1-1.ふるさと納税制度の利用状況
1-2.ふるさと納税の利用者は増加する? - 今後の返礼品の還元率はどうなる?
2-1.還元率3割を超える返礼品は減少傾向
2-2.還元率の高い返礼品を送付する団体の状況と今後
2-3.地場産品以外の返礼品の現状と見直し状況 - 返礼品に代わる? 新しいふるさと納税制度の推進策とは
3-1.ふるさと起業家支援プロジェクト
3-2.ふるさと移住交流促進プロジェクト
1 これまでのふるさと納税制度と今後
まずは、ふるさと納税制度が社会にどれほど浸透したのかをデータで確認します。
1-1 今までのふるさと納税制度の利用状況
ふるさと納税の利用者は平成26年度から爆発的な勢いで増加しており、平成29年度の受入実績は制度が始まった平成20年度の約45倍となりました。
自治税務局が平成30年7月6日に発表した「ふるさと納税に関する現況調査結果(平成29年度実績)」によると、ふるさと納税の受入額と受入件数は一貫して右肩上がりの傾向です。
年 | 受入額(億円) | 受入件数(万件) |
---|---|---|
2008年 | 81.4 | 5.4 |
2009年 | 77 | 5.6 |
2010年 | 102.2 | 8 |
2011年 | 121.6 | 10.1 |
2012年 | 104.1 | 12.2 |
2013年 | 145.6 | 42.7 |
2014年 | 388.5 | 191.3 |
2015年 | 1652.9 | 726 |
2016年 | 2844.1 | 1271.1 |
2017年 | 3653.2 | 1730.2 |
ふるさと納税制度が開始された初期の5年間は穏やかな増加でしたが、平成26年度では前年度の受入額の約2.7倍の増加となり、27年度には26年度の約4.3倍で1000億円台へと大幅に増加しました。
増加の勢いは29年度も継続しており、受入額は3千億円台を突破し、受入件数は1,730万件に及んでいます。
都道府県別では、下記地域がふるさと納税の受入額や受入件数で顕著な実績を残しています。
- 北海道
- 佐賀県
- 宮崎県
- 山形県
- 大阪府
- 静岡県
- 鹿児島県
- 岐阜県
- 長野県
- 高知県
- 和歌山県
1-2 ふるさと納税の利用者は増加する?
平成28年度における給与所得者は約4,800万人、事業所得申告者は約450万人存在するのに対し、29年度のふるさと納税の受入件数1,730万件であることから、平成30年(2018年)も増加する余地があるでしょう。
受入件数も1人で複数の寄付を行っている方もいるため給与所得者だけでも多くのふるさと納税未利用者が存在します。加えて自営業者の事業所得者などを含めると相当な数の利用者の増加が期待できます。
平成30年度の受入額については、返礼品の還元率の低下などの影響により29年度の伸び率より下がることが予想されますが、4,000億円台に乗る可能性もあります。
2 今後の返礼品の還元率はどうなる?
ふるさと納税の返礼品の還元率とは、寄附額に対する返礼品の調達価格の割合です。近年この還元率の高さが問題視され、総務省は還元率を3割以下に抑えるよう各自治体に是正要請しました。その結果、還元率3割超を超える返礼品を送付する自治体の数は着実に減少しています。
2-1 返礼品の還元率の変化と今後
総務省では平成29年4月1日に発表した「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」のなかで、以下のように各自治体に通知しました
- ふるさと納税の趣旨に反するような返礼品(例:還元率の高い返礼品)は、換金の困難性、転売防止策の程度、地域への経済効果等の如何にかかわらず、送付しないようにする
- 還元率に関しては、社会通念に照らし良識の範囲内のものとし、少なくとも、返礼品として3割を超える還元率のものを送付している地方団体においては、速やかに3割以下とすること
2-1 還元率3割を超える返礼品は減少傾向
総務省の見直し要求の結果、自治税務局市町村税課が発表する「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査(平成30年9月11日付)」によると、還元率3割超の返礼品を送付している団体数は次のように減少しています。
還元率3割超の返礼品を送付している団体数の推移
時期 | 団体数 |
---|---|
H28年度 | 1156 |
H29.8 | 841 |
H30.3 | 490 |
43282 | 295 |
43344 | 246 |
還元率3割超の返礼品を送付している団体数は平成28年度の1,156団体から平成30年9月1日には246団体へと5分の1程度まで減少し、さらに30年11月1日での見込みとしては174団体にまで改善されると予想されています。
なお、この174団体の全団体数1,788団体に占める割合は9.7%です。すべての団体が平成30年度中に見直しに移行するのは難しいですが、多くが指定された還元率を下回るよう期待されます。
2-2 還元率の高い返礼品を送付する団体の状況と今後
高い還元率の返礼品を送付した団体の見直し状況は次の通りです。
団体名 | 還元率(%) | 見直し意向 |
---|---|---|
茨城県境町 | 65 | 見直し済 |
岐阜県関市 | 53.3 | 見直し済 |
静岡県小山町 | 40 | 未定 |
滋賀県近江八幡市 | 37.9 | 未定 |
大阪府泉佐野市 | 50 | 未回答 |
福岡県宗像市 | 48.6 | 9月中 |
福岡県上毛町 | 45 | 未定 |
佐賀県唐津市 | 52 | 未定 |
佐賀県嬉野市 | 65 | 未定 |
佐賀県基山町 | 50 | 未定 |
佐賀県みやき町 | 49 | 未定 |
大分県佐伯市 | 43.9 | 9月中 |
(「現況調査の公表の際に団体名を公表した12団体の見直し状況(平成30年9月1日時点)」より)
還元率の見直しへの動きを進める団体も見られますが、未定などとする団体のほうが多いのが現状です。
なお、上表にある団体を含め人気の高い返礼品は次の通りです。
人気返礼品の例
団体名 | 人気商品 | 寄付金額 |
---|---|---|
大阪府泉佐野市 | 黒毛和牛小間切れ切落し2.2kg | 1万円以上 |
佐賀県嬉野市 | 佐賀牛 切り落とし1Kg | 1万円 |
佐賀県唐津市 | 老舗肉屋の特上ハンバーグ10個 | 1万円 |
福岡県上毛町 | 九州産特大うなぎの蒲焼2尾 | 1万円 |
北海道八雲町 | いくら醤油漬100g×6パック | 1万円 |
和歌山県湯浅町 | 田村みかん【秀品5キロ】 | 1万円 |
*ふるさと納税サイト「さとふる」の10月第1週の情報を参考に作成
総務省の指示に従い2018年から2019年にかけては高還元率で提供する団体が少なくなることが予想されるため、ふるさと納税利用者としては早めに魅力的な商品等を得られるように申し込んだほうが良いでしょう。
ネット上では今もなお100%超の高還元率の返礼品も見られますが、見直しが進む中で徐々に減少していくでしょう。
2-3 地場産品以外の返礼品の現状と見直し状況
返礼品は地場産品のものと定められていますが、地場産品以外の返礼品を送付する団体は現在でも少なくありません。例えば下記のような商品やサービス等が提供されています。
飲食品、酒類、調味料などの食品類のほか、衣類、化粧品類、雑貨類、寝具類、健康・美容機器類、電化製品類、スポーツ・キャンプ用品類、インテリア類、ギフトカード類、利用券類(旅行、食事、ゴルフ場等)、ポイント など
しかし、先の総務省の返礼品に関する通知では還元率の見直しとともに地場産品以外の返礼品についても見直しを促しており、それに対応する団体も徐々に増加しています。
地場産品以外の返礼品を送付していた235団体のうち45団体が見直しを行っており、残り190団体が完了していない状況です(平成30年9月1日付)。
地場産品以外の返礼品の見直しの動きも、還元率3割規制ど同様に徐々に進むでしょう。平成30年度の時点ではまだ地場産品以外の返礼品の入手は可能ですが、31年以降は地場産品以外の希望の商品やサービス等を入手するのは徐々に困難になっていくと予想されます。
3 返礼品に代わる? 新しいふるさと納税制度の推進策とは
ふるさと納税制度が開始されて10年ほど経過して成熟期に入った今、返礼品の内容や還元率などで利用者を増やすという方法が見直されつつあります。
総務省はその具体的な方策として、クラウドファンディング型のふるさと納税を導入する地方団体をバックアップするための起業家支援、移住交流促進に向けたさまざまな支援策を提供しています。それが「ふるさと起業家支援プロジェクト」と「ふるさと移住交流促進プロジェクト」です。
3-1 ふるさと起業家支援プロジェクト
ふるさと起業家支援プロジェクトとは、ふるさと納税を活用して地域の課題解決に役立つ事業を創業しようとする起業家を支援するための仕組みです。寄付者はふるさと納税を通じて特定の地域に役立つ事業を応援するという社会貢献が実現できます。
制度の概要
寄付者は、自分が応援したい起業家や事業を選択してその地方団体へふるさと納税を行えば、起業家はその団体から寄付金(補助金)が得られ事業を推進できます。
寄付者 | 寄付者は応援したい起業家や事業を選んでふるさと納税を行う |
地方団体 | 地方団体は地域の課題解決に役立つ事業分野を示して起業家を募集し選定する。また、起業家の事業に対するクラウドファンディング型のふるさと納税として、クラウドファンディングサイト等を通じてふるさと納税を募集する。 さらにふるさと納税を財源として補助する金額に上乗せして各地方団体が独自に補助を行う場合に当該補助を実施する |
国(総務省) | 総務省は、起業家の事業立ち上げの初期投資に要する経費に対して地方団体がふるさと納税を財源に補助する金額を超えない範囲で行う補助等を行う場合に特別交付税措置(実施の団体へ)を講じる |

(総務省「ふるさと起業家支援プロジェクト」より)
以下は、ふるさと起業家支援プロジェクトの支援を受けて実現した事業の一例です。
地方団体 | 事業名・内容 | 目標額 | 寄付総額 |
---|---|---|---|
島根県雲南市 | 人とまちとのつながりで、楽しく、元気に、健康に!~暮らしに寄り添うコミュニティナース | 800万円 | 1062.1万円 |
鳥取県 | 医療的ケアの必要な子どもたちに、大自然の中で様々な体験を楽しんでもらいたい! | 150万円 | 159万円 |
(トラストバンク「ふるさとチョイス」より)
3-2 ふるさと移住交流促進プロジェクト
ふるさと移住交流促進プロジェクトとは、ふるさと納税の仕組みを活用して人口の減少や高齢化に悩む地域への移住や定住のきっかけとなる移住交流等を推進する取り組みです。
ふるさと納税を行った人へ地方団体から政策への提言を求めたり、イベントの案内を送ったり交流会を開催するなどして、その地域への関心を高め維持する取組が実施されています。
ふるさと納税への関心が高価な返礼品等に向けられていましたが、ふるさと移住交流促進プロジェクトは「地域と人との関わり方」に注目を集めるための取り組みであり、将来の移住や定住を促進する役割を担っています。
制度の概要
寄付者から募ったクラウドファンディング型ふるさと納税を活用し、地方団体と総務省が移住希望者に対してさまざまな移住対策事業を展開します。
寄附者 | 移住などに一定の関心を持っている寄付者などが応援したい事業を選びふるさと納税を行う |
地方団体 | 地方団体は、クラウドファンディング型ふるさと納税を活用し、事業に共感する方からふるさと納税を募集し、移住交流促進事業を行う。また、団体はふるさと納税をきっかけとした継続的な関係を維持する取組みを実施し、さらに寄附者を含め移住希望者に対して移住・定住対策事業を推進する
継続的な繋がりを持つ取組(モデル団体を対象に財政支援)の例 ふるさと納税を活用した移住交流促進事業の例 |
総務省 | 総務省は、地方団体の移住・定住対策の取組に対する特別交付税措置等によってその団体を支援する。
移住・定住対策の取組の例(特別交付税措置) |
(総務省「ふるさと移住交流促進プロジェクト」より)
以下は、ふるさと移住交流促進プロジェクトの支援を受けて実現した事業の一例です。
地方団体 | 事業名 | 目標額 | 寄付総額 |
---|---|---|---|
高知県室戸市 | お山の学校を守りたい! ~移住促進住宅整備で集落を元気に~ | 139万円 | 114.4万円 |
(トラストバンク「ふるさとチョイス」より)
ふるさと納税では、還元率が高く、和牛やカニなど地元の特産品が特に人気を集めましたが、今後は制度趣旨に沿った返礼品や、地域貢献につながる事業への寄付が望まれています。
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HEDGE GUIDE 編集部 ふるさと納税チーム

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