アパート経営を行ううえでは、どのタイミングで売却するのか、いずれは相続をするのか、という出口戦略を立てておくことも大切です。
現時点で収益が順調でも、タイミングを逃してしまうと家賃が下落したり、想定していた価格で売却できないケースがあります。つまり、適切な時期に売却を検討しておくこともアパート経営にとって重要なのです。
そこで今回のコラムでは、アパートの売り時を判断するためのポイントを、築年数など6つの観点から解説していきます。
目次
- アパート売却におけるタイミングの重要性
- アパートの売り時を判断する6つのポイント
2-1.築年数
2-2.地価の変動
2-3.家賃の下落
2-4.デッドクロスによる税金の負担増
2-5.修繕工事の必要性
2-6.不動産市場の状況 - まとめ
1 アパート売却におけるタイミングの重要性
アパート経営を始めとする不動産投資は、運用での収益に加えて売却するタイミングによってもリターンに大きな差が出てきます。購入したときよりも高く売却したいと考える方も少なくありませんが、地価上昇を続けているような一部のエリアを除き、通常のアパートが購入時よりも高く売れるというのはあまり現実的ではありません。
そのため、できるだけ高く売却するために、いくつかの観点から判断していく必要があるのです。代表的なポイントが下記になります。
- 築年数
- 地価の変動
- 家賃の下落
- 税金の負担増
- 修繕工事の必要性
- 不動産市場の状況、など
次の項目からは、この6つのポイントから捉えた売却のタイミングについて解説していきます。
2 アパートの売り時を判断する6つのポイント
アパートの売却は、さまざまな観点からタイミングを計りますが、今回は6つに絞って解説していきます。
2-1 築年数
アパートの建物部分については建てたときから劣化が始まり、築年数が経つごとに、価値が下落していくことになります。アパートの売却時期を築年数で捉える場合、価格が大きく下落する前に売却することも一つの選択肢となってきます。
下記の表は、2022年1月〜3月の全国の一棟アパートの販売価格の平均価格で、不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)「収益物件市場動向四半期レポート2022年1月〜3月」から抜粋したものです。
築年数 | 価格 |
---|---|
築10年未満 | 10,405万円 |
築10年〜築19年 | 8,086万円 |
築20年〜 | 5,268万円 |
平均値で見ると築10年未満に比べると、築10年〜築19年は約8割、築20年以上は半額程度で売買されていることが分かります。物件の価格はエリアや利便性、設備仕様、入居率などによって個々で異なりますが、できるだけ高い価格で売却することを考えるのであれば、大きく価格が下がる築20年までに売却することも一つのタイミングとなります。
2-2 地価の変動
アパートの建物の評価は時間の経過とともに下がっていくことになりますが、土地に関しては経年劣化の概念がなく、時間とともに価値が値下がりしていくという性質はありません。地価の上昇によって中古物件が値上がりすることがあります。
一方、人口減少が続いているような郊外エリアでは土地の需要が下がり、地価の下落によって物件自体の価格が下がることもあります。
このような地価変動のタイミングを見極め、アパートの売却を検討する方法もあります。地価が変動するタイミングは、主に国土交通省が新しい公示地価を発表する毎年3月中旬になります。
中長期的に土地の価格がどのように変動しているのか、アパートの周辺の地価が上昇しているか、下落しているかを確認して売却のタイミングを判断するといいでしょう。
上昇しているタイミングで売却するのか、下落をしているタイミングで売却するのかはオーナーの判断によります。今後も上昇するか下落するかは、経済の状況や不動産市場などを参考にし、不動産会社のアドバイスを受けて判断してみましょう。
2-3 家賃の下落
家賃の下落はアパート経営におけるリスクの一つですが、避けられないものでもあります。築年数が増え賃貸需要が減少すると、入居者の確保がしづらくなるためです。
家賃を下げて入居者を募集することで空室を回避する手法を用いているケースが大半となりますが、家賃を下げることの大きなリスクは、キャッシュフローが悪化し、手元に残る資金が減ってしまうことです。
アパート経営を始めた際に家賃の下落は想定するものですが、想定以上になるとローンの支払いが困難になる可能性もあります。
このような家賃の下落は売却時にも大きな影響を与えます。家賃の下落が進むと年間収入が減ってしまい、利回りに影響が及ぶことで売却する際の価格が下がるためです。
売却したい価格を決めておき、家賃収入がどの程度まで下落すると売却する方がいいのか、事前に検討しておくといいでしょう。
2-4 デッドクロスによる税金の負担増
不動産投資を事業としている場合、毎年度の決算の際に減価償却費用を経費として計上します。しかし法定耐用年数を過ぎてしまうと、計上できる経費が減少することになります。そのため利益が増えてしまい、課税所得も増えるのです。
アパート経営におけるデッドクロスとは、通称、「ローン元金返済>減価償却費」という状態に陥ることをいいます。
アパートの減価償却ができる期間は、物件の法定耐用年数によって決まっています。計上期間を過ぎると、所得税や法人税などの税金計算をおこなう決算書上の所得が、実際の手取りキャッシュよりも少なくなってしまい、税負担の上昇を招くことになります。
通常、新築のアパートは木造22年の法定耐用年数が設定されていますが、稀に軽量鉄骨の物件もあります。構造別の耐用年数を確認し、残りの計上できる期間(残耐用年数)を調べておくことで、売却のタイミングを検討されてみると良いでしょう。
構造・目的別の法定耐用年数
構造または目的 | 法定耐用年数 |
---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造または鉄筋コンクリート造 | 47年 |
れんが造、石造またはブロック造 | 38年 |
木造 | 22年 |
軽量鉄骨造(厚さ3ミリ以下) | 19年 |
軽量鉄骨造(厚さ3〜4ミリ) | 27年 |
※引用:国税庁「 減価償却のあらまし」より抜粋
2-5 修繕工事の必要性
アパート経営では、入居者が快適に暮らせる住居を提供する義務を負うことになります。つまり、アパートオーナーはアパートの老朽化に対して適切なタイミングで修繕工事を行う必要があります。
しかし、建物の外壁や屋根の修復工事、塗装工事、防水工事、水道管工事などは大規模になることが多く、場合によっては費用が数百万円に及ぶこともあります。
次の修繕工事を見越して、修繕工事を終えた後に売却を行うという考え方があります。修繕履歴をしっかりと残しておくことで、次の買主の方の購入意欲をあまり削がずに売却できる可能性もあります。
もしくは、次の修繕工事を検討する段階になったときに手元のキャッシュで対応可能かどうか、という視点を持って検討されてみるのも良いでしょう。修繕リスクは避けることができないため、将来の予測を立て、事前に対処しておくことが重要なポイントになります。
2-6 不動産市場の状況
アパートを含む不動産は、買主と売主の相対取引になります。買い手が多ければ好条件の売買が行いやすいため、価格も下がりにくくなり、反対に買い手が少なければ価格の下落幅が大きくなる可能性があります。
つまり、不動産市場での買い手の需要を見極めることも、アパートの売り時を判断する材料になるのです。
下記の表は、不動産投資と収益物件の情報サイト健美家「収益物件市場動向四半期レポート2022年1月〜3月」で報告されている一棟アパートの価格の推移です。
調査期間 | 価格 |
---|---|
2020年1月〜3月 | 6,491万円 |
2020年4月〜6月 | 6,559万円 |
2020年7月〜9月 | 6,566万円 |
2020年10月〜12月 | 6,612万円 |
2021年1月〜3月 | 6,760万円 |
2021年4月〜6月 | 7,010万円 |
2021年7月〜9月 | 7,075万円 |
2021年10月〜12月 | 7,094万円 |
2022年1月〜3月 | 7,257万円 |
上記の表を見ると、一棟アパートの価格は上昇傾向にあります。2020年1月〜3月に比べると、2022年の1月〜3月の平均価格は800万円程度値上がりしています。
新築物件の価格が高騰すると、購入できない層が中古物件の購入に流れるなどで、中古物件の価格も上昇していくことになります。こうした不動産市場の状況を確認することも、アパートの売り時を判断するのに有効です。
ただし、このような全体傾向は必ずしも個別のアパートの売却価格に影響を与えるとは限りません。ここまで紹介したその他の売却ポイントも確認し、多角的な視点な判断をしていきましょう。
実際に所有しているアパートのエリアの不動産市場がどのように変化しているのかを知るには、不動産会社に相談をしてみるのも一つの方法です。定期的に査定を受けておくことで、実際の価格がどのように変化しているのかを確認することが可能です。
不動産会社へ査定を依頼する際は、無料で相談ができる不動産一括査定サイトが便利です。売却するかどうかは査定後に判断することができるため、「まずは価格を知りたい」「適切な売却タイミングを見極めたい」という方でも利用やすいのがメリットとなります。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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まとめ
今回のコラムでは、アパートの売り時を判断するポイントについて解説しました。一つの観点からだけではなく、いくつかのポイントを踏まえて判断すると、より良いタイミングのアパート売却に繋がります。
また、不動産会社などからアドバイスをもらうなど、さまざまな情報を獲得してから判断するのも有効です。普段から不動産会社と良好な関係を築いておいたり、複数社の不動産会社の意見を比較されてみると良いでしょう。
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倉岡 明広
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