投資方法の1つに企業の株価や財務情報だけではなく、ESGまたはサステナビリティを考慮して銘柄を選択する方法があります。ESG銘柄の投資対象となる企業は様々ですが、石油販売で国内シェア5割に及ぶENEOSは、脱炭素による業態転換を迫られる中、サステナビリティに対しても現在は積極的に取り組んでいます。
この記事では、ENEOSの特徴や株価動向、ESG・サステナビリティの取り組み内容の詳細や、株主優待情報について詳しくご紹介します。ENEOSの銘柄について詳しく知りたい方、ESG投資に関心のある方は、参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年10月8日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- ENEOSの特徴
- ENEOSの株価動向
- ENEOSのESG・サステナビリティの取り組み
3-1.環境ビジョン(2040年度)
3-2.中期環境目標(2020~2022年度)
3-3.ESG実現の特定重点課題(2020年度) - ENEOSの株主優待内容
- まとめ
1 ENEOSの特徴
ENEOSは、石油製品の販売などの事業を行っている国内大手企業であり、持株会社であるENEOSホールディングスの傘下に属しています。
ENEOSが担当するエネルギー事業の中での主要事業は、サービスステーションでのガソリン給油、販売サービスです。また、温暖化や大気汚染物質の排出抑制などの対策として、燃料電池自動車で使用する水素の供給事業やEV(電気自動車)関連サービス事業にも取り組んでいます。このほか、家庭用電力供給・太陽光買取サービス、家庭用都市ガス・LPガスの供給サービスなども提供しています。
ENEOSと関連グループ企業は、「地球の力を社会やその人々の暮らしの力に。エネルギー・資源・素材における創造と革新を通じて、社会の発展と活力のある未来づくりに貢献する。」という理念を持ちながら事業を行っており、「大切にしたい価値観」の中の1つとして「安全・環境・健康」を掲げています。
2 ENEOSの株価動向
2022年9月30日までの直近1年間のENEOSホールディングス(5020)の株価は、400円台~500円台を推移しており、おおむね横ばいの状況となっています。
2021年10月7日時点のENEOSホールディングスの株価は490円台でした。2021年11月29日に420円台~430円台まで下がりましたが、2022年1月11日時点には、440円台~460円台に戻しています。
その後、2022年5月2日まで440円台~460円台の間で株価は推移していましたが、2022年5月13日に急上昇して500円を超えています。さらに上昇は続いて、2022年6月9日時点でENEOSホールディングスの株価は580円を付けています。この期間に起こった原油価格の高騰により、販売価格や利益率が上がると判断され株価が急上昇しました。
しかし、2022年6月9日より、株価が下落に転じて、2022年6月24日時点で490円まで下がりました。2022年6月24日以降は、480円台~540円台の範囲内で株価が推移し、横ばいの状況が2022年9月22日まで続きましたが、2022年9月26日に再度下落が始まり、2022年9月30日時点での株価は465円となっています。
ENEOSでは、将来的な社会需要が見込めるビジネスの転換を図っており、NECからEV充電サービスの事業譲渡を受けてEV関連サービスの提供を始めているほか、実質再生可能エネルギー100%電力によるEV向けの高出力充電器の実証も開始しています。このような点がESG投資家から評価されることで、将来的に株価が上昇する可能性もあります。
3 ENEOSのESG・サステナビリティの取り組み
企業収益を得るなどの経済的側面だけではなく、環境問題などの社会的側面を配慮した上で企業が事業活動を行い、それによって持続可能な世の中を作ることに貢献するサステナビリティやESGの考え方が世界的に普及しています。
ENEOSは石油販売やエネルギー事業を行う企業の責務として、グループ全体で持続可能な社会形成の実現に貢献するため、環境に与える影響を考慮しながら事業を行う取り組みを実施しています。ENEOSでは「環境保全」に関する以下のグループ行動基準を掲げています。
- 私たちは、地球環境がかけがえのないものであることを認識し、限られた資源を取り扱う企業グループとして、水、土壌、大気等の自然資本と生物多様性の保全に努めるとともに、持続可能な社会の形成に貢献します。
- 私たちは、低炭素社会の形成に貢献するため、省エネルギーの推進および再生可能エネルギーの普及等に努めます。
- 私たちは、資源を効率的に利用するとともに、廃棄物の発生抑制(リデュース)、再使用(リユース)、再資源化(リサイクル)等により、循環型社会の形成に貢献するよう努めます。
- 私たちは、資源開発・調達・製造・流通・販売等、バリューチェーンのすべてにわたって持続可能な生産と消費に努めるとともに、社会に対して同様の働きかけを行います。
また、環境保全実現のため、「環境ビジョン(2040年度)」「中期環境目標(2020~2022年度))」の中長期間の計画や目標を策定しています。以下、それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1 環境ビジョン(2040年度)
ENEOSはグループ企業全体において、2040年までに自社で排出する二酸化炭素のカーボンニュートラルを目指すため、「環境ビジョン(2040年度)」という長期的な目標を策定しています。
カーボンニュートラルとは、二酸化炭素などの温室効果ガスの排出量と吸収量を同じ割合にすることです。世界的な気温上昇傾向が進む中、温暖化などの気候変動問題の対策を講じるため、政府は2050年までにカーボンニュートラルの実現を目指す旨を宣言しています。カーボンニュートラルの実現には、各企業が事業を行う上での脱炭素化への取り組みやその実行が必要となってきます。
石油販売やエネルギー事業を行うENEOSも企業の責務から、2040年までに自社で排出する二酸化炭素のカーボンニュートラルを目指しており、ENEOSが作成した環境ビジョン(2040年度)において、2040年までに二酸化炭素の排出量を、以下の方法によって1,700万トン削減する予定です。
- 技術革新により低コスト化した再生可能エネルギーなどの推進
- EV(電気自動車)を中心としたモビリティ事業の推進
- 製油所、製錬所への自動運転導入による省エネルギーの促進
3-2 中期環境目標(2020~2022年度)
環境ビジョン(2040年度)の計画目標を達成するため、その中間の計画目標として、「中期環境目標(2020~2022年度)」を策定しています。中期環境目標(2020~2022年度)では、「低炭素社会への貢献」「循環型社会への貢献」「環境保全への貢献」の3つの重点テーマが以下の通り掲げられています。
重点テーマ | 基本的な取り組み内容 |
---|---|
低炭素社会への貢献 | ・事業活動における省エネルギー対策の推進 ・事業活動における二酸化炭素回収 ・サプライチェーンにおける二酸化炭素の削減 ・水素、再生可能エネルギー事業の展開 |
循環型社会への貢献 | ・3R推進 |
環境保全への貢献 | ・環境負荷低減への取り組み ・生物多様性への取り組み ・グループ全体での取り組み |
上記テーマのうち、「低炭素社会への貢献」では、2022年度において、428万トンの二酸化炭素削減の目標を定めています。削減目標の具体的な内訳は、「事業活動における省エネルギー対策の推進」と「事業活動における二酸化炭素回収」で216万トンの削減、「サプライチェーンにおける二酸化炭素の削減」で120万トンの削減、「水素、再生可能エネルギー事業の展開」で92万トンの削減となっています。
3-3 ESG実現の特定重点課題(2020年度)
ESG・サステナビリティの取り組みとして、ENEOSはESG経営を推進し、その基本方針を定めています。ENEOSが定めるESG経営とは、「リスクと事業機会を踏まえて経営・事業戦略を策定し、事業を通じて経済価値と社会価値を生み出し、当社のグループ理念の実現を目指す」ことです。
ENEOSでは、事業を行う際にESG実現への課題を「環境」「社会」「ガバナンス」の区分ごとに定めた上で、以下9つのESG実現に対する重点課題の解決に取り組んでいます。
ESG区分 | ESG実現に対する重点課題 |
---|---|
環境 | 低炭素社会の形成 |
循環型社会の形成 | |
社会 | 安全確保 |
健康増進 | |
人権の尊重 | |
人材育成 | |
ダイバーシティ、インクルージョンの推進 | |
ワークライフ、マネジメントの推進 | |
ガバナンス | コンプライアンスの徹底 |
このような重点課題に対して、ENEOSはESG実現へ向けた取り組み項目や目標を立てた上で、その対応を行っています。2020年度におけるESG実現への重点課題に対する取り組み項目や目標は、以下の通りです。
ESG実現に対する重点課題 | 取り組み項目 | 目標 |
---|---|---|
低炭素社会の形成 | ・二酸化炭素排出削減 | ・2009年度比363万トンの二酸化炭素削減 |
循環型社会の形成 | ・廃棄物最終処分低減 | ・廃棄物最終処分率1%未満を維持 |
安全確保 | ・労働災害の発生低減 | ・死亡労災発生件数を0にする ・100万労働時間当たりの不休労災以上の労災件数1.0以下の達成 |
健康増進 | ・従業員の健康管理 | ・がん検診受診率70%以上の達成 |
人権の尊重 | ・人権の啓発 | ・人権研修受講率100%の達成 |
人材育成 | ・企業価値向上を担える人材育成 | ・効果的な人材育成研修の実施 |
ダイバーシティ、インクルージョンの推進 | ・女性の活躍推進 ・障がいのある従業員の活躍推進 |
・新規大卒女性採用比率25%以上達成 ・障がい者の雇用率2.2%以上を維持 |
ワークライフ、マネジメントの推進 | ・働き方改革の推進 ・両立支援制度・プログラムの活用推進 |
・年休取得率80%以上の維持 ・育児休業後の復職率100%の維持 |
コンプライアンスの徹底 | ・違法状況点検 ・重要な法令の遵守 |
・違法状況点検の実施 ・重要法令の研修実施 |
上記表の重点課題9つに対する取り組み項目は12項目、その目標は13項目あります。その中で、「廃棄物最終処分率1%未満を維持」「人権研修受講率100%の達成」「効果的な人材育成研修の実施」「新規大卒女性採用比率25%以上達成」「障がい者の雇用率2.2%以上を維持」「年休取得率80%以上の維持」「違法状況点検の実施」「重要法令の研修実施」の8項目の目標を2020年度中に達成しています。
4 ENEOSの株主優待内容
株主優待とは、株式保有数など一定条件を満たした株主に対して、自社製品やサービスをプレゼントする制度ですが、ENEOSでは株主優待を実施していません。ENEOSの株主に対する還元は、毎年一定額の配当金を出す方法で行っています。
ENEOSは、株主利益を重要視しており、グループ内全体の中期的な業績の推移や見通しを反映した利益還元を基本とした上で、継続的に配当金を出すことに努めています。
2017年度~2021年度までのENEOSホールディングスの1株あたり配当金額は、以下の通りです。
年度 | 中間 | 期末 | 年間合計 |
---|---|---|---|
2017年度 | 9.0円 | 10.0円 | 19.0円 |
2018年度 | 10.0円 | 11.0円 | 21.0円 |
2019年度 | 11.0円 | 11.0円 | 22.0円 |
2020年度 | 11.0円 | 11.0円 | 22.0円 |
2021年度 | 11.0円 | 11.0円 | 22.0円 |
中間期の1株あたりの配当金額は、2017年度時点は9.0円でしたが、2018年度には10.0円、2019年度には11.0円にそれぞれ上がり、その後は変更ありません。期末の1株当たりの配当金額は、2017年度時点では10.0円でしたが、2018年以降は11.0円となっています。
また、2022年度の1株あたりの配当金額は、中間期と期末でそれぞれ11.0円の計22.0円を予定しています。これに加えて、2022年5月16日~同年12月30日までの期間中に、取得株式総数3億株または株式取得総額1,000億円を上限として、自社株買いを行うことを決定しています。
まとめ
脱炭素の影響もあって石油事業の需要は減少していくものの、ENEOSでは業態転換を図るべく、再生可能エネルギー、EV(電気自動車)関連サービス、水素の供給などESG・サステナビリティに配慮した上で、将来性のある事業にも取り組んでいます。
また、株主利益を重要視する企業でもあり、配当金を継続的に出すことに努めている点も特徴です。
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