つみたてNISAとは、毎年一定額の非課税投資枠が設定されたNISAを少額・長期積立投資に特化させた制度で、2018年1月からスタートした比較的新しい資産運用の方法です。新規投資額は年間40万円までと一般NISAよりも少額ですが、非課税期間は最大20年間と長期・積立・分散投資に適した制度設計となっているのが大きな特徴です。
この記事では、積立投資や少額投資を検討している方のために、つみたてNISAのメリット・デメリット、一般NISAとの主な違い、つみたてNISAを始める手順について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
目次
- つみたてNISAとは
1-1.つみたてNISAと一般NISAの違い - つみたてNISAのメリット
2-1.非課税で投資ができる
2-2.長期・分散・積立投資ができる
2-3.少額からできる
2-4.投資対象が厳選されている
2-5.いつでも払い戻しができる - つみたてNISAのデメリット
3-1.元本は保証されない
3-2.投資対象が限定されている
3-3.他口座との損益通算・繰越控除ができない
3-4.所得控除の対象にならない
3-5.非課税枠の持越しができない - つみたてNISAを始める手順・方法
- まとめ
1 つみたてNISAとは
そもそもNISAは「少額投資非課税制度」といい、年間120万円の範囲内で購入した金融商品の運用益が5年間にわたり非課税扱いとなる制度です(以下、この記事では一般NISAと言います)。
通常、投資による利益には、通常20.315%の税(所得税・住民税・復興特別所得税)がかかりますが、「一般NISA」や「つみたてNISA」で投資・資産運用を行うと、この税金が一定の範囲内でかからなくなるのが主な特徴です。
1-1 つみたてNISAと一般NISAの違い
つみたてNISAは、一般NISAの積立版と言われる制度で、同じように投資による利益が一定の範囲内で非課税になりますが、投資対象や非課税枠、非課税期間などについては次のような違いがあります。
項目 | つみたてNISA | 一般NISA |
---|---|---|
非課税となる投資対象 | 国が定める基準を満たす投資信託、ETF | 上場株式(ETF,REITを含む)、投資信託 |
非課税となる投資方法 | 定期的・継続的な方法による積立投資のみ | 一括投資、積立投資 |
非課税となる年間投資限度額 | 40万円 | 120万円 |
非課税となる投資期間 | 20年間 | 5年間 |
非課税となる投資限度額累計 | 800万円 | 600万円 |
利用できる人 |
つみたてNISAでは、長期積立投資による利益を非課税扱いとするため、投資対象の要件が一般NISAより厳しくなっているのが特徴です。
例えば、非課税となる投資対象は、一般NISAが上場株式(ETF,REITを含む)、投資信託であるのに対し、つみたてNISAでは、国が定める基準を満たす投資信託かETFとされています。
ETF(上場投資信託)とは証券取引所に上場されている投資信託のことで、また、REIT(不動産投資信託)は、投資業者が投資家の資金を使って不動産を購入し運用する金融商品です。
投資方法についても、一般NISAでは上場株式を限度額まで一括購入するなどが認められますが、つみたてNISAでは、定期的・継続的な方法による積立のみに限られ、長期積立投資が前提となっています。定期的・継続的な方法による積立とは、毎年・毎月・四半期ごとの定期的なサイクルで金融商品を購入し続けることを指します。
さらに、一般NISAが非課税投資期間5年間で合計600万円の非課税枠であるのに対し、つみたてNISAでは、非課税投資期間が20年間と長く、合計非課税枠も800万円と拡大されています。
2 つみたてNISAのメリット
つみたてNISAの具体的なメリットや特徴を確認しましょう。
2-1 非課税で投資ができる
通常の投資の場合、運用益に対して毎年20.315%の税金がかかりますが、つみたてNISAでは、毎年40万円の範囲内で積立投資を行うことができ、最大20年間にわたり運用益に税金がかかりません。
2-2 長期・分散・積立投資ができる
つみたてNISAは、長期積立投資による利益を非課税にしてくれるため、教育資金や住宅資金、老後資金などの目的で長期積立を行う場合に向いています。「毎月1万円」など、定期・定額で金融商品を購入し続けることで投資のリスクを時間的に分散し、平均購入単価を切り下げることができます(=ドルコスト平均法)。
2-3 少額からできる
毎月の積立額は金融機関や証券会社によって異なりますが、ネット証券などでは100円から積み立てられる金融商品もあります。毎月1,000円・1万円などの生活費に負担の少ない少額から長期的に資産形成を目指すことができるのも、つみたてNISAの特徴です。
2-4 投資対象が厳選されている
通常、投資信託を始める場合、国内で流通する数千本の中から自分に合った商品を選ぶ必要があるため、手間や時間がかかります。
一方、つみたてNISAを利用する場合、その投資対象は金融庁の審査を通過した約170本の投資信託に厳選されています。初心者の方が自分で投資信託を選ぶ場合と比べて手間を省ける上、金融庁の厳しい審査を通った商品の中から選べるのはメリットです。
2-5 いつでも払い戻しができる
つみたてNISAは、自分が好きな時にいつでも払い戻すことができます。例えば、確定拠出年金のiDeCoは、加入者が毎月一定額の掛金を積み立て、投資信託・保険・定期預金などの金融商品で運用を行うものですが、積み立てた掛金は60歳になるまで払い戻しができません。
一方、つみたてNISAでは、急に資金が必要になったなど自分の経済事情の変化に応じていつでも出金することが可能です。
3 つみたてNISAのデメリット
次に、つみたてNISAのデメリットを見ていきましょう。
3-1 元本は保証されない
つみたてNISAの金融商品は国の審査で厳選されているとはいえ、投資信託やETFの価格はその時々の経済・景気動向の影響を受けます。場合によっては、想定外の相場変動により元本割れを起こす可能性もあります。元本が保証された預金とは異なり、つみたてNISAも「あくまで投資の一つ」との認識を持っておくことが大切です。
3-2 投資対象が限定されている
つみたてNISAの投資対象は、国が定める基準を満たす投資信託やETFに限定されています。そのため、長期積立投資に見合う金融商品が用意されていると言うこともできますが、逆に、選べる金融商品の種類や数が豊富ではないのがデメリットになります。
利用者によっては、多少のリスクを取っても高リターンの投資信託を選びたい方もいると思いますが、希望通りの商品がつみたてNISAにない可能性もあります。
3-3 他口座との損益通算・繰越控除ができない
複数の証券口座で投資を行う場合、各口座の損益を相殺して利益額を圧縮し節税を図ることができますが、つみたてNISAでは他の課税口座との損益通算ができません。
例えば、A社の証券口座の年間損益がプラス50万円で、つみたてNISA口座の年間損益がマイナス10万円の場合、両者を損益通算することはできず、A証券口座の年間利益である50万円に対してそのまま課税されることになります。
また、損益通算で控除しきれなかった損失を翌年以降に繰り越して、翌年以降の利益と相殺することを損失の繰越控除といいますが、つみたてNISAでは繰越控除もできません。
3-4 所得控除の対象にならない
確定拠出年金のiDeCoでは、積み立てる掛金の全額が所得控除の対象になります。言い換えれば、iDeCoの掛金は所得控除として収入額から差し引くことができることので、その分課税所得が少なくなり、税金が安くなるというメリットがあります。
一方、つみたてNISAの積立金額は、iDeCoのように所得控除の対象にならない点はデメリットと言えます。
3-5 非課税枠の持越しができない
つみたてNISAでは、運用益が非課税となる年間投資限度額が40万円となっていますが、この40万円を上限まで使わなかったとしても、その残りを翌年に持ち越すことはできません。
例えば、ある年に30万円しか積み立てずに10万円の枠が残っても、その10万円を翌年に持ち越して、翌年分の年間投資限度額40万円と合わせて50万円にすることはできません。仮に、年間投資限度枠で使い切らない残りが生じても、毎年の年間投資限度額は40万円のままとなります。
4 つみたてNISAを始める手順・方法
つみたてNISAの口座を開設してから金融商品を購入するまでの手順は、次の通りです。
- 金融機関を決める
- つみたてNISA口座を開設する
- 積立金額を決める
- 購入する商品を決める
つみたてNISAは、まず口座を開設する金融機関(証券会社・銀行)を決めることから始めます。この場合、金融機関の選定基準は、以下のポイントを参考にすると良いでしょう。
扱っている金融商品の内容 金融機関によって、扱っている金融商品の内容が異なります。自分が購入を希望する金融商品が用意されているかどうかなどが選ぶポイントなります。
- 最低積立金額:毎回の最低積立金額がいくらかということも重要な選定ポイントです。少額から始めたい方は、最低積立金額が低く設定されている金融機関を選ぶのがおすすめです。
- サポート体制:疑問点などが生じた場合に、公式サイトの解説や電話・メール照会によって問題が解消されるかなど、顧客へのサポート体制もしっかりチェックしましょう。
なお、NISA口座は、すべての金融機関を通じて1人1口座しか持てません。そのため、すでに他金融機関でNISA口座を持っている方は、切り替えの手続きが必要になります。
証券会社につみたてNISA口座を開設する場合は、同時に証券総合口座も開設することになります。証券総合口座には、「特定口座(源泉徴収あり)」「特定口座(源泉徴収なし)」、「一般口座」の3種類がありますが、初心者の方には自分で確定申告をする手間を省ける「特定口座(源泉徴収あり)」がおすすめです。
口座開設手続きはネットで申請でき、本人確認書類も画像をアップロードすれば提出できるので、口座開設ページの案内に従って進めていけば特に難しいことはありません。口座開設の申請が終われば、金融機関の審査があり、後日その結果が送られてきます。
つみたてNISAの口座が開設されたら、積み立てる金額を決めます。つみたてNISAでは、毎年40万円までの投資額であれば、20年間にわたり利益が非課税になります。したがって、年間40万円の範囲内で毎月(もしくは四半期ごと、年1回のタイミング)の積立額を決めて、それに見合う資金を口座に入金します。
最後に購入する金融商品を決めます。つみたてNISAでは、投資対象の種類や数が限定されているため、商品選びはあまり難しくはありません。初心者の方はリスク分散のために特定の銘柄だけでなく、複数の金融商品を選ぶのもおすすめです。
まとめ
つみたてNISAは、一般NISAの積立版といえる制度で、定期的・継続的な積立で長期投資を行うことが前提となっています。そのため、運用益が非課税となる投資対象や投資方法が限定されていますが、非課税となる投資限度額や投資期間は一般NISAより大きいのがメリットです。
老後の生活資金不足問題が話題になった通り、最近は長期的な資産運用や私的年金作りの方法が注目されています。つみたてNISAに興味のある方は、制度の特徴やメリット・デメリットをよく把握してから、自身に合った金融機関や金融商品を選ぶようにしましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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