転勤や離婚、親の介護等の事情により、住宅ローンが残っているにも関わらず引っ越しせざるを得ない状況に陥ることがあります。
「子供が大きくなったからもっと広い部屋が欲しい」「増改築したいが今の土地では厳しい」といった理由で住み替えを希望する方も多いでしょう。しかし、住宅ローンの残っている状態の家から引っ越しはできるのでしょうか?
この記事では住宅ローンの残っている家における引っ越しの手順、注意点を解説していきます。
目次
- まずはローンを組んでいる金融機関に相談をする
- 家を売却する場合は複数の不動産会社へ査定を依頼する
- 不動産担保ローンと住み替えローンについて
3-1.不動産担保ローン
3-2.住み替えローン - 家を残す場合は賃貸用物件として貸し出す
- 住宅ローンが残っている家から引っ越しをする際の注意点
5-1.住宅ローン控除の適用について
5-2.新居の住居費を確保しておく
5-3.家を売却する場合は特例制度を活用できる - まとめ
1.まずはローンを組んでいる金融機関に相談をする
住宅ローンは原則自分や家族が住む家が対象となりますので、残債がある場合は「現在ローンを組んでいる金融機関から引き続き住宅ローンの融資が受けられるか」が重要なポイントとなります。
例えば住宅金融支援機構の「フラット35」の場合、融資した資金の使い道は「申込みご本人またはそのご親族の方がお住まいになる新築住宅の建設・購入資金または中古住宅の購入資金」と定義しています。仮に融資した資金を投資用物件などの別の用途に充てている事が判明した場合、借入金の一括返済を求められるケースもあります。
このような場合、まずは金融機関で担当者に引っ越しを希望する旨を相談しましょう。転勤や離婚、親の介護等やむを得ない事情の場合、金融機関が柔軟に対応を行っているケースも少なくありません。
ローン返済中の引っ越しに関してマニュアルを設けている金融機関も存在しますが、転勤の場合は単身赴任か、家族全員で引っ越すのかといった問題やローンの残りの金額、「○年間固定金利」といったローンのプラン状況によって対応は異なるでしょう。
例えば「転勤などやむを得ない事情による一時的な転出の場合、住宅ローンを引き続き利用できる。」という金融機関も存在します。
このように、住宅ローンが残っている住宅を引っ越す際の対応は金融機関によって異なります。まずは金融機関に相談し、どのような方法が取れるのか確認することが大切です。
2.家を売却する場合は複数の不動産会社へ査定を依頼する
金融機関に相談した結果、一括返済を求められた場合や金銭的事情で売却せざるをえない時は家を売却し、ローンの返済に充てましょう。
売却する際はまず複数の不動産会社に査定を依頼し、売却金額の相場を把握しておきましょう。下記は複数の不動産会社へ同時に査定依頼ができる不動産一括査定サイトの一覧です。
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【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧
1社の不動産会社に査定を依頼してしまうと、査定を依頼した不動産会社によって販売力や得意な物件タイプが異なるため、正確な査定価格を調査することが難しいケースがあります。出来るだけ複数社の査定を受け、査定価格や売却時期、営業マンの対応内容などを比較することが大切です。
査定価格の調査を終えたら、不動産会社への仲介手数料や司法書士への報酬等の売却にかかる経費の目安を計算し、売却金額から経費を差し引いた利益がいくらになるかを試算しておきましょう。
不動産売却で得た利益は引越し先の住居費用や引っ越し費用に充てることができますので、試算しておくことで新居の予算のシミュレーションに繋がります。
家を売却した際、税金(譲渡所得税)を払うケースが存在しますが、後述するマイホームの3,000万円の控除の特例制度があります。いずれにせよ売却で出る利益を試算しておくと良いでしょう。
不動産の査定価格が残債より下回っているオーバーローンの場合
不動産査定の査定額が残債を下回る「オーバーローン物件」となっている場合には、売却するかどうか、あらためて考える必要があります。残債が残っていることで差額分の捻出をしなければならず、残債がある状況では新たな住宅ローンの契約も難しくなる傾向にあるためです。差額の一括返済が難しい場合には、主には下記3つのような対策を取ることになります。
- 住み替えで売却するのであれば、住み替えローンを検討する
- 現在の家に住み続けられないか検討する
- 他の不動産会社に売却を依頼する
オーバーローン物件である場合には、現在の家に住み続けられないか再検討するか、出来るだけ高く不動産を売却できるよう複数の不動産会社へ相談し、より良い売却手段を探す必要があります。
【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も
3.不動産担保ローンと住み替えローンについて
金融機関で引き続き住宅ローンを利用できないと判断されたものの、ローンの支払いを続けながら家を残しておきたい場合は、下記2つのローンを利用する方法があります。
- 不動産担保ローン
- 住み替えローン
不動産担保ローン・住み替えローン共に通常の住宅ローンよりも金利が高く、融資条件も厳しいものととなりますので、新居の住居費や賃貸用物件として貸し出した場合は利回りも計算した上でローンを組むことが大切です。
ここからはそれぞれのローンの詳細について見て行きましょう。
3-1.不動産担保ローン
不動産担保ローンとは不動産を担保に融資が受けられるローンで、一般的なカードローンやキャッシングより金利は低いものの住宅ローンと比較すると負担は増えてしまいます。
金融機関によっては、借入限度額は最高1億円、借入期間は最長35年というケースも存在します。借入金額・期間は好条件な反面、手数料がかかり融資までに時間がかかります。
不動産担保ローンの返済が難しくなった場合は、担保に入れた家や土地を売却してローンを返済することになります。
3-2.住み替えローン
住み替えローンは旧居の住宅ローンの残債と、新居の住宅ローンを合わせて借り入れることが可能です。
通常の住宅ローンよりも金利が高くなり審査も厳しくなり、売却と購入を同時に行うことが条件の一つです。そのため新居探しの時間が限られてしまうというデメリットが存在し、各種手数料がかかります。
上記のデメリットがあるため、まずは金融機関との交渉や売却などその他の手段を検討した後に、住み替えローンの利用を考えてみましょう。
デメリットを知った上でも利用したい方は現在ローンを組んでいる金融機関にローンの申請を行いましょう。今までの住宅ローンの返済がスムーズである場合は、他の金融機関より審査が通る可能性が高いと言えます。
不動産担保ローン・住み替えローン共に、通常の住宅ローンより高い金利が設定されるため総返済額も増えてしまいます。ローンを組む際はどれくらい返済の負担が増えるのか、住み替え後の返済が可能かどうか確認をしておきましょう。
4.家を残す場合は賃貸用物件への転用を検討する
家を残しておきたい場合、賃貸用物件として貸し出すことで不動産ローンの返済や固定資産税などのランニングコストに充当することが可能です。また、定期借家契約を結ぶことで一定期間の賃貸契約を結べるため、転勤により戻ってくるケースでは再び住むこともできます。
ただし賃貸物件として貸し出す前に、ローンを組んでいる金融機関に賃貸物件に転用する条件について必ず相談するようにしましょう。金融機関によっては事業用ローンに組み替えなくてはいけないケースもあります。
また、マンションの賃貸経営には入居者が想定通りに入らない空室リスクや、災害によって運営が困難となる災害リスクなど、注意しておきたい様々なリスクがあります。貸し出す前に、年間の家賃収入から修繕費や固定資産税・管理費等年間にかかる経費を差し引き年間の利益をあらかじめ試算しておきましょう。
マンション経営で利益を生むためには、専門的な知識や経験を必要とする場面も少なくありません。賃貸用物件として貸し出した後に「やはり家を手放すべきだった」「思ったより賃貸事業が厳しかった」と後悔しないためにも、試算した年間の利益とローンの金利を考慮に入れ、賃貸管理会社への相談も行いながら、慎重に検討することが大切です。
5.住宅ローンが残っている家から引っ越しをする際の注意点
次に、住宅ローンの残債がある家から引っ越す場合の3つの注意点をご紹介します。
- 住宅ローン控除の適用について
- 新居の住居費を確保しておく
- 家を売却する場合は特例制度を活用できる
引っ越す前には新居の住居費用を把握・確保しておくことが重要となります。また現在住宅ローン控除を受けている方が引っ越した後の適用可否、家を売却した時に生じる税金を最高3,000万円控除できる特例制度といった税制面についてもお伝えしていきます。
5-1.住宅ローン控除の適用について
住宅ローン控除は住宅ローンを借り入れ住宅の新築・取得又は増改築等をした場合、年末のローン残高の1%を所得税(一部、翌年の住民税)から10年間控除できる制度となっています。
住宅ローン控除は大きな税制優遇であるため、多くの方が制度の適用を受けていることでしょう。しかし、控除の条件の1つに「その者が主として居住の用に供する家屋であること」という文言があり、原則引っ越した場合には住宅ローン控除の適用は出来なくなります。
5-2.新居の住居費を確保しておく
住宅ローンの残っている家でローンを支払いながら、引っ越し先で再び家を購入する場合はダブルローンになってしまいます。
先に述べた住み替えローンという方法もありますが、以前より返済の負担が大きくなるという点では変わりません。
賃貸物件の場合も引っ越し代や敷金・礼金等様々な費用がかかります。新居の住居費を試算し確保した上で、現在居住している家の処遇を検討しましょう。
5-3.家を売却する場合は特例制度を活用できる
マイホームを売却する場合、譲渡所得(売却代金から経費を差し引いた額)から最高3,000万円まで控除ができる「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」という制度があります。
控除を受けるためには、引っ越した日から3年を経過する年度の12月31日までに売却する、収用等の場合の特別控除やマイホームの買換えやマイホームの交換の特例等の特例の適用を受けていない等の条件があります。
その他、各種書類の作成・提出と確定申告を行う必要があり、適用には家の売却後にやや手間のかかる作業が必要です。しかし、最高3,000万円の控除は数万円~数十万円の税金が控除されるケースもあるため、売却を検討している方は特例制度の適用が出来るかどうか確認しておきましょう。
住宅ローンについて不安がある場合
住宅ローンについて不安がある場合は、ファイナンシャルプランナーなどプロのアドバイスを受けることを検討されてみるのも良いでしょう。例えば、株式会社リクルートが提供する「保険チャンネル」では、専門知識を持ったファイナンシャルプランナーへ無料相談をすることが可能です。
頭金として備える額や住宅ローンと並走して発生する費用といった、いつまでにいくら必要かというスケジュール感も具体的に知ることができ、今後の将来設計も踏まえたライフプランの相談も可能となっています。リクルートグループが提携するFPのみが登録されているため、無理な勧誘やしつこい営業が行われないという点も特徴的です。
まとめ
住宅ローンの残っている家における引っ越しの手順、注意点を解説しました。
住宅ローンが残っている家から引っ越す場合、まずは金融機関に相談してどのような手段があるのか確認することが大切です。不動産担保ローンを利用できる場合は、引っ越す家を貸し出すという活用方法も検討することもできるでしょう。
また売却を不動産会社に依頼する際は、複数社の不動産会社に査定を依頼して査定結果や対応内容を比較することが大切です。オーバーローンとなってしまう場合には、今の家に住み続けられないか再検討したり、出来るだけ高く売却を進めるなどの対策を講じましょう。
田中 あさみ
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