マンションを売却する際、印紙税、譲渡所得税などの税金が課税される可能性があります。中でも譲渡所得税はマンションの所有期間が5年以内の場合には所得税が30%、住民税が9%と税率が高いため注意が必要です。
ただし、一定の要件に当てはまる際には、税金の対象となる価額から最高3,000万円まで控除される特例があります。また、印紙税や登録免許税にも一定の期間内では軽減措置が適用されます。
本記事ではマンション売却時に支払う可能性がある税金一覧、各種税金の軽減措置や控除の特例を解説していきます。
※記事内の税金・税率などは2021年9月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- マンション売却で支払う可能性のある税金とは
1-1.印紙税
1-2.登録免許税
1-3.年度途中の固定資産税・都市計画税
1-4.譲渡所得税 - マンションの譲渡所得税に関する特別控除3つ
2-1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
2-2.特定のマイホームを買い換えたときの特例
2-3.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 - マンション売却に強い税理士の探し方
- まとめ
1.マンション売却で支払う可能性のある税金とは
マンションを売却するにあたって納める可能性のある税金について見ていきましょう。
1-1.印紙税
印紙税は不動産の売却時の売買契約書において必要となり、契約金額によって納める額が異なります。
2014年4月1日から2022年3月31日までの間に作成され、記載金額が10万円を超えるものは軽減税率の対象となり、売買金額の変更・修正の際に作成される変更契約書や補充契約書等についても軽減措置の対象となります。契約書に郵便局やコンビニなどで購入した収入印紙を貼付する形で納税します。
契約金額 | 印紙税額 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円を超え500万円以下 | 2千円 | 1千円 |
500万円を超え1千万円以下 | 1万円 | 5千円 |
1千万円を超え5千万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5千万円を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 10万円 | 6万円 |
※引用:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」
1-2.登録免許税
登録免許税はマンションのローンを完済した時の抵当権抹消登記、所有権移転登記の際に必要となります。司法書士に依頼する場合、依頼費用と合わせて支払います。
抵当権抹消登記
金融機関で借りたローンの残債が残っている場合、マンションに抵当権が設定されています。抵当権抹消登記は、この抵当権を登記から抹消する手続きで、不動産1つにつき1000円となります。抵当権抹消の登記申請書に収入印紙を貼り付けた用紙を添付し、管轄の法務局に提出します。
所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の名義を変更する際に必要な手続きです。土地や建物の評価額の値段によって、また所有権が移転する理由によって、税率が異なります。なお、不動産売買による移転登記では司法書士に依頼するケースがほとんどであり、登記費用に合わせて司法書士への依頼費用がかかります。
1-3.年度途中の固定資産税・都市計画税
固定資産税・都市計画税は毎年1月1日現在のマンション所有者に所在地の自治体から納税通知書が送付されます。
- 固定資産税:固定資産課税台帳の価格×1.4%
- 都市計画税:固定資産課税台帳の価格×0.3%
通常は一括又は年4回の分割払いで納付しますが、売却によって年の途中で所有者が変わった時には当事者間で相談して負担割合を決定します。原則、所有権移転日を境に日割り計算で売主(所有権移転前)と買主(所有権移転後)が負担するケースが多くなっています。
1-4.譲渡所得税
不動産の売却時に利益が出た場合は譲渡所得税という税金が課されます。譲渡所得税は以下で算定する課税譲渡所得金額に一定の税率をかけて計算を行います。
売却価格 -(取得費+譲渡費用)- 特別控除額(一定の場合)= 課税譲渡所得金額
取得費はマンションを購入した時の代金や仲介手数料などの合計額です。実際の取得費の金額が譲渡価額の5%に満たない場合は、譲渡価額の5%相当額を取得費として計算します。
売却時の仲介手数料、測量費など売却のために直接要した費用などが譲渡費用であり、特別控除額は一定の要件を持たし控除が適用される際に差し引かれるものです。
マンションを売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得に、5年以下の場合は短期譲渡所得になります。
- 土地:固定資産課税台帳※の価格×2%(※2023年3月31日までの間に登記を受ける場合1.5%の軽減税率)
- 建物:固定資産課税台帳の価格×4%(※一定の期間内に要件を満たした住宅用家屋は1~3%に軽減される)
譲渡所得(売却の利益)が生じた際には、売却した年度の翌年の1~3月に確定申告を行います。なお、確定申告の際には所得税と併せて復興特別所得税を申告・納付することになります。
※出典:国税庁「土地や建物を売ったとき」
2.マンションの譲渡所得税に関する特別控除3つ
譲渡所得税はマイホームを売却した時、買い換えた場合、買い換えた結果損失が出たケースでそれぞれ特例があり、一定の要件を満たした時には確定申告を行う事で控除されます。
2-1.居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
マイホームを売却した際には、譲渡所得から最高3,000万円まで控除ができる特例があり、以下の要件を満たす必要があります。
- 自身が住んでいるマンションを売却又は、マンションとともに敷地や借地権を売却する
- 以前に住んでいたマンションの場合には、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却している
- 売却した年の2年前までに以下の特例を受けていない
- 居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例
- 被相続人の居住用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例
- マイホームの譲渡損失についての損益通算及び繰越控除の特例
- マイホームの買換えやマイホームの交換の特例
- 収用等の場合の特別控除
- 売主と買主が、親子や夫婦、生計を一にする親族、家屋を売った後に同居する親族、内縁関係にある人、特殊な関係のある法人など特別な関係でない
特例を受けることだけを目的として入居したと認められる場合、別荘といった趣味・娯楽又は保養のために所有するケース、仮住まいなど一時的な入居では除外されます。特例を受けるためには確定申告が必要で、確定申告書に譲渡所得の内訳書を添付して管轄の税務署に提出します。
※出典:国税庁「マイホームを売ったときの特例」
2-2.特定のマイホームを買い換えたときの特例
特定のマイホームを2021年12月31日までに売却し、代わりのマイホームに買い換えた際は、要件を満たした場合に譲渡益に対する課税を将来に繰り延べることができます。特例の適用を受けられる場合には、売却した年分で譲渡益への課税は行われず、買い換えたマイホームを将来譲渡したときまで譲渡益に対する課税が繰り延べられます。
売却代金が1億円以下である、売却したマイホームと買い換えたマイホームは日本国内にあるなどの要件があり、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と同様に確定申告時に所定の書類を添付し申請を行います。
※出典:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」
2-3.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホーム(旧居)を2021年12月31日までに売却して、新たにマイホーム(新居)を購入した時、旧居宅の譲渡による損失(譲渡損失)が生じた際には、一定の要件を満たした場合、譲渡損失を他の所得から控除できます。
さらに損益通算を行っても控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することができます。
譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える、一定期間日本国内にある資産(新居)である、家屋の床面積が50平方メートル以上などの要件があります。確定申告書の際に所定の書類を提出し損益通算・繰越控除が適用できます。
※出典:国税庁「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」
3.マンション売却に強い税理士の探し方
マンション売却に適用できる特例は多くありますが、適用条件を調べたり、確定申告書を作成したりなどの手間がかかります。税理士にこれらの業務を依頼することで、依頼費用が発生するデメリットがありますが、手間を省きながら適切な特例を受けられる可能性が高まります。
また、確定申告は正確に行う必要があります。誤って過少申告をしてしまうと、後に追徴課税によって多くの税金を支払うことになるケースもあり、慣れない人が確定申告を行うには税務リスクがあることに注意が必要です。
マンション売却に強い税理士を探すのであれば、税理士紹介サイトを利用するという方法もあります。税理士紹介サイトでは、コーディネーターが、相談者のニーズに合った税理士をピックアップし、面談を調整してくれます。税理士との依頼内容の調整や、料金交渉などもコーディネーターに任せることが可能です。
税理士ドットコム
税理士ドットコムは、全国5,900名の税理士の中から無料で希望に沿った税理士を紹介してもらえるウェブサービスです。複数の税理士を比較することができるうえ、「費用はいくら?」「どんな税理士を選ぶべき?」といった税理士を選ぶ際の相談も可能となっています。
報酬引き下げの実績も豊富なため、すでに税理士と契約している方でも利用が可能です。コーディネーターが複数の税理士に相見積りをとり、費用についての交渉までサポートしてくれます。
利用時の主な注意点としては、提携している税理士の紹介しか受けられない点です。提携外の税理士も比較していきたい方は、自身で探してみたり、セミナーに参加するなどと並行して利用を検討すると良いでしょう。
まとめ
マンション売却時には、印紙税・登録免許税・年度途中の固定資産税と都市計画税を納める義務があり、場合によっては譲渡所得税を支払う必要があります。居住用に利用していたマンションであれば譲渡所得税を控除できる特例も多いため、適用を検討してみると良いでしょう。
マンションの売却益が多い場合には、多額の税金が課されるケースも少なくありません。税理士への相談も検討しながら、慎重に判断していきましょう。
田中 あさみ
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