コロナショックは日本経済の各方面に大きな影響を与えました。2020年12月時点では第3波も起きつつあり、コロナショックの影響はまだ不透明な状況であると考えられます。
このような状況下で、アパートローンはどのような影響を受けているのでしょうか?本記事では、コロナショックがアパートローンに与えた影響について、近年の動向と比較し、貸出態度や審査状況、金利の変化について解説します。
目次
- アパートローン(不動産投資ローン)とは
- 近年のアパートローンの引き締めとコロナショックの影響
- アパートローンの動向と金利の状況
3-1.アパートローンの動向
3-2.審査状況
3-3.金利状況 - まとめ
1.アパートローン(不動産投資ローン)とは
アパートローン(不動産投資ローン)とは、投資用のアパートやマンションの購入、建築、リフォームなどに利用できる金融機関のローン商品です。
居住用に利用できる「住宅ローン」と異なり、アパート・マンションを賃貸に出し、第三者に貸し出すことを目的とした「投資用物件」が融資対象となります。
アパートローンでは投資用物件を担保設定するため、融資を受ける人の属性や物件の積算評価だけでなく、物件の収益性も重要視され、審査されることになります。
なお、アパートローンの融資審査の基準は常に同じではなく、融資を受けるタイミングよって異なります。これにより、同じ属性・物件であっても金融機関の融資姿勢が積極的か否かにより、審査の通りやすさに大きな違いが出ることがあります。
2.アパートローンの引き締めとコロナショックの影響
アパートローンは本来、家賃収入を返済原資として融資審査が行われるため、家賃収入で返済できない場合、物件の担保性や融資を受ける人の属性で補えるかどうか、などが審査基準となる事業性ローンです。
2018年度から、不動産業への融資残高が過熱状態になってきたことへの警戒感や、不正融資事件によって金融庁がモニタリングを始めたことなどから、金融機関のアパートローンの貸出は引き締め傾向になった経緯があります。
そのような状況下で、2020年初頭にコロナショックが起きたことになりますが、コロナショックは経済の各方面に大きな影響を与えています。アパートローンには、どのような影響を与えたのか、次項より解説していきます。
3.アパートローンの動向と金利の状況
以下では、2020年12月時点のアパートローンの動向、アパートローンの審査状況に対するコロナショックの影響、金利状況について説明します。
3-1.アパートローンの動向
2020年12月時点、各都市銀行、地方銀行、ノンバンクのアパートローンは、従前と同様に商品として存在しており、各行においてコロナショック後にローン商品自体の変更は行われていません。
また、2020年10月に発表された日本銀行「全国企業短期経済観測調査(短観)(2020年9月調査全容)」を見ても、不動産業全般で金融機関の貸出態度はコロナショック前と大きな変化のない状況が続いているといえます。
3-2.審査状況
各金融機関は、各省庁の要請により、コロナショックの影響で資金繰りの悪化した事業者の融資条件の変更や、コロナ貸付・セーフティーネット保証などの融資相談の対応に追われています。
それに加えて、在宅勤務の実施などにより融資業務に充てる人員が制限されていることの影響があり、新規アパートローンの融資審査には従来よりも時間がかかる場合があります。
ただし、前述したように貸出態度の動向そのものには、コロナウイルス後に特に厳しくなったということはありません。審査に時間がかかる場合を考慮し、契約や決済までの期間に余裕を持って臨むことが重要です。
今後については、コロナ感染の収束が長引くことによって景気悪化が拡大し、金融機関にも資金の余裕がなくなり、貸出しに慎重になる可能性も考えられます。アパートローンの融資が現状よりも引き締められる可能性はあると言えるでしょう。
3-3.金利状況
都市銀行のアパートローンの金利は、最優良企業への貸出金利である短期プライムレートと連動しています。短期プライムレートはコロナショックでも変動しておらず、低金利の状態が継続しています。
また、2020年12月時点、実際に公表されている地方銀行やノンバンクのアパートローンの金利基準は、以下のようになっています。従前と大きな変化はなく、低金利状態といえます。ただし、以下の金利は個別の案件によって変わる可能性があります。
- 千葉銀行: 2.475%(変動金利)
- オリックス銀行: 3.675%(変動金利)
- 三井住友トラストローン&ファイナンス: 2.9~4.4%(変動金利)
- セゾンファンデックス: 3.6%(変動金利)
※2020年12月時点の情報です。詳細は各社ウェブサイトでご確認ください。
まとめ
2020年12月時点での状況は、コロナショックの影響により特別アパートローンが引き締められたとは言えず、金利も低金利の状況が続いていると言えます。
しかし、2018年には一時的に引き締め局面に入っており、今後の景気によってはさらに引き締められる可能性もあります。コロナウイルスの感染拡大の影響がどこまで続くのか不透明な状況では、貸出動向に今後も注意する必要があるでしょう。
佐藤 永一郎
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