米製薬大手ファイザー(ティッカーシンボル:PFE)は3月14日、人道上の理由からロシアに医薬品の供給をつづけると発表した(*1)。ロシアがウクライナに侵攻するなかでも、医薬品を自主的に供給停止することは、患者を最優先にするという同社の基本原則に反するとした。また、ロシア子会社が得た利益のすべてをウクライナへの人道支援として寄付するという。
欧米などによる制裁措置の対象に医薬品は含まれていないが、ファイザーは独自に医薬品の供給停止を検討していた。しかしながら、がんや心臓血管などの治療薬の供給をとめれば、特に子どもや高齢者が重大な苦痛や命の危機にさらされることから、今回の決断に至ったという。
一方、ロシアで新たな治験は実施せず、すでに開始している治験についても同国で新たな参加者を募ることはないとした。進行中の治験はすべて、米食品医薬品局(FDA)や他の規制当局と協力してロシア国外の拠点に移行し、治験参加者向け医薬品の供給をつづけるという。さらに、ファイザーはロシアに医薬品の製造拠点を持たないが、現地サプライヤーの生産能力の確保を目的とした投資計画のすべてを中止する。
ロシアからの事業撤退などを決める企業も多い中、国境を問わずに患者の命を最優先とする今回のファイザーの決定は、改めて人道支援のあり方を問うものといえるだろう。
【参照記事】*1 ファイザー「Pfizer Updates Company Position in Russia」
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