2022年度から高校で金融教育が義務化され、お金の知識の必要性が見直されています。今まで学校でも家庭でもお金の教育を受けていない人は、何から勉強すればよいかわからない方も多いでしょう。
そこで今回は、現役FPがおすすめのお金の勉強法や、注意すべき点を解説します。
※2023年5月8日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- お金の知識が必要になるのはどんなとき?
1-1.国民年金に加入するとき
1-2.生命保険に勧誘されたとき
1-3.資産運用を始めるとき
1-4.勤務先に企業型DCがあるとき
1-5.年末調整をするとき
1-6.マイホームを購入するとき - お金についての勉強は何から始めれば良い?
2-1.FPの学習する6分野
2-2.最初に取り組むとよいのは「税金」 - FPおすすめのお金の勉強法
3-1.お金に関する本を読む
3-2.お金に関連したウェブサイトを利用して学ぶ
3-3.セミナーを受講する
3-4.FP資格試験の勉強をする - お金の勉強の注意点
4-1.営業目的のセミナーは運営元に注意
4-2.再現性のないノウハウを鵜呑みにしない
4-3.誤情報もあることに注意する
4-4.実践を見越して勉強することが大切 - まとめ
1.お金の知識が必要になるのはどんなとき?
最低限のお金の知識は、日常生活を送るうえで欠かせないものです。お金の知識が必要になるシーンの例と、そこでどんな知識が必要になるかを紹介します。
1-1.国民年金に加入するとき
20歳になると、日本年金機構から「国民年金加入のお知らせ」が届きます。日本に住む20歳以上60歳未満の人は、国民年金の加入者になるのです。
しかし、国民年金の加入時点で公的年金制度について理解している人はあまり多くはいないでしょう。
例えば、学生であれば学生納付特例制度を受けられます。手続きをしないで保険料を支払わない単なる「未納」と、保険料の納付猶予はまったく違うものです。この時点で年金制度の知識がほとんどない人は、日本年金機構のパンフレットなどで最低限の仕組みを押さえておくと良いでしょう。
1-2.生命保険に勧誘されたとき
社会人になると、生命保険の加入に迷うこともあるでしょう。例えば、勤務先に出入りを許されている保険会社の方から勧誘を受け、「保険に加入したほうがいいのかもしれない」と、保険について知るかたも少なくありません。
しかし、生命保険は商品によって金額や保険期間が異なり、それぞれの方の状況に応じて適した商品を選択することが重要です。
生命保険への加入を検討する際は、公的年金や健康保険制度などについて一通りの知識を身に付けるとよいでしょう。そこで自分が受けられるセーフティネットを理解してから、あらためて生命保険が必要と考えるのであれば、加入を検討しましょう。
※参考:国民皆保険制度の意義
1-3.資産運用を始めるとき
社会人になって収入を得られるようになったら、将来のライフイベントのために資産運用を始める方もいます。
超低金利が続く日本において、預貯金だけでは投資効率が悪く、資産運用の重要性はますます高まっていくと考えられます。始めるにあたっては書籍など資産運用・投資の知識を得て、少額から実践していくとよいでしょう。
1-4.勤務先に企業型DCがあるとき
勤務先に企業型DC(確定拠出年金)の制度がある場合、掛金の運用を自分で決めなければなりません。勤務先で十分な投資教育が行われないときには、独学で制度や運用の基礎を身に付けましょう。
基本的な資料は勤務先や企業型DCの金融機関が提供してくれるので、積極的に活用しましょう。
1-5.年末調整をするとき
毎年年末になると、勤務先から年末調整の申告書が配布されます。年末調整とは、給与から源泉徴収された所得税の過不足を調整する手続きです。
しかしながら、年末調整の申告書を埋めるだけでは、所得税の仕組みは理解することは難しいでしょう。できれば所得税の仕組みを知り、自分の所得金額(収入から経費や控除を差し引いた金額)や税率、税額などは知っておきたいところです。
※参考:金融広報中央委員会「所得税の仕組みを理解しよう!」
1-6.マイホームを購入するとき
マイホームを購入する場合、ほとんどの人は住宅ローンを利用するでしょう。しかし、住宅ローンを利用する際は、堅実な返済計画が立てられないと返済遅延を起こしてしまい、最終的にマイホームを手放すことになってしまう可能性もあります。
家計支出がピークのときでも無理なく返済できる借入額から、購入できる物件の金額を決めることが大切です。中立な立場のファイナンシャルプランナーのような専門家に相談してみることも検討し、健全な返済計画を立ててから購入契約を結びましょう。
また、住宅ローンを組むと、住宅ローン控除が受けられる場合があります。大きなライフイベントなので、家計全体や保険の見直しなどもしておきたいタイミングです。マイホーム購入時にはさまざまなお金の知識が必要になると言えるでしょう。
【関連記事】FPに住宅ローンの悩みを相談するメリット・デメリットは?無料相談の方法も
2.お金についての勉強は何から始めれば良い?
一口にお金の勉強といっても、年金や資産運用のようなさまざまなジャンルがあります。主なジャンルと、最初に勉強するとよいジャンルを紹介します。
2-1.FPの学習する6分野
ここでは、FP(ファイナンシャルプランナー)の資格試験で学ぶ分野を紹介します。FPで学ぶ分野は以下の6つです。
- ライフプランニングと資金計画
- リスク管理
- タックスプランニング
- 金融資産運用
- 不動産運用設計
- 相続・事業承継
「ライフプランニングと資金計画」の中には、年金や住宅ローンなどが含まれます。リスク管理とは、生命保険と損害保険の知識です。
2-2.最初に取り組むとよいのは「税金」
お金の勉強で何から始めてよいかわからない場合、「税金」から取り組むとよいでしょう。ただし、お金の勉強は必要なことや関心のあることから始めればよく、「絶対にこれでなければ」というものはありません。強いていえば、税金が始めやすいという程度です。
「税金」というと「難しい」というイメージを持つ人も多いでしょう。税金から始めるとよい理由は2つあります。
1つは、税金は他のジャンルとつながりがある点です。たとえば、住宅ローンには住宅ローン控除、資産運用や不動産投資の所得には所得税の知識が必要です。そのため、先に税金の勉強をすると無駄がなく、他の勉強を進める際も役立つ知識になります。
もう1つの理由は、勉強のしやすさです。税金の全てを学ぶ必要はなく、基本は所得税です。所得税の仕組みや計算の仕方は、比較的シンプルで難しくありません。FPの受験科目の中でも得点しやすいジャンルと考えられます。
後回しにしてよいもの
反対に不動産運用は、関連する業種で働く人や不動産投資をする人以外は必要に迫られない知識といえます。FPの資格試験では基本を学ぶ必要がありますが、それ以外では必要なタイミングで勉強すればよいでしょう。
また、事業承継は一部の人にしか必要にならない知識です。相続や贈与についても法改正が頻繁に行われているため、必要になったタイミングや、近々相続・贈与が発生しそうになったタイミングで勉強すると良いでしょう。
3.FPおすすめのお金の勉強法
ここでは、お金の初心者が取り組みやすいお金の勉強方法を紹介します。
3-1.お金に関する本を読む
住宅ローンや資産運用など、ジャンルごとのお金に関する本を読むのはお金の勉強の王道ともいえる方法です。さまざまなお金に関する書籍が出版されているので、自分の知識レベルや知りたい内容に合う本が見つけられるでしょう。
書籍はその分野のエキスパートによって書かれているため内容の信憑性が高いと考えられます。また、各ジャンルで何冊も読破する必要はないため、お金もそれほどかかりません。半日程度で読み切れる本であれば、気軽にお金の勉強ができるでしょう。
ただし、お金の情報は最新であることが重要です。あまり古い本は選ばないようにしましょう。
3-2.お金に関連したウェブサイトを利用して学ぶ
お金の情報を発信しているウェブサイトを参考にする方法もあります。関心のあるジャンルに信頼できるサイトがあれば、定期的にチェックするとよいでしょう。サイトでのお金の勉強は好きな時間にできて、基本的には無料です。
3-3.セミナーを受講する
お金の専門家の話を直接聞いてみたい人は、セミナーを受講してみましょう。セミナーではお金の専門家が資産運用や保険の見直しなどについて、解説してくれます。最近では対面のセミナー以外にオンラインセミナーも増えました。
セミナーは有料のものも無料のものもあります。無料だからといってレベルが低いともいえません。自分の興味のあるセミナーがあれば、受講を検討してみると良いでしょう。
ただし、お金に関連したセミナーの中には悪質な業者が開催しているものも含まれています。セミナーテーマとは異なる商材を提案されたり、高額なリターンを提示して投資を促したりなどのトラブル事例もあるため、受講する際は運営元についてしっかり確認し、信頼性の高いセミナーのみ受講検討するよう注意しましょう。
3-4.FP資格試験の勉強をする
FP資格試験の勉強は、効率的にお金の知識全般を身に付ける方法としても利用することができます。
筆者は過去にFP受験講座の講師をしていましたが、受講生には「お金のことを知りたい」という人がたくさんいました。資格取得だけが目的なら、丸暗記でも合格するかもしれません。しかし、お金の知識を身に付けるのであれば、各ジャンルの最低限の理解が必要です。
4.お金の勉強の注意点
お金の勉強にはいくつかの注意点があります。
4-1.営業目的のセミナーは運営元に注意
セミナーでは主催者ごとに開催の目的があります。特に参加費が無料のセミナーでは基本的に運営元の商材や関連商品について紹介されるため、全く商材に興味が無い場合や、勧誘を受けたくなかったり、断る自信がなかったりする人は参加を控えておきましょう。
ただし、無料のセミナーは気軽に参加することができ、勉強を始めたばかりのタイミングで情報収集をする際には有効活用することが出来ます。興味のあるテーマと合致しており、また運営元の信頼性が高い場合には、受講を検討されてみましょう。
4-2.再現性のないノウハウを鵜呑みにしない
セミナーなどでは、特殊なノウハウを教えてくれるケースもあります。しかし、そのようなノウハウは万人向きでなく、成功するハードルが高い場合も多くあります。
仮に投資のノウハウを実践して損をしたとしても、損失は自分が負うしかありません。ノウハウに関心を持っても、話を聞いて自分に合わないと思ったら、やめる勇気も必要です。
4-3.誤情報もあることに注意する
書籍や金融機関が発信する情報は一定の信憑性があると考えられますが、100%正しいとは限りません。また、最初は正しかった情報が制度改正で更新されてしまい、誤情報になってしまうおそれがあります。
動画やマネーサイトで情報収集する場合、特に情報源の信頼性や時事情報に注意しましょう。
4-4.実践を見越して勉強することが大切
お金の知識は、日常生活でお金に関する正しい判断をするために必要です。実用性の低い知識の場合は、なかなか活用するタイミングも得られないこともあるでしょう。
また、実践しながら経験を積み、徐々にお金に関する知識を積み上げていくことも大切です。例えば、金融投資を始める際は基礎的な知識を身に着け、まずは少額から投資体験を経て、継続して勉強していくと良いでしょう。
まとめ
お金の知識は生活していくうえで欠かせないものです。正しいお金の知識があれば金融トラブルを避けられたり、堅実な資産形成ができたりするようになります。
ただし、学んだ知識をしっかり定着させるには実践していくことも重要になります。100円などの少額資金から資産運用が始められる金融商品も多くありますので、経験を積みながら継続的にお金の勉強を進めていきましょう。
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松田 聡子
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