節税を狙うマンション投資はなぜ失敗する?事例やリスクまとめ

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税金対策や老後の備えのためにマンション投資を始める場合、安易に不労所得や節税を狙うと大きな失敗につながることがあります。不動産投資は様々なメリットがありますが、同時に多くのリスクを抱えているからです。

今回は会社員がマンション投資で陥りやすい失敗例をご紹介します。どのような理由でマンション投資を始め、そしてなぜ失敗してしまうのか、どうすれば失敗を避けられるのかをまとめていきたいと思います。

目次

  1. マンション投資で失敗する最大の理由
    1. マンション投資のリスクを見ずにメリットだけを見て始める
    2. よくある勧誘文句は「節税対策」「相続対策」「老後の生活資金対策」
  2. マンション投資と節税対策
    1. 減価償却費と損益通算による節税効果
    2. 所得税の節税を目的としたマンション投資で失敗する例
  3. マンション投資と相続対策
    1. 現金から不動産に換えるメリット
    2. 相続税の節税を目的としたマンション投資が失敗する例
  4. マンション投資と将来・老後の生活の備え
    1. 高い表面利回りは一見すると魅力的
    2. 将来への備え目的で失敗するパターン

1 マンション投資で失敗する最大の理由

不動産投資では毎月の家賃収入から諸経費を差し引いて手元に残ったお金をもとに、次の投資へとつなげていきます。ただし、物件を購入すれば自動的に家賃収入が得られるというわけではありません。

マンション経営は空室リスクや滞納リスクと常に表裏一体で、さらに共用設備の点検・修理、建物の修繕など物件の適切な維持管理業務が不可欠です。(管理業務は外注可能ですが、その分のコストがかかります)

そのため、マンション投資について知識や経験のない初心者が、マンション投資の「不労所得で簡単に副収入が得られる」「節税にもなる」といったメリットだけを見ていると失敗につながってしまうわけです。

1-1 マンション投資のリスクを見ずにメリットだけを見て始める

マンション投資は株式やFX等の金融商品に比べるとリスクは低くなりますが、元本を損なう可能性はあります。

不動産会社の中には顧客の利益よりも自社の利益を優先して営業や勧誘を行うところもあり、そういった会社の営業マンにはマンション投資のリスクに関する説明が不十分になることがあります。その結果、マンション投資に疎い一般の会社員がメリットだけを見て失敗するケースが少なくないのです。

1-2 よくある勧誘文句は「節税対策」「相続対策」「老後の収入確保」

日本労働組合総連合会が実施した「現在の生活満足度と将来に対する不安」に関するアンケート調査によると、「将来に不安を感じることがある」と回答した者が、「不安にさせているもの」として挙げた理由は次の通りです。

  • 老後の生活 64.2%
  • 預貯金などの資産状況 56.0%
  • 家計のやりくり 52.4%
  • 自身の健康状態 46.0%
  • 税金や社会保険料の負担 43.7%

日本の社会と労働組合に関する調査2017より)

この結果から多くの方が将来や老後について不安を抱いていることがわかります。そのため、それらの不安を刺激された上でマンション投資のメリットを色々と提示されると、きちんと投資リスクを考慮しないまま、購入に至ってしまうケースが後を絶たないわけです。

不動産会社の勧誘文句は、①節税対策になる、②相続対策になる、③将来や老後の生活資金対策になる、などが代表的です。マンション投資にこれらのメリットがないわけではありませんが、期待通りの節税効果や家賃収入を得るには、収支計画をしっかり立てた上で、様々なリスクを把握する必要があります。

それではマンション投資で失敗す節税対策で失敗するパターンるケースを個別に見ていきましょう。

2 マンション投資と節税対策

マンション投資は貸家事業であるため、投資対象の建物には減価償却費の計上が税法上の耐用年数にわたって認められています。その結果、非資金費用の減価償却費は所得税率等分だけ税金支出が抑えられるという節税効果が期待できます。

また、減価償却費を含む経費が多くなり家賃収入を上回った赤字の年度には、その赤字と会社員の所得とを損益通算することができ、節税につながります。

2-1 減価償却費と損益通算による節税効果

たとえば、不動産会社から以下のような物件を勧められたとします。

東京都内で、築5カ月、駅徒歩5分以内の物件A

購入費用 4,000万円
年間家賃収入 204万円(稼働率100%)
表面利回り 4.1%
頭金 1,000万円
返済期間 35年
金利 1.7%(ローン返済額年約113.8万円、うち利息が50.5万円)
年間経費等(管理費、固定資産税、返済利息等) 81.1万円
減価償却費(年間)* 85.1万円
年間収支(手取り) 59万円

*物件取得費4,000万円÷耐用年数47年=約85.1万円。なお減価償却費は建物・設備等の部分に適用されるため、土地代の部分を除いた計算となりますが、ここでは簡単のため土地まで含めた計算となっています。

この物件から得られる年間利益は、「年間家賃収入204万円-年間経費等81.1万円-減価償却費85.1万円=37.8万円」となります。これに5%の所得税が課されて所得税額は約1.9万円となります。もし減価償却費の計上がなければ、年間利益は「37.8万円+85.1万円=122.9万円」となり、これに5%の所得税がかけられると、納税額は約6.1万円となります。

つまり、この物件では、減価償却費の計上により、「元々の所得税額6.1万円−通算後の所得税額1.9万円=約4.2万円」節税できることになります。

損益通算による節税効果

また、この事例とは別に、高額なマンション投資で年間の赤字が120万円、会社員としての給与収入が1,000万円とした場合、損益通算すると、「1,000万円+△120万円=880万円」の所得になります。

給与収入が1,000万円の場合の所得税額は「1,000万円×0.33-153.6万円=176.4万円」ですが、損益通算した場合の税額は「880万円×0.23-63.6万円=138.8万円」になります。

つまり、損益通算により「176.4万円-138.8万円=37.6万円」が還付され節税できることになります。

2-2 所得税の節税を目的としたマンション投資で失敗する例

このように、減価償却費計上による節税メリットや損益通算による節税効果があるのは確かですが、実際には築年数が経過すると、年間の収益と費用は次のように変化する可能性があります。

年間家賃収入 183.6万円(原因:空室の発生と家賃の低下)
年間経費等 120.8万円(原因:経費・利息の上昇)
減価償却費 85.1万円

たとえば、年間の家賃収入は入居者の入れ替わりで値引きされて減収することがあります。また、ローンも頭金なしだと金利は上がり(1.7%→2.2%)、返済利息を含む返済額が大幅に上昇(113.8万円→164万円)することも考えられます。管理費や修繕積立金も数年後の値上げは十分あり得ます。

これらの変化によって、現金収支は収入が183.3万円、支出が199万円で15.7万円の持ち出し(赤字)となります。場合によっては会計上の赤字分を会社員所得と損益通算した結果、節税できる金額以上の持ち出しとなることもあるでしょう。

そもそもの話として、所得税が節税できるということは、マンション投資の収支が赤字であるということが前提となります。「給与収入と損益通算して節税になる」と言えば聞こえは良いですが、節税以上の赤字が出てしまっては本末転倒です。

マンション投資の際は節税をメインで考えず、きちんと毎月・毎年で黒字収支を期待できる物件を選ぶことが大切です。

3 マンション投資と相続対策

次に、マンション投資が相続対策に有効である理由と失敗するケースを見ていきます。

3-1 現金から不動産に換えるメリット

相続税の対象となる現金・預金や有価証券などは時価で評価されますが、マンション等の不動産は時価よりも低い基準で評価されるため、相続税の節税につながります。

マンションの相続税評価額は建物と土地の部分で評価が分かれます。土地は実勢価格よりも低い路線価(8割程度)や固定資産税評価額(6~7割程)で評価され、建物は建築費用の5~8割程度の評価になります。加えて貸家業として第三者にマンションを賃貸すると各々評価が下がるため金融資産等に比べて相続税評価額が3分の1程度になるケースもあります。さらにマンション投資で得られる年間の収支がプラスであれば、相続する家族に毎月の収入源を残すことも可能です。

3-2 相続税の節税を目的としたマンション投資が失敗する例

毎年の収支が赤字となったり、物件の資産価格が大幅に下落すると、節税以上のお金を残せない可能性が出てきます。

年間収支の赤字

マンション投資には様々なリスクがあるため、年間収支がマイナスになることがあります。例えば空室や滞納により家賃収入は大きく低下し、入居者を募集しても交通の便や立地の良くない物件だと入居希望者が現れず、減収が長引くことも考えられます。

年間収支の赤字が蓄積すれば、相続税の節税で得られるメリット以上の損失を被ることになるでしょう。

資産の大幅下落

また、資産の下落にも要注意です。たとえば、5,000万円の新築物件に投資したものの、10年後には3分の2、20年後には半分以下の価格に下がってしまうといったケースもあります。

公益財団法人 東日本不動産流通機構の「築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2018年)」によると首都圏の中古マンションの成約価格(㎡あたり)は下表のようになっています。

築年数 ㎡単価
築0~5年 80.96
築6~10年 68.06
築11~15年 60.56
築16~20年 52.77
築21~25年 38.70
築26~30年 29.68
築31年~ 31.70

たとえば、築0~5年の㎡単価は80.96万円ですが、築21~25年では38.70万円と半分以下の取引額となっています。

このように相続税対策としては有効であっても、資産価値が大幅に下落すると得られる恩恵もわずかになってしまいます。

もちろん賃貸需要が大きい物件など下落率が低い場合もありますが、節税メリットだけを見て不動産会社に勧められるままに物件を購入すると、思ったように入居がつかずに投資額の回収自体が難しくなるといったリスクも考えられるため、注意が必要です。

4 マンション投資と将来・老後の生活の備え

低金利が続くなか、銀行口座の預金だけでゆとりある老後の資金を作るのは困難といえます。しかし、マンション投資では安定した副収入を得ることができることから、「将来の年金代わりになる」とマンション投資を勧められることがよくあります。

4-1 高い表面利回りは一見すると魅力的

預貯金の金利が0.01%~0.1%というレベルに対して、前出の物件Aの表面利回りは5.1%です。エリアや築年数などで利回りは上下しますが、預貯金の金利と比べるとマンション投資のほうが魅力的に映るでしょう。

経費等を含めて評価する実質利回りにおいても、入居が安定していれば利回り2%や3%は実現可能なため、「マンション投資は貯金よりも多くのお金を生み出すことができる」と期待しても不思議ではありません。

4-2 将来への備え目的で失敗するパターン

しかし、老後の資金形成のために始めたマンション投資でも、当初予定した収益が得られず、売却しても投資額が回収できないというケースは十分考えられます。

前述した通り、「家賃低下」「空室発生」「管理費等の経費上昇」など、リスクの高い物件では要注意です。毎年の収支が黒字であれば良いですが、家賃の低下や空室の発生により家賃収入は減少します。

また、毎年の管理費等の経費も上がる可能性があり、特に修繕積立金は築年数が増していくほど上昇するとともに積立不足の場合には特別負担となるケースもあるでしょう。

マンション投資の成功は、「(毎年の収支 × 投資期間)+投資物件の売却額>投資額」になることに加え、将来の生活で必要な資金が確保できることです。しかし、資産価格の下落が大きすぎると多額の売却損となるため、売るに売れないという状況に陥る可能性もあります。

5 まとめ

会社員の方がマンション投資で失敗せずに様々なメリットを得るには、節税などの目先の利益だけでなく、長期にわたって毎月の収支をきちんと黒字にできる物件を選んでいくことや、投資のリスクを十分に理解し、想定されるリスクへの対処をしていくことが大切です。

不動産投資のリスクについては、不動産投資会社が開催しているでは、具体的な失敗事例とともに想定すべきリスクを学ぶことができ、その対策方法についても深く知ることができますので、気になる方は情報収集も兼ねて一度足を運んでみるとよいでしょう。

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マンション投資は楽をして確実に儲かる投資話や手軽にできる節税対策手段ではなく、賃貸経営という事業であることを心がけて収支を黒字にすることを念頭に取り組むことが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」