NPOとNGOはどちらも「営利を目的としない団体」という共通点がありますが、NPOは法人として設立できる一方で、NGOは日本では法人格を持つことができないという違いがあります。
本記事ではNPOとNGOの違い、それぞれの活動内容や政府・国際機関との関わり、主なNPO・NGO団体についてお伝えしていきます。
目次
- NPOとNGOの違いとは
1-1.NPO・NGOの活動内容とは
1-2.日本ではNGOに法人格がなく「NPO法人」と名乗っている団体も
1-3.政府・国際機関との連携や資金協力 - 主なNPO・NGO団体3つ
2-1.ワールド・ビジョン・ジャパン
2-2.国際協力NGOセンター(JANIC)
2-3.国連UNHCR協会 - まとめ
1.NPOとNGOの違いとは
NPOは「Non-Profit Organization」又は「Not-for-Profit Organization」の略称で、営利を目的としない団体を指します。例えば、内閣府NPOホームページの「NPOのイロハ」では「様々な社会貢献活動を行い、団体の構成員に対し、収益を分配することを目的としない団体の総称」と解説されています。
一方で、NGOとは「Non-governmental Organization」の略称です。「非政府組織(団体)」と訳され、開発・貧困・平和・人道・環境など地球規模の問題に自発的に取り組む非政府・非営利組織を指します。外務省の「国際協力とNGO」では「貧困,飢餓,環境など,世界的な問題に対して取り組む市民団体」と解説されています。
なお、2022年4月時点で日本のNGOの数は400団体以上、認証NPO法人は2021年3月時点で5万団体以上です。どちらも非政府・非営利組織ではありますが、NGOはもともと国連で政府以外の関係組織を示すのに使われていた言葉が広まったものである、という点がポイントです。
1-1.NPO・NGOの活動内容とは
特定非営利活動促進法によると、特定非営利法人の活動は下記の通り記載されています。
別表(第二条関係)
一 保健、医療又は福祉の増進を図る活動
二 社会教育の推進を図る活動
三 まちづくりの推進を図る活動
四 観光の振興を図る活動
五 農山漁村又は中山間地域の振興を図る活動
六 学術、文化、芸術又はスポーツの振興を図る活動
七 環境の保全を図る活動
八 災害救援活動
九 地域安全活動
十 人権の擁護又は平和の推進を図る活動
十一 国際協力の活動
十二 男女共同参画社会の形成の促進を図る活動
十三 子どもの健全育成を図る活動
十四 情報化社会の発展を図る活動
十五 科学技術の振興を図る活動
十六 経済活動の活性化を図る活動
十七 職業能力の開発又は雇用機会の拡充を支援する活動
十八 消費者の保護を図る活動
十九 前各号に掲げる活動を行う団体の運営又は活動に関する連絡、助言又は援助の活動
二十 前各号に掲げる活動に準ずる活動として都道府県又は指定都市の条例で定める活動
※引用:平成十年法律第七号「特定非営利活動促進法(別表)」
上記の特定非営利活動促進法を確認してみると非営利団体の活動内容は「不特定かつ多数のものの利益の増進に寄与することを目的とするもの」と定められています。
NGOは前述の通り「貧困・飢餓・環境など世界的な問題に対して取り組む団体」であるためNPO団体と活動内容が類似しており、活動内容から明確に分ける事は難しいと言えるでしょう。しかしながら、NGOは国際的に活動し、政府や国際機関に働きかけ提言(アドボガシー)をする団体が多い、という傾向があります。
1-2.NPO法人として法人格を得るNGO団体もある
日本ではNGOに法人格がありません。しかし、NGO団体のように法人を設立せずに活動する場合は「任意団体」と呼ばれ、全国に任意団体として福祉活動を行っている団体は数多くあります。
任意団体は法人設立のための手間や費用がかからないというメリットがありますが、寄付付金控除ができない、団体名義で契約・財産の所有ができないといったデメリットが存在します。
NPO・NGOを法人組織として立ち上げるためには、特定非営利活動法人(NPO法人)または公益法人(一般社団・財団法人、公益社団・財団法人など)などの法人格を取得する必要があります。そのため、NGO団体がNPO法人や各種法人として法人格を獲得し、活動しているケースも存在します。
2.主なNPO・NGO団体3つ
- ワールド・ビジョン・ジャパン
- 国際協力NGOセンター(JANIC)
- 国連UNHCR協会
2-1.ワールド・ビジョン・ジャパン
ワールド・ビジョン・ジャパンは開発援助・緊急人道支援・政策提言(アドボガシー)などで子供達への支援を中心に活動する団体です。「国際協力NGO」とホームページに記載されていますが、1999年に特定非営利活動法人として、2002年に認定NPO法人として認証されています。
NGOに法人格がないため、NGOとして活動しながら認定NPO法人となっている団体の1つと言えるでしょう。外務省や国際協力開発機構(JICA)との連携した事業もあり、過去にはカンボジアの乳幼児・妊産婦の健康改善を目指すプロジェクト、バングラデシュで衛生環境の改善への取り組みなどの活動を行っています。
2-2.国際協力NGOセンター(JANIC)
国際協力NGOセンター(JANIC)はNGOの力の最大化によって世界の社会課題解決の促進を目指す特定非営利活動法人です。JANICはNGO間、政府や企業、労働組合、自治体等とのネットワークをつくることで連携・協働を進める活動を行っています。
400以上ある日本の国際協力NGOの多くは、欧米のNGOに比べ規模が小さく、人材や資金の確保など、さまざまな課題を抱えています。JANICの活動内容はこれらのNGO団体の連携を深めることであり、日本の国際協力NGOを後方支援しています。なお、JANICは1987年に設立され、2001年3月にNPO法人格を取得しています。
2-3.国連UNHCR協会
国連UNHCR協会は、国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の活動を支援する日本の公式窓口で、2000年10月に「特定非営利活動法人国連UNHCR協会」として設立されました。
UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)は1950年に設立された国連の難民支援機関で、難民や庇護を求める人々、帰還者、無国籍者などの権利を保護する事を目的としています。
国際政治学者の緒方貞子氏が日本人で初めての国連難民高等弁務官として、世界の難民の保護と救済に携わり、UNHCRで初めて各国政府の支持のもとで救援物資を輸送する大規模な空輸作戦を実施しました。UNHCRの活動資金は、各国政府からの拠出金や寄付金で賄われています。
まとめ
NPOとNGOの違いや活動内容、主なNPO・NGO団体について解説してきました。
NPOは営利を目的としない団体、NGOは政府に属さない団体という点が特徴として挙げられますが、活動目的や内容に大きな違いはないと言えます。しかし、日本ではNGO団体に法人格がないため、NPO法人として法人格を獲得している団体が多いという背景があります。
NPO・NGO関連の団体へ寄付やボランティアなどの支援を検討する際は、これらの名称の違いや使い分けの背景を知っておくと支援先の団体を比較するうえで役立ちます。自身の支援目的と照らし合わせながら、団体ごとに詳しく活動内容を確認されてみると良いでしょう。
田中 あさみ
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