投資の収益に対して税金がかかることは多くの方がご存知だと思いますが、投資信託の課税タイミングや、税金の区分についてはご存知でしょうか。
税金についての理解は、正しく収益を計算するにあたって重要です。この記事では、投資信託の課税タイミング、区分の種類や税務申告の方法にいたるまで詳しく解説します。投資信託に関する税金のことが知りたい方はご確認ください。
※この記事は2021年8月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報や税務的見解は税務署や税理士等にご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 投資信託にかかる税率は20.315%
1-1.投資信託から得られる収益は2種類 - 収益にかかる課税タイミングと証券口座の種類
2-1.課税されるタイミング
2-2.証券口座の種類 - 株式投資信託の配当控除とは?
- 公社債投信と公募株式投信の税制
4-1.源泉分離課税と申告分離課税 - 投資信託の収益は確定申告が必要?
5-1.確定申告をしたほうがいいケース
5-2.確定申告をしなくてもいいケース
5-3.年末調整
5-4.損益通算
5-5.繰越控除 - 確定申告の方法
- まとめ
1.投資信託にかかる税率は20.315%
投資信託の収益に対しては、1年間に発生した収益に対して約2割が課税されます。20.315%の内訳は以下の通りです。
(所得税15%+復興特別所得税0.315%)+住民税5%
課税対象の詳細を見ていきましょう。
1-1.投資信託から得られる収益は2種類
投資信託には分配金と譲渡益の2つの収益があり、それぞれ課税対象となります。
分配金
分配金とは、ファンドの運用収益の一部を投資家へ還元する仕組みです。分配金の種類は以下の2つです。
- 普通分配金
- 特別分配金(元本払戻金)
普通分配金は運用収益から分配されるため課税対象となりますが、特別分配金は元本を切り崩して払われている分配金で、収益ではありません。したがって、特別分配金は課税対象ではないのです。
受け取っている分配金の種類はしっかり把握しておきましょう。
譲渡益
譲渡益は投資信託を解約したときに得られる収益のことです。売却したときの基準価額が個別元本を上回った場合、収益となり課税されます。一方、売却したときの基準価額が個別元本を下回った場合は損失となり、課税されません。
2.収益にかかる課税タイミングと証券口座の種類
課税されるタイミングと証券口座について解説します。
2-1.課税されるタイミング
投資信託の収益に対する課税タイミングは以下の3通りです。
- 収益分配金を受け取った時
- 解約して収益が確定した時
- 強制償還されたときに収益が出たとき
いずれの場合も、収益が出ていても確定させなければ課税対象とはなりません。
2-2.証券口座の種類
証券口座には以下3つの課税口座があります。口座の種類によって、税金計算と納税の方法が異なります。
- 特定口座(源泉徴収あり)
- 特定口座(源泉徴収なし)
- 一般口座
特定口座(源泉徴収あり)の口座は、税金の計算と納税を証券会社が行います。特定口座(源泉徴収なし)の口座は、税金計算まで証券会社が行い、納税は個人で行います。一般口座では税金の計算や納税は行われず、全て自身で対応する必要があります。
なお、非課税口座のNISAの枠を使って買い付けた場合、分配金や譲渡益に対する課税はありません。
3.株式投資信託の配当控除とは?
配当控除とは、配当所得を総合課税として確定申告することで税額が免除されるしくみです。企業は法人税が課税されたあとの利益を投資家へ分配しますが、配当金の受取時も所得税を課税すると二重課税となってしまいます。二重課税を解消するために設けられたしくみが、配当控除です。
株式投資信託の収益分配金は、株式の配当と同じく配当所得に分類されますので、総合課税として申告すると配当控除を受けることができます。
4.公社債投信と公募株式投信の税制
公社債投資信託と公募株式投資信託は税金の区分が異なります。具体的には、公社債投資信託の収益は利子所得になり、公募株式投資信託は分配金が配当所得、譲渡益が譲渡所得となります。税率はすべて20.315%です。
4-1.源泉分離課税と申告分離課税
特定の所得と他の所得を分けて課税する制度を分離課税制度と呼びます。分離課税には、源泉分離課税と申告分離課税があり、所得の種類でどちらが適用されるか決められているのです。
源泉分離課税は他の所得を考慮せずに、支払う側が納税手続きを済ませた上で支払います。源泉分離課税は脱税防止のために、主に利子所得に適用されています。
申告分離課税は、株式の譲渡や投資信託の解約時の収益に対して適用されます。他の所得と分離して税額を計算し、確定申告を行い納税する方法です。株式の譲渡や投資信託の解約時における収益は、ほかの所得と分離して課税されます。
5.投資信託の収益は確定申告が必要?
投資信託で得た収益について、特定口座(源泉徴収あり)であれば確定申告の必要はありませんが、場合によっては確定申告をすることでお金が還付されることがあります。内容を詳しく見ていきましょう。
5-1.確定申告をしたほうがいいケース
以下の3点に当てはまる場合、確定申告をしたほうが良いでしょう。
口座が複数ある場合
損益通算ができるため、同じ証券会社で一般口座と特定口座を保有している場合や、複数の証券会社で口座を持っている場合、確定申告をしたほうがいい場合があります。なおNISA口座での取引は損益通算の対象にならないので注意しましょう。
損失が多い場合
損失が多い場合は確定申告で損益通算を行ったほうが良い場合があります。損益通算をしても利益より損失のほうが多くなる場合がありますが、その場合は、繰越控除が認められています。
損失が多い場合、損益通算、または繰越控除(年度をまたがって損失を繰り越せる制度)によって課税金額を平準化できることを覚えておきましょう。
配当控除を受ける場合
先述のとおり、分配金は二重課税となるケースがありますので、確定申告を行うことで配当控除を受けることができます。配当控除は、確定申告の時に総合課税で申告することで、配当に一定率をかけた金額が所得税や住民税から控除される仕組みです。
なお所得税には累進課税が適用され、所得が高いと税率も高くなるので、注意しましょう。
5-2.確定申告をしなくてもいいケース
源泉徴収ありの特定口座で運用している場合や、収益が20万円以下で他に確定申告を行う義務が生じていない場合、確定申告の必要はありません。
5-3.年末調整
年末調整とは、給与所得者の納税額を調整するための制度です。給与所得者は、毎月の給料に一律の税率をかけて税金を徴収されますが、実際には個人ごとの納税額は所得や家族構成などにより異なります。そのため、実際に控除されるべき支出を年末に申告して税額を調整するのです。
年末調整では、株や投資信託の損失や収益は申告できないため、これらは確定申告にて調整をします。
5-4.損益通算
損益通算は、一定期間の利益と損失を相殺できる制度です。上場株式や投資信託などで利益が出た場合、収益に対して税金がかかりますが、他方で損失が出ている場合、利益と損失を合算することで課税対象の金額を減らすことができます。
投資信託や株、REITは合算して損益通算が可能ですが、不動産譲渡所得などは、株、投資信託、REITと合算して損益通算はできません。なおNISA口座における損益は損益通算の対象外なので、注意が必要です。
5-5.繰越控除
繰越控除は、その年の収益と損失を損益通算してマイナスだった場合に、その損失を次の年へ繰り越せる制度で、最長3年間の繰越が認められています。収益が出た年に、繰り越した損失を合算することで対象の課税金額を抑えることができます。
繰越控除を希望する年は、確定申告が必要です。NISA口座は繰越控除の対象外なので、注意が必要です。
6.確定申告の方法
確定申告書類を作成する時に必要な書類は特定口座と一般口座で異なります。必要書類は以下になります。
- 特定口座での取引:証券会社より発行される年間取引報告書
- 一般口座での取引:取引報告書や取引残高報告書を参照し、株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書を作成する
一般口座では損益を自分で計算しますが、証券会社のWEBサイトで計算ツールが公開されていることがありますので、確認してみましょう。
確定申告はオンラインで行うe-taxと税務署にて手続きする方法があります。税務申告は複雑でわかりにくいのですが、各証券会社では確定申告についてWEBサイト上で詳しく解説していますので、参考にしつつ書類を作成しましょう。
証券会社を選ぶ時は、税務申告についてわかりやすく解説している会社を選ぶ、という方法もあります。筆者の経験上、わかりやすい解説ができる証券会社は、カスタマーサポートが手厚いことが多いためです。
まとめ
投資信託は分配金や譲渡益が課税対象となり、収益が確定した時点で課税も確定します。収益が確定していない段階では、大きな収益となっていても課税対象にはなりません。
特定口座で取引をしている場合、税金の計算をする必要がなく、源泉徴収ありに設定しておけば証券会社が代行して納税してくれますが、一般口座は税金の計算から納税まで、すべて自分で行います。
特定口座(源泉徴収あり)であれば通常は確定申告を行う必要はありませんが、損益通算や繰越控除を行う場合には確定申告が必要です。初めての税務申告はわかりにくく、とっつきにくいと感じる方も多いので、証券会社が公開している確定申告のコンテンツを参考に進めていきましょう。
sayran
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