自宅購入とマンション投資のどちらを優先する?判断のポイント6つ

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住宅購入とマンション投資はどちらもローンを活用して物件を購入するケースが多いものです。自宅購入に利用する住宅ローンと、投資用物件を購入するために活用する不動産投資ローンは、それぞれ異なる特徴を持っています。

自宅購入とマンション投資を効率よくおこなうためには、自分の状況や投資ニーズに合わせて優先順位をつける必要があります。この記事では自宅購入とマンション投資のどちらを優先すべきか考えるうえでの6つのポイントを紹介します。

目次

  1. 住宅ローンと不動産投資ローンの違いを整理
    1-1.審査要件
    1-2.上限額
    1-3.自己資金の比率
    1-4.金利水準
    1-5.住宅ローン減税の適用
  2. どちらを優先すべきか考える6つのポイント
    2-1.不動産投資の目的
    2-2.ローン金利に対する考え方
    2-3.投入できる自己資金額
    2-4.自宅所有に対する意欲の高さ
    2-5.住宅ローン減税の活用
    2-6.年齢
  3. 住宅購入とマンション投資を両立するポイント
    3-1.優先順位をつける
    3-2.マンション投資は黒字化できるスキームが望ましい
    3-3.自宅の資産価値も考えて購入する
    3-4.手元資金をしっかり残す
  4. まとめ

1 住宅ローンと不動産投資ローンの違いを整理

住宅ローンと不動産投資ローンは、資金使途が自宅購入用か、投資マンション用かという大きな違いがありますが、そのほかにもいくつか相違点があります。

双方の優先順位を考えるうえで、まず二つのローンの違いをおさえておきましょう。

1-1 審査要件

住宅ローンと不動産投資ローンでは審査で加味される項目が異なります。住宅ローンでは次のような項目を審査されることになります。

  • 借入時及びローン完済時の年齢
  • 申込者の健康状態
  • 融資対象の住宅に認められる担保価値
  • 申込者の年収
  • 申込者の勤続年数

これに加えて投資用不動産のローンは投資物件の収益性をみるため、次のような項目も加味されます。

  • 想定される収入・利回り
  • 土地及び建物の資産価値

なお、不動産投資ローンの方が審査項目が多い=審査が厳しくなる、とは一概にはいえません。

たとえば、収益性の高い物件や資産価値の高い物件を購入する時であれば、契約者の年収に対する要件が緩和されたり、年齢に比して長期のローンが組めたりといったケースも考えられます。

1-2 上限額

住宅ローンについては上限額は契約者の年収と他の借入状況に依存する傾向にあります。

年収の数倍が債務全体の上限となって、そこから自動車などの他のローンの残債を差し引いた額から上限が定められます。何倍まで借りられるかは年収水準や金融機関のスタンスによって変わってきますが、7〜10倍程度というのがひとつの目安です。

不動産投資ローンでも個人の年収が加味されますが、そのほかに金融資産の額、購入する不動産の収益性、(2棟目以降の場合)既存の所有物件の経営状態なども総合的に加味されます。また、投資家もしくは提携の不動産会社と金融機関の交渉によって上限が変動する可能性もあります。

購入予定の物件の収益性に問題がなければ、年収の10倍程度までは借入可能なケースが多く、既存の不動産経営が順調であればさらに借入額を伸ばすチャンスもあります。

1-3 自己資金の比率

住宅ローンは、購入物件からは収益が発生しないことが前提なので、融資限度額>物件購入額である限りは自己資金比率は柔軟に決められます。諸費用は購入時に現金で払わうか、もしくは別のローンを組む必要がありますが、物件購入額の部分についてはフルローンにすることも可能です。

不動産投資ローンでも本人の属性が高く、区分マンションなど小規模の物件であればほぼフルローンで投資できるケースもあります。ただし、不動産投資ローンは事業性の高い借入になるため、自己資金を入れないと融資審査が非常に厳しくなる傾向があります。

具体的な審査基準は金融機関によるものの、価格が投資用不動産としては低いことや、都心部の高地価帯に立地する物件であるために担保価値が高いことなどが、フルローンでの投資を可能とする要因となっていると考えられます。

前述したとおり、不動産投資ローンについては区分マンション以外となるとフルローンの難易度が相対的に高くなります。投資家が所有する金融資産や物件の収益性などにもよりますが、20%前後は自己資金を求められるケースが多いでしょう。

1-4 金利水準

不動産投資ローンの金利より住宅ローンの金利のほうが低くなるケースが多いといえます。

2023年時点では日銀の金融緩和等により、どちらのローンも低水準です。住宅ローンでは変動金利であれば0.3%台を提示する金融機関もみられ、不動産投資ローンでも1%台での借り入れが実現する場合があります。

住宅ローン金利のほうが低くなる要因はいくつか考えられます。まず、住宅ローンは不動産投資ローンより借り手が多い分、低金利を提示して収益性を削ってもビジネスとして成り立つことです。

また、住宅ローンの金利水準は、世の中で利用したい人が多い分注目されます。そのため他の金融機関との競争原理が働いて、ローン金利を引き下げるインセンティブが働きやすいと考えられます。

さらに、住宅ローンはもともと物件が収益を産まなくても問題ないように、審査条件や限度額が設定されています。購入物件自体が収益を生むことが前提となっている不動産投資ローンと比べて、リスクの低い取引であるとみられている側面もあるでしょう。

以上のような要因により、住宅ローンは不動産投資ローンより低い傾向にあると考えられます。

1-5 住宅ローン減税の適用

住宅ローン減税は名前の通り住宅ローンにのみ適用できます。2023年時点では、13年間にわたりローン残債の0.7%相当の税額を控除する仕組みです。

こちらは住居取得におけるローン負担の軽減を目的としたものなので、住宅ローンにしか適用されません。

2 どちらを優先すべきか考える6つのポイント

住宅購入とマンション投資の優先順位は次の6つのポイントによって決まってきます。

  • 不動産投資の目的
  • ローン金利に対する考え方
  • 投入できる自己資金額
  • 持ち家に対する意欲の高さ
  • 住宅ローン減税の活用
  • 年齢

それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。

2-1 不動産投資の目的

不動産投資が将来の収入の補完、老後に向けた資産形成や団信の活用といった目的であれば、1〜2区画投資すれば充分な効果が期待できます。そして、この程度の規模であれば、住宅ローンを組んだ後でも購入できる余地は充分にあるでしょう。

一方で、FIREやアーリーリタイアを目指す、もしくは最終的には専業投資家を目指すといったような場合には、積極的に所有物件を増やしていかなければなりません。

住宅ローンがあると、与信枠が伸びずに規模拡大ペースが遅くなる可能性があります。そのため、先にマンション投資を優先して進め、賃料収入が増えてきたら住宅購入を検討するのがよいでしょう。

2-2 ローン金利に対する考え方

2023年時点、住宅ローンの方が不動産投資ローンよりも低くなっていますが、不動産投資ローンも1%台の借入もみられるなど過去と比較して低水準です。将来の金利見通しが立てられる人は、現時点で割安なローンを優先的に組むとよいでしょう。

たとえば、不動産投資ローンの金利が今後ハイペースで上昇していく可能性があると予想するなら、今のうちにマンション投資を始めるという選択肢が考えられます。

一方で、金利の動向を予測するのはプロですら容易ではありません。金利の予測が難しいという方は、金利上昇によるそれぞれの影響をふまえて優先順位をつけましょう。

住宅ローンは金利が上がると月々の返済負担が増大し、家計の圧迫要因となります。これを抑えるためには物件の立地や品質を妥協しなければならなくなるでしょう。

不動産投資ローンの金利が上昇すると、黒字化が難しくなります。高収益を狙いにくくなるとともに、赤字を防ぐためには物件をさらに厳選する必要があります。

足元が低金利で、いずれ金利が上昇するリスクがあることを念頭に、月々の住居費の増大と不動産投資の難易度の上昇、どちらをより回避したいかを考えて、自宅購入とマンション投資の優先順位をつけましょう。

2-3 投入できる自己資金額

自己資金が潤沢な場合は、不動産投資ローンによるマンション投資を優先するのが一つの考え方です。不動産投資は自己資金を多く捻出できるほど月々のキャッシュフローを改善させやすくなり、また金融機関からの評価も高くなりやすいためです。

潤沢な自己資金を投じればマンション投資は黒字化しやすくなります。黒字であれば投資家の所得が増加するため、マンション投資が将来の住宅ローンの限度額を増やす可能性もあります。不動産投資ローンの借入残高による住宅ローンへの影響を緩和できる可能性があるのです。

逆に、自己資金をほとんど捻出できない場合には、住宅購入を先に検討しても良いでしょう。フルローンでマンション投資を始めると赤字化しやすく、不動産投資ローンの借入が住宅ローンの限度額を押し下げる可能性が高いためです。住宅ローンが完済した際には、住宅を不動産投資ローンの共同担保として設定できるケースもあります。

2-4 自宅所有に対する意欲の高さ

当面は賃貸暮らしでも問題ないと考えている人は、賃貸住まいを継続しつつマンション投資を優先するのも一つの考え方です。

逆に早く自宅を持ちたい、自宅の居住環境に限界までこだわりたいという方は、与信をフルに使って住宅を購入するために、マンション投資より先に住宅購入を検討しましょう。

2-5 住宅ローン減税の活用

不動産投資を積極化すると住宅ローン減税を受けられない恐れがある方は、先に住宅購入を検討しましょう。住宅ローン減税は、合計所得が2,000万円を超える方が対象外になります。(※参照:国土交通省「住宅ローン減税」2023年時点)

特に本業が高収入な人は、マンション投資を始めた結果、住宅ローン減税を利用できなくなる恐れがあるのです。

高収入だったり、将来大規模な不動産投資を検討していたりして、所得2,000万円を超える恐れがある人は、先に住宅ローンで住居を購入して、最大限減税を受けられるようにするのも一つの考え方といえます。

2-6 年齢

年齢の制約は住宅ローンの方が厳しく、基本的に高齢になればなるほどローンの限度額が伸びにくく、長い借入期間を選べないなどの弊害が発生します。

不動産投資ローンも契約者の年齢は審査結果やローンの条件に影響します。ただし、物件自体の収益性や担保価値が高ければ、住宅ローンよりは完済時期に対する制約が緩やかになる余地があります。

特に、40代以上になると住宅ローンの方は長期借入のハードルが高くなってくるため、住宅購入を優先されてみると良いでしょう。

3 住宅購入とマンション投資を両立するポイント

住宅購入とマンション投資は、優先順位をつけながらうまく進めることで、両立が可能なものです。ここからは、自宅と投資用区分マンションを共に所有しても、過重な債務を負わずに健全性を維持するためのポイントを紹介します。

3-1 優先順位をつける

よほど潤沢な資金がない限り、住宅購入とマンション投資を同時に始めるのは難易度が高く、少なくとも1年〜数年は間を開けた方が望ましいといえます。

今回紹介したチェックポイントに従って、自分なりに優先順位を明確にして、優先順位の高い方から先に進めるのがまず重要です。

3-2 マンション投資は黒字化できるスキームが望ましい

近年はマンション価格の高騰も背景に、年間収支が赤字マンション投資のスキームがあります。これはローンの返済スピードよりも物件価格の下落スピードが緩やかである場合に売却時の利益(キャピタルゲイン)を取れるといった仕組みです。

一方で、住宅ローンと不動産投資ローンの双方が月々の手出しとなる状況は、家計管理の面からはリスクが高いといえるでしょう。

近い将来に自宅購入を考えている方や、すでに住宅ローンを支払っている方の場合、不動産投資は月々の収支が黒字で、賃料収入からローン返済が賄える状態で経営を行うのが望ましいといえます。

3-3 自宅の資産価値も考えて購入する

見落としがちなのが自宅の資産価値です。住宅の資産価値が高止まりしていれば、ローン返済が進んで残債が減るごとに自宅を売却しやすくなります。いざというときに売却できる状態の方が、家計全体の資産管理を行ううえで柔軟性が高まります。

自宅がマンションであれば、割高な物件を避け、長期で見て価格が上向いている物件を購入することを検討してみましょう。

戸建ての場合は、土地と建物の比率に着目するのも一つの考え方です。建物は経年劣化が避けられませんが、土地は経年劣化がない分、相対的に価値が変動しにくい傾向にあります。

そのため、価格に占める土地の比率が高い方が、年数が経過しても売却価格が高止まりして、残債を処分できる可能性が高くなるでしょう。

3-4 手元資金をしっかり残す

住宅ローンにせよ不動産投資ローンにせよ、途中で現金が枯渇して返済できなくなってしまえば家計管理と投資は失敗となります。想定外の出費に対処しながら、将来にわたって返済し続けられる状態を維持することが重要です。

そのためには、潤沢な手元現金を用意しておく必要があります。一時的な支出の増加、本業収入の減少や所有不動産における想定外のコスト発生など、さまざまなリスク要因があるなかで、家計管理が計画通りに運ぶとは限りません。

突然の収入減や支出増に対処できるよう、保守的な計画のもと資金を確保しておくことが重要です。

4 まとめ

住宅購入とマンション投資の優先順位は、その方の投資意向や資金状況などによって変わってきます。また、住宅ローンにだけ適用される住宅ローン減税を有効活用することも念頭に置いて判断されていくと良いでしょう。

住宅ローンと不動産投資ローンの双方を契約すると、多額の借金を抱えることになります。本業と不動産の収入で二つの借金の返済をきちんと進められるように保守的な計画を立てたうえで、潤沢な現金を確保しておくことが重要です。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。