投資で確定申告が必要になるパターンは?手続き方法や税率、注意点をFPが解説

投資で利益が出ると、原則として確定申告をしなければなりません。ただし、会社員など一定の条件のもとでは確定申告不要になるケースもあります。なるべく面倒な手続きは避けたいところですが、申告が節税につながるケースもあり、税金についての一定の知識は必要です。

この記事では、投資の確定申告が必要なケースなど、知っておくべきことについて解説します。

※この記事は2021年11月30日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報および税務的見解は税務署または税理士にご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 投資と税金の基礎知識
    1-1.収入と所得の違い
    1-2.所得の区分
    1-3.分離課税と総合課税
  2. 投資で確定申告が必要となるケースとは?
    2-1.確定申告をしなければならないケース
    2-2.確定申告不要のケース
  3. 確定申告が不要でもしたほうがいいケースとは?
    3-1.配当控除を受ける場合
    3-2.還付が受けられる場合
    3-3.損益通算ができる場合
    3-4.損失の繰越控除をする場合
  4. 確定申告をしないとどうなるか
    4-1.期日までに申告しないと無申告加算税がかかる
    4-2.間違えて少ない金額を申告すると過少申告加算税がかかる
    4-3.追加で納税する分には延滞税が加算される
  5. 確定申告の仕方
    5-1.確定申告の流れ
    5-2.確定申告の必要書類
  6. 投資の税金の注意点
    6-1.専業主婦(夫)や学生は扶養を外れる場合も
    6-2.個人事業主や年金受給者は健康保険料が増えることも
  7. まとめ

1.投資と税金の基礎知識

最初に、投資に関する税金の基本について解説します。

1-1.収入と所得の違い

投資で利益が得られた場合、その全額に対して税金がかかるわけではありません。得られた収入金額から一定の金額を差し引いた儲けの部分(所得)にのみ課税されます。所得税の計算の基礎となる所得金額(課税所得)は次のように求めます。

所得金額:収入金額-必要経費―各種控除

1-2.所得の区分

投資で得た所得は所得税の10の所得区分のいずれかに分類され、区分により課税方式が決まります。主な取引の所得の区分は以下のとおりです。

利益の種類 所得区分 課税方式
株式・投資信託・債券の売却益 譲渡所得 申告分離課税
株式の配当金・投資信託の分配金 配当所得 ・源泉分離課税
・申告分離課税
・総合課税
預貯金の利息 利子所得 源泉分離課税
債券の利子 利子所得 ・源泉分離課税
・申告分離課税
国内FXの為替差益・スワップポイント 雑所得 申告分離課税
海外FXの為替差益・スワップポイント 雑所得 総合課税
ソーシャルレンディングの配当 雑所得 総合課税
金の売却益 譲渡所得 総合課税
不動産投資の家賃収入 ・不動産所得
・事業所得
総合課税

1-3.分離課税と総合課税

所得税の課税方式には、総合課税と分離課税があります。分離課税とは、給与所得などほかの所得とは分けて税額を計算する課税方式です。これに対し総合課税とは、対象となるすべての所得の合計金額に対して税額を計算する課税方式です。

分離課税には、確定申告が必要な申告分離課税と、所得の発生時に所得税が源泉徴収されて申告不要になる源泉分離課税があります。

適用される税率

分離課税の税率は、譲渡所得・配当所得・利子所得・雑所得のいずれの場合も20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)です。

一方、総合課税は対象となる所得金額に対して税率がかかります。所得税の総合課税の税率は、所得金額に応じて決まる5%から45%までの超過累進税率です。住民税は所得に関係なく定額の均等割と、所得金額に応じて課せられる所得割の合計です。

均等割の標準税額は5,000円(市町村民税3,500円、道府県民税1,500円)、所得割の標準税率は10%(市町村民税6%、道府県民税4%)です。

2.投資で確定申告が必要となるケースとは?

投資で利益を得た人は、確定申告が必要です。しかし、投資の種類や利益の金額によっては不要になるケースもあります。以下にて、確定申告が必要なケースと不要なケースを解説します。

2-1.確定申告をしなければならないケース

投資で確定申告が必要なケースをパターンごとに見ていきましょう。

個人事業主や主婦(主夫)など給与所得者以外

個人事業主や主婦(夫)の所得は、1年間の収入から必要経費と控除額を差し引いた課税所得に課税されます。事業所得や不動産所得のような所得区分ごとの所得金額の合計が48万円を超えると、確定申告が必要になります。

専業主婦(夫)でも投資で得た所得が48万円超ならば、確定申告をしなければなりません。ただし、投資の種類や取引口座によっては所得が48万円超でも確定申告が不要な場合もあります。

給与所得者で確定申告が必要なパターン

勤務先で年末調整を受けている給与所得者は、基本的に確定申告は必要ありません。年収2,000万円を超える会社員や公務員、二箇所以上からの給与所得がある方、または本業の給与所得以外の所得(投資など)の合計が20万円を超える方などは、確定申告が必要になります。

年金受給者で確定申告が必要なパターン

公的年金の年間の収入金額が400万円以下の人で、公的年金以外の所得(投資など)が20万円を超えると、確定申告が必要です。

ソーシャルレンディングで税金の調整が必要な場合

ソーシャルレンディングの所得も基本的な確定申告のルールは上述のとおりです。しかし、ソーシャルレンディングの所得は総合課税の対象でありながら、受け取り時に20.42%(所得税と復興特別所得税)が源泉徴収されています。

そのため、総合課税の対象となる他の所得を合算した合計金額にかかる税率が20.42%を超える場合、不足分を納付しなければなりません。ボーダーラインとなるのは、所得税の税率が23%となる課税所得金額が695万円超の人です。

納め忘れると後述するペナルティを受けるので、確定申告が必要かどうかは必ず確認するようにしてください。

2-2.確定申告不要のケース

以下のようなケースでは、投資で利益があったとしても確定申告は不要です。

投資の所得が20万円以下の場合

投資の収入金額から必要経費を差し引いた所得金額の合計が20万円以下の場合、確定申告は必要ありません。ただし、医療費控除や住宅ローン控除などを受けるために確定申告をするならば、これらの所得も申告することになります。

また、このケースで所得税の確定申告をしなかった場合、住民税の申告は必要です。住民税の申告が必要な人は、毎年3月15日までに市区町村の役所で申告書を提出しなければなりません。

取引口座が源泉徴収あり、もしくは非課税の口座の場合

株式や投資信託の取引口座が特定口座(源泉徴収あり)もしくはNISA口座であれば、確定申告は必要ありません。

3.確定申告が不要でもしたほうがいいケースとは?

投資の所得が20万円以下だったり、収益がマイナスだったりする場合は確定申告の必要はありません。しかし、所得税が還付されるなど節税につながるケースでは、確定申告にメリットがあります。

申告をしなくても問題ないものの、したほうがいいケースを解説します。

3-1.配当控除を受ける場合

株式の配当金や投資信託の分配金は、所得の発生時に所得税・住民税が源泉徴収されて申告不要になる源泉分離課税が適用されます。しかし、申告分離課税と総合課税を選択することもできます。

申告分離課税は後述する損益通算をするケースで、総合課税は配当控除を受けるケースで選択します。配当控除を受ける場合は、確定申告が必要です。

配当控除とは?

総合課税は給与所得などの他の所得と合算して税率が決定します。配当控除は配当金や分配金に一定率を掛けた金額が所得税、住民税から控除される税額控除です。

控除率は、納税者の総所得金額に応じて変わります。また、株式の配当金と投資信託の分配金では控除率が異なります。そのため、すべてのケースで配当控除が有利になるわけではありません。配当控除を利用するかどうかは、分離課税と比較してから決めましょう。

3-2.還付が受けられる場合

ソーシャルレンディングの分配金は、受け取り時に所得税が源泉徴収されます。本来は総合課税なので、不足分は確定申告で納付しなければなりません。

その一方で、源泉徴収分より総合課税の所得税率が低い人は、申告すれば差額の還付が受けられます。ソーシャルレンディング投資をしている人は、税額の調整が必要なことを頭に入れておきましょう。

3-3.損益通算ができる場合

損益通算とは、利益から損失を差し引くことです。損失を差し引くことで所得額を抑え、支払う税金が少なくなります。損益通算はすべての所得で認められているわけではありません。ここでは、投資で利用できる損益通算を紹介します。

なお、NISA口座での取引で生じた損失は、損益通算の対象外です。また、損益通算を適用するには確定申告が必要です。

株式や投資信託の売却損がある場合

項目 A証券会社 B証券会社 C証券会社 損益通算後
譲渡所得 10万円 ▲30万円 ▲10万円
配当所得 10万円 20万円 30万円
合計 20万円 ▲10万円 20万円 30万円

株式や投資信託の取引を特定口座(源泉徴収あり)で行う人は、確定申告の必要はありません。しかし、株式や投資信託の売却損が出た場合、他の売却益や配当所得との損益通算が可能です。

損益通算は、同じ口座内であれば自動的に行われます。複数の証券口座間の損益通算には、確定申告が必要です。

国内FXで為替差損やマイナススワップがある場合

国内FXの所得は先物取引に係る雑所得等に分類され、申告分離課税の対象です。1年間の取引のトータルがマイナスの人は、確定申告をしなくても問題ありません。

しかし、他の先物取引に係る雑所得等との損益通算が認められています。複数のFX会社で口座を保有していて利益と損失があるケースや、FXの損失とCFDの利益があるケースなどでは、損益通算が可能です。

海外FXで為替差損やマイナススワップがある場合

海外FXの取引で得た所得は、総合課税の雑所得に区分されます。損失がある場合、国内FXの利益との相殺はできませんが、同じ総合課税の雑所得(公的年金やソーシャルレンディングなど)の間での損益通算は可能です。 

ソーシャルレンディングで損失がある場合

ソーシャルレンディングの配当金は、海外FXと同様に総合課税の雑所得に区分されます。損失がある場合、他の所得区分との損益通算はできませんが、同じ総合課税の雑所得(公的年金や海外FXなど)の間での損益通算は可能です。 

不動産経営で赤字の場合

不動産所得は、家賃などの不動産からの収入から修繕費などの必要経費を差し引いて求めます。不動産所得は時には赤字になることもあり、給与所得など他の所得との損益通算が可能です。

金の売却で損失が出た場合

個人が保有していた金地金などの売却による所得は、主に譲渡所得に分類されます。売却損が発生した場合には、同じ譲渡所得(ゴルフ会員権などの売却による所得)との損益通算が可能です。

3-4.損失の繰越控除をする場合

項目 2021年 2022年 2023年 2024年
譲渡損益 ▲500万円 300万円 0円 300万円
前年からの繰越 なし ▲500万円 ▲200万円 ▲200万円
翌年への繰越 ▲500万円 ▲200万円 ▲200万円 なし
控除後の所得 0円 0円 0円 100万円

所得の種類によっては、損益通算をしても損失が残る場合に翌年以降3年間繰り越して、各年度の利益と相殺する繰越控除が利用できます。損失の繰越控除ができるのは、株式や投資信託の株式等譲渡所得と、国内FXなどの先物取引に係る雑所得等です。いずれも同じ所得区分内での繰越控除が認められています。

確定申告により損失を繰り越しておくと、利益が出た年にその分を差し引けるので、節税効果が見込めます。3年間損失を繰り越すためには、取引が行われない年でも確定申告を継続しなければなりません。

4.確定申告をしないとどうなるか

本来、確定申告をしなければならない人が期日までに申告をしなかったり、申告の内容を間違ったりすると、ペナルティを課されます。

金融機関などが納税義務者に利益金の支払いをすると、税務署に支払調書という書類が送られます。税務署は支払調書により個人の所得を把握しているため、確定申告をしない人や誤りのある人に指摘をすることが可能です。

4-1.期日までに申告しないと無申告加算税がかかる

期限内に申告を行わなかった場合、本来の納税額に対して無申告加算税が課されます。無申告加算税の納税額に対する税率は以下のとおりです。

  • 50万円以下の部分:15%
  • 50万円超の部分:20%

税務署からの指摘を受ける前に自主的に期限後申告をすると、税率が5%に軽減されます。

4-2.間違えて少ない金額を申告すると過少申告加算税がかかる

確定申告の内容が誤りで、本来の所得より少ない金額の申告をしていた場合、修正申告が必要です。税務署の指摘を受けてから修正する場合、新たに納める税額に加え、10%または15%の過少申告加算税が課されます。自主的に修正申告をすれば、過少申告加算税はかかりません。

4-3.追加で納税する分には延滞税が加算される

無申告加算税や過少申告加算税を納める場合、納期限の翌日から完納されるまでの期間に延滞税がかかります。修正申告が遅くなるほど延滞税がかさむので、確定申告は期日までに正確な内容ですませましょう。

5.確定申告の仕方

投資の所得がある人が、確定申告をする方法について解説します。確定申告書は国税庁のウェブサイト「確定申告書作成コーナー」で作成・提出する方法や確定申告会場などで作成・提出する方法があります。

5-1.確定申告の流れ

確定申告の流れは、次のようになります。

  1. 金融機関が発行する年間取引報告書など、1年間の収支や源泉徴収税額がわかる書類の準備(不動産所得の場合は決算書の作成も)
  2. 確定申告書を作成
  3. 確定申告書を提出
  4. 所得税の納付または還付を受ける

5-2.確定申告の必要書類

確定申告にあたって必要となる書類は以下のとおりです。

  • 確定申告書AまたはB
  • 本人確認書類(マイナンバーカードなど)

以下の書類は申告の作成に使用しますが、提出の必要はありません。

  • 1年間の収支や源泉徴収税額がわかる書類
  • 給与所得の源泉徴収票

6.投資の税金の注意点

最後に、投資で得た利益にかかる税金に関連して注意すべき点について解説します。

6-1.専業主婦(夫)や学生は扶養を外れる場合も

主婦(夫)や学生など親族に扶養される人の所得が、48万円を超えると扶養から外れます。扶養から外れると、世帯主の課税所得が増え、かかる税金も増えます。

扶養の判定基準は、投資の所得と他の所得の合計金額です。特定口座(源泉徴収あり)での利益は課税所得に加算されないため、申告しなければ扶養を外れることはありません。

扶養を外れたくない場合、株式や投資信託の取引口座は源泉徴収ありの口座を選び、確定申告をしないほうがよいでしょう。その他の投資において確定申告が必要なケースで、どうしても扶養を外れたくない人は、取引金額を少なくするなどの対策が必要です。

6-2.個人事業主や年金受給者は健康保険料が増えることも

確定申告により個人事業主や年金受給者などは、国民健康保険の保険料が増える可能性があります。国民健康保険の保険料は前年度の総所得金額等をもとに決まるため、投資の所得を申告すると翌年の保険料が増加することを知っておきましょう。

まとめ

投資で利益を得ると、確定申告をして納税をしなければなりません。税務署は個人の取引内容を把握しているため、申告が必要な人は期日までにすませるようにしましょう。

また、大きな利益が出た人は税額も多くなります。投資の利益は使い切ってしまわず、納税資金を取っておくようにしましょう。

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松田 聡子

松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。運営サイト : 経営体質改善のヒント