ソーシャルレンディング投資によって利益を得られたと喜ぶ半面、税金がどれくらいかかるのかが気になってしまう方も多いと思います。利益の多くが税金として持っていかれると、何のために投資をしているのか…という気持ちにもなるかもしれません。
この記事では、ソーシャルレンディングにかかる税金・税額について、税金の基礎知識にも触れながら解説していきます。同時に確定申告が必要になるケースについても解説しますので、税金の心配をしている方はぜひご参考にしてください。
目次
- ソーシャルレンディングにおける税金の基礎知識
1-1.所得税は”源泉徴収”で前払いしている
1-2.”源泉徴収”だけで納税は終わらない - ソーシャルレンディングにおける所得税の種類
- ソーシャルレンディングにおける所得税の計算
3-1.総合課税の計算方法
3-2.ソーシャルレンディングの税率
3-2-1.所得税の計算例 - ソーシャルレンディングで”確定申告”が必要なケース
4-1.会社員の場合
4-2.個人事業主(フリーランス)や自営業の場合
4-3.専業主婦(主夫)やパートタイマーの場合
4-4.確定申告が不要でも”住民税の申告”は必要 - まとめ
1.ソーシャルレンディングにおける税金の基礎知識
ソーシャルレンディングへの投資で生じた所得税は、かならずしも自分で納める必要はありません。まずは、それがどういうことなのかを見ていきましょう。
1-1.所得税は”源泉徴収”で前払いしている
仕事や投資で利益を得た場合、所得に応じた税金がかかります。それが『所得税』と呼ばれるものです。
しかし、ソーシャルレンディングの場合、所得税は事業者から利益の分配金を受け取る際に、『源泉徴収』という形で差し引かれます。その所得税の割合は、分配金に対して一律20%です。ただ、2037年までは、復興特別所得税を含めて、20.42%が差し引かれます。
たとえば、1万円の分配金が発生した場合、源泉徴収額は2,000円(+復興特別所得税)となり、それを差し引いた金額のみが口座に入ります。このときに差し引かれた源泉徴収額はいったん事業者が預かります。そして、投資家それぞれの所得税として、事業者が国に前払いするのです。
1-2.”源泉徴収”だけで納税は終わらない
所得税20%(+復興特別所得税0.42%)は、あくまで目安として分配金から差し引かれています。つまり、事業者があらかじめ国に前払いする源泉徴収の税率と、投資家が本来支払うべき所得税の税率とが異なる可能性があるのです。
それでは、投資家が本来支払う所得税率はどのように決まるかというと、投資家の年間の課税所得額によって最終的な所得税率が判断されることになるのです。
ソ-シャルレンディングで利益が出た場合は、確定申告を行うことで、最終的な所得税率が20%より低い場合は、その差額の還付を受けられるでしょう。反対に、所得税率が20%より高い方は、追加で所得税を納めなくてはいけません。
2.ソーシャルレンディングにおける所得税の種類
所得税は所得の種類に応じて課税のルールが分かれます。所得の種類は以下の10個に分類され、ソーシャルレンディングによる所得は『雑所得』に分類されます。
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 事業所得
- 給与所得
- 退職所得
- 山林所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 雑所得
雑所得とは、他の9種類すべての所得に当てはまらない所得です。ソーシャルレンディングは歴史の新しい投資方法のため、まだ税制が整っていません。よって、2019年2月時点では雑所得に振り分けられています。所得税を割り出すためのルール(控除額や税率など)は、所得の種類によって異なります。
よって、所得税を計算したいのであれば、まずは自分のどの所得がどこに該当するのかを把握しなくてはいけません。そして、それぞれの所得を計算するところからはじめる必要があります。
ソーシャルレンディングは雑所得です。他にも雑所得がある場合は、それも合算して考えなくてはいけません。そして給与以外にも所得があれば、それらすべての年間合計を出した上で確定申告が必要かどうかが決まるのです。
たとえば、あなたが会社員で、年末調整は会社がやってくれているとしましょう。もし、その年末調整の対象となった給与収入以外に所得があった場合、それが年間20万円以下であれば、確定申告は不要です(ただし住民税の申告は別途必要)。
しかし、給与収入以外にも所得があるのなら、その収入がどの所得に分類されるのかをまず確認する必要があります。そして、ソーシャルレンディングの利益を含めた所得の合計が20万円を超える場合は、確定申告をしなくてはいけません。
なお、雑所得に含まれるものは、
- FX(分離課税)
- 外貨預金の為替差益
- 仮想通貨売買による利益(信用取引含む)
- アフィリエイト報酬
- 商品の転売で得た利益
- 記事の執筆による原稿料
- 講演料
などによる所得が挙げられます(事業としてこれらの所得を継続的に得ていない会社員の場合)。
3.ソーシャルレンディングにおける所得税の計算
それでは、ソーシャルレンディングで利益を上げた場合の所得税の計算について見ていきましょう。所得税は、その所得が総合課税・分離課税のどちらに分類されるかで、計算の方法が異なります。
ソーシャルレンディングによる利益は雑所得に分類されます。雑所得は『総合課税』方式で計算されます。総合課税方式の場合、所得税額は、
- 雑所得
- 給与所得
- 事業所得
- 一時所得
- 譲渡所得
- 不動産所得
などとの合算で求められます。
つまり、あなたが会社員であれば、
- 給与所得
- ソーシャルレンディングで得た所得
- その他生じた上記の所得
これらを合わせて所得額を計算するのです。ちなみに、もうひとつの分離課税の場合は、それぞれの所得ごとに税金額が決まります。
3-1.総合課税の計算方法
一旦話をまとめると、総合課税の計算の流れは以下となります。
- 収入をそれぞれの所得ごとに計算する
- 総合課税に当てはまる所得はすべて合算する
- その合算額から経費と控除を差し引くと、合計所得額が出る
- その合計所得額によって、所得の税率(5%~45%)や控除額が決まる
このように、自分の所得が総合課税に区分される場合は、他の区分(給与所得や不動産所得など)との影響も考えなくてはいけません。
3-2.ソーシャルレンディングの税率
先ほど「所得の合計額によって、所得税率が決まる」とご説明しました。所得税率は2019年2月時点で以下のとおりです。
課税される所得 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
195万円未満 | 5% | 0円 |
195万円~330万円未満 | 10% | 97,500円 |
330万円~695万円未満 | 20% | 427,500円 |
695万円~900万円未満 | 23% | 636,000円 |
900万円~1,800万円未満 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円~4,000万円未満 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円以上 | 45% | 4,796,000円 |
3-2-1.所得税の計算例
たとえば、年収320万円(給与所得)の会社員が、ソーシャルレンディングで1年20万円の収入(雑所得)を得たとしましょう。その場合の合計所得は、
給与所得320万円+雑所得20万円=340万円
です。合計所得が340万円の場合、上の表の『330万円~695万円未満』部分に該当し、
- 税率…20%
- 控除額…427,500円
が当てはまります。したがって、所得税は
340万円×20%-427,500円=252,500円
と計算されます(控除や経費は省略)。
4.ソーシャルレンディングで”確定申告”が必要なケース
先述のように、ソーシャルレンディングで利益を得ると、所得に応じて確定申告な必要なケースが出てきます。ここでは、
- 会社員
- 個人事業主(フリーランス)や自営業
- 専業主婦(主夫)やパートタイマー
ごとに、確定申告が必要なケースを見ていきましょう。
4-1.会社員の場合
会社員の場合、確定申告はその会社が年末調整の形で行っています。その年末調整で所得税が確定し、納税も会社が代わりに行ってくれます。よって、収入が会社からの給与所得(退職所得)だけであれば、基本的に確定申告は必要ありません。
一方、給与以外の所得を得た場合は、確定申告および納税の義務が発生します。しかし、確定申告には、「給与所得以外の収入が20万円以下であれば、確定申告をしなくてもよい」という例外もあります。
つまり、所得が給与のみで年末調整を行った人は、その他の所得が20万円未満であれば、確定申告の必要がありません。逆に、その他の所得が20万円を超える場合は、確定申告が求められます。
また、給与所得が2,000万円を超えている場合は、その他の所得額が20万円に達しなくても、確定申告は必要です。
4-2.個人事業主(フリーランス)や自営業の場合
個人事業主(フリーランス)や自営業の場合は、所得税を納める手段として、最初から確定申告が求められます。よって、ソーシャルレンディングの収入額によっての例外はありません。
なお、確定申告では、所得を漏れなく申告する必要があります。よって、ソーシャルレンディングに留まらず、すべての所得を申告しなくてはいけません。
4-3.専業主婦(主夫)やパートタイマーの場合
籍を入れたパートナーの扶養に入る専業主婦(主夫)の場合、基本的には
- 基礎控除38万円
- 給与所得控除65万円
という2種類の控除が受けられます。なお、基礎控除とは、すべての人が対象になる控除です。所得が年間38万円に達しない限り、その専業主婦(主夫)の所得税は0円です。
ソーシャルレンディングは雑所得に分類されますが、基礎控除は総所得に対して生じます。よって、雑所得を含めた所得の合計が38万円までであれば、確定申告は必要ありません。
これは、専業主婦ではなく、パートタイマーでも同じです。給与が年間65万円以下であれば、給与所得控除65万円を適用し、給与所得は0円となるのです。
4-4.確定申告が不要でも”住民税の申告”は必要
ケースごとに確定申告が必要な場合をご紹介しました。ただ、自分に当てはめた結果、確定申告が必要なかったとしても【住民税の申告】は必要です。
ソーシャルレンディングの分配金が支払われる際、事業者は所得税(+復興特別所得税)だけを源泉徴収しています。つまり、住民税は源泉徴収に入っていないのです。よって、住民税は自分で申告をする必要が出てきます。
ソーシャルレンディングの所得における住民税率は、基本的に一律10%(市町村民税で6%+道府県民税で4%)です。
そして、住民税の申告方法は、市町村によって方法が異なります。役所で直接説明を受けないと、内容がわかりにくいケースも多いでしょう。したがって、仮に確定申告が不要だったとしても、住民税だけを申告するより、確定申告(所得税と住民税をまとめて申告)を行った方が手続きは簡単と言えます。
5.まとめ
以上、ソーシャルレンディングにかかる税金に関して、税金の種類や所得税、住民税額なども踏まえてご紹介し、また確定申告が必要なケースについても述べました。
おさらいすると、ソーシャルレンディングへの投資で生じた所得税は、事業者の”源泉徴収”によって前払いをしている形になります。しかし、ソーシャルレンディングでの所得税は総合課税に分類されるため、本当の所得税率や控除額は、給与所得などと合算した所得総額に応じて決められます。
そして、所得の総額を計算した結果、確定申告が不要なケースもあるでしょう。それでも、ソーシャルレンディングで利益を得る以上、【住民税の申告】は必要です。しかし、住民税のみの申告には、ややこしさが多くあります。したがって、結局は確定申告が不要でも、確定申告を行った方が手間の少ない場合が多いでしょう。
ソーシャルレンディングで利益が出て、税金について心配している方は、まずは所得税額を把握するために、自分の所得をピックアップするところから始めてみましょう。
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