英石油大手のシェル(ティッカーシンボル:SHEL)は3月8日、ロシア事業から全面的に撤退すると発表した(*1)。ウクライナ侵攻後もロシア産原油の購入を継続していたことに関しては正しい決断ではなかったとして陳謝した。
まずロシア産原油のスポット(短期)取引をやめるほか、天然ガスや液化天然ガス(LNG)なども段階的に撤退する。ロシア国内でのガソリンスタンドの運営や航空燃料の供給、石油製品の販売からも手を引く。
シェルは4日にロシアの代表的な油種であるウラル原油を記録的なディスカウントで購入した。購入自体は欧州の制裁に違反するものではなかったが、多くの企業がロシア産原油の購入を敬遠するなかでの動きであったため、ウクライナのドミトロ・クレバ副首相などから厳しい非難を浴びていた。
ベン・ファン・ブールデン最高経営責任者(CEO)は「ロシア産原油の購入は供給の安全を第一に考えたうえでの決断だったが正しくはなかった」と陳謝(*1)。ロシア政府に圧力をかけることと、欧州全土へ安定的な供給を確保することのジレンマが浮き彫りになったと述べた。また、経済制裁とエネルギーの安定供給は信じられないほど困難なトレードオフであり、最終的に決断するのは政府だと付けくわえた。
シェルはすでにロシアの国営ガス大手ガスプロム(GAZP)との合弁を解消し、同国極東の石油ガス開発事業「サハリン2」から撤退する方針を発表している。また、大幅なディスカウント価格で購入したロシア産原油から得られる利益に関しては、ウクライナの人道支援のために寄付するという。
経済制裁とエネルギーの安定供給の両立という社会的な課題を突きつけられるなか、他のオイルメジャーも難しい経営のかじ取りを迫られそうだ。
【参照記事】*1 シェル「SHELL ANNOUNCES INTENT TO WITHDRAW FROM RUSSIAN OIL AND GAS」

HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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