寄付をして寄付金控除の適用を受けたい場合、受領証や領収書を寄付した団体からもらう必要があるのか気になる方も多いのではないでしょうか。
寄付金控除には基本的に確定申告を行う必要があり、確定申告では「どれだけの金額で寄付を行ったか」ということを証明するために、受領書や領収書が必要になります。しかし、確定申告をおこなう際にどのようなポイントに注意すればよいか分からない方も多いと思います。
この記事では、寄付金控除の適用を受ける際の確定申告のポイントについて解説します。寄付金控除の手順や申請方法についてお調べの方はご参考下さい。
※記事内の税金・税率などは2021年5月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- 寄付金控除とは
1-1.寄付金控除の種類
1-2.寄付金控除と確定申告 - 寄付金控除を受ける際の確定申告のポイント
2-1.対象団体への寄付の有無を確認する
2-2.確定申告に必要な受領証や領収書をそろえる
2-3.確定申告で申請をする手順
2-4.寄付金控除の金額を確認する
2-5.ふるさと納税のワンストップ特例を利用する - まとめ
1.寄付金控除とは
寄付金控除とは、国や地方自治体が定める一定の団体へ寄付をした場合、その金額に応じて、所得税や住民税から受けられる控除制度です。なお、ここでは、個人が寄付をする場合を想定して説明していきます。
1-1.寄付金控除の種類
所得税では、税金計算をする前の所得から差し引く所得控除と、税額そのものから直接控除する税額控除があり、選択制となっています。 住民税は、税額控除となります。軽減される金額の上限は、それぞれの制度に応じて異なります。
所得税の税額控除の対象となる寄付金は、所得控除の対象となる寄付金よりも種類が限定されています。累進税率が23%以下(課税所得が900万円未満)であれば、 税額控除の方が所得控除よりも軽減される税額は多いと考えられます。
また、住民税の税額控除は各地方公共団体の条例によって対象となる寄付金が決められています。翌年度の住民税から税額控除されます。ふるさと納税は、住民税の税額控除対象となります。
1-2.寄付金控除と確定申告
寄付金控除の申請をするには基本的に確定申告も行う必要があり、給与所得者であっても、年末調整で申請することはできません。ただし、寄付金控除の申請がふるさと納税のみである場合、一定の条件の下、ワンストップ特例によることができます。
住民税の税額控除も、所得税の確定申告をおこなうことによって申請することができます。
2.寄付金控除を受ける際の確定申告のポイント
寄付金控除を受けるために確定申告をおこなう際のポイントについてみてみましょう。
2-1.対象団体への寄付の有無を確認する
寄付金控除を受けるには、控除対象となる団体へ寄付していることが条件になります。最も対象となる範囲が広い、所得税の所得控除を受けられる寄付団体は、主に、次のような団体になります。 これらの団体に寄付をしているかどうか、確認しましょう。
- 国・地方公共団体
- 特定公益増進法人(独立行政法人、公益社団法人・公益財団法人、学校法人、社会福祉法人など)
- 日本赤十字社・都道府県共同募金会
- 認定NPO法人
- 政党、政治資金団体
【関連記事】寄付金控除となる対象団体は?金額の上限や申請手順も解説
2-2.確定申告に必要な受領証や領収書をそろえる
寄付金控除の適用を受けるには、受領証や領収書を添付して税務署に提出するか、あるいは、電子申告の場合にはそれらを5年間保管し、税務署から提示を求められたときは応じる必要があります。
寄付をした団体などから、寄付の受領証や領収書の交付を受けます。寄付金を受領した法人の名称、受領した旨、寄付金額、受領年月日、寄付金控除(寄付金税額控除)の対象であること、が記載してあるかどうか、を確認しましょう。
なお、確定申告の際には、その年のすべての所得を示す書類が必要になります。給与所得がある人は給与所得の源泉徴収票、不動産所得がある人は不動産所得の決算書などを準備しましょう。
2-3.確定申告で申請をする手順
寄付金の受領証や領収書のほか、確定申告に必要な書類がそろったら、寄付金控除を受けることを記載した確定申告書を税務署に提出することで寄付金控除の申請をおこないます。所得税の確定申告書の提出期限は、翌年3月15日までになります。
確定申告書の提出方法は、主に電子申告と紙ベースでの申告の2つの方法があります。
電子申告による場合は、マイナンバーカードを用意し、スマートフォンかパソコンでおこないます。紙ベースで申告する場合は、国税庁のホームページで作成・印刷して郵送するか、確定申告会場で相談しながら作成・提出することもできます。
所得税の寄付金控除を受けて減額された税額は、確定申告後に還付されます。住民税の寄付金控除適用による減額分は、地方公共団体が賦課する住民税額に反映されます。
2-4.寄付金控除の金額を確認する
確定申告書を作成するとき、申告書の定められた欄に正しい記載が表示されているかを確認しましょう。
所得控除の寄付金(寄附金)控除額は、次の算式で計算されます。
寄付金控除額=その年に支出した特定寄付金の額―2,000円(その年の総所得金額の40%から2,000円を差し引いた金額が上限)
また、税額控除を選択する場合、その控除額は、次の算式で計算されます。
寄付金税額控除額=(その年に支出した一定の寄付金の額―2,000円)×40%(30%)(その年の所得税額の25%が上限)
所得控除の寄付金控除額は、所得税の確定申告書第一表の「所得から差し引かれる金額」㉔欄に記載されます。 併せて、実際に支出した寄付金の合計額が第二表の「寄附金控除に関する事項」にも載ってきます。(※国税庁「寄附金控除を受ける方の記載例」)
また、税額控除額は、同第一表の「税金の計算」㉚~㉜欄に記載されると同時に、それぞれの特別控除額の明細書に、寄付金額と計算式が記載されます。
その他、住民税の税額控除の対象となる場合は、第二表の「住民税に関する事項」にも、対象となる寄付金の合計額が種類別に記載されます。
2-5.ふるさと納税のワンストップ特例を利用する
ふるさと納税の寄付金については、以下の条件を満たす場合に限り、確定申告をおこなわずに寄付金控除を受けることができる特例があります。
ただし、確定申告をおこなってしまった場合、その確定申告において同時に寄付金控除の申請もおこなう必要があるため注意しましょう。ワンストップ特例を利用するための主な要件は下記の3点です。
- 確定申告が不要な給与所得者(給与収入先が1箇所のみ、年間2,000万円以下)であること
- ふるさと納税先の自治体数が5団体以下であること
- ふるさと納税先の地方自治体に、ワンストップ特例の適用に関する申請書を提出すること
なお、ふるさと納税については、令和3年分の確定申告から、寄付金控除の適用を受ける際の添付・保管書類は、寄付金の受領者が発行する受領証ではなく、ふるさと納税を仲介、管理する事業者の発行する「寄附金控除に関する証明書」でもよいとされています。 (※参照:国税庁「令和3年分の確定申告からふるさと納税(寄附金控除)の申告手続が簡素化されます」)
まとめ
寄付金控除を申請するには、所得控除、税額控除、いずれの場合にも、確定申告をおこなう必要があります。確定申告による申請では、紙ベースによる申告と電子申告による方法がありますが、前者の場合は、受領証や領収書の添付、後者の場合は保管が条件になります。
対象となる寄付金をおこなっている場合は、受領証や領収書をそろえるようにしましょう。確定申告をおこなう場合は、申告書の所定欄に寄付金控除額や寄付金額の記載があることを確認しましょう。
ふるさと納税の場合には、確定申告不要のワンストップ特例もあるので利用することを検討してみましょう。
佐藤 永一郎
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