国際認証カーボンクレジットをオンライン購入できる「e-dash Carbon Offset」の利用方法

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一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う中島 翔 氏(Twitter : @sweetstrader3 / @fukuokasho12))に解説していただきました。

目次

  1. 「e-dash Carbon Offset」とは
    1-1.「e-dash Carbon Offset」の概要
    1-2.運営企業「e-dash株式会社」の概要
  2. 「e-dash Carbon Offset」の特徴
  3. 「e-dash Carbon Offset」が取り扱っているクレジット
    3-1.ボランタリークレジット
    3-2.J-クレジット
  4. 「e-dash Carbon Offset」の利用方法
  5. まとめ

「e-dash」というクラウドサービスで二酸化炭素の排出量を可視化するe-dash株式会社が、J-クレジットの大手プロバイダーである株式会社イトーキとの提携を経て、「e-dash Carbon Offset」にてJ-クレジットの販売を開始しました。

このe-dash Carbon Offsetは、品質の高いクレジットに対して誰もが手軽にアクセスできる環境の構築を目指したプラットフォームとなっており、国際認証カーボンクレジットをオンライン購入できるとして大きな注目を集めています。

そこで今回は、現在話題の「e-dash Carbon Offset」について、その概要や特徴、利用方法などを詳しく解説していきます。

①「e-dash Carbon Offset」とは

1-1.「e-dash Carbon Offset」の概要

2022年7月13日にe-dash株式会社とサンフランシスコを拠点とするPatch Technologiesとの協力で開発された「e-dash Carbon Offset」は、カーボンクレジット取引ができる新しいマーケットプレイスです。このプラットフォームは、「カーボンオフセットを全ての企業へ」というビジョンのもと、アクセスの容易さを重視しています。e-dash Carbon Offsetでは、「カーボン・オフセットを、すべての企業に開かれた選択肢へ」というテーマを掲げ、誰もが手軽に品質の高いクレジットにアクセスできるような環境の構築に尽力しています。

そもそもカーボンオフセットとは、日頃の生活や経済活動から排出される温室効果ガスのうち、削減努力を行っても削減しきれない排出量について、クレジットの購入などによる投資を通じて埋め合わせる仕組みのことを指します。そして、近年このカーボンクレジットをめぐる市場規模がますます拡大しており、世界ではクレジットの取引を行うことができるマーケットが多数誕生しています。

e-dash Carbon Offsetは高品質で信頼性が高く、目的の用途にもしっかり適しているクレジットを必要なオフセット量分だけ手軽に購入することができるマーケットプレイスとなっており、これまで懸念されてきた参入ハードルを取り除く画期的な取り組みであるとして、大きな期待を集めています。

1-2.運営企業「e-dash株式会社」の概要

「e-dash Carbon Offset」の運営背景にある「e-dash株式会社」は、2022年2月7日に設立された二酸化炭素削減関連のビジネスを手がける企業です。大手総合商社「三井物産」の子会社であるこのスタートアップは、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて、持続可能な社会づくりをサポートしています。「環境と調和する社会」を実現するため、三井物産が世界各地で培ってきたノウハウを総動員してクライアントと長く寄り添いながら取り組みを支援していく方針を示しています。

e-dashでは、請求書をスキャンしてアップロードするだけで、月々の電力やガスなどの使用量とコストを可視化することができるほか、それに基づく二酸化炭素の排出量まで算出することが可能となっています。また、エネルギーの使用量と二酸化炭素の排出量を可視化することによって、削減目標の設定と進捗管理がより容易になるため、効率的且つ効果的な対外公表や報告対応が可能になるということです。e-dashが提供するこのサービスは、実際に多岐にわたる国内企業によって導入が進められており、今後もさらにその規模を拡大していくと見られています。

このように、e-dashでは現在世界中から大きな注目を集めている「脱炭素」という分野に焦点を当て、ユーザーファーストのさまざまなサービス展開を行っています。

②「e-dash Carbon Offset」の特徴

1.Jクレジットの取引が可能
e-dashは株式会社イトーキと連携して、2023年5月から「J-クレジット」の取引を開始しました。J-クレジットは、温室効果ガスの削減や森林の管理による吸収量を、国がクレジットとして認証する制度です。

これまで600万トンを超えるクレジットが活用されてきましたが、多くは仲介事業者を通じた取引であり、またクレジットの比較や購入が難しいという課題がありました。e-dashは、この課題を解決するため、e-dashはイトーキと共に、企業がJ-クレジットを簡単に選び購入できるプラットフォームを提供しています。この取り組みは日本初であり、多くの関心を集めています。

2.オンラインで簡単に購入可能
e-dash Carbon Offsetを通じて、国際認証カーボンクレジットをオンラインで手軽に購入できます。購入は通常のECサイト同様、希望のクレジットを選択し、カートに追加して注文するだけです。また、会員登録や月額利用料は不要です。

このように、e-dash Carbon Offsetはこれまで複雑で分かりにくいとされてきたクレジットの購入を最大限簡略化することによって、当該分野に精通している大企業だけでなく、あらゆる企業が気軽にクレジットを購入できる環境を整備しています。

3.少量からの購入が可能
e-dash Carbon Offsetでは、1トンだけでなく、0.01トンのような少量からの購入もサポートしています。ユーザーは自分のニーズに合わせてクレジット量を選ぶことができます。

4.証明書の発行
e-dash Carbon Offsetでは、購入したクレジットに対して、証明書が発行されます。具体的には、ボランタリークレジットにはe-dashの証明書、J-クレジットにはJ-クレジット制度事務局の通知書が提供されます。これらの証明書には認証機関の名前も記載されており、信頼性の高い取引が可能です。

③「e-dash Carbon Offset」が取り扱っているクレジット

3-1.ボランタリークレジット

e-dash Carbon Offsetでは、以下のボランタリークレジットの認証基準を取り扱っています。

・Verified Carbon Standard(VCS)
VCSは2005年に3団体(WBSD、IETA、The Climate Group)によって設立されました。現在、「Verra」というアメリカの民間団体が管理しており、取引量が世界で最も多いボランタリークレジットとして知られています。

また、VCSのプロジェクトは多岐にわたり、森林や湿地の保全をはじめとして、全11種類もの創出方法が存在します。

・Gold Standard(GS)
GSは、2003年にWWFをはじめとする環境団体によって認証基準として設立されました。

・American Carbon Registry(ACR)
ACRは、1996年に「Winrock International」が設立した世界初の民間クレジット認証基準です。また、アメリカのカリフォルニア州の公的規制にも適用可能です。

・Climate Action Reserve(CAR)
「Climate Action Reserve(CAR)」は、2001年に創設された、およそ300に上る企業や自治体、政府機関、NGOが参加する「California Climate Action Registry」を起源に持つ認証基準です。

・California Air Resources Board(CARB)
「California Air Resources Board(CARB)」は、アメリカのカリフォルニア州における二酸化炭素排出量規制に基づく公的クレジットです。

・Puro Standard(Puro)
「Puro Standard(Puro)」は、2021年に「Nasdaq」が買収した「Puro.earth」によって運営が行われている認証基準で、大気中からの炭素除去に由来するクレジット(CO2除去証書CORC)を発行しています。

なお、e-dash Carbon Offsetで取り扱う認証基準の種類は変更になる可能性があるほか、それぞれの認証基準に属する個別プロジェクトすべてを取り扱っているわけではないということです。

3-2.J-クレジット

現時点でe-dash Carbon Offsetにおいて購入可能なJ-クレジットの種類には、下記のようなものがあります。

・再エネ由来
e-dash Carbon Offsetでは太陽光発電によるものを中心に取り扱っており、「CDP」や「RE100」、「SBT」などといった世界標準の報告に対応可能なクレジットを多数取り揃えています。

・省エネ由来
e-dash Carbon Offsetではボイラーなどの設備更新によるものをはじめ、省エネ施策に由来するクレジットを取り扱っています。

また、これらのクレジットは温対法に基づいた報告にも対応しているということです。

・森林由来
e-dash Carbon Offsetでは間伐や植林など森林によって増えた二酸化炭素吸収量によるクレジットを取り扱っています。

また、これらのクレジットは創出した地域への貢献としても活用が可能だということです。

④「e-dash Carbon Offset」の利用方法

1.クレジット一覧から好きなクレジットを選択


e-dash Carbon Offsetのサイトにアクセスすると、国際的に認証された多種多様なクレジットから、お好みのものを選べます。多くの選択肢があるため、「森林保全」のようにプロジェクトのカテゴリーで絞り込んで検索するのがおすすめです。

2.必要なオフセット量をカートに追加


好みのクレジットを選んだら、その詳細ページでプロジェクトの概要や認証基準、価格などを確認できます。特に、「Vintage Year」はクレジットの発行年度を示す項目で、クレジットの温室効果ガス削減または吸収の実績年度を示しています。購入する量を「購入金額」や「オフセット量」から指定して、カートに追加します。

3.クレジットカードで支払い
カートに進むと、クレジットカードか銀行振込(注文後14日以内)での支払いが選べます。別の支払方法を希望する方は、サイト上の問い合わせフォームから相談が可能です。

4.証明書の受け取り
支払いを完了すると、e-dashがクレジットの手配を行い、手配が完了するとオフセット証明書がメールで送られてきます。

⑤まとめ

e-dash Carbon Offsetは、e-dashとPatch Technologiesが開発した、気軽にカーボンクレジット取引ができるプラットフォームです。

使いやすさを追求したこのマーケットプレイスは、カーボンクレジットの購入をシンプルにし、これまでのカーボンクレジットマーケットが抱えていた「購入方法が分かりづらい」、「どの種類のクレジットを購入すればいいのか分からない」などといった課題の解決を実現しています。

2023年5月より「J-クレジット」も取り扱い開始し、日本での民間主導のオンラインマーケットプレイスでのJクレジット取扱いが初めてとなり、注目を集めています。e-dash Carbon Offsetを利用して、簡単に脱炭素への貢献を始めてみるのはいかがでしょうか。

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中島 翔

一般社団法人カーボンニュートラル機構理事。学生時代にFX、先物、オプショントレーディングを経験し、FXをメインに4年間投資に没頭。その後は金融業界のマーケット部門業務を目指し、2年間で証券アナリスト資格を取得。あおぞら銀行では、MBS(Morgage Backed Securites)投資業務及び外貨のマネーマネジメント業務に従事。さらに、三菱UFJモルガンスタンレー証券へ転職し、外国為替のスポット、フォワードトレーディング及び、クレジットトレーディングに従事。金融業界に精通して幅広い知識を持つ。また一般社団法人カーボンニュートラル機構理事を務め、カーボンニュートラル関連のコンサルティングを行う。証券アナリスト資格保有 。Twitter : @sweetstrader3 / Instagram : @fukuokasho12