不動産を売る際の消費税をわかりやすく解説!2019年10月の消費増税の影響はある?

2019年10月の消費増税が近づく中、不動産売却への影響を心配する方が増えています。「売手の自分には関係はない」と思っていても、不動産会社に支払う仲介手数料などが思った以上に負担増となることがあるため注意が必要です。

今回は消費税率のアップに伴う不動産売却への影響を取り上げます。消費税の仕組みから増税の影響を受ける課税対象者、不動産の種類や費用のほか、売却・買い替えする場合の影響を詳しく解説しますので、不動産売却で増税の影響を受けるか気になるという方はぜひご参考ください。

目次

  1. 消費税の仕組み
    1-1.消費税の税率
    1-2.消費税の納税義務者
    1-3.中小事業者の特例
  2. 不動産売却と消費税
    2-1.消費税の対象は「建物」のみ
    2-2.投資用不動産を売却した際にかかる消費税の例
    2-3.売却にかかる諸費用
    2-4.駐車場を売却する場合
  3. 不動産買い替えへの影響
    3-1.新築物件に買い替える場合
    3-2.中古物件に買い替える場合
  4. 消費増税による不動産売却市場への影響は?

1 消費税の仕組み

消費税は、国内のほぼ全ての商品・サービスの売買の際に課税され、「消費税を負担する者」と「消費税を納税する者」が異なる「間接税」となります。生産・流通の各段階で商品や製品などが販売される度にその販売価格に上乗せされ、最終的に消費者が負担しています。

1-1 消費税の税率

消費税率は2019年2月現在、地方消費税を含め8%ですが、2019年10月1日より10%に増税される予定です。なお、対価を伴う資産の譲渡、貸付、役務(サービス)の提供が反復・継続かつ独立して行われる行為は、消費税上「事業」と定義され、規模の大小は問わず課税対象となります。そのため、個人でも投資用不動産の賃貸や売買には消費税が課税されます。

1-2 消費税の納税義務者

納税義務者となるのは国内で取引する「個人事業主」や「法人」、また、輸入取引の場合は「保税地域から外国貨物を引き取る者」となります。

つまり、事業を営んでいない個人が自宅を売却する際は、消費税はかかりません。ただし、投資用不動産を賃貸物件として利用している場合は事業に該当するため、個人事業主として課税対象となり、売却の際には消費税が課税されます。その場合、売主は買主に消費税を含めた価額で買主に請求し、売主が消費税を税務署に支払うことになります。

また、不動産会社の売買仲介など売却に付随するサービスを売主が受ける際は、消費税がかかることもあるため、増税の影響を受けることになります。

1-3 中小事業者の特例

個人事業主などの小規模事業者の事務負担の軽減を目的とした免税の特例があります。具体的には「課税期間に係る基準期間※の課税売上高が1,000万円以下の事業者は原則としてその課税期間の納税義務が免除される」という内容です。

たとえば、駐車場や店舗などで年間売上1,000万円以下の賃貸業をしている個人事業主の場合、特例により消費税の納付が免除されます。ただし、収益物件の売却などにより1,000万円超の売上高になる場合、2年後の課税期間では課税事業者になる可能性があることに留意しましょう。

※基準期間:個人事業者の場合はその年の前々年、事業年度が1年である法人の場合はその事業年度の前々事業年度

2 不動産売却と消費税

法人以外の個人が不動産を売却する際に発生する消費税について、「何が課税対象となるのか」「増税でいくら増えるのか」を見ていきます。

2-1 消費税の対象は「建物」のみ

個人が居住している自宅や別荘(建物・土地)を売却する際には消費税は課されませんが、収益物件の売却では建物について課税対象となります。前述したとおり、事業を営んでいない個人が自宅を売却しても消費税は生じません。

しかし、個人でも投資を目的に賃貸に出しているアパートなどを売却する際には、建物について消費税がかかります。なお土地は消費税の対象外です。

さらに、消費税は売却する際に利益が出なくても生じる税金であることも留意しておきたいポイントです(前述した中小事業者の特例に該当すれば対象外になり得ます)。

2-2 投資用不動産を売却した際にかかる消費税の例

事業を営んでいない個人が不動産を売却する場合は非課税です。一方、賃貸事業を営んでいる個人が、アパート(取得価格5千万円)を7千万円で売却した場合、建物部分の価格を1千万円とすると、消費税の「増税前」と「増税後」の違いは次の通りです。

【増税前】建物の消費税=1千万円×0.08%=80万円

【増税後】建物の消費税=1千万円×0.1%=100万円

増税後は20万円負担が増えることになります。この20万円分は物件価額に上乗せされ、買主が負担します。売主は直接消費増税の影響を受けるわけではありませんが、増額分だけ物件価格を高くしなくてはならないため、そのぶん売却しにくくなる可能性があります。よって売主も間接的に税負担を負うと考えて良いでしょう。

2-3 売却にかかる諸費用

事業を営んでいない個人が自宅を売却する際でも、建物以外の以下のような費用については消費税がかかることがあります。

  • 仲介手数料
  • 繰上返済手数料
  • 司法書士の報酬

費用の内容と増税後の影響を確認してみましょう。

仲介手数料

不動産を売却する際、不動産会社に依頼すれば仲介手数料を支払うことになり、仲介手数料には消費税が生じるため増税の影響を受けます。仲介手数料は、下表のように上限が定められていますが、相場としてほぼ上限の金額となる傾向が見られます。

取引額 仲介手数料
200万円以下 売却価額×5%
200万円超400万円以下 売却価額×4%+2万円
400万円超 売却価額×3%+6万円

参照:全日本不動産協会「仲介手数料について

たとえば、5,000万円で自宅を売却した場合の仲介手数料と、増税前後の消費税は以下のようになります。

【増税前】
・仲介手数料:5,000万円×3%+6万円=156万円
・仲介手数料の消費税:156万円×8%=12.48万円

【増税後】
・仲介手数料の消費税:156万円×10%=15.6万円

増税後は約3万円の負担増となります。

繰上返済手数料

住宅ローンなどの返済が完了していない不動産を売却する場合、ローンを完済する必要があり、繰上返済に伴う手数料を金融機関に支払わなければなりません。繰上返済手数料は消費税の対象となるため、増税の影響を受けます。

全部返済する場合の繰上返済手数料の金額は、金融機関や手続方法(窓口やWEB等)によって異なりますが、たとえばみずほ銀行や三菱UFJ銀行の窓口では32,400円かかります(一部返済はネット経由で無料で受け付けている金融機関がほとんどですが、全部返済はネット経由を不可としているところが多くあります)。

消費税が増税した場合、繰上返済手数料は32,400円×(0.1-0.08)=648円程度の負担増になることがあります。

司法書士への報酬

住宅ローンの利用で抵当権が設定されている自宅を売却するには、抵当権の抹消登記が必要となり、その手続きを司法書士に依頼すれば手数料がかかります。司法書士への報酬も消費税の対象となるため、増税の影響を受けます。

抵当権抹消登記にかかる司法書士の手数料は1〜2万円となり、増税後では2万円×0.02=400円程度の負担増となります。

2-4 駐車場を売却する場合

建物ではなく土地である駐車場を売却する場合、個人でも消費税が課されることもあり、その場合は増税の影響を受けることになります。

土地は原則として消費税の対象ではありませんが、駐車場でも「駐車している車両を管理している」「駐車設備などを設置している」などの管理・整備をしている場合は、消費税の課税対象となります。

  • 賃借人に対して区画を指定している
  • 砂利、アスファルト、ロープ、白線、区画番号、車止めブロックなどが設置されている

このように地面整備や区画設置等をしている駐車場は消費税の対象となりますが、駐車区画をしていない単純な青空駐車場などの場合、消費税はかかりません。ただし、売却する駐車場が消費税の課税対象となるかどうかは、税務署や税理士等に相談したほうが確実です。

3 不動産買い替えへの影響

現在住んでいる自宅を売却して新しい住居を購入する(=買い替え)場合、増税でどのような影響を受けるかを確認しましょう。

3-1 新築物件に買い替える場合

新しい住居を購入する場合は、販売者は通常事業者となるため消費税が課税され、買主が負担しなければなりません。また、不動産会社に支払う仲介手数料にも課税されます。

たとえば、土地代3千万円、建物代1千万円の計4千万円の新築戸建てを購入する場合、消費税の増税により1千万円×(0.1-0.08)=20万円の負担増になります。

また、買い替えによる新築物件の購入について不動産会社に仲介を依頼した場合、増税前後で以下のような負担増となります。

【増税前】
(購入価格4,000万円×3%+6万円)×0.08=10.08万円

【増税後】
(購入価格4,000万円×3%+6万円)×0.1=12.6万円

増税後は約2.5万円の負担が増加します。

3-2 中古物件に買い替える場合

中古物件も新築物件と同様に増税の影響を受けますが、建物の価格が新築に比べ低くなるため、負担は若干軽減されます。

たとえば土地代3千万円、建物代3百万円の計3.3千万円の中古戸建てを購入する場合、増税後は300万円×(0.1-0.08)=6万円の負担増になります。

一方、仲介手数料は増税前後で次のような負担増となります。

【増税前】
(購入価格3,300万円×3%+6万円)×0.08=8.4万円

【増税後】
(購入価格3,300万円×3%+6万円)×0.1=10.5万円

4 消費税増税による不動産売却市場への影響は?

個人が自宅を売却する場合、消費税は課税されませんが、消費増税前の駆け込み購入などが加速すれば増税後の不動産市況の停滞が懸念されます。言い換えれば、増税後、自宅などの不動産が売れにくい状況になる恐れもあります。

経済全般の動向や金融市場の状況などによって不動産市況は変わってきますが、消費税増税の影響が出るかどうかは不確定です。そのため不動産の売却を考えている方は、負担の少ない増税前に売却することも検討しておくと良いでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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