ふるさと納税制度は、納税者が納税する都道府県や市区町村を選ぶことができ、その地方自治体から返礼品をもらうことができる制度です。
不動産投資家も活用することを検討したい制度ですが、ふるさと納税の金額によっては、納め過ぎとなる場合があります。特に不動産所得が年によって変動する場合は、その上限額も変動するため注意が必要です。
この記事では、不動産投資をしている人のふるさと納税の上限額について、ふるさと納税制度の仕組みや計算方法から解説していきます。
※記事内の税金・税率などは2022年10月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- ふるさと納税とは
1-1.ふるさと納税の仕組み
1-2.ふるさと納税の流れ - ふるさと納税の上限額と不動産投資
- 不動産投資をしている人のふるさと納税の税金控除と控除上限額
3-1.所得税の寄附金控除
3-2.住民税の寄附金控除
3-3.ふるさと納税の控除上限額の計算 - まとめ
1.ふるさと納税とは
ふるさと納税制度は、納税者が、自分の意志で寄付をする地方自治体を選ぶことができるだけでなく、返礼品をもらうことができるというメリットがあります。
ただし、納税の仕組みはやや複雑で、いったん納税者が特定の都道府県や市区町村に寄付をし、その寄付金に相当する所得税や住民税を後から減額する仕組みになっています。
減額できる金額には上限が設定されているため、上限を超えて寄付をした場合、税金を過剰に納めることになります。納め過ぎてしまわないよう、上限額には注意したいといえます。
1-1.ふるさと納税の仕組み
ふるさと納税は、納税者が特定の都道府県や市区町村を選んで寄付という形式で納税することができる制度です。いったん寄付した金額を、所得税の所得控除である寄附金控除と、住民税の税額控除である寄附金控除を利用して納税者に還元する構造になっています。
令和3年度は、約4,500万件、約8,300億円のふるさと納税がおこなわれており、地方自治体にとっては、地元振興の大きな財源になっています。 (※参照:自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果(令和4年度実施)」)
寄付をする地方自治体を選ぶことができるだけでなく、寄付を受けた自治体がその寄付金に対して返礼品を送付してくれることから、返礼品を目当てにふるさと納税をする人も少なくありません。
ただし、平成29年からは、返礼割合を3割以下にすることや、金銭類似性・資産性の高い返礼品を避けることなどの規制がなされています。 (※参照:総務省「ふるさと納税に係る返礼品の送付等について」)
1-2.ふるさと納税の流れ
ふるさと納税をおこなう際は、まず、特定の都道府県や市区町村に寄付をします。寄付を受け付けると、各地方自治体が返礼品とともに受領書を送付して来ます。
その受領書を下に、翌年3月15日までに所得税の確定申告をおこなうことで、所得税の寄附金控除の適用分を受けることができます。
所得税の確定申告書は、住民税の申告書も兼ねているため、翌年分の住民税課税の際、本来の住民税額からふるさと納税に対応する寄附金控除がなされることになります。
2.ふるさと納税の上限額と不動産投資
「ふるさと納税」という呼称から、特定の都道府県や市区町村に寄付した金額の全額が、他の所得税や住民税から控除されるように思えますが、実際には、2,000円は控除されません。
なおかつ、ふるさと納税の住民税からの控除額には上限が設けられているため、上限を超えて寄付をした場合、他の税金から控除されず、税金を過剰に納めることになります。
上限額は、住民税の所得割を基準に定められており、そのラインは所得税の課税所得金額によって変動します。不動産投資家の場合、毎年の不動産所得の金額が必ずしも一定とは限らないため、ふるさと納税の上限額には注意が必要です。
3.不動産投資をしている人のふるさと納税の税金控除と控除上限額
ふるさと納税の上限額には、ふるさと納税の住民税からの控除額には上限が設けられていることが関係しています。
それでは、具体的な上限額はどのように計算されるのでしょうか。毎年の不動産所得が変動する不動産投資家の場合、上限額も変動するため、ふるさと納税の控除計算の仕組みを理解して計算することが必要になります。
以下で、ふるさと納税の控除計算の仕組みを第一段階の所得税の寄附金控除と、第二段階の住民税の寄附金控除とに分けてみていきましょう。その上で、控除上限額の計算方法について解説します。
※以下参照:国税庁「ふるさと納税(寄附金控除)」
3-1.所得税の寄附金控除
ふるさと納税の寄付額は、第一段階として、その年の所得税の計算において寄附金控除として控除されます。
(ふるさと納税の寄付額-2,000円)×所得税率
所得税の寄附金控除は、所得控除といって、税金計算の下となる所得から、寄付金額が控除される仕組みです。そのため、2,000円の自己負担額を除き、ふるさと納税の寄付額に所得税率を掛けた金額が、本来の所得税から引かれることになります。
3-2.住民税の寄附金控除
ふるさと納税の寄付額は、所得税の寄附金控除で控除された後、第二段階として、住民税から寄附金税額控除として控除されます。
- 基本分:(ふるさと納税の寄付額-2,000円)×10%
- 特例分:(ふるさと納税の寄付額-2,000円)×(90%-所得税率×1.021)
住民税の寄附金控除は税額控除であり、本来納めるべき住民税の額から直接控除されます。控除枠は、基本分と特例分に分かれ、基本分は寄付額の10%となっており、ふるさと納税以外の寄付金にも適用があります。
特例分がふるさと納税の寄付の特別枠で、基本分と所得税で引かれた分の残りを控除する仕組みになっています。所得税で引かれた分を計算するため、控除額は所得税率によって変わります。
控除額に上限が設けられているのは、住民税の特例分です。住民税の税額(所得割)の20%が上限となっています。
3-3.ふるさと納税の控除上限額の計算
ふるさと納税の寄付額が、住民税の特例部分の控除上限額を超えないようにするには、住民税の税額の20%以内に収まる必要があることになります。
すなわち、特例分の計算式から、寄付の上限額は、所得税の課税所得金額(各種所得控除を差し引いた後の金額)に応じて、下表のように整理できます。住民税の所得割は課税所得金額の10%となりますが、人的控除額が所得税とは多少異なります。
課税所得金額(所得税) | 寄付上限額 |
---|---|
~195万円 | 住民税所得割×23.559%+2,000円 |
195万円超~330万円 | 住民税所得割×25.066%+2,000円 |
330万円超~695万円 | 住民税所得割×28.744%+2,000円 |
695万円超~900万円 | 住民税所得割×30.068%+2,000円 |
900万円超~1,800万円 | 住民税所得割×35.520%+2,000円 |
1,800万円超~4,000万円 | 住民税所得割×40.683%+2,000円 |
4,000万円超 | 住民税所得割×45.398% |
不動産投資家の場合、不動産所得の金額が変動する場合があり、課税所得金額が変わります。課税所得金額が、所得税の累進課税のどの段階に位置するかによって、寄付の上限額の計算式が異なってくるので注意しましょう。
まとめ
ふるさと納税制度は、納税者が、自分の意志で寄付をする地方自治体を選ぶことができるだけでなく、返礼品をもらうことができるというメリットがあります。
ただし、いったん納税者が特定の都道府県や市区町村に寄付をし、その寄付金に相当する所得税や住民税について寄附金控除制度を利用して減額する仕組みになっています。
住民税の寄附金控除の特例部分には、所得割の20%という上限が設定されているため、ふるさと納税額がこの上限額を超えると、他の税金から控除されず、税金を過剰に納めることになります。
不動産投資家の場合、この上限額は、毎年の不動産所得などの課税所得金額によって変動してくるため、注意が必要です。本記事の計算式を利用して上限額を計算し、ふるさと納税制度を有効利用することを検討してみましょう。
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佐藤 永一郎
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