マンションの固定資産税は、市区町村が毎年計算して賦課される税金です。家屋部分の税額は、経年によって変わりますが、その計算方法は決められているため、シミュレーションすることが可能です。
本記事では、固定資産税の計算の仕組みを概説したうえで、マンションの固定資産税の計算方法を設例に基づくシミュレーションで解説します。
※記事内の税金・税率などは2022年10月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- マンションの固定資産税の計算の仕組み
1-1.計算方法の概要
1-2.土地の課税標準額の減額特例
1-3.家屋の固定資産税額の減額特例 - マンションの固定資産税の計算シミュレーション
2-2.築20年の中古マンション
2-3.居住用・投資用いずれでも原則同様 - まとめ
1.マンションの固定資産税の計算の仕組み
固定資産税は、市区町村や都が毎年1月1日に土地や家屋を所有する者に対し、税額を算定し、課税されます。
固定資産税の対象となる固定資産の評価額は、その年の3月31日までに市区町村長が決定し、固定資産課税台帳に登録されます。課税標準額、税額などを記載した納税通知書と所在、地番、地目、地積、評価額などを記載した課税明細書が納税者の下に送付されます。
固定資産税の計算方法について、減額される特例と併せてみていきましょう。
1-1.計算方法の概要
固定資産税の税額は、以下の算式で計算します。
課税標準額×1.4%
土地の場合、課税標準額は、固定資産税評価基準に基づき算定した価格を基礎として、地目別に定められた方法により評価します。ただし、固定資産の評価額がそのまま課税標準額となるのではなく、住宅用地の特例措置などによって評価額が減額されることがあります。
家屋の場合、課税標準額の計算は、以下の方法によります。
再建築費評点数×経年減点補正率×評点一点当たりの価額
再建築費評点数は、評価時点において新築する場合の建築費用です。固定資産税評価基準に基づいて算出します。評点一点当たりの価額は、全国一律で木造1.05円、非木造1.10円となっています。
さらに、新築住宅・認定長期優良住宅の取得、耐震・バリアフリー・省エネリフォーム、については、固定資産税額が減額されます。
1-2.土地の課税標準額の減額特例
土地については、課税標準額の減額措置があります。主なものは、一般的な住宅用地と小規模住宅用地に関する特例になります。
住宅用地の減額特例
住宅用地は、課税標準額が評価額の3分の1に減額する特例があります。敷地の一部を住宅用地とする場合でも適用されますが、家屋の床面積の10倍が限度とされています。
なお、通常、小規模宅地の特例と併用され、住宅用地の200平米を超えた部分の面積について適用されます。
小規模住宅用地の減額特例
上述の住宅用地のうち、200平米以下の住宅用地については、課税標準額が評価額の6分の1に減額されます。住宅1戸につき、200平米までとされています。
※出典:国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
1-3.家屋の固定資産税額の減額特例
新築住宅や住宅の耐震・バリアフリー・省エネリフォームについては、政策目的から固定資産税額を減額措置が設けられています。
新築住宅の減額特例
新築住宅のうち、次の条件を満たす家屋の固定資産税額が、3年間(3階以上の場合5年間)、120平米まで2分の1に減額されます。
- 居住用部分の面積が、2分の1以上であること
- 一戸当たり(区分マンションの場合、専有部分)床面積が50平米以上280平米以下であること
- 居住用部分が全体の2分の1以上であること
なお、長期優良住宅の認定を受けた新築住宅の場合、減額期間が戸建では5年間、区分マンションでは7年間に延長されます。
※出典:国土交通省「新築住宅に係る税額の減額措置」
耐震リフォームの減額特例
耐震リフォームのうち、次の条件を満たすリフォームをおこなったとき、翌年度分の固定資産税額が120平米まで2分の1に減額されます。
- 1982年1月1日以前から所在する住宅であり、賃貸物件ではないこと
- 現行の耐震基準に適合する耐震リフォームをおこなったこと
- 耐震リフォームの費用が50万円を超えること
※出典:国土交通省「耐震改修に関する特例措置」
バリアフリーリフォームの減額特例
一定のバリアフリーリフォームのうち、次の条件を満たすリフォームをおこなったとき、翌年度分の固定資産税額が100平米まで3分の1に減額されます。
- 築10年以上の住宅であり、賃貸物件ではないこと
- 工事後の床面積が50平米以上280平米以下であり、居住用部分が全体の2分の1以上であること
- バリアフリーリフォームの費用が50万円を超えること
- 65歳以上の高齢者、要介護または要支援認定を受けた者、障害者、のいずれかが住んでいること
※出典:国土交通省「バリアフリー改修に関する特例措置」
省エネリフォームの減額特例
一定の省エネリフォームのうち、次の条件を満たすリフォームをおこなったとき、翌年度分の固定資産税額が120平米まで3分の1に減額されます。
- 2008年以前から所在する家屋であり、賃貸物件ではないこと
- 省エネリフォーム後の床面積が50平米以上280平米以下であり、居住用部分が全体の2分の1以上であること
- 省エネリフォームの費用が50万円を超えること
- 省エネリフォーム後の部位が2016年省エネ基準に適合すること
※出典:国土交通省「省エネ改修に関する特例措置」
2.マンションの固定資産税の計算シミュレーション
2-1.新築マンション
専有面積80平米、固定資産税評価額3,000万円(建物:1,000万円、土地:2,000万円)、新築マンションを例に、固定資産税の計算をシミュレーションしてみましょう。固定資産税評価額は、経年減点補正率および各種減額特例計算前の金額としています。
土地部分は、200平米以下であるため、小規模住宅用地の減額特例が適用され、課税標準額が1/6になり、次のように計算できます。
土地:2,000万円×1/6×1.4%=46,600円(百円未満切捨て)
建物部分は、新築住宅の減額特例(3階以上、耐火・準耐火構造の場合、築5年まで)が適用され、税額1/2になるため、次のように計算できます。
建物:1,000万円×1.4%×1/2=70,000円
2-2.築20年の中古マンション
次に、専有面積80平米、固定資産税評価額3,000万円(新築時建物:1,000万円、土地:2,000万円)、築20年の中古マンションを例に、固定資産税の計算をシミュレーションしてみましょう。固定資産税評価額は、経年減点補正率および各種減額特例計算前の金額としています。
土地部分は、さきほどと同様になります。
土地:2,000万円×1/6×1.4%=46,600円(百円未満切捨て)
建物部分には、新築住宅の減額特例は適用されず、課税標準額の計算の際、経年減点補正率(東京都の非木造建物築20年:0.5054)を乗じて計算します。
建物:1,000万円×0.5054×1.4%=35,300円(百円未満切捨て)
2-3.居住用・投資用いずれでも原則同様
原則として、固定資産税の計算方法は、居住用・投資用いずれでも変わりはありません。ただし、上述したように、家屋部分の減額特例につき、耐震・バリアフリー・省エネなどのリフォームにかかるものは、投資用の場合には適用されません。
また、固定資産税の評価額は、所得税の確定申告上の資産価額とは異なります。所得税の確定申告の際は、実際に購入した取得価額を下に評価することになります。売却する際にかかる譲渡所得税の計算上の取得価額は、居住用・投資用の別に応じて計算方法の取扱いが異なるので注意しましょう。
まとめ
固定資産税は、市区町村や都が毎年1月1日に、土地や家屋を所有する者に対し、課税するものです。
固定資産税評価額は、土地、家屋の区別に応じて、評価方法が異なります。
家屋については、再建築費用に定められた経年減点補正率を乗じて計算します。新築の場合には税額が2分の1になる特例があります。
マンションの固定資産税は、家屋部分の占める割合が大きく、経年によって大きく税額が変わるのが特徴といえるでしょう。土地については、小規模住宅用地の特例により、200平米までは課税標準額が6分の1に減額されます。
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佐藤 永一郎
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