子育てに必要な費用や平均世帯年収は?計画的に貯金するコツも

子育てにはいくらお金がかかるのか気になる人も多いのではないでしょうか。子育てには学費以外にも多くの費用がかかりますが、計画的な貯蓄で負担を軽減できます。

今回の記事では子育てにかかる費用の内訳や子育て世帯の平均年収、教育費を計画的に準備するコツを紹介します。

目次

  1. 子育てに必要な費用とは?
    1-1.養育費
    1-2.教育費
  2. 年代別の子育てにかかる費用
    2-1.未就園児から中学校卒業まで
    2-2.高校3年間
    2-3.大学4年間
    2-4.子ども1人あたりの子育て費用の総額は?
  3. 家計と子育て費用
    3-1.子育て世帯の平均年収
    3-2.年収別在学費用の割合
  4. 教育費を計画的に準備するコツ
    4-1.お金の貯め時は小学校低学年までと心得る
    4-2.高校卒業までは家計でやりくりする
    4-3.児童手当を貯蓄する
    4-4.教育費は先取り貯蓄で準備する
    4-5.NISAなど運用を取り入れる
  5. まとめ

1.子育てに必要な費用とは?

子どもを育てていくために必要な費用には、大きく分けて養育費と教育費があります。それぞれ、どのような費用を指すか確認しておきましょう。

1-1.養育費

養育費は、子どもの基本的生活を支えるために必要な費用です。養育費には食費、衣類、医療費、生活用品費などが含まれます。子どもの健康と日常生活を維持するための基礎的なニーズを満たすために用いられ、親が子どもを育てるうえで避けて通れない重要な費用の一部です。

1-2.教育費

教育費とは、学校教育や学校外教育にかかる費用を指します。学校教育費は入学金や授業料、教材費などです。学校外教育費は、塾や習いごとといった費用です。

2.年代別の子育てにかかる費用

子育てにかかる費用は、子どもの成長段階で大きく変化します。ここでは中学校卒業まで、高校3年間、大学4年間に分けて子育てにかかる費用を公的なデータを用いて解説します。

2-1.未就園児から中学校卒業まで

以下は、内閣府の「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」より、0歳から中学校卒業までの子育て費用をまとめた表です。各金額は、子ども1人あたりの年額です。

未就園児 保育所・幼稚園児 小学生 中学生
衣類・服飾雑貨費 68,754円 66,462円 68,970円 76,507円
食費 166,387円 224,627円 278,294円 356,663円
生活用品費 149,425円 92,522円 83,419円 97,139円
医療費 11,867円 13,462円 21,791円 22,624円
保育費 62,790円 379,407円 19,268円
学校教育費 105,242円 274,109円
学校外教育費 106,089円 248,556円
学校外活動費 11,449円 43,179円 94,985円 57,337円
子どもの携帯電話料金 21円 127円 3,823円 23,453円
おこづかい 487円 1,318円 9,605円 39,022円
お祝い行事関係費 59,882円 41,066円 31,974円 33,539円
子どものための預貯金・保険 199,402円 187,212円 163,037円 179,910円
レジャー・旅行費 97,127円 136,383円 167,044円 146,710円
総額 843,225円 1,216,547円 1,153,541円 1,555,567円

出典:内閣府「平成21年度インターネットによる子育て費用に関する調査」より筆者作成

仮に3歳から幼稚園または保育園に行くとすると、中学卒業までにかかる子育て費用は以下のように計算できます。

  • 未就園児(0歳から2歳):843,225円×3年=2,529,675円
  • 保育所・幼稚園児(3歳から6歳):1,216,547円×4年=4,866,188円
  • 小学生(7歳から12歳):1,153,541円×6年=6,921,246円
  • 中学生(13歳から15歳):1,555,567円×3年=4,666,701円
  • 合計:19,003,810円

平成21年度調査時点では、義務教育を終えるまでの子ども1人あたりの子育て費用は、約1,900万円かかっていました。

なお、文部科学省の「令和5年度学校基本統計」によると、私立学校に通う子どもの割合は小学校で1.32%、中学校で7.79%となっています。中学校までは大多数の子どもが公立に通っています。

2-2.高校3年間

高校生の子育て費用は進学先が、公立か私立かで変わります。文部科学省の「令和による高校生の学習費総額は、以下のとおりです。

  • 公立高校:512,971円
  • 私立高校:1,054,444円

学習費総額は、学校教育費と学校外活動費の合計です。私立高校に進学した場合の教育費は、公立高校の約2倍かかることがわかりました。

高校生の養育費に関しては、先述した中学生の養育費(総額から学校教育費・学校外教育費・学校外活動費を差し引いた金額)975,567円を使用します。高校3年間の子育て費用は、以下のようになります。

  • 公立高校:4,465,614円
  • 私立高校:6,090,033円

高校生の教育費に関しては、以下のような公的な支援の改正が予定されています。

  • 2024年度からの東京都の授業料実質無償化の所得制限撤廃
  • 2024年10月から高校生への児童手当支給

今後の公的支援の動向に注意していきましょう。

2-3.大学4年間

子どもが大学に進学する場合、教育費は進学先が国立か私立か、養育費は自宅通学か自宅外通学かで変わります。日本学生支援機構の「令和4年度学生生活調査結果」によると、大学昼間部に通う学生の年間の生活費は自宅通学に比べて自宅外通学のほうが48万円高くなっています。

以下は、進学先と自宅通学・自宅外通学別の大学生の1年あたりの子育て費用の合計です。なお、括弧内の数字は4年分の費用です。

自宅通学 自宅外通学
国立 1,082,600円(4,330,400円) 1,681,800円(6,727,200円)
公立 998,900円(3,995,600円) 1,583,400円(6,333,600円)
私立 1,731,800円(6,927,200円) 2,403,800円(9,615,200円)
平均 1,642,700円(6,570,800円) 2,124,000円(8,496,000円)

出典:日本学生支援機構「令和4年度学生生活調査結果」より筆者作成

2-4.子ども1人あたりの子育て費用の総額は?

子ども1人あたりの子育て費用は、子どもの進学先などによって大きく異なります。紹介してきたデータで大学まで進学する場合に最も費用がかからないのは、公立高校、公立大学で自宅通学のパターンです。その場合の、大学卒業までの費用総額は27,465,024円です。

また、最も費用が多くかかるパターンは私立高校、私立大学自宅外通学で、大学卒業までに34,709,043円かかります。つまり、大学卒業までには、子ども1人あたり3,000万円前後かかるというわけです。

3.家計と子育て費用

3-1.子育て世帯の平均年収

子どもを育てるには、家計収入が必要です。厚生労働省の「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」によると、2021年の18歳未満の子どものいる世帯の総所得金額の平均は785万円でした。

また、1世帯あたりの平均貯蓄額は1,029.2万円となっています。全世帯の平均収入は545.7万円となっており、子どもを育てる世帯は全体平均より高収入であるということが分かります。

3-2.年収別在学費用の割合

家計に占める学費の割合のデータも紹介します。日本政策金融公庫令和3年度「教育費負担の実態調査結果」 によると、世帯年収に占める年間在学費用(子ども全員にかける費用の合計)の割合は平均14.9%です。以下は、世帯年収別の在学費用の割合です。

  • 200万円以上400万円未満:26.7%
  • 400万円以上600万円未満:21.1%
  • 600万円以上800万円未満:15.5%
  • 800万円以上:11.6%

年収785万円の世帯の場合、年収に占める在学費用の割合は15.5%となります。教育費や住居費などのバランスを考え、偏りのないように管理していきましょう。

4.教育費を計画的に準備するコツ

子育てには多くの費用がかかるため、子どもの教育費は計画的に準備しなくてはなりません。最後に、教育費を計画的に準備するコツを紹介します。

4-1.お金の貯め時は小学校低学年ごろ

小学校低学年ごろをお金の貯め時と考えておくと良いでしょう。小学校高学年になると塾や習いごとといった教育費が増えて、徐々に貯蓄に回せるお金が少なくなります。中学生になると教育費はさらに増加し、教育費の捻出自体が大変になってしまう可能性があります。

先述したデータでも、小学生の学校教育費の平均年額は105,242円で中学生は274,109円です。学年が上がるごとに教育費も上昇していると推測できます。つまり、教育費負担の軽い小学校低学年までに多めに貯蓄をしておくことが、長期的な教育費準備のポイントとなるわけです。

4-2.高校卒業までは家計でやりくりする

子どもの教育費は高校卒業までを家計でやりくりし、貯蓄を取り崩さないようにしましょう。大学進学には高額な費用がかかるため、高校卒業までの長期間での準備が必要です。そのため、高校卒業までの教育費は家計の中でやりくりし、貯蓄の取り崩しは避けたほうがよいといえます。

特に高校生の子育て費用は月に10万円以上かかるケースもあるでしょう。捻出が大変になってしまう場合は無理をせず、大学進学時に奨学金を利用するといった対策を考えましょう。

4-3.児童手当を貯蓄する

児童手当を貯蓄に回すと、子どもの学費の財源となります。児童手当は 中学校卒業まで(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の子どもを養育する人に支給される支援金です。

児童手当の支給額は子どもの年齢や人数によって異なり、保護者の所得によって金額が減ったり受け取れなかったりする場合があります。このような所得制限にかからない場合、子ども1人あたりトータルで約200万円を受け取れます。さらに2024年10月から児童手当は高校生まで受け取れることになりました。(※参照:内閣官房「こども未来戦略方針の具体化に向けて」)

支給された児童手当は教育費の積み立てに回すと、高校卒業までにまとまった進学のための資金となるでしょう。

4-4.教育費は先取り貯蓄で準備する

貯蓄が苦手な人は、先取り貯蓄を活用しましょう。先取り貯蓄とは毎月の収入から貯蓄分を先に回し、残ったお金で生活をやりくりする方法です。生活費の残りを貯蓄しようとしても、なかなかうまくいきません。そこで、貯蓄した残りで生活するようにするわけです。

先取り貯蓄する金額は教育資金の準備状況や家計の状況により、定期的な見直しが必要です。無理のない範囲で着実に準備していきましょう。

4-5.NISAなど運用を取り入れる

教育費の準備は長期に渡るため、NISA(少額投資非課税制度)などの運用に適しています。NISAで投資できる投資信託のような長期投資に適した投資商品は、時間を分散する積立投資に適しており、長期目線の資産形成に役立ちます。

また、NISAを活用すると運用益に課税されないため、さらに運用効率が向上します。たとえば、毎月3万円を年率2%で18年間積み立てた場合、最終的な積立金額は約780万円 となります。元本648万円に対して、運用益は約132万円です。

ただし、銀行への預貯金と違い元本が保証されていません。余力を全て積立に回してしまうなどの投資方法は避けて、現金とリスク資金のバランスを考えて積み立てていくと良いでしょう。

まとめ

子育ての費用は教育費以外に養育費もかかり、子ども1人が大学を卒業するまでに平均して3,000万円程度はかかります。そのため、早めに学費準備の目標を決めて積み立てを始め、毎月の家計管理も堅実にしていく必要があります。

また、子どもの進路によっては準備が間に合わないケースも考えられます。そのような場合には奨学金の利用なども検討し、家計の実態に合わせて柔軟に対応しましょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント