世界で電気自動車(EV)シフトが鮮明となっています。2022年には世界のEV販売台数は1,060万台(前年比57%増)となり、自動車販売台数の約18%を占めました。
日本では、プラグインハイブリッド車を含むEVの販売台数が2021年度の2倍に拡大しました。米国でも、EVの販売台数が拡大しており、自動車販売台数に占める割合が増加傾向にあります。2023年においてもEVシフトの流れが続くことが予想されます。
今回は2023年の自動車業界の展開と日米注目銘柄を解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年2月13日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 2023年の自動車業界
1-1.米国
1-2.日本 - 注目の日米自動車銘柄
2-1.テスラ
2-2.GM
2-3.日産
2-4.スズキ - まとめ
1 2023年の自動車業界
2050年の温室効果ガス排出ゼロに向け、自動車メーカー各社は電気自動車(EV)の開発・生産に力を入れています。2023年は、さらにEV化の流れが進む年となりそうです。
1-1 米国
米国市場では、欧州に比べEV導入に出遅れ感がありますが、2022年のEVの自動車販売台数に占める割合は、前年の3.2%から5.8%に拡大しました。2023年も米国市場では、EVの販売台数が伸びる可能性が高いと思われます。
背景には、バイデン米大統領が2030年までに新車販売台数の50%を、二酸化炭素を排出しないEVなどとするという目標を定めたことがあります。また、EV普及推進のため、最終的に米国内で組み立てられたEVやPHEV(プラグインハイブリッド車)購入の際に、税額控除が適用されます。
1-2 日本
日本においてもEVのシェアが拡大しています。日本自動車販売協会連合会による資料「燃料別販売台数(乗用車)」によると、販売台数に占めるEVの割合は、2020年の0.6%から、2021年に0.9%、2022年には1.4%と少しずつ増えています。
国内自動車メーカーもEVに参入していますが、2023年1月に電気自動車販売台数世界一の中国BYDが日本市場で電気自動車の販売を開始したこともあり、日本国内でもEVシェアが拡大すると考えられます。また、電気自動車購入時の補助金が2023年度も支給されることも電気自動車の市場拡大の一助となりそうです。
2 注目の日米自動車銘柄
市場で注目の日米自動車メーカーをみていきましょう。
2-1 テスラ
2023年もEV大手テスラが注目されそうです。米国では、2030年までに新車販売台数の50%をゼロエミッション車(ZEV)にするという目標が定められていることに加え、カリフォルニア州で2035年までに全新車販売をZEVにするという新規制が設けられたこともあり、テスラは業績も順調に伸びています。
テスラは、2022年10~12月期決算で純利益が前年同期比59%増の36億8700万ドルとなり、四半期ベースで過去最高益を計上しました。
クレジット市場では、テスラのCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)は低下傾向にあります。2022年9月下旬に約460bp(1bp=0.01%)で推移していましたが、2023年1月8日現在289bp(1bp=0.01%)に低下しています。フォードが294bpとなっており、足元での倒産リスクはフォードと同程度と言えます。
EV大手テスラが販売台数をどこまで伸ばすことができるのかが注目されています。
2-2 GM
米自動車大手のゼネラル・モーターズ(GM)は、米国内でのEV生産拡大に対し慎重な姿勢をとっています。同社の2022年から2024年前半までの北米でのEV生産計画は40万台です。ライバルのフォード・モーター・カンパニーは2023年の年間EV生産計画を60万台としているのに対し、GMのEVシフトへの慎重姿勢がうかがえます。
一方でGMは、EV電池用材料の確保に動いています。この背景には、米国のEV減税の条件変更があります。2024年までには電池の原材料の40%以上を北米または米国の貿易相手国から調達すること、さらに2029年までには電池の構成部品を100%北米で製造することが必要となります。
GMは、EVバッテリーに不可欠なニッケルやコバルトの供給源確保のために、オーストラリア鉱山会社と提携したほか、世界第3位のリチウム供給源であるネバダ州のサッカー・バース鉱山開発のために、カナダのリチウム・アメリカズグループと連携するとしています。また、ブラジルの資源開発企業であるヴァーレのベースメタル事業の少数株式取得を目指しているとの報道もあります(参照:Bloomberg「GM、ヴァーレのベースメタル事業への出資目指す-関係者」)。
2-3 日産
日産自動車の国内EV市場シェアは約23%(2022年)で、国内メーカーでトップです。2022年に販売された新型軽自動車の電気自動車「日産サクラ」の販売が好調で、台数を伸ばしています。
交通の便が不便な地域では、生活の足として自動車は必需品ともいえます。特に、燃費が良く、税金などの固定費が低い軽自動車の需要が高く、長野県、鳥取県、佐賀県、島根県では軽自動車を世帯当たり1台以上保有しています(参照:全軽自協「軽自動車の世帯当たり普及台数について(令和3年12月末)」)。
2023年度においても、国・地方の補助金が交付されるため、EVシフトが続きそうです。
日産はEV戦略として2030年までに15車種を発売すると発表しており、EVではトヨタに先行している同社の今後の展開に関心が集まっています。
2-4 スズキ
軽自動車大手のスズキは、執筆時点ではEVを発売していませんが、2023年度に日本国内で軽商用EVを発売する予定です。小型SUV・軽乗用車などの発売も予定しており、2030年度までにEVを6モデル展開すると報道されています。
軽自動車は生活の足としての利用が多く、EVの悩みである走行距離はあまり重要な要素とされない傾向があります。そのため、大型車に比べバッテリー容量を小さくすることで手頃な価格で提供される可能性があります。
同社は軽自動車市場で高いシェアを占めているため、今度の展開が注目されています。
まとめ
2023年の自動車業界は、EV化が加速する年となりそうです。環境への配慮から世界的な化石燃料への規制強化や、EVへの税制優遇や補助金制度などを背景に、日米ともにEVへの注目が高まりそうです。
銘柄としては、米国市場ではEV大手のテスラ、自動車大手のGMやフォード、日本市場ではスズキや日産などが注目されそうです。
※記事内で取り上げた銘柄を推奨するものではありません。投資する場合はご自身の判断でお願いいたします。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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