株式投資を行うにあたって、テクニカル分析を色々と行いながらトレード手法を考えている投資家の方も多いことでしょう。ここではテクニカル指標の中でも、日本人が考案した「一目均衡表」について使い方を解説します。
目次
- 一目均衡表の基本
1-1.一目均衡表とは
1-2.一目均衡表の見方
1-3.一目均衡表の考え方 - 一目均衡表の使い方
2-1.三役好転・三役逆転 - 一目均衡表を利用する場合の注意点
3-1.三役好転・三役逆転で必ず利益が出るわけではない
3-2.レンジ相場では利用できない - まとめ
1.一目均衡表の基本
最初に一目均衡表について解説します。
1-1.一目均衡表とは
一目均衡表は日本人の細田悟一氏が考案したテクニカル指標で、考案されたのは1930年代でした。
一目均衡表は株価のチャートや値動きを基本として考案されており、株式投資を行うには利用しやすいテクニカル指標として定評があります。
基本的な一目均衡表のポイントは、価格を中心としているのではなく、時間軸を中心として価格の値動きを考えているという点です。この点は他のテクニカル指標とは異なるポイントと言えるでしょう。
1-2.一目均衡表の見方
次に一目均衡表の基本的な見方について解説します。一目均衡表は下記のチャートで表している5つの線から成り立っています。
※筆者作成
5つの線の意味はそれぞれ以下のようになります。
基準線
過去26日間の最高値と最安値の平均を利用して表示させた線です。
中期的なトレンドを確認するために利用する線となっており、上向きか下向きかをチェックして方向性を判断することに利用できます。
転換線
過去9日間の最高値と最安値の平均を利用して表示させた線です。
見方は基準線と同様に、基準線が上向きか下向きかで判断します。利用する日数が9日間という点からもわかる通り、短期的な方向性を確認するために利用します。
先行スパン1&先行スパン2
先行スパン1は転換線と基準線の平均値を利用して計算し表示されています。計算した数字を26日先に先行して表しているものです。
先行スパン2は過去の52日間の最高値と最安値を利用して計算し表示されています。先行スパン2も先行スパン1と同様に、計算した数字を26日先に先行して表しているものです。
遅行スパン
遅行スパンは日々の終値を26日前に遅らせて表示させているものです。この遅行スパンが値動きをしているローソク足よりも上の位置で推移しているのか、下の位置で推移しているのかでトレンド判断を行います。
遅行スパンがローソク足よりも上の位置で推移している場合は上昇圧力が強く、遅行スパンがローソク足よりも下に位置している場合は下落圧力が強いと判断します。
1-3.一目均衡表の考え方
一目均衡表をチェックする上で頭に入れておきたい理論が3つあります。
時間論
時間論とは、相場の反転は価格の動きを示す縦軸の動きではなく、時間軸の横軸で分析しようという考え方です。
最初からデフォルトで設定されている6,17,26という数字が基本的な設定数値となっており、この数値を変更する必要はありません。
波動論
波動論とは、相場には常に上下動が発生しながらトレンドが作られるとするものです。その上下動の波動のリズムや形状を考えて相場を捉えるのが波動論になります。
波動には3つの種類があります。
- I波動:上昇or下落
- V波動:上昇から下落 or 下落から上昇
- N波動:上昇から下落し再度上昇 or 下落から上昇し再度下落
I波動とV波動が交互に何度も発生し、その後N波動が発生するという動きになるとされています。
値幅観測論
値幅観測論とは、価格の値動きである縦軸で考える分析方法です。価格の上昇と下落の幅や数値を計算して、その値幅からどのくらい今後価格に値動きが生じるのかということを分析します。
2.一目均衡表の使い方
次に一目均衡表の使い方について説明します。
2-1.三役好転・三役逆転
一目均衡表でも一番の基本であり、重要な見方が「三役好転・三役逆転」です。
三役好転と三役逆転にはそれぞれ成立する条件があります。
三役好転が成立する条件
- 転換線が基準線よりも上に位置していること
- 遅行スパンがローソク足よりも上に位置していること
- ローソク足が雲よりも上に位置していること
三役逆転が成立する条件
- 転換線が基準線よりも下に位置していること
- 遅行スパンがローソク足よりも下に位置していること
- ローソク足が雲よりも下に位置していること
これが両者の条件となっていますが、実際のチャートではどのような状態なのか、下記をご覧ください。
※筆者作成
上記はトヨタ自動車の日足チャートです。そして三役好転の条件が達成されたタイミングをそれぞれ示しています。
三役好転の場合、3つの条件が達成されたタイミングがエントリーを行うシグナルになります。この条件が揃っていれば下落しにくいタイミングとも言えるため、安易に信用売りのようなポジションを取ることはやめましょう。
3つの条件はそれぞれトレンドの方向性が確認できるサインとなりますので、一つだけ条件が合致した場合でもエントリーチャンスと考える方もいますが、3つ揃ったタイミングがベストです。
保守的にトレードを行いたい方は、上記の3つの条件が揃ったタイミングでトレードを行うようにしましょう。
そして三役逆転の場合は、上記の条件が全て反対になります。
3.一目均衡表を利用する場合の注意点
次に一目均衡表を利用する場合の注意点について説明します。
3-1.三役好転・三役逆転で必ず利益が出るわけではない
先ほどエントリーのタイミングとして三役好転と三役逆転を紹介しました。しかし三役好転や三役逆転が発生したからといって、必ず相場がその方向性に常に推移するわけではありません。
あくまでトレンドに乗ることができる確率が高くなるというものであり、相場に絶対はないということは常に意識してトレードを行いましょう。
そのためエントリーを行う前には、損切り注文の水準や位置を確定させてからエントリーを行うことを徹底し、可能であれば損切り注文をエントリーと同時に入れておくことが大切です。
3-2.レンジ相場では利用できない
一目均衡表はトレンドが発生するかどうかを見極めるものであり、レンジ相場で値動きが推移した場合、一目均衡表を利用すると何度も損失を被る可能性があります。
下記のチャートをご覧ください。
※筆者作成
こちらはトヨタ自動車の日足で、レンジ相場のチャートと一目均衡表です。
雲が何度もねじれているのがわかります。この場合、三役好転のように見えたとしても、トレンドとしては継続しないことが多くなります。
一目均衡表のみでエントリーの判断を行わず、他のテクニカル指標を併用して分析することで、よりレンジ相場かトレンド相場かを正確に判断できるようになるでしょう。
まとめ
一目均衡表はテクニカル指標の中でも色々なラインが表示されるものであり、慣れるまでに少し時間がかかるかもしれません。しかし、株式投資を行うために考案されたテクニカル指標であり、使いこなすことで長期的な資産運用のための有用な武器となるでしょう。
また注意点でも記載したように、基本的な使い方に慣れてきた後は、別のテクニカル指標を併用して、騙しに引っかからないようにする工夫を行うことが大切です。
大事なことは「大きく利益を出すこと」ではなく、「安定して負けないトレードを繰り返すこと」です。その点を意識して、株式投資を行う場合には一目均衡表も利用してみるといいでしょう。
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中島 翔
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