不動産投資とインデックス投資のメリット・デメリットを比較、初期費用も

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不動産投資とインデックス投資は、それぞれ特徴に大きな違いがあり、メリット・デメリットも異なります。投資先を選択したり、ポートフォリオを組んで運用を行ううえでは、それぞれの特徴を捉えて、自分の状況にあった手段を選択することが大切です。

この記事では不動産投資とインデックス投資の特徴を紹介していきます。また後半では、資産状況や年齢などいくつかの観点から、不動産投資とインデックス投資を選択するときの考え方についても紹介します。

目次

  1. 不動産投資とインデックス投資の比較
    1-1.不動産投資とは?
    1-2.インデックス投資とは?
  2. 不動産投資のメリット・デメリット
    2-1.不動産投資のメリット
    2-2.不動産投資のデメリット
  3. インデックス投資のメリット・デメリット
    3-1.インデックス投資のメリット
    3-2.インデックス投資のデメリット
  4. 不動産投資とインデックス投資どちらを選ぶべき?
    4-1.自己資金の金額や投資計画から考える
    4-2.リスク許容度から考える
    4-3.本人の信用力から考える
    4-4.運用期間から考える
    4-5.自身の年齢から考える
  5. まとめ

1 不動産投資とインデックス投資の比較

不動産投資とは、不動産を所有して不動産経営を行う手法で、インデックス投資とはインデックス運用を行う投資信託(ETFも含む)を売買して投資を行う手法です。それぞれの特徴をおさえて、自分に合った手法で投資を行いましょう。

二つの投資の比較表を作成しました。なお、不動産投資にはいくつかやり方がありますが、ここでは個人でも取り組みやすい住居物件を貸し出す賃貸経営の形式を想定して説明していきます。

不動産投資 インデックス投資
初期費用 相対的に高い
(数百万円~*1)
相対的に安い
(100円程度~)
投資期間 長期 短中期(長期も可)
収益の主な源泉 毎月の賃料収入*2 株価変動による売買差益*3
リスク水準 相対的に低いケースが多い 相対的に高いケースが多い
税金 総合課税。給与所得などと損益通算が可能 「総合課税」「分離課税(20%)」から有利選択が可能

※上記の表では比較のために基本的な特徴を事例を想定しており、例えば各アスタリスク(*)について以下のような例外が考えられます。

*1:月々のキャッシュフローがきわめて少額もしくはマイナスとなる区分マンション投資等なら初期費用を更に抑えられる可能性がある
*2:不動産価格変動に伴う売買差益で高い収益を上げられる可能性もある
*3:一部の高配当株などは配当の積み上げが主な収益源となるケースもあ

ここからは不動産投資とインデックス投資それぞれの特徴について詳しく紹介します。

1-1 不動産投資とは?

不動産投資とは、不動産を所有して、それをもとに投資収益を得る方法です。

不動産投資の投資対象

不動産と言うと居住用物件のほか、ホテル、商業施設、物流施設や工場などさまざまなタイプの物件があります。その中で、個人投資家が実際の物件を所有して取り組みやすいのは、住宅を貸し出して長期間にわたり賃料収入を得る方法です。そのため、今回の記事では居住用物件を貸し出すケースを想定して紹介します。

不動産投資で収益を得られるポイント

居住用物件を活用した不動産投資では、物件を入居者に貸し出すことで、賃料収入を毎月得られます。

物件売却時に魅力的な価格で売却ができれば利益を得られる可能性もあります。しかし、不動産市況を予測して物件を保有するのは容易ではありません。売買収益を追求するよりも、長期投資により賃料収入を積み上げて収支のバランスを取るのが、個人投資家にとって取り組みやすい手法といえるでしょう。

個人投資家が取り組みやすい物件タイプ

住宅物件への投資では、主に次のような選択肢があります。

  • 区分マンション
  • 戸建て
  • 一棟アパート
  • 一棟マンション

それぞれの物件について中古・新築という選択肢もあり、どのタイプの物件を選ぶかは、投資家の資金的な余裕や収益性・リスクをふまえて検討していくことになります。

物件の購入費用に不動産投資ローンを活用できる

低リスクの運用が見込める不動産は価格が高額になるのが特徴で、最も安い区分マンションでも物件価格が1千万円以上、一棟マンションとなると数億円規模になることも珍しくありません。

全額を現金で購入できる個人は多くないため、多くの人は不動産ローンを活用して自己負担を抑えます。

不動産投資でかかる手間と時間

インデックス投資と比較した場合、不動産投資では物件購入や賃貸経営における手間がかかるのが特徴です。購入時にはローン契約や登記、引き渡しなどの手続きに手間と時間がかかり、保有後も入居・退去者の管理、メンテナンスや修繕などを継続的に行わなければなりません。

不動産投資のリスク

不動産投資のリスクとしては、空室リスク・災害リスク・市況悪化リスクなどがあります。

空室が発生するとその部屋は次の入居者が決まるまで賃料を得られなくなります。その分損益が悪化するリスクが空室リスクです。また、所有物件が被災して住めない状態になると、大規模な修繕コストが発生する上、修繕が完了するまで賃料収入が途絶えるリスクがあり、これが災害リスクとなります。

最後に、不動産市況が悪化すると、賃料水準の引き下げを余儀なくされたり、売却時に損失が発生するリスクがあります。これが市況悪化リスクです。不動産投資においては、これらのリスクに留意しながら投資先の選別や不動産経営をおこなうことが大切です。

1-2 インデックス投資とは?

インデックス投資というのは、投資信託を売買する投資の一種です。投資信託には特定の市場指数への連動を目指して運用される「インデックス投信」と、指数を上回るか、参照指数がなくできるだけ高いリターンを目指す「アクティブ投信」があります。

このうち、インデックス投信で資産運用するのがインデックス投資となります。世界中には株式、債券、通貨やコモディティなど多種多様な市場指数があり、それぞれのインデックス投信が存在します。広く捉えれば、これらのいずれかのインデックス投信を保有すれば「インデックス投資」となるのですが、2023年5月時点では、下記のように株式のインデックス投信が人気です。

SBI証券の販売金額上位20位に入るインデックスファンド

ファンド名 投資先
SBI・V・S&P500インデックス・ファンド 米国株式
eMAXIS Slim全世界株式(オール・カントリー) 世界株式(日本を含む)
eMAXIS Slim米国株式(S&P500) 米国株式
SBI・V・全米株式インデックス・ファンド 米国株式
<購入・換金手数料なし>ニッセイ外国株式インデックスファンド 世界株式(日本除く)
eMAXIS Slim先進国株式インデックス 世界株式(日本除く)
eMAXIS Slim全世界株式(除く日本) 世界株式(日本を除く)
SBI全世界株式インデックス・ファンド 世界株式(日本を含む)
ニッセイ日経225インデックスファンド 日本株式
楽天・全米株式インデックス・ファンド 米国株式
eMAXIS Slim先進国債券インデックス 世界債券(除く日本)

※2023年4月3日~2023年4月28日の総販売金額、アクティブ投信も含まれる上位20銘柄の中からインデックス投信のみを抜粋
出所:SBI証券「販売金額人気ランキング

手軽に売買できるのはインデックス投資の大きな特徴です。ネット証券や、オンライントレードに対応した大手証券会社であれば、スマホ・PC上から簡単に売買ができます。

また、投資に必要な金額は多くの公募投信が1万円程度、なかには数百円単位からのトレードに応じている証券会社もあります。ただし不動産投資のようにローンで借金をして投資金額を増やすことは通常行いません。

株式インデックス投資は、市場指数に含まれている株式の値動きによって日々投信の基準価額(投信の価格のこと)が変動します。投資家の資産額も日々損益が発生することになります。そのため、不動産投資と比べて市況変化の影響を受けやすいため、価格変動のリスクが高いのが特徴です。

2 不動産投資のメリット・デメリット

インデックス投資を比較した上での不動産投資におけるメリット・デメリットについて見ていきましょう。

2-1 不動産投資のメリット

インデックス投資と比較したときの不動産投資のメリットは次のとおりです。

  • ローンを活用してレバレッジ効果が得られる
  • 価格変動の影響を抑制して長期で安定投資が可能
  • 損益通算ができる
  • 団信加入により生命保険の役割を果たす

不動産投資は、多くの人がローンを借りて物件を購入します。これにより、実際に投じる資金よりも大きな規模の資産に投資することが可能に。資産規模に比例して期待できる賃料収入も大きくなります。

このように小さい元手で大きな収益を追求できることを「レバレッジ効果」と言いますが、不動産投資は高いレバレッジ効果を追求できる投資手法です。

また、賃料収入を主体とした長期投資では、不動産価格の影響をあまり気にせず投資が可能に。株価のように日々相場を見ていなくても、安定的な賃料収入を積み上げて収益を上げることができます。長期安定投資を行う手段として有効な選択肢といえるでしょう。

不動産投資では投じた費用や建物の減価償却など、一部を費用として計上することで会計上マイナスとし、損益通算によって給与所得を抑えることができます。キャッシュフローを改善したり、大きく減価償却を行なって、税還付を受けられる状態にしたりすることが可能です。

住宅ローン同様、不動産投資においても団体信用保険に加入するケースが多くあります。そのため、オーナーにもしものことがあった場合には、ローンが保険で完済されて、遺族に大きな資産を残すことができます。生命保険として活用できる点も、不動産投資の大きなメリットと言えるでしょう。

2-2 不動産投資のデメリット

続いて不動産投資のデメリットは次の通りとなります。

  • 保有期間中にさまざまな費用が発生する
  • 多額の自己資金が必要
  • 短期間での売却は難しい
  • 不動産投資固有のリスクがある

不動産投資においては、物件の維持・管理費用や固定資産税などが継続的にかかります。物件管理を管理会社に一任する場合には管理会社へ手数料を払わなければなりません。保有期間中のコストはインデックス投資よりも高くなる可能性が高いでしょう。また、多額の自己資金がなければ投資の選択肢が狭まってしまうのは、不動産投資のデメリットといえるでしょう。

不動産は売買における手数料が高く、また流動性の高い有価証券のように市場価格が明確なものではありません。5年以内に売却すると売買差益にかかる譲渡所得税の税率が高くなる(所得税+住民税で39.63%、5年超なら20.315%。復興特別税含む)こともあり、短期売買には向いていない投資方法です。

最後に空室リスクや災害リスク、犯罪などのトラブルに巻き込まれるリスクなど、賃料収入や資産価値の減退をもたらす不動産投資ならではのリスクがいくつか存在します。不動産投資ではこのような固有リスクにうまく対処しながら、長期的に経営する戦略が重要になります。

【関連記事】不動産投資の初心者は何に気をつけるべき?始め方・物件購入の流れも

3 インデックス投資のメリット・デメリット

続いては、不動産投資と比較した時の、インデックス投資のメリット、デメリットについて確認していきましょう。

3-1 インデックス投資のメリット

インデックス投資のメリットは次のようなものがあります。

  • 少額で始められる
  • 短期で売買しやすい
  • 費用があまりかからない
  • 価格上昇による収益拡大を狙いやすい

インデックス投資で売買する投資信託は、少額から購入できるのが特徴です。現在保有する自己資金が少ない人でも手軽に始められます。また、毎月少しずつ資金を拠出するつみたて投資もしやすい投資方法です。

ETF(上場投資信託)なら取引所が開いている時間ならリアルタイムで売買ができます。投資信託でも、銀行休業日などを除く平日であれば日々売買可能です。短期で収益を実現したい場合や、中長期で見たときに引き出す可能性のある資金を投資する上で便利です。

また、投資期間中の諸費用が安いのも特徴です。ネット証券口座や大手の証券口座の多くは、口座維持に手数料がかかりません。投信の売買自体も、インデックス投信なら無料となる投信が多く存在します。運用期間中に間接的に徴収される信託報酬も低い傾向にあるため、投資にかかる費用は相対的に小さいといえるでしょう。

最後に、日々の株価や基準価額がさまざまな情報端末で正確に把握でき、また値動きが大きいため、相場が追い風の環境の時には価格上昇による収益を狙えるのも特徴です。短期で大きな利益を狙ううえでは不動産投資よりもインデックス投資の方が取り組みやすいといえるでしょう。

3-2 インデックス投資のデメリット

不動産投資と比較した場合のインデックス投資は次の通りです。

  • レバレッジはかからない
  • 他の所得グループと損益通算することができない
  • 価格下落による損失リスクが高い
  • 景気との相関が高い

インデックス投資で借入などを活用してレバレッジをかけた投資を行うのは容易ではありません。基本的には今自分が持つ自己資金額が投資資産の最大額となります。

自身の相場観が外れて、基準価額が下落した場合には損失が大きくなるリスクがあります。リスクを抑えて安定投資を行いたい人にとっては不安材料となりうるでしょう。

また、給与所得などとの損益通算はできません。ただし、損失が出た際は「譲渡損失の繰越控除」によって翌年3年間にわたって株取引の利益や配当金と損益通算することができます。(※参照:国税庁「上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」)

最後に、不動産投資と比べて景気との連動性が高いのも特徴です。株価は先々の景気の見通しを織り込んで大きく上下する傾向にあるため、不況時には特に損失が大きくなる恐れもあります。

不況時は本業の経済活動でも逆風に陥りやすい時期です。本業が厳しいタイミングに資産価値も減少し、ダブルの悪影響を受けるリスクがある点には注意しましょう。

【関連記事】インデックス投資で陥りがちな5つの失敗事例と対策をプロが解説

4 不動産投資とインデックス投資どちらを選ぶべき?

続いては、いくつかの着眼点をもとに、どのようなタイプの人が、どちらの投資により適しているのか、基本的な考え方を紹介します。あくまで考え方の一つですので、最終的にどちらの手法を選択するかは、ご自身の状況を踏まえて判断してください。

4-1 自己資金の金額や投資計画から考える

投資開始時点での自己資金が少額の人は、数百円〜1万円程度で購入できるインデックス投資を選択するのが一つの考え方となります。また、積立投資を行う考えの人も同様です。

一方、まとまった投資資金を一気に投入できる場合は、借入とうまく組み合わせて資産規模の大きい不動産を所有するのが有効な選択肢の一つとなります。

インデックス投資を多額の資金で行うこともできますが、日々の損益変動が大きいため一度のタイミングで資金投入するのではなく、少額に分けて時間分散(ドル・コスト平均法)を行うと良いでしょう。

4-2 リスク許容度から考える

インデックス投資の方が日々の株価や基準価額の値動きが大きくリスクの高い取引となります。一時的な損失を許容できるリスク許容度の高い投資家にとって有効な選択肢の一つとなるでしょう。

不動産投資には固有のリスクがあるものの、順調に経営が進めば、賃料収入を毎月見込むことができます。リスクを抑えて毎月収入を獲得したい人にとっては、不動産投資の方が始めやすいでしょう。

4-3 本人の信用力から考える

インデックス投資は手元にわずかでも資金があれば、口座開設して始めることが可能です。収入の多寡や借金の有無などは、あまり問題になりません。自分の収入や他の借入状況を踏まえて、新たなローン契約が難しいのであれば、インデックス投資を選択するのが適切といえます。

不動産投資はローンを活用して大きな資産に投資ができるのが特徴の一つです。例えば高収入のサラリーマンで、大きな借金などがないような人は、多額のローンを借りて大きな規模の資産を取得できる可能性があります。その場合は不動産投資を相対的に選択しやすくなるでしょう。

4-4 運用期間から考える

短期で引き出す可能性のある資金を運用するなら、日々売買ができるインデックス投資が有効です。長期投資においてはどちらも選択可能ですが、長期で収益を獲得していきたいなら不動産投資を行うのも一つの考え方です。

不動産投資を検討しやすい運用期間としては、まず売却時の税金が下がる「5年以上」が一つの目安となります。より長い期間でいえば、購入する物件の築年数に留意すれば、数十年単位の投資を行うことも可能です。物件の築年数や本人の属性(年齢・年収・勤め先など)によりますが、30年以上のローン返済期間で投資計画を立てることもできます。

4-5 自身の年齢から考える

社会人の期間がまだ短い20代の人は、よほど高収入でない限り、不動産投資に適した自己資金を用意するのが困難です。若い世代の方であれば、インデックス投資の方が選択しやすいという人が多いでしょう。

なお、区分マンション投資など比較的小規模の物件であれば、フルローンによって自己資金を大幅に抑えられる場合もあります。しかし、フルローンはキャッシュフローがゼロもしくはマイナスになる可能性が高く、設備の故障など突発的なトラブルには自己資金で対応する必要がある点に注意が必要です。

30〜40代の人で、経済的に余裕が出てくれば不動産投資は有効な選択肢の一つとなりやすくなります。社会人として順調にキャリアを築いていれば、信用力も向上しておりローン契約も進めやすいでしょう。

50〜60代の人であれば、低リスクの物件などで不動産投資を選ぶのが一つの考え方となります。定年が近いため、老後を見据えた投資を行うことも大切です。例えば、自己資金の比率を高め毎月の賃料収入を得やすいスキームを取るのが有効な選択肢の一つとなるでしょう。不動産の賃料収入は、老後の年金を補完する役割にもなり得ます。

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まとめ

不動産投資とインデックス投資はそれぞれにメリット・デメリットがあり、双方の特徴を理解したうえで、自分に適した投資方法を考えることが大切です。

なお、必ずしもどちらか一方のみを選ぶ必要はなく、不動産とインデックス投信の双方で投資を行って、リスク分散と投資効率を両立する方法もあります。

自分の資産規模やリスクに対する考え方、年齢などを踏まえて、適切な投資手法や投資割合を選択しましょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。