長期投資を実践・継続するための10のコツは?投資のプロが解説

※ このページには広告・PRが含まれています

投資には短期投資と長期投資の2種類があります。短期投資とは株式や為替、ビットコインなどを対象に日々売り買いを繰り返す方法、長期投資は株式や投資信託を年単位の長期間保有することで、企業や経済規模の拡大とともに資産を成長させる投資手法を指します。

短期投資は華やかに見えるものの、投資に失敗すると資産を大きく失うこともあります。ゼロサムゲームの世界です。一方、長期投資は地道な投資手法で、最初はなかなか資産が増える実感がわかないかもしれませんが、成功すれば10年後、20年後に投資の成果を期待することができます。

長期投資は長旅です。旅の途中では必ず困難に遭遇します。過去にも数々の困難を市場参加者は体験しましたが、その都度乗り越えてきました。長期投資では無理をせず長期間安定的に運用することが大切です。そこで今回は、長期投資を実践・継続するための10のコツを解説します。

目次

  1. なぜ長期投資なのか
  2. 長期投資を実践・継続するための10ポイント
    2-1.毎月の収支を知る
    2-2.自分の性格に合った投資をする
    2-3.運用の目的を明確にする
    2-4.株式市場が暴落しても慌てない
    2-5.NISAを活用する
    2-6.収入が増えても固定費を上げない
    2-7.資産が増えても浮かれない
    2-8.長期投資には複利効果を利用する
    2-9.保有銘柄の決算報告書に目を通す
    2-10.上場企業の社員は従業員持株会を利用する
  3. まとめ

1 なぜ長期投資なのか

短期売買は当たれば儲かりますが、継続的に勝ち続けることはほぼ不可能です。短期売買は投機色が強く、株式初心者の方が安易に儲けることはできません。短期売買の参加者にはヘッジファンドや証券会社などプロのトレーダーが多いためです。

一方、長期投資は目先のノイズ(株価や指数の変動)を無視することができます。下表は日経平均株価指数、TOPIX、S&P500指数、ダウ工業平均株価指数、ナスダック指数、ナスダック100指数の過去1年、5年、10年、20年、30年の推移(開始時点=100)です。

日米株式指数の騰落率(%)

*基準日:2021/8/23

指数/期間 1年 5年 10年 20年 30年
日経平均株価指数 19.61 66.06 213.41 143.85 27.04
TOPIX 19.15 46.83 154.73 65.78 13.23
ダウ工業平均 24.82 91.53 216.91 240.34 1,067.67
S&P500指数 30.54 106.19 286.40 279.87 1,039.65
ナスダック指数 31.30 186.68 517.55 681.35 2,763.94
ナスダック100指数 31.70 220.65 626.34 870.19 5,239.75

【円換算】

指数/期間 1年 5年 10年 20年 30年
ダウ工業平均 29.28 108.94 348.89 210.98 834.85
S&P500指数 35.22 124.93 447.33 247.11 812.43
ナスダック指数 36.00 212.74 774.76 613.96 2,192.92
ナスダック100指数 36.42 249.80 928.85 786.52 4,175.03

いずれの指数も大きく上昇していることが分かります。この成長に合わせて資産増加を期待できることが長期投資の強みです。

なお、個別の株式銘柄では指数の上昇率を大きく上回るものも存在しますが、企業倒産リスクもあるため、初心者の方はインデックス型のETFや投資信託から始めるようにするのが無難です。記憶に新しいところでは、大手投資銀行リーマン・ブラザーズのように破綻してしまった上場会社もあります。

投資を始めると、株式市場や世界の中央銀行の金融政策などが気になるようになります。金融の勉強には金融機関などが開催している無料セミナー等を活用できます。

2 長期投資を実践・継続するための10ポイント

長期投資は無策のうちに始めようとしても、途中で売りたくなったりとブレてしまいがちです。ここでは、長期投資を継続して行うために必要なポイントについて解説していきます。

2-1 毎月の収支を知る

長期投資を継続するために、自身の毎月の収入内訳を精査し、毎月いくら投資できるかを知る必要があります。家賃・住宅ローン、光熱費、新聞代、携帯代、食費など毎月の固定費を計算します。残額から必要な小遣い等を除き、無理のない金額を投資に回しましょう。最初は少額から始め、余裕が出てきたら金額を増やしましょう。

投資をすでに始めている方は、改めて自身の収入内訳を精査すると良いでしょう。

2-2 自分の性格に合った投資をする

長期投資を継続するためには、自分にあった金融商品に投資することも大切です。株式市場は乱高下を繰り返し上昇してきました。時には、企業が倒産し株価がゼロ円となってしまうこともあります。

株価暴落時こそチャンスだと思える方は良いのですが、心配性の方は個別株よりも分散投資された投資信託やETFに投資することで、個別企業のリスクを排除することができます。

2-3 運用の目的を明確にする

運用の目的を明確にすることも大切です。運用目的によっては運用期間や、取ることができるリスクが異なってくるためです。

運用目的が老後のためという場合には、長期間の運用が可能なため高いリスクを取ることができます。しかし、運用目的が子供の学費や結婚資金など使用使途が決まっている場合には、リスクの小さい銘柄を選択するようにしましょう。

運用目的別に資産を配分することも長期投資を継続するうえでのポイントです。

2-4 株式市場が暴落しても慌てない

株価が暴落しても慌てる必要はありません。歴史を振り返ると株式市場は何度も暴落を経験してきました。しかし、その後は不死鳥のように回復しています。株式市場は資本主義の骨幹で世界中の公的年金が投資をしています。つまり、株式市場の崩壊は資本主義の崩壊に繋がるため、市場が崩壊することはそう簡単にはなさそうだと言えるのです。

先述した表の通り、過去1年から30年の日本及び米国の株式指数の上昇率を見ると、この間、株式市場はハイテクバブル崩壊、リーマンショックやギリシャ危機など幾度となく暴落しましたが、その都度克服し上昇してきたことが理解できます。

株式市場を信じ、途中で売却などせずに目標とする期間まで長期保有することを前提としましょう。

2-5 NISAを活用する

NISA口座を活用するのも長期投資のコツです。NISAには一般NISAとつみたてNISAの2種類があり、つみたてNISAは20年にわたって毎年40万円までの投資枠において分配金や売却益が非課税となる制度です。

口座の満了時には特定口座に移行しますが、簿価をそのままスライドするため節税効果があります。まずはNISA口座で運用しましょう。

2-6 収入が増えても固定費を上げない

収入が増えると今よりも良い生活をしたくなりますが、なるべく家賃などの固定費は上げないようにしましょう。固定費を引き上げるとなかなか引き下げることができないためです。

収入が増加した場合には投資金額を増やすようにしましょう。

2-7 資産が増えても浮かれない

人は資産が増えると財布の紐が緩みがちになります。株式などの資産価値が上昇すると消費支出が伸びる傾向があります。これを経済用語で資産効果と呼びます。ただし、ここでいう資産の上昇とは帳簿上のことですので、資産が増えても無駄な出費が増えないように心がけましょう。

2-8 長期投資には複利効果を利用する

複利効果を利用することで資産の成長が期待できます。複利効果を享受するため、投資信託を選ぶ際には分配金なしの銘柄を選ぶようにしましょう。分配金を再投資することで複利効果を得ることができ、資産を再投資しなかった場合と比較し大きな資産を築き上げることができます。

下表は1万円を複利運用した場合のシミュレーションです。1万円を年利1%で30年間複利運用した場合は13,478円、5%なら43,219円、10%の場合では174,494円です。年数や利回りが伸びるほど単利との差は大きくなります(ただし、実際にはマイナスの年もあるため、必ずしも下表のように資産が成長するわけではありません)。

1万円を運用した場合(円)

項目 1年 5年 10年 20年 30年
1% 10,100 10,510 11,046 12,202 13,478
3% 10,300 11,593 13,439 18,061 24,273
5% 10,500 12,763 16,289 26,533 43,219
8% 10,800 14,693 21,589 46,610 100,627
10% 11,000 16,105 25,937 67,275 174,494

2-9 保有銘柄の決算報告書に目を通す

決算内容には目を通すようにしましょう。企業の業績変化、投資信託であれば購入銘柄や投資信託の運用状況などが確認できるからです。決算内容次第で、銘柄の入れ替えや売却が必要になることもあります。

2-10 上場企業の社員は従業員持株会を利用する

上場企業にお勤めの方は、従業員持株会を活用することでも投資を継続することができます。従業員持株会とは、社員の自社株取得にあたり会社から奨励金の支援を受けることができる制度です。持株会は少額(1,000円単位)から始められ、毎月の給料から天引きされるため強制的に積み立てができます。

奨励金とは企業が付与する金額のことで、企業によって金額が異なります。東京証券取引所の調査によると、2019年度の奨励金額は拠出金1,000円に対して平均87.23円となっています。1,000円を支給している企業が7社もあります。上場企業にお勤めの方は社内規定を調べてみましょう。

ただし、制度がない企業では利用できないほか、自社に投資しても良いのかどうかは考えなければなりません。長期的に見て会社の将来が期待できない場合は、加入を控えたほうが無難です。

まとめ

各国株式指数の推移をみても、長期にわたり株式を保有すればするほど元本割れのリスクが低くなることがわかります。長期投資を実践し、それを継続するためには、コツコツと無理なく冷静に投資を楽しむことです。今回挙げた10のポイントを参考に長期投資を続けてみてはいかがでしょうか。

The following two tabs change content below.

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。