iDeCoや企業型確定拠出年金で積立を始めた方の中には、掛金にかかる税金や手続きについてよくわからず悩んでいる方もいるのではないでしょうか。iDeCo・確定拠出年金は掛金を全額控除できるものの、毎年所得控除に関する手続きが必要です。
手続きは会社員や自営業など、働き方や状況によって年末調整と確定申告に分かれています。そこで今回は、iDeCo・確定拠出年金の確定申告および年末調整の手続きや、手順を分かりやすく紹介します。
目次
- iDeCo・確定拠出年金の所得控除には手続きが必要
1-1.給与所得者(公務員や会社員)の場合
1-2.自営業の場合 - iDeCo・確定拠出年金の確定申告手続き
2-1.小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送される
2-2.確定申告書を準備
2-3.確定申告書の第一表と第二表に必要事項を記入する
2-4.確定申告期間内に管轄の税務署へ提出 - iDeCo・確定拠出年金の年末調整
3-1.小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送される
3-2.給与所得者の保険料控除申告書へ必要事項を記入 - iDeCo・確定拠出年金の手続きを忘れた場合
- まとめ
1.iDeCo・確定拠出年金の所得控除には手続きが必要
iDeCo・確定拠出年金では、積み立てた掛金を所得から控除できるので効率よく運用できます。そして控除を受けるためには、毎年手続きを行う必要があります。
手続きとは所得控除のことで、状況に応じ以下2種類どちらか1つの方法を選択します。
- 年末調整
- 確定申告
原則として、確定申告義務のない給与所得者は年末調整、それ以外の方は確定申告が必要になります。働き方や手続きのタイミングによっては、会社員や公務員でも確定申告の手続きを行う必要が生じます。
1-1.給与所得者(公務員や会社員)の場合
給与所得者の場合は、毎年12月に行われる年末調整あるいは確定申告でiDeCo・確定拠出年金の控除手続きを進めます。なお、掛金が毎月給与から天引きされている場合は、手続き不要ですので給与明細を確認してみましょう。
給与天引きではない場合は、年末調整で年間の掛金や必要事項を記入・提出します。また、年末調整を忘れた・もしくは手続きに必要な書類が12月以降に届いた場合、確定申告手続きが必要になります。
1-2.自営業や第3号加入者の場合
自営業(第1号加入者)や公的年金の第3号加入者の場合は、確定申告手続きで所得控除を受けます。また、会社員や公務員と違い、確定申告書Bを使用するので間違えないようにしましょう。
自営業と第3号加入者で必要な書類は、毎年10月頃に自宅へ郵送される「小規模企業共済等掛金払込証明書」と共通しています。
2.iDeCo・確定拠出年金の確定申告手続き
iDeCo・確定拠出年金の所得控除は、確定申告で手続き可能です。内容としては、主に所得控除に必要な掛金の記入などシンプルです。しかし、記入漏れや間違いがあると、控除の対象とならない可能性も出てくるので丁寧に1つ1つ記入・確認しましょう。
手順を大きく分けると4つになります。
- 小規模企業共済等掛金払込証明書の準備
- 確定申告書類の準備
- 必要事項の記入
- 税務署へ提出
それでは確定申告手続きの手順を解説します。
2-1.小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送される
毎年10月末~11月頃にiDeCo加入者へ向けて、小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送されます。地域ごとの細かい配送時期は、中小機構のHPで確認できます。小規模企業共済等掛金払込証明書は、個人の所得税・住民税の控除に必要な証明書で、iDeCoをはじめ心身障害者扶養共済制度などいくつかの制度で必要となる書類です。
2-2.確定申告書を準備
小規模企業共済等掛金払込証明書の準備ができた後は、確定申告書の準備も始めましょう。確定申告書は、最寄りの税務署で直接受け取るか、国税庁のHPでデータのダウンロード・印刷によって入手できます。
確定申告書はAとBに分かれており、一般的には以下のように使い分けられます。
- 会社員や公務員:確定申告書Aに必要事項を記入
- 自営業や主婦・主夫など:確定申告書Bに必要事項を記入
確定申告書AとBの違いは、所得の種類です。Aは給与所得や公的年金などに項目が絞られており、Bはどの所得でも記入できます 。自営業者はiDeCoだけでなく、事業所得なども記入する必要があるので確定申告書Bが必要となります。一方、iDeCo以外で確定申告をする必要のない会社員や公務員は、確定申告書Aの記入のみで済みます。
2-3.確定申告書の第一表と第二表に必要事項を記入する
確定申告書には第一表と第二表の2種類が存在し、それぞれ提出時に必要です。書き方は確定申告書A・Bで違いはありません。
第一表に記入する内容は、年間に拠出した掛金の額です。具体的には第一表の左下「小規模企業共済等掛金控除⑬」と呼ばれる項目に、小規模企業共済等掛金払込証明書で記載されている年間の掛金を記入します。たとえば年間50万円の拠出であれば、「500,000」と記入します。
続いて第二表に記入する内容は、掛金の種類と年間の掛金の2項目です。具体的には第二表右上「⑬小規模企業共済等掛金控除」内の「掛金の種類」と「支払い掛金」に記入します。
掛金の種類には、「(個人型)確定拠出年金」やなどと記載しましょう。また、支払い掛金は第一表と同じく、年間に支払った掛金の額を記入します。
iDeCo・確定拠出年金に関する記入項目は以上となります。
2-4.確定申告期間内に管轄の税務署へ提出
必要事項の記入後は、管轄の税務署(住所地や居住地など)へ確定申告書と小規模企業共済等掛金払込証明書の2種類を提出します。また、確定申告書の提出期間は、原則として毎年「2月16日~3月15日」と定められているため、忘れないようにしましょう。
3.iDeCo・確定拠出年金の年末調整
続いて、給与所得者が行う、年末調整での手続きおよび手順を紹介します。年末調整は確定申告と比較して簡単な内容ですので、この機会に覚えてみましょう。
3-1.小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送される
まず年末調整の前に、小規模企業共済等掛金払込証明書が郵送されているか確認するのも大切です。前半で解説したように、毎年10月末頃~11月にかけて、iDeCoなどの加入者に向けて郵送されます。
3-2.年末調整時に給与所得者の保険料控除申告書へ必要事項を記入
毎年12月頃に年末調整を行いますが、その際に勤務先から渡される「給与所得者の保険料控除申告書」へ必要事項を記入します。
まずは、給与所得者の保険料控除申告書の右下「小規模企業共済等掛金控除」と呼ばれる項目を確認しましょう。そして同項目の「種類」にある「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」に年間の掛金を記入します。
必要事項の記入後は、給与所得者の保険料控除申告書と小規模企業共済等掛金払込証明書を勤務先に提出し手続き完了となります。
4.iDeCo・確定拠出年金の手続きを忘れた場合
iDeCoの主なメリットでもある所得控除は、毎年確定申告手続きや年末調整で控除申請しなければ適用されません。仮に2020年分の掛金を申請し忘れた場合、所得税および住民税の控除対象にはなりませんので注意しましょう。
しかし、年末調整を忘れてしまった場合は、申告期間(2月16日~3月15日)であれば確定申告手続きで控除を受けることも可能です。
他にも小規模企業共済等掛金払込証明書を紛失して しまった方は、iDeCoの申請・契約を行っている金融機関へ再発行を依頼できるため、早めに問い合わせておきましょう。
まとめ
iDeCo・確定拠出年金は、運用利益の非課税・掛金の所得控除といったメリットを享受できますが、控除手続きとして確定申告や年末調整が必要になります。会社員や公務員の場合は、年末調整で簡単に控除手続きを進めることができます。また、掛金が給与天引きされている場合は、手続き不要です。
まずは自身の働き方と手続きの方法、小規模企業共済等掛金払込証明書の確認、そして確定申告手続きを行うのであれば申告期間内に提出できるよう、早めに準備しておきましょう。
菊地 祥
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