新築マンションの値上がりにより、中古マンションのリフォームまたはリノベーションが注目されています。リフォームとリノベーションは同じように使うケースもありますが、実際には違う意味です。
今回は中古マンションのリフォームとリノベーションの費用相場や、メリット・デメリット、ローンについて解説します。
目次
- リフォームとリノベーションの違い
1-1.リフォームとは新築時に近い状態へ戻すこと
1-2.リノベーションとは価値を上げること - 中古マンションのリフォームとリノベーションの費用相場は?
2-1.中古マンションのリフォームの費用相場
2-2.中古マンションのリノベーションの費用相場 - 中古マンションのリフォームのメリット・デメリット
3-1.中古マンションをリフォームするメリット
3-2.中古マンションをリフォームするデメリット - 中古マンションのリノベーションのメリット・デメリット
4-1.中古マンションをリノベーションするメリット
4-2.中古マンションをリノベーションするデメリット - 中古マンションのリフォーム・リノベーションで失敗を避けるポイント
5-1.マンションの構造や管理規約を確認する
5-2.信頼できる不動産会社・建築会社と契約する
5-3.マンションの構造や管理規約を確認する
5-4.資金計画を立てる - 中古マンションのリフォーム・リノベーションとローン
6-1.住宅ローン+リフォームローン
6-2.リフォーム一体型ローン
6-3.「住宅ローン+リフォームローン」とリフォーム一体型ローンの返済の比較 - まとめ
1.リフォームとリノベーションの違い
リフォームとリノベーションは、本来は異なる意味ですが、同じようなものとして考えている建築会社もあります。ここでは、リフォームとリノベーションの意味を確認しておきましょう。
1-1.リフォームとは新築時に近い状態へ戻すこと
リフォームとは、老朽化した建物を新築時に近い状態へ戻す修繕工事のことをいいます。水回りの設備を交換したり、汚れた壁紙を張り替えたりする工事がリフォームの例です。経年劣化によって生じた不具合を改善するようなイメージです。
1-2.リノベーションとは価値を上げること
これに対し、リノベーションは古い建物に大規模な工事を施して性能を向上させ、価値を高めることをいいます。耐震性や断熱性を高めるために壁を補修したり、住みやすい間取りに変更したりする工事がリノベーションに当たります。
リフォームよりリノベーションは工事規模が大きくなり、工事期間も長めです。
2.中古マンションのリフォームとリノベーションの費用相場は?
ここでは中古マンションのリフォームとリノベーションにかかる費用の相場を紹介します。
2-1.中古マンションのリフォームの費用相場
中古マンションのリフォームにかかる費用は、改修する箇所によって異なります。国土交通省「令和4年度 住宅市場動向調査報告書」によると、リフォームの平均額は206万円でした。
また、主な部位別のリフォーム費用は以下のとおりです。
- システムバスの交換:50万円~100万円
- キッチン全体のリフォーム:80万円~400万円
- 畳をフローリングに:15万円~60万円
- 壁クロスの張り替え:6万円~30万円
- 洗面所の改装:20万円~100万円
2-2.中古マンションのリノベーションの費用相場
中古マンションのリノベーションの費用は、工事面積や内容によって大きく異なりますが、フルリノベーションを行う場合、1㎡あたり5万円から20万円が相場です。
ファミリータイプの3LDKで70㎡くらいの広さであれば、350万円から1,400万円くらいが目安です。希望する改修内容や物件の老朽化の状態などで、かかる費用は大幅に変わってくることが分かります。
3.中古マンションのリフォームのメリット・デメリット
中古マンションをリフォームするメリットとデメリットを見ていきましょう。
3-1.中古マンションをリフォームするメリット
中古マンションのリフォームには、以下のようなメリットがあります。
工事期間が短い
中古マンションをリフォームする場合、内容にもよりますが、工事期間はリノベーションに比べて短くなります。リフォームは不具合が生じている部分だけの改修にとどまるためです。
設備の交換だけであれば半日程度、ほとんどの工事は長くても1カ月で完了するでしょう。できるだけ早く修繕が完了した状態で生活したい場合、必要最低限のリフォームが適しています。
工事費用が比較的安くすむ
中古マンションのリフォームは、リノベーションに比べて工事費用が安くすみます。リフォームは部分的な改修であり、費用負担を抑えやすいためです。まだ使える設備はそのまま残したり、交換する設備のグレードを低めにしたりすることでさらに費用を低くできます。
住まいにかかる費用をできるだけ抑えたい人はリフォームを選ぶとよいでしょう。
完成後のイメージを描きやすい
リフォームは全面的な改修にはならないため、工事完了後の状態をイメージしやすくなります。間取りの変更などを伴うリノベーションでは、「考えていたのと違った」という結果になる可能性はゼロではありません。部分的な改良を施すリフォームでは、大きな失敗をするリスクは低めです。
3-2.中古マンションをリフォームするデメリット
中古マンションのリフォームをする場合のデメリットも確認しましょう。
自由な間取り変更はできない
リフォームは現状の間取りをベースに行うため、自由な間取り変更はできません。生活動線を変えるような改修は難しく、できることは限られると知っておきましょう。
住宅の基礎部分の状態確認はできない
中古マンションのリフォームでは、建物の基礎部分の劣化までは確認できません。リフォームでは目に見える部分の改修がほとんどのため、内部の状態がわかりにくいといえます。見た目がきれいだからといって、必ずしも安心とはいえないことを頭に入れておきましょう。
4.中古マンションのリノベーションのメリット・デメリット
中古マンションのリノベーションのメリットとデメリットも確認しておきましょう。
4-1.中古マンションをリノベーションするメリット
中古マンションのリノベーションには、以下のようなメリットがあります。
設計の自由度が高い
リノベーションは間取り変更を含む大規模な改修ができるため、マンションの空間を好みのレイアウトに変更できます。また、室内のテイストも好みに合わせて統一感のある設計が可能です。
リノベーションなら、中古マンションも自分のライフスタイルに合った住まいに改修できるのです。
物件の選択肢が多い
中古マンションは物件の選択肢が豊富です。利便性のよい立地で新築マンションを求めると、予算が不足するケースも多いでしょう。
同じエリアでも築古物件まで選択肢を広げると、予算内に収まる可能性があります。そのような物件もリノベーションによって、理想の住居に近づけることも可能です。
物件の資産価値が上がる
物件の築年数が古くてもリノベーションによって住宅の性能や設備が改善されると、物件の資産価値が上がる、または下がりにくくなります。立地や間取りに需要が見込めるマンションであれば、リノベーションによって資産価値の低下を抑えられるでしょう。
4-2.中古マンションをリノベーションするデメリット
中古マンションのリノベーションのデメリットも知っておきましょう。
工事費が高くなりがち
リノベーションはリフォームよりも大規模な工事となるため、工事費も高くなります。フルリノベーションでは1,000万円以上かかるケースも珍しくありません。
物件を安く入手できても、改修費用がかかりすぎると予算オーバーになるおそれもあります。物件を選ぶ際には、リノベーションの費用がどの程度かかるかも込みで検討しましょう。
工事期間が長い
中古マンションを購入してリノベーションをする場合、暮らし始めるまでに時間がかかります。物件を選んでから、設計や工事をするためです。マンションのフルリノベーションの場合、設計と工事を合わせた期間は3カ月から4カ月かかるとされています。
目標とする入居時期のある人は、物件購入から入居までのタイムスケジュールも考える必要があります。
物件の耐久性に問題がある場合も
中古マンションのリノベーションでは、物件の耐久性の低いリスクがあります。1981年に耐震基準が見直されたため、改正以前に建てられた物件の耐震性には注意が必要です。
また、築年数が古い場合、設備や資材の経年劣化から耐久性に問題がある物件もあります。リノベーション前提で中古マンションを選ぶ場合、住宅診断を受けるなどの対策が必要です。
5.中古マンションのリフォーム・リノベーションで失敗を避けるポイント
新築物件の購入に比べて、中古マンションのリフォームやリノベーションには注意点が多くあります。ここでは中古マンションのリフォームやリノベーションで失敗しないためのポイントを解説します。
5-1.マンションの構造や管理規約を確認する
リフォームやリノベーションをする場合、取得するマンションの構造や管理規約の確認が必要です。
マンションの構造には「ラーメン構造」と「壁式構造」があり、ラーメン構造のほうが改修しやすい構造です。また、給水・給湯管・排水管の位置、電気・ガスの使用限度、材料・機材の搬入出経路なども確認しましょう。
マンションの管理規約には、専有部分の工事に関する決まりが記載されています。フローリング材使用の可否などの確認も必要です。
5-2.住宅診断を受ける
工事前にマンションの状態を把握するため、住宅診断(ホームインスペクション)を受けましょう。住宅診断によって素人目で判断できない物件の劣化や欠陥がわかり、工事前に改修すべき箇所や費用を見積もることができます。
5-3.信頼できる不動産会社・建築会社と契約する
中古マンションのリフォームやリノベーションを成功させるには、物件選びと建築会社選びも非常に大切です。物件選びから工事内容の打ち合わせまで、希望に合うようにサポートしてくれる相談しやすい業者を探しましょう。
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5-4.資金計画を立てる
中古マンションを購入して改修する場合、物件の取得費とリフォームまたはリノベーションの費用がかかります。物件の取得費は比較的予算を守るのは難しくありませんが、工事費は想定外の費用がかかる可能性もあります。
あまりギリギリの予算を組まず、余裕を持たせるようにしましょう。また、あれもこれもと欲張らず、不要な装備や工事で余分な費用をかけないようにしましょう。
6.中古マンションのリフォーム・リノベーションとローン
項目 | リフォームローン | 住宅ローン |
---|---|---|
借入限度額の上限 | 500万円〜2,000万円 | 1億円〜2億円 |
借入期間 | 最長5年〜15年 | 最長35年 |
金利の目安 | 2%〜5% | 1%〜3% |
諸費用 | 保証料や事務手数料など(有担保型の場合は抵当権設定費用や司法書士費用などが必要) | 保証料や事務手数料のほか、抵当権設定費用や司法書士費用など |
担保 | 有担保型の場合は必要、無担保型の場合は不要 | 必要 |
審査期間 | 1日〜1週間程度 | 1週間〜2週間以上 |
中古マンションを取得して、リフォーム・リノベーションをする費用をローンでまかなう人も多いでしょう。その場合、ローンの組み方は「住宅ローン+リフォームローン」またはリフォーム一体型ローンの2種類が考えられます。
6-1.住宅ローン+リフォームローン
まず考えられるのは、中古マンションの購入に住宅ローンを利用し、リフォームまたはリノベーションにはリフォームローンを利用する方法です。中古マンションの購入でも住宅ローンは利用可能です。
ただし、金融機関によっては築年数の古いマンションは、借入金額を低めに抑えられるケースもあります。また、通常は最長35年の借入期間も、短く設定する金融機関もあります。
改修工事の費用をローンでまかなう場合、リフォームローンの利用が可能です。リフォームローンは住宅改修の資金のローンで、住宅ローンより借入限度額が少なく、借入期間も短めで、金利は高め(年2%~5%程度)です。
そのため、リフォームとリノベーションの費用が高額な場合、リフォームローンの金利負担が重くなってしまいます。
6-2.リフォーム一体型ローン
リフォーム一体型ローンとは、住宅取得費用と改修費用をセットで借りられるローンです。金利は住宅ローンとほぼ同水準で、借入期間も通常は最長35年です。
リフォームやリノベーションの費用が高額になった場合、借入期間の短いリフォームローンでは返済が苦しくなるケースも考えられます。マンションの購入費と工事費を一本化してローンを組めたほうが、ゆとりある返済ができるでしょう。
ただし、リフォーム一体型ローンを取り扱う金融機関は限られていて、どこでも利用できるわけではありません。
6-3.「住宅ローン+リフォームローン」とリフォーム一体型ローンの返済の比較
「住宅ローン+リフォームローン」とリフォーム一体型ローンの返済額はどの程度の差があるでしょうか。ここでは、物件代金2,000万円とリノベーション費用1,000万円をすべてローンでまかなう場合を比較してみましょう。
前提条件
- 住宅ローンとリフォーム一体型ローンの金利:全期間1%
- リフォームローンの金利全期間3%
- 住宅ローンとリフォーム一体型ローンの借入期間:30年
- リフォームローンの借入期間:10年
- ボーナス返済なし
毎月返済額(円) | 総返済額(円) | 利息分(円) | |
---|---|---|---|
住宅ローン | 64,327 | 23,157,720 | 3,157,720 |
リフォームローン | 96,560 | 11,587,200 | 1,587,200 |
リフォーム一体型ローン | 96,491 | 34,736,760 | 4,736,760 |
住宅ローンとリフォームローンを併用すると当初期間の返済は約16万円ですが、リフォームローンの返済が終わると住宅ローンのみとなります。一方、リフォーム一体型ローンは返済額が均一になる点はメリットといえるでしょう。
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まとめ
中古マンションをリフォームまたはリノベーションすることで築古物件が生まれ変わり、快適な生活を送れる可能性があります。
ただし、大幅な改修には費用も多くかかるため、物件選びや資金計画を慎重に立てる必要があります。中古マンションで理想の住まいを設計するのであれば、時間に余裕をもってスケジュールを立てることも大切なポイントと言えるでしょう。
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