“京都議定書”から命名!ReFi特化のL1チェーン「KYOTO Protocol」とは?

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目次

  1. KYOTO Protocolとは?
  2. KYOTO Protocolの設立理由は?
  3. KYOTO Protocolの展望は?

KYOTO Protocolとは?

「KYOTO Protocol」は、web3の力を利用して自主炭素市場(VCM)と再生金融(ReFi) を拡張するために構築されたカーボンネガティブなL1ブロックチェーンです。簡単に言えばReFiに特化したL1チェーンで、2023年8月にメインネットが公開されたばかりで非常に新しいチェーンです。

“KYOTO”の名前は1997年12月に京都市で開かれた第3回気候変動枠組条約締約国会議で締結された、国際間の気候変動枠組条約に関する議定書である「京都議定書」から取られています。「京都議定書」は結果的にうまく機能しませんでしたが、国際間で気候変動に関する取り決めが定められた初の事例となり、その後の議論活性化や2015年に採択されたパリ協定へと繋がる貴重な出来事になりました。なので、ファウンダーが日本人というわけではありません。
では、その特徴を1つずつ見ていきます。

①安価なガス代とガス代の25%を寄付

KYOTOは独自の仕組みにより非常に安いガス代を実現しました。1トランザクション当たりのガス代は50gweiです。gweiはガス代を計算する際の単位ですが、ややこしいのでドル表記で比べてみます。ETHのガス代はトランザクションごとに0.40ドルから1ドルほどなのに対して、KYOTOは0.00035 ドルです。ETHのL2は100分の1ほどにガス代を低下させることが期待されていますが、それに比べてもKYOTOのガス代が非常に安いことがわかります。

また、KYOTOはガス代の25%を植林プロジェクトやその他の環境に優しい活動に寄付されます。これらは予めガス代支払いのコントラクト中に記録されているため、自動で寄付され続けます。

例えば、1日に徴収されるガス代の平均額を200万ドルとし、その25%を森林再生に寄付すると、KYOTOは約500万本の木を植え、地元に240人の雇用を提供することができます。これを365日で計算すると、1年間で最大18億本の木を植えることができ、雇用の創出と共に、年間4,300万トン以上のCO2を相殺することができます。

②EVM互換性を持ち、Solidity開発が可能

KYOTOはイーサリアムからは独立して存在するL1ブロックチェーンですが、EVM互換性を持ちます。よって、開発者はSolidityでの開発が可能となります。また、KYOTO独自トークンである$KYOTOを始めとするトークンはERC-20トークンではありませんが、ERC-20に準拠するインターフェースを兼ね備えています。これによってERC-20トークンをサポートするツールを利用することも可能です。

KYOTO Protocolの設立理由は?

先述した通り、KYOTOはVCM市場とReFiを拡大するために設立されました。マッキンゼーによると、VCM市場は2030年までに500億ドル以上に達し、2050年には2020年の100倍の規模に達すると言われています。

そんな中で現在のVCM市場はダブルカウント、グリーンウォッシング、透明性の欠如など、ひどい状況です。その状況に対して、KYOTOは透明性があり、改竄不可能であり、カーボンネガティブなL1ブロックチェーンを作ることで、VCM市場を拡大し、ReFiを推し進めることを目指しています。これまでもブロックチェーン上にカーボンクレジットを発行するプラットフォームはありましたが、どれもイーサリアムやポリゴン等の既存チェーン上に発行するだけでした。それが必ずしも悪いわけではありませんが、KYOTOを利用することで利用するチェーン自体もカーボンネガティブな状態となり、真の意味でカーボンオフセットの達成に近づきます。

例えば、別チェーンで発行されたクレジットのトークンでは、発行する際や取引する度にガス代が発生し、そこでも温室効果ガスの排出に繋がります。ですがKYOTOでは、ガス代が安価なことに加え、取引する毎にガス代の25%が寄付につながるので、カーボンクレジットのやり取り自体が環境に悪影響を与えることが少なくなります。また、KYOTOはローンチにあたり「5 WAYS」と題して、ReFiを推進する5つの方法を掲げています。これにはこれまで述べたようなガス代を寄付することに加え、100万ドルの助成金を付与することが含まれています。

また、KYOTOはローンチに先立ち、ケニアのキレプウェ、ディアニ、シモニとタンザニアのキガンボニの海岸線に沿って100万本のマングローブの木を植樹し、その過程でそれぞれの地域コミュニティに80の新たな雇用を創出しました。この植樹によって、2075年までに約30万8,000トンの炭素を隔離すると予想されています。

KYOTO Protocolの展望は?

では最後に展望を見ていきます。先述した通り、KYOTOは2023年8月にローンチされたばかりの非常に新しいチェーンです。現在はまだKYOTO上のDappsは少なく、HP上には3つだけが書かれていました。

  • arboretum:ReFiコレクションの売買ができるNFTマーケットプレイス。手数料の10%が環境に良いことに利用されます。
  • KYOTO Swap:スワップ機能を持つ、ReFi上のDEX
  • KYOTO Wallet:KYOTOエコシステムにアクセスするためのウォレット

執筆時点の2023年9月末ではKYOTO Swapのみがリンクとして機能していたので、NFTマーケットプレイスとWalletはこれからリリースされていくようです。それ以外の開発者のDappsは今後掲載されていくようで、助成金も積極的に配布していくとのことでした。また、マーケットプレイスや分散型のMRVの提供など、カーボンクレジットをトークン化することに最適なエコシステムを築いていくことも示唆されていました。それに加えて、ガス代の手数料等を活用しながら、地球上の様々な土地を取得しながら、保全、植林、造林、保護などの炭素隔離プロジェクトの管理にも取り組んでいくとのことです。

未来を考察

ここからは筆者の考察となります。

まだローンチされたばかりなのでわからないことも多いですが、非常に大きな可能性を秘めたプロジェクトだと感じています。最近のweb3業界では、GameFi特化のOasysチェーンやDeFiに特化したSeiチェーンなど、領域毎に求められる機能が少し異なるため、パブリックチェーンではなく独自チェーンを利用する流れが見られます。その意味では、今後拡大が予想されるReFiに特化したKYOTOチェーンはReFiプロジェクトに積極的に採用されていくかもしれません。

懸念をあげるとすれば、最近はNEAR Protocol等にも見られるように多くのブロックチェーンプロジェクトがカーボンニュートラルを意識し始めているので、KYOTOを利用しなくてもカーボンネガティブなチェーンが増えていくことが予想されます。また、ReFiエコシステムにおけるL1チェーンとして、Celoが存在していましたが、最近の投票で独自L1チェーンではなく、イーサリアム内のL2チェーンとして移行することが議論されています。CeloもEVM互換性を持っていましたが、やはり独自のL1チェーンはエコシステムを築き上げることが非常に困難なことがわかります。

ReFi自体はこれから拡大していく領域なので、そこに特化してDappsを招致できれば、ReFiの拡大に当たって、KYOTOエコシステムも拡大していくことができますが、ここは鶏卵理論で、エコシステムが小さいチェーンは採用されづらいので、難しいところです。とはいえ、ReFiに特化したチェーンは非常に興味深いので引き続き情報を追いかけていきます!