2020年の日本全体の個人寄付総額は1兆2126億円、2016年調査から約1.5倍に増加。「寄付白書2021」発行

寄付・社会的投資が進む社会の実現を目指す認定特定非営利活動法人(NPO)日本ファンドレイジング協会は、日本の寄付の全体像を明らかにする調査レポート「寄付白書2021」(税込3300円)を12月17日に発売する。販売に先立ってレポートの概要が明らかにされた。

同書は2010年の創刊以来①日本の現在の寄付市場全体の概観②寄付者・市場のニーズの的確な把握③寄付市場の特徴的な変化を捉えることを目的に出版されている。寄付や社会的投資への関心が高まりつつある昨今、多くの報道や研究、政策文書において活用されている。発行は賛同者の寄付によって支えられていることも特徴で、今回はクラウドファンディング(CF)を通じて185人から322万5千円を集め、4年ぶりの発行となった。

最新刊は、寄付市場の国際比較、日本社会の10年間の変化、コロナ禍という大きな社会変化の中にあった20年の寄付の動向、遺贈寄付への注目の高まり、社会的投資(ESG投資、インパクト投資)の急速な普及状況などのトピックを網羅している。

20年の日本の寄付市場について、同協会は日本全体の個人寄付総額を1兆2126億円と算定。前回調査(2016年1月〜12月)の個人寄付総額7,756億円と比較して、約1.5倍と大きく増加した。増要因に「ふるさと納税」の寄付があり、2016年と比較すると、ふるさと納税を除いた個人寄付総額は16年が4912億円、20年が5401億円、ふるさと納税に限定すると16年が2844億円、20年が6725億円となった。ふるさと納税の影響を除外しても個人寄付総額は拡大傾向にあると同協会は見る。

クレジットカードによる寄付は10年間で5倍となり、「手渡し」に次ぐ2番目の決裁方法となった。CFの市場規模も、統計がとれている14年から約10倍と拡大傾向が続く。

海外との比較で、日米英の3ヶ国を、20年の個人寄付総額と名目GDPに占める割合で比べると、日本が1兆2126億円、名目GDPの0.23%、米国が34兆5948億円、1.55%、英国が1兆4878億円、0.47%。米国は寄付大国で頭一つ抜けている印象だが、英国と日本で金額に大きな差はない。

寄付についての考えを問う項目では、「寄付者の名前は公表されるほうが寄付のしがいがある」は「そう思わない」という回答が36.4%、「どちらかといえばそう思わない」が37.8%で、匿名志向が強い。「寄付は未来社会への投資だと思う」は「そう思う」が43.6%と、寄付をポジティブにとらえている。

新型コロナウイルス感染症関連の寄付の調査では、寄付を①感染者を支援するための寄付②感染拡大を防止する活動を支援するための寄付③感染症対策から経済的・社会的な影響を受けた団体や個人を支援するための寄付と定義。結果、新型コロナ関連の寄付を行った人は全体の8.7%で、平均寄付金額は2万6671円だった。寄付者率は若年層で高く、平均寄付金額は中年層で高い。こうした傾向から同協会は「政府への信頼低下と身近な人との助け合いの意識強化」を読み取っている。

一方、「将来資産があれば、亡くなる際に一部を遺贈寄付してもよいと思うか」と遺贈寄付の意思を問う質問では、「そう思う」が32.2%に上った半面、「そう思わない」が28.4%、「どちらかといえばそう思わない」が29.3%と、過半数が否定的だった。「寄付したお金がきちんと使われているのか不安に感じるか」という質問には「どちらかというと感じる」が40.9%、「そう思う」36.3%と、7割超が不安を感じている現状も明らかになった。寄付市場の成長とともに、用途の透明性も問われていきそうだ。

【関連サイト】認定特定非営利活動法人 日本ファンドレイジング協会「調査研究(寄付白書)」