マイホームの買い替え・住み替え時には物件の購入代金や不動産会社への仲介手数料に加え、不動産取得税や登録免許税などの税金を納めます。
特に、旧居を売却し利益が出た際に納付する「譲渡所得税」は、所有年数によって税率が異なりますので注意が必要です。所得税が発生する場合は確定申告を行わなければなりませんが、一定の要件を満たすことで将来に税金を繰り延べられる制度があります。
本記事ではマイホームの買い替え・住み替え時にかかる税金4種類とマイホームの買い替え・住み替えで適用したい特例を解説していきます。
※記事内の税金・税率などは2022年4月時点の情報となります。最新の情報については、国税庁などのサイトをご確認のうえ、税理士などの専門家へのご相談もご検討ください。
目次
- マイホームの買い替え・住み替え時にかかる税金4種類
1-1.譲渡所得税
1-2.登録免許税
1-3.不動産取得税
1-4.固定資産税 - マイホームの買い替え・住み替えで適用したい特例
2-1.特定のマイホームを買い換えたときの特例
2-2.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例 - まとめ
1.マイホームの買い替え・住み替え時にかかる税金4種類
1-1.譲渡所得税
マイホーム売却し利益が生じた際には、譲渡所得税を支払う義務が生じます。売却による利益である譲渡所得は以下の式で計算します。
売却価格-(取得費+譲渡費用)-控除額(適用される場合)
取得費とはマイホームの購入代金や不動産会社への仲介手数料などを合計した金額で、取得費が売却価格の5%未満である場合は、売却価格の5%相当額を取得費として計算が可能です。
譲渡費用は売却時の仲介手数料、測量費など売却のために必要な費用、建物を解体した際の解体費用などが当てはまります。
売却した年の1月1日時点で所有期間が5年を超える際は「長期譲渡所得」、5年以下では「短期譲渡所得」として計算を行います。譲渡所得に以下の税率をかけて計算します。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
長期譲渡所得 | 15% | 5% |
短期譲渡所得 | 30% | 9% |
※参照:国税庁「土地や建物を売ったとき」
1-2.登録免許税
不動産の登録免許税はマンションのローンを完済した時の抵当権抹消登記、所有権移転登記の際に必要となります。司法書士に依頼する場合、依頼費用と合わせて支払います。
抵当権抹消登記
金融機関で借りたローンの残債が残っている場合、マンションに抵当権が設定されています。抵当権抹消登記は、この抵当権を登記から抹消する手続きで、不動産1つにつき1000円となります。抵当権抹消の登記申請書に収入印紙を貼り付けた用紙を添付し、管轄の法務局に提出します。
所有権移転登記
所有権移転登記は、不動産の名義を変更する際に必要な手続きです。土地や建物の評価額の値段によって、また所有権が移転する理由によって、税率が異なります。なお、不動産売買による移転登記では司法書士に依頼するケースがほとんどであり、登記費用に合わせて司法書士への依頼費用がかかります。
1-3.不動産取得税
土地や家屋など不動産を取得した時にかかる税金で、固定資産課税台帳に登録されている価額に下記の税率をかけて計算します。
課税標準額×税率(原則4%、住宅及びその敷地3%)
出典:総務省「地方税制度>不動産取得税」
原則4%税率となりますが、住宅及びその敷地については、住宅取得の負担を少なくするため、一時的に3%に軽減されています。税率軽減の適用期限は、令和6年3月31日までとなっています。(※参照:国税庁「不動産取得税に係る特例措置」)
1-4.固定資産税
固定資産税は1月1日時点で登記簿に記載されている所有者に対して課されます。
不動産売買では、引き渡し日を境に売主と買主が固定資産税を日割り計算で負担する事例が多く新居の購入時には不動産業者を通じて固定資産税を売主に支払うことがあります。
取引慣例上、旧居の売却時には買主から日割り計算された固定資産税を受け取り、自身(売主)が納付するケースが多いと言えます。税率は以下の通りです。
- 土地:課税標準額※×1.4%
- 家屋:固定資産課税台帳に登録されている価格×1.4%
※土地の課税標準額は住宅用地の場合、面積に応じて以下のように軽減されます。
小規模住宅用地
200㎡以下の住宅用地又は200㎡超の住宅用地のうち200㎡までの部分、固定資産課税台帳に登録されている価格×1/6
一般住宅用地
200㎡超の住宅用地の200㎡を超える部分、固定資産課税台帳に登録されている価格×1/3
2021年は新型コロナ感染症の影響で、地価が上がった場合でも2020年の課税標準額で据え置く負担調整措置が取られました。2022年は商業地を始めとした一定の土地に負担調整が行われます。(※参照:国税庁「令和4年度税制改正の大綱」)
2.マイホームの買い替え・住み替えで適用したい特例
- 特定のマイホームを買い換えたときの特例
- マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
2-1.特定のマイホームを買い換えたときの特例
特定のマイホームを、2023年12月31日までに売却し、新居を買い換えたときは、一定の要件を満たす場合、譲渡所得税を将来に繰り延べることができます。(※参照:国税庁「特定のマイホームを買い換えたときの特例」)ただし、あくまで繰り延べの措置であり、譲渡益が非課税となるわけでは無いという点に注意しましょう。
適用を受ける場合には、所有者の居住期間が10年以上であり売却した年の1月1日時点で所有期間が10年を超える、新たに購入する建物の床面積が50平方メートル以上、土地の面積が500平方メートル以下などの要件を満たす必要があります。
譲渡所得の内訳書や所有期間が10年を超えることを証明できる書類(登記事項証明書)を添えて、確定申告を行う事で適用を受けられます。
なお、マイホームを譲渡した年に買い換えることができなかったケースでは、譲渡した年の翌年の12月31日までに買い換えを行い、新居に住むことで「特定のマイホームを買い換えたときの特例」が適用できる可能性があります。
2-2.マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
マイホームを2023年12月31日までに売却して、新たにマイホームを購入し、旧マイホームの譲渡で損失(譲渡損失)が生じた時は、要件を満たす際に譲渡損失を給与所得など他の所得から控除(損益通算)することができます。(※参照:国税庁「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」)
所得から控除しきれなかった譲渡損失は、譲渡の年の翌年以後3年内に繰り越して控除(繰越控除)することが可能です。
譲渡した年の1月1日時点での所有期間が5年を超える住宅(旧マイホーム)、日本国内にあるもの、新居の家屋床面積が50平方メートル以上などの要件があります。旧居の敷地の面積が500平方メートルを超える場合、合計所得金額が3,000万円を超える年度は適用されません。
確定申告を行い居住用財産の譲渡損失の金額の明細書、居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の対象となる金額の計算書などを確定申告書と一緒に提出する必要があります。
【関連記事】不動産売却したら年末調整はどうなる?税金や確定申告を詳しく解説
まとめ
マイホームの買い替え・住み替えの際には税金がかかり、売却益が生じた時には譲渡所得税が課され確定申告を行い納付する流れとなります。
譲渡所得税には特定のマイホームを買い換えた時の繰り延べの特例、損失が生じた場合の損益通算・繰越控除の特例があります。不動産取得税には軽減制度があり新築・中古で控除額や要件が異なりますのでチェックしておきましょう。
田中 あさみ
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