不動産所得の必要経費、節税に役立つ不動産投資の税務知識まとめ

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賃貸経営で得られる不動産収入から諸々の必要経費を差し引いたものが不動産所得となります。不動産所得を得た場合には確定申告をする必要がありますが、「経費になるもの」「ならないもの」を正しく理解しておかないと余分に税金を支払うことにもなります。

この記事では不動産所得の必要経費について節税対策にも有効な税務知識を解説します。不動産所得で経費計上できる経費の種類や節税効果を高めるコツを詳しく知りたい方は、参考にしてみてください。

目次

  1. 不動産所得とは
    1-1.経費計上と節税効果
    1-2.不動産所得の計算方法
  2. 不動産所得における必要経費の種類
    2-1.給料賃金は事業所得のみ経費計上できる
    2-2.減価償却費は建物分のみ経費計上できる
    2-3.貸倒金は事業所得にのみ経費計上できる
    2-4.地代家賃は支払った家賃を経費計上する
    2-5.借入金利子は土地分に注意
    2-6.租税公課のうち所得税と住民税は経費にならない
    2-7.損害保険料は当年度分のみ
    2-8.修繕費は維持管理や原状回復のみ経費となる
    2-9.雑費に算入できる支出
    2-10.専従者控除は白色と青色で異なる
  3. 不動産所得の節税ポイント
    3-1.建物比率が高い物件を選ぶ
    3-2.課税所得が多いほど節税効果も期待できる
  4. 節税と経費における注意点
    4-1.事業的規模になると事業所得にできる
    4-2.家賃の貸倒れがあった場合
    4-3.修繕費か資本的支出かを判断する目安
  5. まとめ

※記事内の情報は2019年5月時点の情報となります。

1 不動産所得とは

不動産所得とは、土地・建物などを貸付けて得られる所得です。マンションやアパートの家賃収入や土地の上の看板の使用料、駐車場料金などが該当します。あるいは地上権などの権利設定により得られる所得も含みます(なお、不動産などを売却して得た譲渡所得は不動産所得と異なります)。

不動産所得は毎年1月1日から12月31日までの期間で集計し計算します。そして確定申告により納める税額を申告します。

1-1 経費計上と節税効果

会社員の方でも給与以外の収入(不動産所得など)があれば、確定申告が必要です。確定申告では、家賃収入のほかに収入を得るために要した経費を計上できます。

経費計上することで所得額を引き下げることができ、経費の金額が収入を上回れば赤字として申告できます。赤字分は給与所得などと合算(損益通算)でき、総所得を引き下げるので節税効果が期待できます。

1-2 不動産所得の計算方法

不動産所得は、家賃や駐車場の総収入から修繕費・管理費などの必要経費を差し引いて求めることができます。

不動産所得=総収入金額-必要経費

総収入金額には家賃のほかに、更新料や返還の必要がない敷金・保証金・礼金などを含みます。不動産所得は、その他の所得(給与所得、事業所得、一時所得、雑所得など)と合算した上で、課税総所得金額に応じた税率で所得税と住民税が算出されます。

不動産の総収入金額よりも必要経費のほうが大きくなれば総所得を引き下げる効果が出るため、所得税および住民税も小さくなるというわけです。

2 不動産所得における必要経費の種類

確定申告の際に、どのような費用が経費として認められるのかを確認します。確定申告書には所得を計算するための収支内訳書(不動産所得用)という添付書類があり、経費として記入する科目が記載してあります。

  • 給料賃金(事業所得)
  • 減価償却費
  • 貸倒金(事業所得)
  • 地代家賃
  • 借入金利子
  • 租税公課
  • 損害保険料
  • 修繕費
  • 雑費
  • 専従者控除(事業所得)

不動産経営で発生する経費は、上記のいずれかに当てはめることになります。ただし、不動産所得ではなく事業所得として申告する場合のみ適用される項目もあるため注意が必要です。それぞれ確認していきます。

2-1 給料賃金は事業所得のみ経費計上できる

給料賃金は、賃貸している建物などの管理あるいは賃料の集金をする人に支払う経費です。事業用不動産の場合に計上する支出となり、賃貸と建物の管理を委託する管理会社に支払う場合の手数料は、雑費で計上することに注意します。

2-2 減価償却費は建物分のみ経費計上できる

減価償却費は、賃貸している建物および附属設備の償却費です。不動産の取得費用を毎年一定額ずつ経費として按分計上するもので、構造と購入時における築年数によって償却する期間が違います。

なお、不動産の購入費用のうち、土地の分は取得価額に含まれるので経費としては計上できません。そのかわり売却時には譲渡所得から控除できます。

このほか、中古物件を購入した時に不動産会社に支払う仲介手数料も土地分と建物分に按分します。土地分は取得価額に算入するので経費にはできませんが、建物分は購入金額の建物分に算入して減価償却の対象となります。

2-3 貸倒金は事業所得にのみ経費計上できる

貸倒金とは、回収の見込みがない家賃の未払い分であり、不動産所得を計算する上では経費として計上できません。事業用として申告する場合に経費に算入できます。

事業用不動産の条件としては、独立した部屋が10室以上か、あるいは5棟以上の建物を運用している場合に申告できます。申告する際は、不動産所得ではなく事業所得となります。

2-4 地代家賃は支払った家賃を経費計上する

地代家賃とは、借地に建物を建てて賃貸しているような場合に計上できる経費です。自分が支払う賃料を経費として計上します。

2-5 借入金利子は土地分に注意

借入金利子は、賃貸する不動産を購入した際に借り入れたお金の返済金額のうち、利子の分のみ経費として計上できるものです。元利均等払いであれば、利子の分は年々少なくなるため、経費計上できる金額も次第に少なくなります。

借入金利子のうち、購入金額の土地の分に関しては、全額経費として計上できるわけではありません。決算で収入よりも経費が多い赤字だった場合には、土地分の借入金利子で赤字分は経費から除外します。

また賃貸が始まる前に支払った借入金利子は経費として計上できませんが、建物分に関しては取得価額に含めることができます。

2-6 租税公課のうち所得税と住民税は経費にならない

租税公課は賃貸する不動産を購入する際に支払った税金と、賃貸している間に支払う税金です。例えば土地・建物にかかわる固定資産税と都市計画税、不動産取得税や印紙税、登録免許税や事業税に消費税などが該当します。

ただし所得税と復興特別所得税、住民税は対象外です。ほかに修正申告や無申告などによる加算税も経費にはなりません。固定資産税についても、不動産を売却すれば引き渡しをした後の分を精算金として受け取りますが、精算金の分は経費計上できません。

2-7 損害保険料は当年度分のみ

損害保険料は賃貸する不動産にかける火災保険や地震保険の保険料です。一括してすべて前払いをしている場合には、当年度分だけ毎年経費に計上します。

2-8 修繕費は維持管理や原状回復のみ経費となる

修繕費は賃貸する建物の維持管理や原状回復のために要した費用です。ただし、修繕の範囲を超えて建物の価値を高める目的で行った工事費用は、修繕費として認められません。この場合には資本的支出となり、固定資産に計上します。そのため減価償却の対象となります。

2-9 雑費に算入できる支出

雑費にはさまざまな費用を算入できます。前述した物件の管理を委託している管理会社に支払う管理手数料は、雑費として計上します。管理組合の管理費や修繕積立金も雑費扱いです。

ほかに賃貸に関係する出費も雑費として計上できます。たとえば入居者を募集するための広告費用、賃貸経営を勉強するために購入した新聞や本、雑誌なども経費として計上可能です。

このほか参加したセミナーの費用や交通費、物件を見学するために要した交通費なども雑費として計上できます。さらに確定申告を税理士に頼んだ場合には、支払った費用を雑費として経費に算入できます。

2-10 専従者控除は白色と青色で異なる

家族を従業員としている場合に、専従者控除を受けることができます。白色申告の場合の控除額は、配偶者86万円、配偶者以外一人につき80万円、もしくは「控除前の事業所得÷(専従者の人数+1)」の低いほうとなります。ただし、不動産の貸付が事業的規模(5棟10室など)に達していることが条件です。

一方、青色申告の場合は、支払った給与を経費計上することができます。

3 不動産所得の節税ポイント

不動産所得にはさまざまな経費があり、収入を経費の金額が上回ると赤字として申告できます。不動産所得は給与所得やほかの雑所得と合算(損益通算)することができるので、会社から天引きされた所得税から還付を受けたり、さらに住民税を引き下げたりすることになるため、上手に経費計上することで節税につながります。

3-1 建物比率が高い物件を選ぶ

購入する物件選びで工夫をすれば、節税効果を高めることが可能です。例えば購入金額のうち土地に対する建物の比率が高いほど、減価償却費が大きくなります。赤字経営となれば赤字分を大きくできるので、還付される税金も多くなります。

3-2 課税所得が多いほど節税効果も期待できる

税率が高い分だけ引き下げられた課税所得の税率も高くなるため、元々の課税所得が多いほど節税効果も高くなります。ただし賃借人がつかずに空き家となったままでは、借入金の返済は持ち出しとなり、負担が大きくなるので注意が必要です。

4 節税と経費計上の注意点

節税のための経費と確定申告についての注意したいポイントをご紹介します。

4-1 事業的規模になると事業所得にできる

賃貸している不動産が事業的規模と認められると、事業所得として申告できるようになります。この場合、青色申告が可能となるため、経費として認められる項目が増えます。前述した通り、事業的規模と認められるのは、独立した部屋が10室以上か、あるいはアパートやマンションが5棟以上ある場合です。

4-2 家賃の貸倒れがあった場合

「入居者が家賃を払ってくれない」「退去後も滞納した家賃を払わない」といった場合、確定申告では注意が必要です。通常、賃借人と賃貸契約を結び、その契約が失効しない限りは毎月家賃収入を売上として計上することになります。

つまり家賃を滞納され、現金が入金されないとしても、売上として計上しなければなりません。実際には入金されていない売上に対して課税されることになります。

このとき、事業的規模の場合には、貸倒れが確定した翌年に経費とすることができます。一方、事業的規模ではない場合は、確定申告書の内容に誤りがあり税額が実際よりも多かったことを申告する「更正の請求」手続きが必要になります。更正の請求ができるのは確定申告をしてから5年以内です。

また、「貸倒れ」と認められるためには入居者が音信不通になるか、退去してから1年が経過するといった状態になることが条件となります。入居中の状態で家賃を払わなくても、貸倒れとは認められないことに注意します。

4-3 修繕費か資本的支出かを判断する目安

アパートやマンションなど、建物や室内設備などは経年劣化により修繕が必要になります。その修繕費も経費として計上しますが、場合によっては資本的支出として計上します。

資本的支出とは、建物の取得費用に組み込む形になり、経費は減価償却で行います。つまり、要した工事費用は一度に不動産取得から差し引くことができず、耐用年数に応じて毎年少額ずつ経費に算入するということです。

経費となるか、資本的支出となるかの判断は、建物の現状維持あるいは保守管理の範囲にあるか否かによります。例えば外壁を従来のものから耐久性の高いものに替えた場合、資本的支出となります。経費として算入できるのは、例えば壁紙の張り替えや建具の修理、共用部の蛍光灯の交換などです。

エアコンや給湯器、キッチンやトイレを交換した場合には、資本的支出として扱います。ただしエアコンのように、1台の交換費用が10万円に満たない場合には、修繕費として計上できます。

10万円以上20万円未満であれば、3年で分割する「一括償却資産」で申告します。30万円未満ならば、事業的規模として青色申告をしている場合には1年で経費計上できる「少額減価償却資産」としての申告も可能です。

4 まとめ

不動産所得には様々な経費を計上でき、節税につなげることができます。ただし修繕費のように資本的支出との区別の判断が必要なものや、規模によっては事業所得として青色申告が必要なケースには注意が必要です。

購入する物件によっても節税効果は違ってくるため、不動産を取得する前に対象物件の収入、経費、節税効果をよく検討することが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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