人種や宗教・政治的意見などを理由に迫害を受ける恐れがあり国の保護を受けられない、恐怖で自国に住む事ができず外国へ逃れた人々のことを指しています。2019年末時点での世界における難民は7950万人と数多く、日本を含む先進国では継続的な支援活動も行われています。
日本で難民を支援する団体はNPO法人の他に独立行政法人国際協力開発機構(JICA)・国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)といった政府から援助を受ける組織もあり、難民は国際的な問題のひとつと言えます。
本記事では難民問題の概要、難民を支援する方法4つ、難民問題と偽装難民について解説していきます。
目次
- 難民問題と日本の難民に対する援助
1-1.日本の難民支援
1-2.難民問題と偽装難民の存在 - 難民を支援するための方法4つ
2-1.金銭・物資による寄付
2-2.不要品を売却したお金を寄付
2-3.ボランティア・プロボノ活動
2-4.SNS・ブログなどによる情報の発信・拡散 - まとめ
1.難民問題と日本の難民に対する援助
第二次世界大戦後に設立された難民を守るための組織である国連難民高等弁務官事務所では、1951年に外交会議で採択された「難民の地位に関する1951年の条約」が公開されています。
条約に記載されている難民の定義は以下の通りです。
- 人種・宗教・国籍・政治的意見・特定の社会的集団の構成員であることを理由に迫害を受ける恐れがあり、国籍がある国の外にいる者
- 国籍を有する国の保護を受けることができない者
- 恐怖があるために国籍国の保護を受けることを望まない者
- 事件の結果として居住地を有していた国の外にいる無国籍者
- 居住していた国に帰ることができない者
- 恐怖があるため居住していた国に帰ることを望まない者
国籍を有する又は居住している国にも関わらず、人種・宗教・政治的理由などから迫害を受ける、恐怖を感じ外国へ渡る人々のことです。
2019年末の時点で世界の難民は7950万人に及び出身国の1位は内戦が続くシリアが660万人、ベネズエラは370万人、アフガニスタン270万人と続いています。上位3ヵ国に南スーダン・ミャンマーを加えた5カ国で難民全体の68%に上ります。(※参照:UNHCR「Global Trends 2019」)
日本では1982年に難民認定制度が制定され、難民として日本に渡ってきた人は難民認定申請を行い、法務大臣から難民であると認定を受けた際には、条約に規定する難民としての保護を受けることができます。
2020年における日本の難民認定申請者数は3936人で、認定手続きの結果、日本で在留を認められた外国人は91人です。難民と認定した外国人は47人、難民と認定しなかったものの人道的な配慮を理由に在留を認めた外国人は44人となっています。(※参照:出入国在留管理庁「令和2年における難民認定者数等について」)
受け入れられた難民は日本語教室の受講や、就職相談への対応など、定住のためのサポートが受けられます。
1-1.日本の難民支援
日本では過去に難民に対する直接的な支援と、受け入れ国の経済発展を支える開発支援の2つを、国際的な機関やNGOなどと連携しながら進めてきました。
例えば、2016年11月には独立行政法人国際協力開発機構(JICA)が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)と連携し「シリア平和への架け橋・人材育成プログラム」を実施しました。ヨルダン・レバノンなどに難民として逃れているシリア人の若者を、日本国内の大学に留学生として受け入れる教育の機会を提供する取り組みです。(※参照:独立行政法人国際協力機構「シリア平和への架け橋・人材育成プログラム」)
2021年6月のJICAのレポート「仕事×研究 その先にあるシリアと日本の未来に向けて」では、研修を終えた若者達がIT系技術者として活躍している様子、「将来は自国に戻り、教育機関でシリアの人々の教育および生活の向上のために働きたい」と語っていることが報告されています。
1-2.難民問題と偽装難民の存在
難民として認定申請を行う人の中には、出稼ぎを目的としているにも関わらず難民として入国・在留を希望する「偽装難民」と呼ばれる人々が存在します。
このような偽装難民の入国を防止するため、日本の難民認定は海外に比べハードルが高く、2020年の認定率は0.5%です。例えば、日本と同様に島国であるイギリスは47.6%、アメリカは25.7%となっており日本の認定率が極端に低いことが分かります。(※参照:難民支援協会(JAR)「日本の難民認定はなぜ少ないか?-制度面の課題から」)
また、出入国在留管理庁が行った「難民認定制度に関する検討結果(最終報告)」でも「社会の安全に対する国民の信頼を回復するため,犯罪者等が偽装難民として流入してくる事態は未然に防止する必要がある。」と記載されています。
偽装難民を難民として認定してしまうと国民の信頼が損なわれてしまうことから、認定率が低いという実状があります。偽装難民により本来難民認定されるべき人々も認定されない可能性があり、偽装難民は国際的な課題となっています。
2.難民を支援するための方法4つ
次に、実際に難民の人々へ向けた具体的な支援の方法について見て行きましょう。ここでは以下4つの方法を取り上げています。
- 金銭・物資による寄付
- 不要品を売却したお金を寄付
- ボランティア・プロボノ活動
- SNSなどによる情報の拡散
2-1.金銭・物資による寄付
難民を支援するNPO団体や法人などに金銭や物資の寄付を行います。難民支援の活動を行っている団体としては、主に以下の4つです。
金銭による寄付は、上記4団体の全てで受け付けており、継続寄付とスポット寄付があります。決済方法もクレジットカードや銀行・口座振替などがあり、寄付者にとって負担が少ない方法・金額で行う事が重要です。
物資の寄付は、難民支援協会ではトマト缶やツナ缶・シャンプーやフェイスタオルなど一定のものを受け付けています。
また、上記のような認定NPO法人への寄付は、寄付金控除の対象となります。確定申告を行うのであれば、寄付金控除の申請も検討してみると良いでしょう。
【関連記事】寄付金控除となる対象団体は?金額の上限や申請手順も解説
【関連記事】寄付金控除に領収書は必要?確定申告のポイント5つ解説
2-2.不要品を売却したお金を寄付
認定NPO法人難民支援協会では、「お宝エイド」「チャリボン」という2つのプロジェクトで、不要品買い取りを通じた寄付が可能です。
お宝エイドでは貴金属や切手・ブランド品・DVD・ゲームなどを段ボールに詰め、集荷を依頼、着払いで配送し受付センターに到着した後、査定された金額に10%上乗せされた額が難民支援協会に振り込まれます。
チャリボンでは主に10年以内に出版された本を買い取り、難民支援協会に寄付される仕組みです。難民支援協会のページには「30冊で、パスタやカレー・豆などを4食分提供することができます。」と記載されています。
2-3.ボランティア・プロボノ活動
難民に関するボランティア活動には、学習支援や活動資金を集めるためのフリーマーケット出展、支援団体の事務作業などがあります。
「直接、現地で難民を支援したい」という方は、JICA(独立行政法人国際協力開発機構)の海外協力隊に参加する方法がありますが、長期海外協力隊は応募・合格、訓練を経て赴任するまで10ヵ月以上、短期海外協力隊は6ヵ月以上の時間がかかる点に注意しましょう。
【関連記事】プロボノを始めるメリット・デメリットは?ボランティアとの違いも
2-4.SNS・ブログなどによる情報の発信・拡散
難民問題に関する情報を発信する活動も支援の一環となります。例えば、過去に地方自治体の作文コンテストで、中学2年生の女子が書いた難民に関する作文が入賞し、自治体のウェブサイトに掲載されています。
(※参照:大玉村「【佳作】難民に居場所を」)
その他、難民問題をSNSやブログに投稿する、投稿された情報を拡散するだけでも目に留まった方にとって難民を知る機会となり、結果として啓発・普及活動になる可能性があります。
まとめ
日本の難民認定は海外に比べハードルが高く、2020年の認定率は0.5%と非常に低い水準となっています。このような状況の中でも、難民に対する直接的な支援と、受け入れ国の経済発展を支える開発支援の2つを、国際的な機関やNGOなどと連携しながら進めてきている背景があります。
難民を支援するためには、金銭・物資の寄付や不要品を売却した代金を寄付、ボランティア・プロボノ活動などがあります。「もっと難民問題を知ってもらいたい」という方には、SNS・ブログなどの情報拡散も方法の1つです。
この記事を参考に、難民問題や支援方法について知り、アクションに繋げていきましょう。
田中 あさみ
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