夫婦の離婚、不動産・株・投資信託など投資財産の分与方法は?注意点も

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離婚の際、不動産や株式・投資信託等の投資用財産をどのように分与すれば良いのか悩む方は少なくないのではないでしょうか。実際、投資財産は現金とは異なり明確に2分割することが難しいものも含まれており、公平感のある財産分与を行うには工夫が必要になります。

投資用財産の分与の方法としては現物分割、代償分割、換価分割の3種類があり、財産によって不可能な分割方法や適した分割方法が存在します。それぞれの財産に合わせて適した分割手順で進めることが大切です。

そこでこの記事では、離婚時における投資財産の分与の手順と注意点を解説していきます。離婚時の投資財産の分割にお悩みの方はご参考下さい。

目次

  1. 財産分与の流れと対象となる投資財産
    1-1.財産分与の流れ
  2. 3つの分割方法と投資財産の分与手順
    2-1.投資用不動産の分与手順
    2-2.株・債券などの有価証券の分与手順
    2-3.投資信託の分与手順
    2-4.会員権の分与手順
  3. まとめ

1.財産分与の流れと対象となる投資財産

不動産や、株・投資信託・仮想通貨といった投資財産は、現金化が難しく、日々価値が変わるため、分与が難しい財産の1つとなります。

なお、原則として財産分与の対象となる財産は、夫婦が協力して形成した財産(共有財産)となります。婚姻前から保有していた不動産や有価証券、どちらかが相続で得た財産等は分与の対象となりません。

ただし、例えば夫が働きに出て妻が家で家事を行っていた家庭で、夫の給与で夫名義の株式を購入した場合でも、妻は財産の形成に協力したことになり財産を得られる権利があります。

夫婦の共有財産か、どちらかの財産であるかわからない場合には、民法第762条の2項「夫婦のいずれに属するか明らかでない財産は、その共有に属するものと推定する。」という条文を元に共有財産として分与することになります。

どちらかが納得しない場合には、離婚に詳しい弁護士に相談するという選択肢も検討できるでしょう。

1-1.財産分与の流れ

財産分与を行うにあたって、まずすべての財産をリスト化した財産目録を作成します。財産目録を見ながら、1つずつ財産が分与の対象となるかならないかを話し合いで判断し、分与の対象となる場合それぞれの財産の分割方法を決定します。

続いて分与割合を話し合います。財産分与は公平に行うことが原則となりますが、離婚後に相手に収入が見込めない場合や、慰謝料として多めに財産分与を行うケースもあります。

話し合った結果、財産の分割方法・割合が決まったところで分与を行います。後のトラブルを避けるためにも、話し合った結果を公証役場で「離婚協議書」として公証人のもとで作成しておきましょう。

公証役場で作った公正証書の「強制執行」の項に、約束が果たされなかった場合について記すことで、いざという時に給料の差し押さえといった行為が可能です。

2.3つの分割方法と投資財産の分与手順

株や有価証券、投資用不動産といった財産を分与するためには、現物分割、代償分割、換価分割という3つの方法から選びます。

  • 現物分割:現物のまま分与割合に従って分与する
  • 代償分割:資産価値を査定し、片方が財産として譲り受け、もう一方は同程度の価値の財産を受け取る
  • 換価分割:売却して現金化した後分与を行う

現物分与とは、例えばA社の株式を100株、B社の株式を200株、婚姻期間中に購入した場合、A社の株式を50株、B社の株式を100株と半分ずつ夫婦でわける方法です。

代償分割とは、株式や不動産などを売却せずに資産としての価値を評価、別の財産で同じ価値の財産を分ける方法です。例えば夫が評価額800万円分の株式・投資信託を保有する場合、妻は 800万円分の評価額である不動産を受け取ることができます。

換価分割とは不動産や株を売却して現金化した後、現金を分与する方法で、3つの分割方法の中で一番分割しやすい方法となります。

以下では、財産の種別ごとにどのような分割方法が検討できるのか、詳しく解説していきます。

2-1.投資用不動産の分与手順

有形資産である不動産は現物分割することが難しいため、代償分割・換価分割を行うケースが多くなります。

現物分割・代償分割の場合、現在の所有者・ローンの契約者が運用し続ける場合には問題が発生しませんが、名義人でない方が運用する場合、不動産の名義変更が必要になります。

さらにローンが残っている際は、場合によってはローンの借り換えや連帯保証人・債務者を抜けるといった手続きが必要になります。

ローンの残債が売却価格を下回る状態(アンダーローン)では、売却をする場合には売却価格からローンの残債を差し引いた金額を分与します。どちらかが不動産を運用し続ける場合は、売却価格からローンの残債を差し引いた金額分の財産を譲る必要があります。

ローンの残債が売却価格を上回る場合(オーバーローン)は、資産としての価値が無い状態であることから、財産分与の対象となりません。共有名義でどちらにも返済義務がある場合、どちらかが運用を続けてローン返済するケースが多くなります。

なお、オーバーローン物件をどうしても売却したい場合には、ローンを組んでいる金融機関に相談し、任意売却という方法で売却できる可能性があります。

【関連記事】ローンが残っている家は売却できる?売却の手順、オーバーローンの対策も

このように、ローンが残っている不動産の財産分与ではローンの残債を不動産の資産価値が上回っているか否かによって状況が大きく変わります。まずは不動産査定を行い、ローンの残債を上回っているか、確認をしてみましょう。

【関連記事】不動産査定会社・不動産売却サービスのまとめ・一覧

2-2.株・債券などの有価証券の分与手順

株・債券(国債や社債など)・手形・小切手などを有価証券と呼びます。原則的に、有価証券や投資信託、会員権などは離婚成立時の価格で評価されます。なお、上場株式は離婚成立日の終値や、過去3カ月間の平均株価などで評価します。

ただし、流動性の高い有価証券は財産目録を作成した時点と離婚成立日の評価額が異なることも少なくありません。

例えば、財産目録を作成した時は500円の株価を100株保有し、50,000円として評価していたにもかかわらず、その後に株価が値上がりして離婚時に1000円となった場合、評価額は100,000円となります。

このような場合に、一方の不公平感からトラブルに発展してしまう可能性があります。離婚協議を行う際に「評価額が変化した際の対応」についても二人で話し合い、離婚協議書に記入しておきましょう。

有価証券は値動きの激しく評価を行う時点設定が難しい特徴があるため、代償分割または換価分割で行われることが多くなります。これから価値が上がる可能性のある場合やどちらかが持ち続けていたいケースでは、代償分割による分与が検討できるでしょう。

2-3.投資信託の分与手順

投資信託は投資家から集めたお金を専門家が株式や債券を購入・運用し得られた資産を投資家に分配する仕組みになっています。有価証券より比較的売却が行いやすいですが、商品によっては代償分割で分割した方が良いケースもあります。

例えば、信託報酬(手数料)が高い商品は購入後に運用による収益を一定額出さないと元本割れてしまう恐れがあります。また投資信託によっては株式と同様に分配金が支払われるものもありますので、タイミングを見計らって売却する必要があります。

投資信託の特色や運用方法などをよく話し合った上で、分割方法や分割割合を決めていきましょう。株式・投資信託について名義変更が必要な場合には、証券会社を通じて変更手続きを行う必要があります。

2-4.会員権の分与手順

ゴルフやリゾートを優先的に利用できる権利をもつ「ゴルフ会員権」は、現物分割が不可能となっています。売却による換価分割、またはどちらかが保有し続け、会員権と同様の評価額分の財産を譲り受ける代償分割により分与しましょう。

会員権の名義を変更する際には、発行元の企業に名義変更の申請が必要です。

まとめ

投資財産は現物分割、代償分割、換価分割の3種類の方法の中から、それぞれの財産に適した分与方法を選びましょう。

二人の投資財産への方針や考え方も含めてよく話し合った上で、話し合った結果を離婚協議書として作成する事で後のトラブルを回避する事が出来ます。

財産分与の手順、それぞれの分割方法の特徴について確認し、双方に納得感のある財産分与を行えるよう準備していきましょう。

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田中 あさみ

経済学部在学中に2級FP技能士(AFP)の資格を取得。ライターとして不動産投資を含む投資や年金・保険・税金等の記事を執筆しています。医療系の勤務経験がありますので、医療×金融・投資も強みです。HEDGE GUIDEでは不動産投資を始め、投資分野等を分かりやすくお伝えできるよう日々努めてまいります。