「若者の就労や自立を支援するにはどうすればいいのだろうか」、「どのような支援サービスを紹介すればいいのかわからない」といった悩みを抱えている方は多いかと思います。
そこでこの記事では、若者向けの自立支援に関する特徴や事例、個人で取り組める支援方法について詳しくご紹介します。友人、家族の自立支援について考えている方や、社会問題を改善したいと考えていて若者の自立支援についても取り組みたい方などは、ご参考ください。
※「障がい者」の表記について
視覚障害を持つ方が記事を音声ブラウザで読む場合に「さわりがいしゃ(障がい者)」と読み上げられる場合があるため、本記事では「障害者」と表記させて頂いております。
目次
- 若者の自立支援とは
- 若者向け自立支援の種類
2-1.就労支援
2-2.社会参加と復帰へ向けた支援 - 国の若者自立支援
3-1.厚生労働省の地域若者サポートステーション
3-2.地域若者サポートステーション利用の流れ
3-3.サポートステーションで受けられる支援の種類 - 自治体による若者自立支援
4-1.東京都の若者応援プロジェクト
4-2.横浜市の若者自立支援
4-3.大阪府のコネクションズおおさか - 個人で取り組める若者への自立支援
- まとめ
1.若者の自立支援とは
若者向けの自立支援は、主には病気やその他理由から就労や社会生活が困難になっている方、ひきこもりなどで社会復帰できない方に向けた支援事業や取り組みを指しています。
自立支援事業の内容は種類によって異なり、働くための支援プログラムに特化したものや孤独感や不安感といった漠然とした悩みに対するサポート、生活や就労を含めて総合的に支援を行ってもらえるものまで存在しています。
自立支援事業を行っているのは、国や自治体、NPO法人、民間企業で、それぞれ支援を受けるための流れや必要な手続きなどに違いがあります。若者向けの自立支援を探す際は、実施団体とサポート範囲を確認することが大切です。
2.若者向け自立支援の種類
若者向け自立支援の概要を把握したあとは、具体的な支援内容と種類について確認していきましょう。
2-1.就労支援
若者も受けられる自立支援には、就労支援事業も含まれています。さまざまな原因で働くことができない、働くための一歩が踏み出せないといった方は、特に利用メリットの多い制度です。就労支援事業については、障害者向けの就労支援制度と障がいの有無にかかわらず受けられる就労支援制度にわかれています。以下に障害者向け就労支援制度の種類について紹介します。
就労移行支援 | 一般企業への就労を希望している方向け 仕事に必要なスキルを身につけるための支援を受けられる 利用期間原則2年以内 |
就労継続支援A型 | 現時点で一般企業への就労が難しい状態の方向け 雇用契約の締結が可能な就労機会の提供など(雇用関係にある事業所への就労が可能なため、時給制) 利用期間に関する制限や定めはない |
就労継続支援B型 | 現時点で一般企業への就労が難しい状態の方向け 就労機会や生産活動の機会を提供してもらえる(雇用関係にない就労のため、業務の内容に応じた工賃をいただく) 利用期間に関する制限や定めはない |
就労定着支援 | 就労移行支援を活用して一般企業へ就労した方向け 日常生活や社会生活を営む上で発生した悩みなどをサポートしてくれる |
出典:厚生労働省「障害者の就労支援対策の状況」
障害者向け就労支援制度を 受けたい場合は、管轄の自治体窓口へ申し込みを行います。審査に通過すると、障害福祉サービス受給者証を支給してもらえるので、就労支援を行っている事業所へ利用申請と共に受給者証を提示します。
障がいの有無にかかわらず受けられる支援は、後半で紹介する自立支援にも含まれている地域若者サポートステーションといった支援制度です。主に外に出るのが怖い、コミュニケーション働いたことがないといった悩みを持つ方を対象にした支援事業で、コミュニケーション講座や就活セミナー、社会復帰、就労支援や職場定着といった幅広いサポートを受けられるのが特長です。
サポートを受けたい場合は、各種支援制度の窓口へ問い合わせる必要があります。
2-2.社会参加と復帰へ向けた支援
若者向け自立支援の中には、就労だけでなくこころやひきこもり、人間関係に関する悩みをサポートしてくれる自立支援も存在しています。実施しているのは自治体やNPO法人などで、それぞれ対応時間や支援の方法や内容に違いがあります。また、自立支援サービスでは、以下のような悩みを相談できます。
- 人と上手に話せない
- コロナ禍などで孤独感を覚えている
- 外に出るのが怖い
- 会社の人間関係に困っている
- 将来への不安から一歩踏み出せない
- いじめに悩んでいる
自立支援サービスでは、専門の相談員へ悩みを相談したり、フリースペースで休んだりできます。自宅を出るのが難しい場合は、相談員の方から訪問してもらえるので、外出できないといった方にも利用しやすいサービスといえます。
3.国の若者自立支援
国の支援事業は複数あり、かつ複雑な内容でわかりにくい側面もあります。ここでは、国の若者自立支援事業に関する特徴や利用方法、支援内容を紹介します。3-1.厚生労働省の地域若者サポートステーション
地域若者サポートステーション(サポステ)は、働けない、働くことが難しいといった15歳~49歳までの方を対象にした自立支援制度です。全国177の自治体やNPO法人などが、厚生労働省からの委託でサポートを続けています。
これまでの利用件数は600万件以上、2021年の利用件数は約48万件、新規登録者数1.7万人と就労に関する悩みを抱えている多くの方に利用されています。
2021年の就職等率は68.8%で、地域若者サポートステーションを利用した方の多くは就職もしくは公的職業訓練の道に進んでいる状況です。
3-2.地域若者サポートステーション利用の流れ
地域若者サポートステーションを利用したい時は、問い合わせページから最寄りのサポートステーションを検索します。
具体的には、地域若者サポートステーションサイトのトップページに表示されている地図マークから都道府県を選択します。トップページ以外のページへアクセスしている場合は、全国のサポステはこちらというボタンをクリックし、地図マークのあるページへ移動する必要があります。
最寄りのサポートステーションを見つけたあとは、電話やメールで予約を行い当日にサポートステーションへ訪問していく流れです。相談料は無料で、気軽に相談しやすい環境といえます。なお、一部のサービス、プログラムは有料の場合もあるので、事前に料金の有無を確認しておきましょう。
続いて2回目の相談では、初回面談の内容から相談者の悩みに合った専門の相談員からヒアリングを受けられます。その後は、現時点の悩みに合った支援プログラムを受けながら、少しずつ課題解決していき、就労や進学、職業訓練といった道に進んでいく流れです。
3-3.サポートステーションで受けられる支援の種類
支援内容 | 概要 |
---|---|
コミュニケーション講座 | グループワークを通じて、コミュニケーションを楽しむためのプログラムを受けられる |
ジョブトレ(就業体験) | 専門の相談員と相談しながら、就いてみたい仕事の体験を行うことが可能 |
ビジネスマナー講座 | 社会人として必要な身だしなみ、電話対応、言葉づかいといった点を身につけられる |
就活セミナー | 履歴書や職務経歴書の作り方、面接の練習、就職活動をスタッフのサポート受けながら進められる |
集中訓練プログラム | 職場実習、合宿などを通じた生活面のサポートを経験し、就職へ向けた力をつける |
アウトリーチ支援 | 高校などを中退した方、中退見込み者を対象に、職業訓練や個別の支援によって就職を目指す |
パソコン講座(若者UPプロジェクト、) | 基礎的なパソコンスキルに関する講座の他、ビジネスシーンで必要なパソコンツールの使い方に関するサポートも受けられる |
WORK FIT | オリエンテーションを通じた自分の強み発見、面接の練習やセミナーなどのプログラムを受けられる |
地域若者サポートステーションの基本的な支援プログラムは上記の内容ですが、各サポートステーションによって独自の支援プログラムを提供してもらえる場合もあります。また、集中訓練プログラム、パソコン講座の若者UPプロジェクト、WORK FITに関しては、一部のサポートステーションでのみ対応中です。
4.自治体による若者自立支援
続いては、自治体による若者自立支援事業を4つ紹介していきます。
4-1.東京都の若者応援プロジェクト
東京都では、若者応援プロジェクトという若者向けの自立支援プログラムを実施しています。コロナ禍で人と会う機会が減ってしまい不安を覚えている方、日頃から孤独感や仕事に関する悩みを持っている方など、さまざまな悩みを抱える若者に向けたイベントの他、専門の相談窓口が紹介されています。
2022年9月11日に行われた第1回オンラインイベントでは、医師、心理カウンセラー、YouTuberの益田氏による講演の他、参加者からの質問に答えるQ&Aコーナー、パネルディスカッションなどが行われました。
相談窓口のページへアクセスすると、以下の項目に区分された自立支援事業を一覧で確認することが可能です。
- 仕事の悩み
- こころの悩み
- ひきこもりの悩み
- 生活の悩み
- 人間関係の悩み
- 学校の悩み
たとえば、渋谷区にあるほっといい場所ひだまりは、生きづらさを抱えている方に寄り添う自立支援事業で、看護師、保健師、臨床心理士などによる支援を受けながらフリースペースで心を落ち着かせることが可能です。
各自立支援サービスの利用料金は異なるので、予約および訪問前にサイトから内容を確認しておきましょう。
4-2.横浜市の若者自立支援
横浜市では、15歳から39歳のひきこもりなどで悩む方を対象に支援や様々な自立支援機関の紹介が行われています。(※参照:横浜市「横浜市における若者自立支援の取組」)悩みを抱えている本人やその家族は、相談料無料で電話予約および相談を行えます。ひきこもりになる理由はさまざまで、悩みに合わせた支援プログラムを用意してもらえます。
他には継続的な支援を受けられるのが特長で、家族を含めた支援をはじめ、外出支援、医療と福祉の両面によるアプローチ、回復期のサポート、社会参加へ向けたプログラムなどを相談者の状態に合わせて組み立ててくれます。
なお、横浜市と連携しているのは、青少年相談センターと地域ユースプラザ、地域若者サポートステーション、よこはま型若者自立塾事業など複数あり、それぞれひきこもりの回復や社会参加に向けたプログラムに特化した専門機関です。
4-3.大阪市のコネクションズおおさか
大阪市では若者支援事業として「コネクションズおおさか」を主催しています。15歳~39歳の中でも仕事についていない方を対象に自立支援事業を展開しています。支援内容は大きくわけて3つで、相談によるサポートと社会参加体験、保護者向けの支援事業で構成されています。
相談事業については、臨床心理士によるカウンセリングの他、キャリアコンサルタントによるヒアリングと支援プログラムの作成といった支援を受けられます。
社会参加体験プログラムでは、就労に必要な面接、電話応対の練習だけでなく、コミュニケーションに関する講座、地域の掃除などといったボランティア体験、半日~5日程度の就業体験などを用意してもらえます。
また、保護者向けの支援事業は、就労していない若者の保護者が抱える悩みの解決、支援機関に関する情報提供といったサポートを受けられます。
5.個人で取り組める若者への自立支援
国、自治体、NPO法人の自立支援機関を紹介したり自立支援関連の情報を集めたりすることが、個人にできる主な支援方法です。他には、自立支援機関へ参加することも若者の自立支援に貢献しているといえます。自立支援を進めていくには、臨床心理士などによる医療支援、自治体や福祉事業者などによる包括的なサポートプログラムの実施も必要です。
専門知識を持っていない個人で社会参加、就労へ向けたサポートを行ってしまうと、かえってさまざまな症状を悪化させたり社会復帰に向けた意欲を削いだりしてしまう可能性があります。まずは自立支援機関に関する情報を集めて、どこに相談すべきか考えるのが大切です。
また、自立支援機関への参加が難しい場合には若者への自立支援を行う団体に寄付を行うことも検討されてみると良いでしょう。継続的な寄付を行うことで支援団体の活動も行いやすくなり、支援を必要とする人の助けとなります。
ただし、寄付を行う際は寄付先団体の信頼性についてしっかり確認することが大切です。団体の活動報告書を確認したり、ウェブサイトで活動内容が公開されている場合にはチェックするなどして、調査を行ってみましょう。
【関連記事】寄付はいくらからできる?寄付の仕方や寄付の注意点も
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まとめ
若者の自立支援を進めていきたい時は、地域若者サポートステーションから最寄りの自立支援機関を見つけて相談してみるのが大切です。また、自立支援機関によって対応しているサポート内容は異なるので、地域若者サポートステーションや就労支援制度、若者応援プロジェクトといった各支援機関サイトから詳細を確認しておきましょう。
家族や友人などの自立支援をサポートしていきたい方や自立支援について関心を持っている方は、今回紹介した内容を参考にしながら自立支援の方法や相談先について検討してみましょう。
菊地 祥
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