インデックス投資で陥りがちな5つの失敗事例と対策をプロが解説

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インデックス投資は分かりやすい投資方法のため、幅広い投資家から支持されています。インデックス投資の対象は投資信託や先物などがありますが、長期運用には投資信託やETF(上場投資信託)が適しています。

しかし、事前に信託報酬(手数料)や分配金の頻度などを調べないと、失敗をしてしまうことがあります。そこで今回は、インデックス投資をする前に確認すべき事項を、失敗事例とともに解説します。

目次

  1. 失敗事例:信託報酬を比較しなかったこと
  2. 失敗事例:インデックスの検証をしなかったこと
  3. 失敗事例:分配金の頻度が多いファンドに投資してしまったこと
  4. 失敗事例:レバレッジ型のファンドに投資してしまったこと
  5. 失敗事例:インデックスを理解していなかったこと
  6. まとめ

1 失敗事例:信託報酬を比較しなかったこと

信託報酬は、投資をしている限り毎日支払う手数料です。料率は銘柄によって異なり、同じインデックスに投資している銘柄でも、信託報酬が安い銘柄と高い銘柄があります。インデックス投資を始める前に信託報酬を比較する必要があります。

投資信託には手数料がかかります。購入時に必要な販売手数料、保有している間に支払う信託報酬、解約時に必要な信託財産留保額の3つが代表的な手数料です。インデックス投信の多くは、販売手数料が無料(ノーロード)で、解約時の信託財産留保額についても多くの投資信託が無料となっています。

そのため、信託報酬が投信信託の最も重要な手数料となります。信託報酬は、投資をしている限り毎日支払う手数料なので、投資信託を購入する場合は信託報酬の料率に注意する必要があります。

特に、同じインデックスに連動する投資信託が複数存在する場合には、信託報酬が安い銘柄を選ぶことが大切となります。インデックス投信は、指定のインデックスと連動するように設計されている投資信託なので、投資信託の運用会社が異なっても指定のインデックスが同じ場合、運用成績はほぼ同じです。

しかし、信託報酬は銘柄により異なることがあります。人気のS&P500指数に連動する投資信託の信託報酬を調べてみると、0.0938~0.2475%で、信託報酬に2倍以上の開きがあることがわかります。

こうした信託報酬の差は、長期間保有すればするほど大きくなります。100万円を手数料率0.0938%と0.2475%で比較すると、30年で約4.6万円の差になります(下表参照)。また、信託報酬は運用元本から支払われるため、運用金額にも差が生じ、長期間保有すればするほど運用成績に差が出る可能性があります。

100万円当たりの手数料(円)

 %/期間(年) 1 5 10 20 30
0.0938 938 4,690 9,380 18,760 28,140
0.2475 2,475 12,375 24,750 49,500 74,250
差額 1,537 7,685 15,370 30,740 46,110

2 失敗事例:インデックスの検証をしなかった

インデックス投信はみな同じだと思い、銘柄を適当に選んでしまうと期待を裏切られてしまうこともあります。

インデックス投資では、様々な指数が対象となっています。日本の株式インデックスの代表は日経平均株価、米国ではダウ工業平均やS&P500指数です。そのほかにも、様々な指数を対象としたものがあります。

インデックス投信に投資する場合は過去の騰落率を調べ、騰落率の高い銘柄を選ぶようにしましょう。過去の代表指数の騰落率を調べてみると、過去30年で20倍以上に上昇したものもあります。30年前に日経平均に100万円投資した場合、30年後には約123.92万円に増えますが、ナスダック指数に投資していたら約2,372万円に増えています(下表)。

もちろん過去の成績と将来の成績が同じということはありませんが、指数の過去の動きを検証する価値はあります。

2021年9月23日基準 騰落率(%)(円換算)

指数 / 期間 10年 20年 30年
日経平均株価指数 240.67 203.22 23.92
TOPIX 168.47 99.67 11.53
ダウ工業平均 355.15 263.87 856.91
S&P500指数 462.28 295.73 852.49
ナスダック指数 791.11 830.16 2,272.27
DAX指数 254.62 333.22 197.21
FT100指数 73.07 24.75 75.71

3 失敗事例:分配金の頻度が多いファンドに投資してしまった

投資信託の分配金頻度は投資信託によりさまざまで、分配金なしの銘柄や毎月支払われる銘柄もあります。分配金は基本的には投資信託の運用益から支払われますが、分配金の頻度が多い投資信託の場合、元本を取り崩して支払われる(特別分配金)場合があり、注意が必要です。

運用目的が日々の生活費の足しにするためなど、仕組みを理解して分配金頻度の高い投資信託を購入している場合は問題ありません。しかし、運用目的が長期運用の場合、分配金の頻度が多い投資信託では将来大きな資産を形成することができない可能性があります。毎月分配金が支払われる投資信託は元本を削っている場合が多いため、長期運用には適していないのです。

長期運用が目的の場合には、分配金なしの投資信託を選択するようにしましょう。分配金なしの投資信託は分配金として払われる予定額がまるまる再投資されます。分配金が支払われる投資信託でも分配金を受け取らずに再投資することはできますが、分配金が支払われると約20%課税されるため、再投資額は分配金の約80%となってしまいます。

4 失敗事例:レバレッジ型のファンドに投資してしまったこと

証券会社の投資信託の人気ランキングをみると、レバレッジ型の投資信託が入っていることがあります。人気だからと言って、レバレッジ型の投資信託を購入すると、元本を下回ってしまう場合があります。

レバレッジ投信は投機色が強いため、短期的に利益がでることはありますが、元本を下回ってしまう可能性もあります。市場参加者の多くは短期売買目的です。「ナスダック100 3倍 ブル」の銘柄の場合、インデックス(ナスダック100)が1%上昇すると、その3倍(3%)価格が上昇します。しかし、下落時にはインデックスの3倍下落することになります。

また、これらのファンドは信託報酬が高めに設定されており、なかには1.5%を超す銘柄も存在します。価格変動が大きく信託報酬が高いため、長期資産形成を目指す方には向いていないファンドと言えます。

5 失敗事例:インデックスを理解していなかったこと

インデックスを理解して投資するようにしましょう。インデックスの構成銘柄や算出方法を理解し投資することで、指数の動きをより理解できるようになり、インデックスが暴落した場合にも理由が分かるため慌てることがなくなります。

インデックスは大型株指数、小型株指数、成長株指数、割安株指数などさまざまで、それぞれ動きが異なります。計算方法や組入れ銘柄数なども多種多様なため、各インデックスが違う特徴を持っています。

指数の計算方法には、時価総額加重平均法や単純平均法などがあります。一般的に、単純平均法を採用している指数の方が、時価総額加重平均法の指数よりも動きが軽い傾向があります。単純平均法を採用している指数には、日経平均株価指数、ダウ工業平均などがあり、時価総額加重平均法を採用している指数にはTOPIXやS&P500指数などがあります。

まとめ

インデックス投信で陥りがちな失敗をしないようにするために、投資をする前に、対象インデックスの内容や信託報酬、分配金の頻度などを確認するようにしましょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。